自社の成長に本当に寄与する役員研修の企画・選び方
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皆様の会社では役員研修を実施し、成果を出せていますか?もし現状の役員研修で成果を出せており、満足しているのであれば、この記事はお役に立てないかもしれません。まだ役員研修を実施していない、もしくは今の役員研修に課題があるのならば、この記事がお役に立てますので、ぜひご覧ください。
まだ役員研修を実施していない方
役員研修に課題がある方
ぜひ読んでみてください
さて皆様、役員研修を成功させるために大切なことは何でしょうか。詳しくはこの記事に書いてありますが、一言で言えば、役員研修について正しく理解して正しいステップで進めることです。一方でその単純なことが、思っている以上に難しいものです。
累計6,700社、230万人もの受講者へ教育サービスを提供してきたグロービス(2023年時点)でも、もちろん多くのお客様に満足いただけきてきたものの、全ての研修で満点を取れてきたわけではありません。例えばコストの制約が強すぎたために、役員研修を1日で終えねばならず、思ったような成果をご提供できなかった、といった悔しい思いもしてきました。
このような経験の蓄積を踏まえ、皆様には同じような思いをしてほしくないという思いから、この記事の執筆が決まりました。困難な局面を経験し、成功だけではなく悔しい思いもしてきたからこそわかる、役員研修成功のポイントを皆様にお伝えできればと思っています。
この記事では、役員研修をまだ実施していない、もしくは役員研修に課題をお持ちの方を対象に、自社に合った役員研修を企画・運用するために必要な内容を、わかりやすく解説しています。この記事を順序だてて読んでいけば、皆様の会社でも必ず、成果につながる役員研修を実施できるようになります。
また第8章では、自社に合った役員研修の外部パートナーを見つけるためのチェックリストを用意しました。フォームへの入力なしでダウンロードいただけますので、ぜひご確認ください。
成功も悔しい思いもしてきた。
だからこそ分かる
成功のポイントをお伝えします。
1. そもそも役員研修とは
1-1 役員研修とは
1-1-1 役員研修とは、取締役・執行役員が自身の判断軸・人間的魅力を磨き込む研修の事
役員研修とは、自社の取締役・執行役員を対象に、既存の発想をアップデートし、自身の判断軸や人間的魅力を磨き込む研修の事です。具体的な手法としては、必要な知識のインプット、他者との対話・議論などがあります。
役員研修とは
自社の取締役・執行役員を対象に、
必要な知識のインプットや、
他者との対話や議論を行い、
既存の発想をアップデートし、自身の
判断軸や人間的魅力を磨き込む研修の事
1-1-2 役員研修の対象は、取締役と執行役員
”役員”には様々ありますが、”役員研修”というと取締役か執行役員のどちらかを対象としたものであることがほとんどです。
厳密に整理すると”役員”は、取締役・会計参与・監査役の3つです(会社法第329条)。この3つに執行役と会計監査人を加えると、”役員等”と定義されます(会社法第423条)。
グロービスのワンポイントレッスン
役員と一言で言っても様々
- 取締役 企業の最高意志決定機関として、企業の方針や戦略を決定する役割を担う
- 執行役 取締役会から与えられた方針や戦略を実行する役割を担う
- 会計参与 企業の財務に関する専門的なアドバイスを提供する
- 監査役 企業の財務報告や内部統制が適切に行われているかを監査する役割を担う
- 会計監査人 企業の財務報告が法令や会計基準に従っているかを、第三者的な立場から監査する
一般的に役員研修というと、取締役と執行役員を対象としたものであることがほとんどです。そのため本コラムにおいては、役員研修は取締役と執行役を対象にしたプログラムと定義し、解説を行います。
1-1-3 役員が判断軸・人間的魅力を磨き込むことが、企業の業績向上へつながる
