OJTとOFF-JTの違いと使い分け

2020.03.20

育成施策を検討するにあたり、OJTで行うべきかOFF-JTで行うべきか、悩まれたことはありませんか? 企業の人材育成担当者の方であれば、一度は検討するテーマだと思います。本コラムではOJTとOFF-JTの違い・特徴を踏まえ、どのように使い分けていけばよいか、一緒に考えていきます。

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研修を実践につなげるための上長に期待する役割

OJTとは? OFF-JTとは?

OJTとは「On-The-Job Training」の略称で、実際の職務現場で業務を通して行う教育訓練のことをいいます。部下が職務を遂行していくうえで必要な知識やスキルを、上司や先輩社員などの指導担当者が随時与えることで教育・育成する方法です。

一方OFF-JTは「Off-The-Job Training」の略称で、職務現場を一時的に離れて行う教育訓練のことをいいます。具体的には、外部の講師を招いて行う企業内集合研修や外部スクール、セミナーへの参加、通信教育やe₋ラーニングなどを指します。

 

OJTとOFF-JTの特徴を、「育成内容」「育成効果」「育成コスト」の3つの観点から表1にまとめました。両者のメリット・デメリットを理解しておくことが、適切な人材育成体系構築の第一歩となります。

 

表1:OJTとOFF-JTの特徴
項目 OJT OFF-JT
育成内容 受講者に応じた独自のカリュキュラムを提供できる 育成内容の標準化や品質コントロールがしやすい
育成効果 実際の業務の中で指導を受けるため、学びをすぐに実務で活用できる 学習すべきポイント(概念・フレームワークなど)を研修カリキュラムに意図的に組み込めるため、普遍的・汎用的なスキルを得られる
育成コスト 金銭的コストという点で優れる。 業務の一環として上長・先輩社員が行うため、外部講師などを招いて行うOFF-JTよりも低コストで済むことが多い 指導者の機会コストという点で優れる。 OJTの場合、指導者も自身の仕事がある中で指導を行うため、時間的負担が大きい。OFF-JTは、外部ベンダーなど教育専門の指導者が行うため、指導者の機会コストへの影響は少ない

 

OFF-JTニーズの高まり

近年、OFF-JTのニーズが高まっています。厚生労働省の調査によると「正社員に対してOFF-JTを実施した事業所は75.7%と、前回(75.4%)と比べてやや増加して」います(図1)。このように多くの事業所において、高い割合でOFF-JTが実施されています。

図1:正社員に対してOFF-JTを実施した事業所割合の推移

図1:正社員に対してOFF-JTを実施した事業所割合の推移(引用:厚生労働省、平成30年度「能力開発基本調査」、平成31年3月、P.13)

 

OFF-JTのニーズが高まっている背景として、OJT指導者である中堅層~シニア層のリソース確保が難しくなっていることが考えられます。たとえばシニア層であるバブル世代は、定年退職が進んでいます。また、中堅層は就職氷河期の影響などもあり、元々人数が少ない企業も多いのではないでしょうか。

 

筆者の経験(年間約30社を越える企業の組織開発・人材育成のサポート)では、OFF-JTの中でも中堅層向けの「次世代ビジネスリーダー育成」を目的とした教育のニーズが高まっていると感じています。次世代ビジネスリーダーとは、一般的に将来の経営幹部候補を指します。OFF-JTの実施率を階層別でみても、「正社員では新入社員が64.3%、中堅社員が64.6%、管理職層が53.1%」です(図2)。新入社員よりも中堅社員のOFF-JT実施率が高いことからも、中堅層の育成に力を入れていることが伺えます。

図2:OFF-JTを実施した事業所(階層別)

図2:OFF-JTを実施した事業所(階層別)(引用:厚生労働省、平成30年度「能力開発基本調査」、平成31年3月、P.13)

 

次世代ビジネスリーダー育成のニーズが高まっている理由として、2点考えられます。

1. 経営幹部交代の加速化
今後5~10年にかけて、経営幹部の世代交代が加速すると考えられます。これは、バブル世代の定年退職が進んだ結果です。加速による問題として、経営幹部登用の若年化傾向が進み、中堅層はOJTによる経験を積めないまま経営幹部に登用されるケースが増えています。その対策として、OFF-JTによる育成ニーズが高まったと考えられます。

 

