人材育成お悩み相談室
階層研修などの育成体系の見直しを検討しています

2017.10.20

【お悩み】
中期経営計画に合わせて育成体系を全体的に見直しています。まずは階層別に人材要件定義を進めようとしているものの、確からしさの判断がつかず、合意形成が進みません。何から手を付ければよいのでしょうか?(製造業、人財開発課)

 

【お答え】
まずはあるべき組織像を定めることで、方向性を揃えましょう。そのうえで、人材要件定義の成果物についてイメージを共有し、策定・議論することをお勧めします。

人材要件定義の2つのポイント

グロービスの人材育成部門で法人営業を担当しています佐々木です。

育成体系としてよく紹介されるのは、縦軸に役職や等級、横軸に階層研修、選抜研修、事業部・テーマ別研修、自己啓発研修といった形態を置いた体系図です。今、多くの会社が、これまで社内で個別に実施されてきた育成施策を体系的に整理し、会社の求める人材要件との整合をとろうとしています。今回はご相談を元に育成体系を見直し、人材要件を定義するために重要なポイントをご紹介いたします。

育成体系の見直しを進める際に、今回のご相談のように「人材要件定義をやってみたものの方向性が揃わない」「人材要件についてピントのずれた反論が来てしまう」といった問題に直面することがあります。今回は、これを乗り越えるためのポイントを2つご紹介します。

  1. 1. 方向性を揃える為に、あるべき組織像を定める
  2. 2. 枠組みをうまく使って、具体化する

1. 方向性を揃える為に、あるべき組織像を定める

今回のご相談は「中期経営計画に合わせて」とのこと。「組織は戦略に従う」と言われますが、育成のみならず人・組織の施策を考える上で戦略を深く理解することは重要です。しかしながら、こうして自社の戦略の意味を理解したとしても、そこからあるべき人材像を導くことにはやや距離があり、難しいということはないでしょうか。

私の担当企業で「モノ売りからサービスへの転換を目指しているので、営業部門の主力メンバーに向けてソリューション営業力強化研修を行いたい」というお客様がおられました。その方は研修の実施を急ぐ一方で、「全社的な戦略転換に対して、打ち手がややピンポイントすぎないか。全体観を持つために、部門横串で階層別人材要件を検討する必要があるが、方向感がつかめず進まない」という点でも悩まれていました。

そこで私が提案したのは、戦略とあるべき人材像の間をつなぐものとして、あるべき組織像を定めることです。

検討ステップに「あるべき組織像」(破線)を定める


なぜ、あるべき組織像を戦略と人材像の間に挟むとよいのでしょうか。それは、組織における階層間、部門間の関係性や相互作用が、人の行動に強く影響するからです。例えば、課長層が期待される行動をとって活躍するためには、部門方針の共有、部長からの権限移譲・支援、部門間の相互理解、メンバーの自走やチームへの貢献などが鍵となります。人が仕事の成果を出す上で、必ず組織が影響するのです。

したがって、戦略と理念を手掛かりに、あるべき組織像として醸成したい文化や行動習慣(好ましいタテヨコの相互作用等)を考えておくと、「では、その実現のために、誰(部長、課長、主任等々)がどんな行動をとればよいだろうか?」と、各階層の役割・行動といった人材要件への落とし込みがしやすくなります。

(関連:人材育成・組織開発プログラムを企画する3ステップ


先のお客様の例では、「モノ売りからサービス業へ」を実現するための組織像を検討する中で、「顧客提供価値を強く意識する」、「開発から営業までの各機能が価値創出・提供に向けてスピーディーに連携する」、「各層が自ら課題設定し行動する」などのキーワードが挙がりました。そこから、営業メンバーのみならず、営業のマネジメント層や、開発部門、関連管理部門など、まさに全社の思考・行動を変える必要があることが明らかになったのです。

そのキーワードは経営陣の意図と合致し、営業研修の新設のみならず、階層研修の刷新にもつながりました。まさに「育成体系の見直し」に至ったわけですが、すでに方向性について経営層の信頼を得ていたので、施策への落とし込みはスムーズに進んだそうです。

「あるべき組織像」は一見、迂遠な論点のように見えるかもしれませんが、結果として、本質的な育成体系の合意形成へとスピーディーに至るためにお勧めの方法です。また、「あるべき組織像」を描くことで、その次のあるべき人材像の「軸」も見やすくなります。


2. 枠組みをうまく使って、具体化する

「あるべき組織像」が定まったとしても、人材要件の内容についてイメージが共有されていないために、能力と行動の話が混在するなどして議論が進まないことがよくあります。

そのような場合には、「あるべき人材像」を考えるための枠組みを決めることが有効です。例えば、以下のようなものです。

  • ・あるべき組織像から導かれる(各層の)役割
  • ・役割から導かれる具体的な行動
  • ・行動を支える要素としてのスキル・マインド

これら一つ一つの内容を定めるコツなどもありますが、紙面の都合上、別の機会に譲りたいと思います。ご興味があればお問い合わせをいただければ幸いです。

本コラムが、育成体系の見直し、人材要件を定義する上でのヒントになることを願っています。

執筆者プロフィール
佐々木 健二 | Kenji Sasaki
佐々木 健二
人事・労務コンサルティング事務所、人材サービス企業を経て株式会社ミスミへ。中国新規事業立上時のマーケティングや国内営業チームのマネジメントに携わった後、グロービスへ。グロービスでは法人営業として様々な業種、約150社の育成施策立案・実行をサポート。現在は法人事業におけるCRMの推進及び営業組織内のナレッジマネジメント等を担当。同時に、思考領域ファカルティ・グループにて研究員を務める。
グロービス経営大学院修了(MBA)

※文中の所属・役職名は原稿作成当時のものです。

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