役員が判断軸・人間的魅力を磨き込むことが、企業の業績向上へつながります。理由は2つです。
- 多様なステークホルダーを巻き込むことができるから
- 変化の激しい時代では、自社がどの方向に進むかの決断が非常に大事だから
それぞれについて見ていきましょう。
多様なステークホルダーを巻き込むことができるから
役員の役割は、企業の方針や戦略の決定・会社の運営や監督などを通じて、企業の成長を達成する事です。役割や責任範囲は一般社員よりも広く、その意思決定がリソース(ヒト・カネ)の配分に影響するため、良くも悪くも業績へ大きく影響します。
その影響範囲の広さから、役員が成果を挙げるには、多様なステークホルダー(社会、顧客、株主、従業員など)を巻き込む必要があります。その際に重要となるのが、自信の判断軸・人間的魅力の磨き込みです。
確固たる判断軸を持ち決断し続けるリーダー、人間的な魅力を持ち人を引き付けるリーダーであれば、より多様なステークホルダーを巻き込めるでしょう。その結果、役員として期待される成果、すなわち業績の向上を達成できるのです。
変化の激しい時代では、自社がどの方向に進むかの決断が非常に大事だから
現代の経営環境は将来の予測が困難な状態、VUCAと呼ばれており、役員が判断軸を磨き自社の方向性を決断することが、ますます重要になっています。
VUCAの時代において、経営者が向き合うべき論点は複雑になり、かつ加速度的に増加しています。例えば…
- どのようにリスクヘッジし、経営資源の配分を行うのか
- 人口動態が変化し国内需要がシュリンクしていく中で、海外事業を成功してくための勝ちパターンを構築できるのか
- 飛躍的なテクノロジー進化に対して、自社の構造変革やDXをどのように行うか など
このような経営上の重要な各論点について、確固たる意思決定の軸を持ち、適切な意思決定を下し、自社が進むべき大きな方向性を決断していくことが経営陣には必要です。そして、経営者が意思決定・決断する際に重要な要素が、意思決定の軸です。
参考コラム:VUCA時代における経営者(取締役・執行役員)への研修の必要性と企画のポイント
参考コラム:役員への研修が必要な背景
1-2 役員研修で扱う、代表的な5つの研修テーマ
役員研修の目的である”既存の発想をアップデートし、自身の判断軸や人間的魅力を磨き込む”ため、役員研修では様々なテーマが扱われます。ここでは代表的な5つに絞ってご紹介しましょう。
役員研修で扱う代表的な5つのテーマ
- 経営全般に関するリテラシー
- 自分がすべきことを知る
- 法務・企業統治
- 多様な学問(リベラルアーツ)
- 社会課題
1-2-1 経営全般に関するリテラシー
代表的な役員研修テーマ その1
経営戦略、マーケティング、ファイナンス、アカウンティング、リーダーシップなど、経営全般に関するリテラシーについて学ぶ
経営全般に関するリテラシーとは例えば、経営戦略、マーケティング、ファイナンス、アカウンティング、リーダーシップなどが該当します。
企業全体に責任を持つ役員は、自身の専門分野以外の知見も有する必要があります。例えばマーケティングを専門としてきた方であっても、役員に上がれば財務担当役員と対等に議論しなければなりません。その際、アカウンティングやファイナンスの知識・スキルがある事で、対等かつ生産的な議論を交わせます。一方でファイナンス分野の知識が不足していると、財務担当役員の方と対等な議論ができず、最適な経営判断を下せない恐れがあります。
特に苦手意識を持つ方が多い分野が、財務です。しかし企業価値の向上が命題である役員の皆様にとって、キャッシュフローや事業価値、事業ポートフォリオなど、基礎的なファイナンスの知識は必須です。
ファイナンス分野に限らず、役員の方の学び直しが必要であれば、積極的に補う必要があります。
グロービスのワンポイントレッスン
経営全般のリテラシーのインプットは、役員個人に委ねられることも
