人材育成施策の企画前に押さえたい、4つのフレームワーク

2021.04.02

外部環境が急激に変化する中、求める人材像の変化に合わせて人材育成施策の見直しや新設を検討されている企業も多いのではないでしょうか。

 

本コラムでは、新しく育成担当になった方を対象に、人材育成施策を検討する上で基本となる4つのフレームワークを紹介します。

 

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育成体系の考え方

 

フレームワーク1:HPI(Human Performance improvement)で自社の戦略を再確認する

人材育成施策は、検討すべきことが多岐に渡ります。たとえば対象層や実施内容、実施場所、タイムスケジュール、関係者への事前案内方法などを決めねばなりません。そのため初めて企画を担当する方は、過去の内容を前提にしたり、詳細項目の検討に意識が向いたりしがちです。

しかしまずは、大目的を押さえることが何よりも重要です。人材育成施策であれば、あくまでビジネスの成果を高めるための手段だ、ということです。そのため育成施策の具体項目を検討する前に、まずは自社のビジネス成果を高めるための戦略を確認することから始めます。

 

この際に参考となる概念として、ATDという団体が提唱しているHPI(Human Performance improvement)があります。HPIとは、企業の課題を人・組織の視点から分析し、解決策の企画・実行を図るための方法論です。HPIは、主に6つのステップで実行していきます(図1)。

図1:HPI(Human Performance improvement)

図1:HPI(Human Performance improvement)(引用:George M. Piskurich、”HPI Essentials”、Amer Society for Training &、2002年、を基に筆者が一部加筆)

 

STEP1:理想の状態の特定

自社のビジネスゴールと、ミッション・戦略を確認する。そのうえで、戦略実現に必要な自社の人材パフォーマンスを明らかにする。

STEP2:現在の状態の特定

自社が置かれている競争環境の分析を踏まえ、自社人材の現状のパフォーマンスを明らかにする

STEP3:ギャップの洗い出しと原因分析

理想の状態と現状のギャップを洗い出し、原因分析を行う

STEP4:施策の立案と設計

特定した原因に対して育成以外の方法も含めて最適な施策を検討し、育成施策で解決すべき課題とその方法を明らかにする。その後、明らかにした課題が着実に解決されるために必要な一貫性のある具体施策を検討する

STEP5:実施とマネジメント

ステップ4で検討した具体施策を実行する

STEP6:評価・改善

実施した成果を振り返り、効果を高めるため改善策を検討する

 

上記の通り、STEP4の具体的な育成施策の検討に入る前に、まずはその前段となるSTEP1~3について確認・検討することが重要です。

特に昨今はビジネスを取り巻く環境が急激に変化しているため、育成施策を企画した時点と現在のビジネス環境が大きく変わっていることがあります。そのためまず初めに、現在の自社のビジネス環境と戦略の立ち位置を確認することが重要です。

 

フレームワーク2:氷山モデルで、強化すべき要素を具体化にする

効果的な人材育成施策を検討するには、強化すべき要素を検討することが重要です。この強化すべき要素の検討には、「氷山モデル」という考え方が効果的です。

氷山モデルとは、物事の見えている表面のみならず、見えていない要素も含めて全体像を捉えようという考え方のことです。人材育成施策を考える際は、「行動」「知識・スキル」「マインド」の3つの要素を「氷山モデル」の考え方で整理すると良いでしょう(図2)。

図2:氷山モデル

図2:氷山モデル

 

氷山モデルによると、我々が普段認識しているのは、その人の行動です。しかし人が何らかの成果や求められる行動を体現するには、その前提として持つべき知識・スキルやマインドが必要です。

そのため「具体的にどのような行動を求めるのか」と「その行動を体現する上で必要な知識・スキル、マインドは何か」について、セットで整理することが有効です。すると、育成施策で特にどの要素を強化する必要があるか、具体的に検討できるようになります。

 

フレームワーク3:70-20-10の法則で、学びの活用と支援も含めた全体をデザインする

ビジネスパーソンの能力開発を企画するにあたり、知識獲得を目的にするだけでは十分な成果が得られません。学んだ知識はビジネスの特定シーンで適応させ、問題解決を図ることが求められるからです。