2. VUCA時代への対応
近年、ビジネス環境はテクノロジーの進化を中心に激しい変化が生じています。こうした状況を指す言葉としてVUCAという言葉が使われます。VUCA とはVolatility(変動)、Uncertainty(不確実)、Complexity(複雑)、Ambiguity(不透明)の略語で「予測不能な状態」を意味します(図3)。もともと1990年代にアメリカの軍事領域において用いられてきた言葉です。

図3:VUCAの時代

図3:VUCAの時代

 

VUCA時代において企業を持続的に成長させるには、ビジネスリーダーが経営の意思決定(ビジネスモデルの再構築や経営戦略の転換など)を、迅速かつ適切に行う必要があります。このような事情を鑑みると、いかなる環境変化においても対応できるプロ経営者をOFF-JTで計画的・意図的に育成していくことが、企業の人材戦略において重要となってきます。

 

 

OJTとOFF-JTの使い分け

OFF-JTに対するニーズが高まっている一方で、OFF-JTよりもOJTを重視する企業はまだまだ多いようです。厚生労働省の調査によると、「正社員に対して重視する教育訓練については、「OJTを重視する」(20.5%)又はそれに近い(53.1%)とする企業は73.6%と多くを占め」、OFF-JTよりもOJTを重視する傾向が伺えます(図4)。

図4:重視する教育訓練(正社員、正社員以外)

図4:重視する教育訓練(正社員、正社員以外)(引用:厚生労働省、平成30年度「能力開発基本調査」、平成31年3月、P.13)

 

しかしながら、育成をOJTとOFF-JTの二元論として捉えるのは適切ではありません。OJTとOFF-JTは人材育成体系構築の手段にすぎず、人材育成担当者はそれぞれの特徴(表1)を押さえたうえで、最適な組み合わせを考える必要があります。

 

多くの企業において、OFF-JTの目的は能力開発機会の補てんです。OJTだけでは得にくい普遍的・汎用的なスキルを得るため、OFF-JTを活用します。一方、OJTのメリットは多様な経験を積んだ上司・先輩からの指導を受けられる点です。どちらが良い悪いではなく、OJTとOFF-JTを組み合わせた全体設計を行うことが重要となります。

 

OJTとOFF-JTを組み合わせて育成全体を設計する一例をご紹介しましょう。よく聞く課題として、OFF-JTで学んだことを実務で活用できないというものがあります。たとえば次世代ビジネスリーダー育成であれば、経営の原理原則を体系的にかつ効率よく学ぶことを目的として、OFF-JTによる育成が採用されます。一方で企業にヒアリングしてみると、OFF-JTで学んだ原理原則を実務で活用できていないといった声をよく耳にします。

 

このような場合、OJTとOFF-JTを組み合わせて育成全体を設計することが有効です。なぜならば、研修の学びを実践に結びつけるには上長の理解・サポートが不可欠であり、そのためにはOJTと組み合わせる必要があるからです。たとえば以下のような設計が考えられます。

  • ・研修実施前の段階で研修の目的・狙い・内容を受講者の現場上長に伝える
  • ・研修後は成果を共有し、学びを実践する機会を一定期間付与しながら、実務を通しての指導・サポートを行う

 

最後に

本コラムではOJTとOFF-JTの違い・特徴に触れながら、両者を組み合わせて育成の全体像を構築する重要性を説明しました。残念ながら、OFF-JTとOJTをバランス良く実施できている企業はまだ少数です。適切な育成体系を構築するには、両者を組み合わせて考える必要があります。

 

人材育成担当者の期待役割は、適切な人材育成体系の立案・実行です。本コラムを読まれた方が、目的に応じてOJTとOFF-JTを上手く組み合わせ、より良い人材育成体系を構築されることを願っております。一方で戦略的人事という言葉に示されるように、昨今は経営戦略実現のための人材育成が求められ、考えるべきことも複雑化しています。もしOJTとOFF-JTの連携でお悩みの事があれば、弊社へご相談ください。課題解決のお手伝いをさせていただきます。

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執筆者プロフィール
中田 真也 | Nakata Masaya
中田 真也
大学卒業後、都市銀行に入行。その後、ベンチャー企業にて営業・経営管理全般を統括。
現在はグロービス法人部門にて企業の組織開発・人材育成に携わる。同時に、企業内集合研修の講師、会計領域のコンテンツ開発を担う。
グロービス経営大学院修了(MBA)。

※文中の所属・役職名は原稿作成当時のものです。