経営全般のリテラシーのインプットだけであれば、役員個人の自主的な学びに委ねる企業も多いようです。その際は、以下のような手法が良く用いられます。
- 経営大学院等のビジネススクールに、個人的に通う
- 本を読む
- 動画学習サービスを利用する
特に動画学習サービスは、学習時間や場所が自由なこともあり、多忙な役員でも取り入れやすい学習手法です。以下に主な動画学習サービスを整理しました(情報は2023年9月時点のものです)。
プログラム名 | GLOBIS 学び放題 | Udemy |
---|---|---|
特長 | MBAの体系化された学びをベースとし、大学院講師や教材研究機関が動画やアセスメントの開発を行っています 論理的思考などのコンセプチュアルスキルからすぐに使えるビジネススキル、DX・デジタル領域まで幅広く高品質な学びと測定を提供します | 多様な分野での教育が提供されており、動画の数も他社と比べて豊富です デジタル系やプログラミング系など、最先端のスキルに関する動画が、スピード感高く提供されています |
このような企業へおすすめ | 信頼性・品質が担保された学習内容を提供したい ビジネスからデジタルまで、体系的に整理された学習を提供したい | 特定の領域にこだわらず、幅広く多くのインプットをさせたい 最先端のスキルについてインプットさせたい |
支援実績 | トヨタ自動車、Yahooジャパン、日揮、味の素、ANA、リクルートなど 導入事例はこちらからご覧いただけます。 | サイバーエージェント、デンソー、住友商事、東北電力など 導入事例はこちらからご覧いただけます。 |
提供会社 | 株式会社グロービス | 米国法人Udemy,Inc. |
金額 | こちらのページからご確認ください | こちらのページからご確認ください |
URL | https://hodai.globis.co.jp/corporation/ | https://ufb.benesse.co.jp/ |
1-2-2 自身がすべきことを知る
代表的な役員研修テーマ その2
自身がすべきことを知り (=使命の自得)、
覚悟を決める
役員の方々に自身がすべきことを知っていただくことで、役員の方の覚悟は更に高まり、判断軸・人間的魅力の磨き込みにつながります。グロービスでは、”使命の自得”、”志の醸成”等とお伝えすることもあります。
多くの役員の方は、役員就任のタイミングで覚悟を決めます。使命を自得することで、その覚悟は更に強固なものとなります。その結果、困難・不利な状況であってもあきらめず(=判断軸の磨き込み)、乗り越えるための原動力(=人間的魅力の磨き込み)が得られるのです。
▶経営リーダーが志を定める重要性を詳しく解説:志を定め実行する経営リーダーを育成するためのポイント
1-2-3 法務・企業統治(コーポレートガバナンス)
代表的な役員研修テーマ その3
法務・コンプライアンスリスクを減らすため、
法務・企業統治を学ぶ
自身の経営判断に法務リスク・コンプライアンスリスクが含まれていないかを見極めるため、役員が学ぶ意義のある領域です。あるIT企業のCHROは「企業経営に携わる者にとっては、会社法は教科書だ」とおっしゃっていました。
役員の判断は、企業と株主に対して高度な法的責任が伴います。法務や企業統治について知らないままでは、ご自身の判断を理由に法的制裁を受ける可能性があります。その結果、企業価値の大きな棄損に繋がってしまうことは、過去の企業不祥事を見れば明らかです。
高度な判断をスピーディに行わなければならない役員にとって、法務・企業統治について事前に学んでおくことは必須です。
グロービスのワンポイントレッスン
法務・企業統治で学ぶ事
法務では、適切な会社運営をするために必要な法律知識を学びます。例えば会社法、労働法、契約法、税法などが該当します。
企業統治(コーポレートガバナンス)では、企業が健全な経営を為しているかをチェックするための仕組みや運営方法、監督体制などを整備するプロセスについて学びます