そのため、研修(Off-JT)で新たな知識を得る/通常業務を離れて自身の課題について振り返る、といった活動に加え、学んだことをビジネスに適応させるためのも含めた能力開発施策全体のデザインが必要です。たとえば業務上での能力開発(OJT)や上司・先輩の助言・アドバイスなどを組み込むことが有効です。

 

能力開発全体のデザイン検討する際は、「70-20-10の法則」を念頭に各施策の組み合わせを検討すると効果的です。

 

70-20-10の法則とは、米国のリーダーシップ研究の調査機関ロミンガー社が行った、経営者が「自身の成長に寄与したこと」に関する調査、分析結果から生まれた法則です。

同社の分析によると、以下3つの要素がそれぞれの割合で成長に寄与していることが明らかになりました。

70%:経験(自分自身の行動によって身についた知識やスキル)

20%:薫陶(上司からのアドバイス)

10%:研修(研修や書籍などから得た知識やスキル)

 

70-20-10の法則を踏まえると、人材育成施策を企画する際は、集合研修をテコにしながら「職場での活用機会の創出」や「周囲からの活用支援」など、上司や先輩の巻き込みまでを含めた施策設計を検討することが重要だと分かります。

いざ育成施策を検討するとなると、研修の企画だけに意識が向きがちです。ぜひ「研修当日のデザイン」だけではなく、「研修前後のデザイン」も意識して、企画の検討を進めましょう。

 

フレームワーク4:カークパトリックの4段階評価モデルで、研修成果を測る

育成施策を検討する際は、その測定方法についても企画段階から想定し、事前に関係者と合意しておくことが重要です。

研修成果を測定する上で、代表的な手法としてカークパトリックが提唱する「4段階評価モデル」という考え方があります。

図3:カークパトリック 4段階評価モデル

図3:カークパトリック 4段階評価モデル

 

レベル1. 反応と、レベル2. 学習は、研修当日に測定可能です。一方レベル3. 行動の測定は、一定期間後に本人や周囲に対して追加アンケートもしくは調査を行うことで測定可能です。

すなわち、測定したいレベルにより測定タイミングが異なるのです。なので、育成施策を企画する段階で、どのレベルの効果を測定したいか、それがいつ頃明らかにできるかを検討することが重要です。

 

またレベル4. 結果においては、ビジネス結果には様々な要因が関係しているため、研修との因果関係を厳密に測定することは困難です。結果によって研修の効果を測れることが理想ではあるものの、研修内容と結果の関連度合いについて、関係者と事前に合意しておくことも重要です。

 

最後に

ビジネス環境が大きく変化している現在において、新しい知識・スキルを獲得しながら、ビジネス成果を高めていくことが重要になっています。そのため、これまでのやり方にとらわれすぎず、ご紹介した4つのフレームワークを活用しながら、あるべき育成施策を検討してみてはいかがでしょうか。

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育成体系の考え方

 

<出典>

・George M. Piskurich、”HPI Essentials”、Amer Society for Training、2002年

・Michael M. Lombardo, Robert W. Eichinger 、”The Career Architect Development Planner”、Lominger Limited

Kirkpatrick Partners、”The New World Kirkpatrick Model” 、2020/08/17に内容確認

執筆者プロフィール
末吉 涼 | Ryo Sueyoshi
末吉 涼

グロービス・コーポレー ト・ソリューション シニアコンサルタント

早稲田大学卒業、Hult International Business School(MBA)修了。株式会社リクルート(現:リクルートマーケティングパートナーズ)にて学校法人向けに経営・マー ケティング支援を行う部門にて事業企画や事業開発、営業などの業務に従事。

現在は、グロービスにて、大企業の経営人材育成や組織開発案件の企画・実行支援に従事するほか、戦略部門研究員として教材の開発やスタートアップ企業に対するアドバイザリー業務を行う。


※文中の所属・役職名は原稿作成当時のものです。

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