人材育成プログラムの効果的な設計方法

2021.09.03

人材育成プログラムの企画/設計は、企業が戦略を実行するための重要なファクターです。しかし、人材育成プログラムの企画/設計方法について、体系的に整理できている企業は多くありません。筆者もお客様から、「計画的に企画が進められない」「せっかく企画したのに、現場からの評判が良くない」などのお悩みをよく聞きます。

 

本コラムでは、育成プログラムの効果的な設計方法について解説します。

▼コラムに関連する動画セミナーはこちら▼
育成プログラムの効果的な設計方法とは

 

育成プログラムの企画にあたり、まず押さえておきたいポイント

育成プログラムを新しく企画/設計する場合、どのようなポイントから考え始めると良いでしょうか。

最初におさえるべきポイントは、「人」です。誰に、どのようなことを、いつまでに、何人くらい・・・、と人に関する論点が定まってくれば、どのような手法・育成プログラムを取り入れるかも検討しやすくなります。

一方で忘れがちなのが、企画の背景です。

たとえば「誰に?」という論点に対して「課長層に」と決めたとしましょう。次に出てくる論点は「なぜ課長層に?」です。そのため、本育成企画が必要となった背景も押さえておくことが、育成プログラムの設計において重要です(図1)。

図1:育成における重要論点

図1:育成における重要論点

 

「なぜ課長層に?」に答えるには、育成プログラムの範囲外も含めた幅広い議論が必要です。さまざまな部署の方と定期的に議論し、現場や経営上の課題を把握しておくことがポイントとなります。


図1を細分化すると、図2のようなプロセスに落とし込むことができます。「How:育成プログラムを設計する」だけではなく、その前提である「What:人材育成課題を特定する」と、背景にある「Why:戦略的背景・意図を掴む」というプロセスが重要であると、ぜひ意識してください。

図2:効果的な育成プログラムの立案プロセス

図2:効果的な育成プログラムの立案プロセス

 

図2のプロセスを進める際は、上流工程である「Why:戦略的背景・意図を掴む」と、「What:人材育成課題を特定する」について、プロセスを追って議論をすることが重要です。上流工程はイメージが湧きづらく、筆者もお客様からよく質問を受けます。

次項では、筆者が実際に担当したお客様との議論の様子を通じて、この2点の考え方をお伝えします。

事例で見る、人材育成課題の特定方法・プロセス

製造業A社様から、専門知識を有する管理部門(法務・知的財産・経理等)の選抜研修を企画したいという相談を受けました。当時の提案資料の概略は、図3の通りです。

図3:選抜研修の企画提案資料(例)

図3:選抜研修の企画提案資料(例)

戦略的背景

A社は良い製品を作ってお客様に販売するという、一般的な製造業のビジネスモデルで、収益を高めてきました。しかし「モジュール化や競合の台頭に対応するべく、ビジネスモデルの変更を考えねば」という議論が起こったのです。

たとえば、製品開発からユーザーの手元に届くまでの価値連鎖の中で、社外との提携の仕方やリソースの開示度合いなどを組み合わせ、今までと異なる収益源を作ることを含めて、新しいビジネスモデルを戦略的に検討していきたいと考えていました。

あるべき組織像

上記のような戦略が出てくると、そこで求められる組織の形や役割も変えねばなりません。具体的には、「ビジネスモデルの構想に対して、関連部門が双方向にプロアクティブに関わり、自ら戦略性を発揮する」と言った役割が求められます。

このため、管理部門は一部組織を別会社として立ち上げ、これまでとは違う動き方や考え方を求めていこうと決まっていました。

人材育成課題

組織の形や役割が変わると、必要な人材の質も変わります。あるべき人材像として、関係部署に自ら働きかけていくリーダーシップや、ビジネスモデルを俯瞰的に考えること等が求められます。

一方で現状の管理部門の社員を見ると、受け身かつ専門性の発揮に重きを置きがちな人材が多い。どちらが良い悪いという話ではないものの、これから求める人材像と比べると、ギャップがあったわけです。

 

人材育成課題のギャップを紐解くと、

・事業の課題をどのような切り口で考えていくのかという視点や、ビジネスモデルを構造的に考えていく論理的な頭の使い方が不足している

・あるべき人材像に向けて変わらねばならないという姿勢や、能力に関する認識が不足している

のように、人材育成課題が特定されていきます。

 

背景⇒組織⇒人材へと、プロセスを追って議論することには重要なメリットもあります。関係者の中で「本質的な課題解決につながりそうだ」という認識が醸成されることです。結果として手戻りが少なくなり、納得感のある人材育成を企画できます。

研修のゴールを設定する

人材育成の課題が特定されたら、次は育成プログラムの設計です。そのためには、研修のゴールを設定する必要があります(図4)。

図4:研修のゴールの位置づけ

図4:研修のゴールの位置づけ

 

ここで1つ、皆様に注意いただきたいポイントがあります。育成課題が特定できれば、研修のゴールは決まるでしょうか? 実は、決まりません。研修のゴール設定は、慎重に考えねばなりません。

その際に意識すべきは、先ほど特定した育成課題です。例えば、抽出した課題全てに対応しようとするか、まず1つだけでも対応しようと考えるかで、研修のゴール設定は大きく変わります(図5)。

図5:研修のゴール設定の考え方

図5:研修のゴール設定の考え方

 

研修のゴールは簡単に決まるものではありません。あるべき人材像にどのくらい近づけるのか、現場の状況に配慮して無理をしないのか、今回の研修でどこまで行くべきか、を丁寧に設定する作業が必要です。ゴール設定について詳細に知りたい方は、関連コラムや動画セミナーもご覧ください。

最後に

本コラムでは、人材育成を考えるには背景まで押さえる必要があることと、企画を考えるためのプロセスやゴール設定についてお伝えしました。特に大事な点は、Why、What、Howという3ステップで考えること。これだけでもぜひ覚えて、実務で使ってみてください。

人材育成の企画・設計について、より詳細を知りたい方や資料をダウンロードしたい方は、ぜひ動画セミナーを視聴してみてください。

▼コラムに関連する動画セミナーはこちら▼
育成プログラムの効果的な設計方法とは

 

【関連コラム】

【第1回(本コラム)】 【第2回】 【第3回】

執筆者プロフィール
小島 和也 | Kojima Kazuya
小島 和也

関西学院大学法学部卒業。グロービス経営大学院経営学修士課程(MBA)修了。
精密機器メーカーにて大手直販顧客へのカスタマイズ製品の企画・提案、販売チャネルのプロモーション業務等に従事。
グロービス入社後は、企業向け人材育成・組織開発プロジェクトの企画・設計・コンサルティング業務に従事する。
また、マーケティング領域のコンテンツ開発に携わるとともに、講師として同領域を担当する。


※文中の所属・役職名は原稿作成当時のものです。

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