1-2-4 人文科学、社会科学、自然科学などの学問分野(リベラルアーツ)
代表的な役員研修テーマ その4
多角的な視点で考え、
より良い決断をする力を着けるため、
リベラルアーツを学ぶ
人文科学、社会科学、自然科学、芸術や数学までを含む広範な学術分野のことを、リベラルアーツと言います。リベラルアーツは、多角的な視点で考え、より良い決断をする力を着けるための全体的な教育とも言えます。
リベラルアーツの重要性は、様々な方が指摘しています。例えば、日本たばこ産業 専務執行役員の岩井睦雄氏は、リベラルアーツを”危機にあたって羅針盤となり、高次のバランス実現に役立つもの”(引用:RMS message、2014年8月号、P.14)と表現しています。
その他にもリベラルアーツを学ぶことで、以下のようなメリットを得られます。
- 人間的魅力の磨き込みにつながります。例えば多様な文化に触れることで、自身が知らない世界はまだまだあると気付き、謙虚な気持ちを得るきっかけとなります
- 畑違いの分野から考え方・イマジネーションをもらい、イノベーションにつながることがあります。例えば昆虫学から部下とのコミュニケーションのヒントを得た経営者のお話を、筆者は聞いたことがあります
- 豊かな判断軸を得られます。多様な分野について深く考え議論することで、今までご自身になかった新たな視点を得られます。
▶経営者教育でリベラルアーツを学ぶことの効用:経営者教育で必要性の高まっている「リベラルアーツ」の効用とは
1-2-5 社会課題
代表的な役員研修テーマ その5
社会課題に対して、
どのような考え・スタンスを持つのか、
事前に整理しておく
2023年現在における主な社会課題として、SDGs、気候変動、人権問題、DX、D&Iなどがあります。これらの課題を認識し、企業としてどのように対応するかを判断することも、役員の役割です。
社会課題に対しては、企業・役員ご自身としてどのような考え・スタンスを持つのか、事前に整理しておくことが重要です。社会課題への対応は様々なステークホルダーの思惑が絡み、その意思決定も決定後の推進も複雑・困難になりやすいからです。そのため、事前インプットや役員全員での議論を通じて、先に考えておく必要のある領域です。
VUCAと呼ばれる現代において、企業が対応すべき社会課題のテーマ、領域は格段に広がり、難易度も過去に比べて上がっています。これらの実践は、一般社員層の権限では難しいでしょう。役員が旗を振り、全社一丸となって取り組む必要があるのです。
グロービスのワンポイントレッスン
社会課題への対応で得られるメリット
一方で読者の方の中には「企業が社会課題へ対応する必要があるのか?」「売上や利益を上げないと株主への説明ができないのでは?」といった疑問を持たれる方もいるかもしれません。しかし社会課題へ対応する事で、以下のようなメリットを享受できます。
製品・サービスにおけるメリット
- 製品・サービスの同質化が進みやすい環境下でもお客様からの支持を得やすくなり、売上・利益につながる
- 社会課題と紐づいた新たなビジネスチャンスを見つけられる可能性がある
財務におけるメリット
- ESG投資に関心の高い株主から評価され、企業価値向上につながる
人的資本におけるメリット
- 従業員が誇りをもって働く事ができ、モチベーションや生産性向上につながる
- 社会課題への対応を通じて、不確実性に対応するための柔軟な組織能力が育まれる
1-3 なぜ役員研修を実施する企業は少ないのか
役員研修を実施している企業は2016年時点で53.9%と、まだまだ多くない状況です(参考:経営法友会リポート、2016年2月、P.4)。その理由として、主に4つ考えられます。
役員研修が実施されない4つの理由
- 役員が忙しいから
- 能力開発の機会が他にあるから
- 学び直しの必要性を感じていないから
- 人事担当者の立場が役員より下だから
1-3-1 役員が忙しいから
役員は多くのタスクと責任を有している事が多く、多忙であり、研修に割く時間を作れない場合があります。
1-3-2 能力開発の機会が他にあるから
役員は普段の業務がそもそもチャレンジングであり、OJTだけでも十分成長できるとも考えられます。極端な話、他社の役員と会食やゴルフなどで議論をする事も、トレーニングの1つと言えるのです。
1-3-3 役員が学び直しの必要性を感じていないから
役員はそもそも、業務で活躍し実績を上げた結果として、役員になっています。自身の業務遂行能力に対して自信があるため、「新しいスキルや知識の習得は必要ない」「今更学ぶ事などない」と考えてしまう方もいるようです。
1-3-4 企画・提案する人事担当者の立場が、役員よりも下だから
研修を企画・提案する人事担当者が役員よりも立場が下であることも、役員研修を実施しづらい理由の一つです。立場が下の人から上の人へ、「あなたにはこれが足りないから、学びましょう」とは言いづらいものです。
参考コラム
上記の理由を見て、「うちの会社もそうなんだよな」と思われた方、あきらめないでください。役員研修には、実施することによるメリットが様々あります。実施できない理由とメリットを比較し、メリットが上回るようであれば、役員研修を実施すべきです。
役員研修の実施を
あきらめないでください!
次節では様々な役員研修を実施してきたグロービスが考える、役員研修を実施するメリットを丁寧に述べていきます。役員研修を実施したいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
2. 役員研修を行う5つのメリット・意義
先ほども述べた通り、役員研修を行う事は企業の成長につながります。なぜつながるかというと、4つのメリット(アセスメント:研修中の受講者評価、を併用すれば5つ)が得られるからです。
役員研修の5つのメリット・意義
- 法務リスク・ガバナンスリスクの低減
- 専門知識のインプット
- 役員の更なる成長促進
- 役員同士の連携強化
- (アセスメント併用により)見極めも可能
それぞれを詳しく見ていきましょう。
2-1 法務やガバナンスなど大きなリスクにつながりやすい判断を、事前に学ぶ事で回避できる
法務やガバナンスの逸脱は、企業価値の大きな棄損につながります。そのため、必ず避けるべき事象です。
昨今、CSRやコーポレートガバナンスへの注目、SNSによる個人の発信の一般化などにより、これらのリスクはますます高まっています。SNSによる内部密告を通じて企業が炎上する事案は、今や珍しい事ではありません。このような時に、役員が「知らなかった」とならないよう、事前に対策を講じておく必要があります。
法務やガバナンスは、役員研修による座学を通じて、事前に学ぶ事が可能です。社内で対策を講じるためにも、役員が学ぶべき領域と言えます。
2-2 専門外の知識を網羅的にインプットできる
OJTだけでは、役員に必要な知識の網羅的な獲得は困難です。なぜならOJTは、自身の専門領域以外に触れる機会が少ないからです。
例えば人事担当の役員であれば、OJTで扱う領域は人事領域です。マーケティング、ファイナンス、法務、ITなどの知識を学ぶには、役員が時間を確保し、情報収集に動かざるをえません。しかし多忙な役員であるほど、そのような行動は起こしづらいものです。
役員研修によって、役員は自身の専門外の知識を網羅的にインプットできます。また一度インプットしておくことでその領域へのアンテナが高まり、業務で扱う際のハードルが下がる、という副次効果も期待できます。
▶インタビュー全文はこちらから:役員層はエグゼクティブ・スクールへ通学。上位層からの組織変革に本気で取り組む
2-3 役員自身が足りていない領域を知り、自身の伸びしろを実感できる
外部環境変化が激しい現代において企業を存続させるには、役員の継続的な学習・成長が必須です。一方で役員は成功を積んできた経験があり、学び直すことに抵抗感を持つ方も少なくないようです。
そのような状況において、役員研修は解決策の一つとなります。講師や参加者との対話を通じ、自身が足りない点を自覚してもらうことができるからです。特に内省型研修と呼ばれるような、自身に深く何度も問いかけるような研修プログラムによって、自身の足らざる点に気づいてもらうことができます。
完ぺきなリーダーはいません。どのような方であっても、成長は必ずできます。役員研修によって役員の方の意識を変え、更なる高みを目指してもらうことは十分に可能です。
グロービスのワンポイントレッスン
内省型研修とは
内省型研修とは自分自身に目を向け、自身の気持ちに向き合い続け見つめ直す研修のことです。
自身を深く見つめ直すことで、自身が理解している領域の限界に気付くとともに、理解していない領域の存在、すなわち自身の足らざるを知ることができます。
ご参考までに、各社が提供している内省型研修を3つ紹介します(情報は2023年9月時点のもの です)。
プログラム名 | 知命社中 | エグゼクティブ・マネジメントコース | 経営幹部育成研修 |
---|---|---|---|
概要 | 知と軸を磨き、使命を自得する転機の場。各界の第一人者が投げかけるエッジの効いたメッセージ、参加役員同士の率直かつ忌たんの無い高質な議論などを通じ、リーダーシップを磨き込むことを目指します。 | 経営者に必要なぶれない”決断軸”と”経営観”を醸成し、大局的な事業観を持ち、持続的に自社を成長させることのできる次代の基幹人材を育成することを目指します。 | 9か月~12か月と長期間にわたり、定期的に実践→測定→内省のサイクルを回すことで、参加者の継続的な行動変革を促します。 |
提供会社 | 株式会社グロービス | 一般社団法人日本能率協会 | 株式会社リンクアンドモチベーション |
日程 | 7か月、全18日 | 9か月、全24日 | 9か月~12か月 |
テーマ | 経営観・軸の重要性理解、自らの構想を研ぐ、など | 自分軸の探求、社会課題を経営に取り込む、など | お問合せください |
導入企業 | デンソー、富士通、TBS、クボタなど こちらのページからご覧ください | お問合せください | お問合せください |
金額 (税込み) | お問合せください | こちらのページからご確認ください | お問合せください |
URL | 知命社中 | エグゼクティブ・マネジメントコース | 経営幹部育成研修 |
2-4 異なる背景を持つ役員同士の連携と協力が促進され、全社一丸の経営が実現できる
役員研修を通じて役員同士のコミュニケーションを図ることで、役員会における議論の活性化や普段の業務での横連携の促進などの効果が期待できます。
特に昨今は、社外から登用された役員と社内から昇進した役員の連携強化ニーズが高まっています。また社外・社内に関わらず、役員は異なる背景を持っていることが多いため、役員会議などでの議論が活性化しづらいようです。グロービスでも、役員間の議論の活性化について相談いただき、実際に役員合宿や経営会議のファシリテーションを依頼いただくことが増えています。
以下の効果を得られるように役員研修の設計を工夫することで、役員層がチームとして一丸となることができます。
- 特定のテーマで議論を交わすことで、そのテーマについて役員間で統一した見解を持つ
- チームビルディングの時間を設けるなど、経営陣が一枚岩となる関係性を作る
- 研修後の懇親会など、業務外の時間で交流を促進できる
▶インタビュー全文はこちらから:DXカンパニーへの転換を加速させた、役員合宿の取り組みと効用
2-5 (役員アセスメントを併用する場合)育成と見極めを同時に行える
オプション的な位置づけではありますが、役員研修に役員アセスメントを追加することで、育成と見極めが同時に行える点も、メリットとして解説します。
役員アセスメントとは、役員が直面する専門的な課題やスキルに焦点を当て、役員のスキル・行動特性・リーダーシップスタイルなどを評価する手法・プロセスのことを指します。役員アセスメントの主な目的は2つ。育成と見極めです。
- 育成:アセスメントにより得られた評価結果を研修にフィードバックし、さらなる成長とスキル向上を狙う
- 見極め:受講者の昇格判断の一つとして用いる。例えばある執行役員を取締役に昇格させるか否か、など
アセスメントというとペーパーテストを思い浮かべる方もいるかもしれません。しかし役員アセスメントでは、研修中の行動や発言が評価の対象です。専門家やコンサルタントが研修の目的に合わせて評価基準を設計し、その基準に基づいた行動や発言が実行されているかを評価します。
育成観点とは異なりますが、人的資本経営における役員の保有スキルの可視化(開示)に対応できる点も、役員アセスメントのメリットと言えるでしょう。日本政府が示した人的資本の開示項目の1つに、人材のスキル/経験があります。役員のスキルを可視化するために、役員アセスメントを利用することも十分に可能です。
役員アセスメントは役員研修に必須ではありませんが、目的に応じて組み込むことで、育成の効果を高めつつ、見極めを同時に行うことができます。
3. 役員研修の種類(学び方)
役員研修には大きく分けて、企業内研修、スクール型研修、役員合宿の3種類があります。また研修という枠組みには入りませんが、エグゼクティブコーチングも役員の学習手段としてよく選ばれます。それぞれにメリット・デメリットや向いているケースがあるため、貴社の状況に合わせて適切に使い分ける必要があります。
企業内研修 | スクール型研修 | 役員合宿 | エグゼクティブコーチング | |
---|---|---|---|---|
概要 | ✓ 自社の役員を複数名集め、学ぶプログラム ✓ 経営課題に紐づいたテーマで開催し、そのテーマに関してインプットや議論を行う ✓ 講演会や読書会を併用するケースが多い | ✓ 経営大学院や外部の研修会社が開催しているプログラムへ参加し、他社の人材と学ぶプログラム ✓ 他社人材との交流により、様々な視点や視座に触れ、自己を見直すことが主な目的 | ✓ 同じ企業の役員と数日を掛けて議論する場の事 ✓ ファシリテーターをプロに依頼することが多い ✓ 役員間の認識すり合わせ・コミュニケーション推進や、経営の意思決定が目的となることも多い | ✓ 役員個人の実務上の課題に合わせ、コーチング役が役員と1対1で対話し、課題解決・自走まで支援する |
メリット | ✓ 自社の経営課題に合わせたテーマ設定が可能 ✓ 短時間での実施も可能 ✓ オンライン聴講により、場所の制約を受けない | ✓ 役員の就任時期に合わせて、個別に派遣可能 ✓ 業界・職種・年齢・性別などが異なる他社人材との議論や交流が可能 ✓ 一人から受講可能 | ✓ 自社の経営課題に合わせたプログラム設計が可能 ✓ 役員同士の交流や共通認識の醸成が可能 | ✓ 役員個人に合わせた内容をカスタマイズして提供できるため、判断軸や行動の変容を促しやすい |
デメリット | ✓ プログラムに対する理解や解釈へのバラつきが生じやすい | ✓ テーマ、開催時期、時間帯、会場場所、講師など、自社でコントロールできない ✓ 他社受講者の人数、属性などの詳細は、参加するまでわからない | ✓ 役員一人ひとりの個別性に合わせた内容にはできない ✓ 多忙な役員の時間調整が困難 | ✓ 大勢に対しての実施は困難 ✓ 効果が出るまでに時間がかかりやすい |
向いているケース | ✓ 経営課題として取り組むべきテーマが明確にあり、そのテーマについての役員層の知見を揃えたい | ✓ 他社人材との議論により、自身の足らざる部分を自覚させたい ✓ 業界や自社・自分に特有の思考の癖について、客観視の機会を持ちたい | ✓ あるテーマについて役員内で統一した見解をもって推進させたい ✓ 役員会で沈黙する役員が多く、議論を活性化させたい | ✓ 対象の抱える個別具体的な課題を解決させたい |
3-1 企業内研修
企業内研修では、特定のテーマについてのインプットを行い、そのうえで役員同士で議論を行います。インプットの際には、有識者からの講演もしくは読書会を併用することが多いです。
最終的に、役員がそのテーマを自分事として捉え、自分の言葉で語れるようにすることが目的です。テーマとしては例えば、以下のような項目が挙げられます。
普遍的なスキル
- 会社法
- コンプライアンス
- 経営戦略
- 財務・会計
- リーダーシップ
普遍的なマインド
- 自分の人生の目的(志)
- 役員としての覚悟・責任
- 役員として果たすべき役割
潮流
- 社会課題への対応(SDGs、気候変動、人権問題など)
- 多様なステークホルダーとの対話
- ROIC経営
- 人的資本経営
- コーポレートガバナンス
- DX
グロービスのワンポイントレッスン
話を聞くだけでは、判断軸は出来ない。その後の議論が大事
グロービスにいただく相談に「講演会を開きたい」「インプットだけで構わないので議論は不要」というものがあります。ですがグロービスは、インプットだけの場はおすすめしておらず、サービス提供もしておりません。インプットだけでは、自分事にすることが困難だからです。
講演会や読書会で用いるテーマは、役員の方が普段の業務では関わりづらい内容であることが多いです。そのため、話を聞いただけでは自身の業務との関連を見つけられず、「良い話を聞けたなぁ」で終わってしまうことも往々にしてあります。
インプットした後は、必ずアウトプットの時間を作るようにしましょう。例えば参加者同士で「このテーマは自社の活動とどう関連付けられるか」「自組織でこれらを推進すると、どこで失敗しそうか」などを語り合うことで、理解が深まるとともに、自分の言葉で語れるようになるのです。
以下に掲載したブリヂストン様の記事は、部長研修の事例ではあるものの、読書会をインプットだけで終わらせずに問いを重ねて自分事化へ引き寄せた好事例です。ご参考になる部分が多いので、ぜひご覧ください。
▶インタビュー全文はこちらから:信念・使命を醸成し、自らの力で事を成し遂げるリーダーの育成へ
3-2 スクール型研修
スクール型研修は、経営大学院や研修会社が主催するプログラムへ参加し、他社の人材と学ぶ場のことです。
メリットは大きく2つあります。1つ目は他社人材との交流、2つ目は一人から受講可能であることです。他社人材との交流を通じて、自社の役員は刺激を受け、自身の足らざる点に気付く事ができます。また一人から受講可能な点は、選任数が少ない役員層に適した形態です。
▶インタビュー全文はこちらから:役員層はエグゼクティブ・スクールへ通学。上位層からの組織変革に本気で取り組む
主な役員向けのスクール型研修
主な役員向けのスクール型研修を4つピックアップしました(情報は2023年9月時点のものです)。
プログラム名 | エグゼクティブ・マネジメント・プログラム | 役員研修~企業経営と役員の仕事(2日間) | 知命社中 | 新任執行役員 セミナー |
---|---|---|---|---|
概要 | ステップ1:経営者の視座・視点を獲得する、ステップ2:意思決定力・組織マネジメント力を養う、ステップ3:志や責任感の涵養を図る、を通じて、企業の持続的な成長をリードするトップビジネスリーダーに必要なスキルとマインドを学びます。 | 役員の仕事を1. 業績拡大、2. 新しいこと・変革、3. 組織デザイン、4. リスク管理、5. 「経営の代行者」、の5つと定義し、収益確保のための企業経営のポイントと「投資対効果」の判断軸を重点的に強化します。 | 知と軸を磨き、使命を自得する転機の場。各界の第一人者が投げかけるエッジの効いたメッセージ、参加役員同士の率直かつ忌たんの無い高質な議論などを通じ、リーダーシップを磨き込むことを目指します。 | 事業の執行・結果責任を担う執行役員の責務を再認識すると共に、厳しい経営環境に即した戦略構築力・経営執行・リスクマネジメントのあり方を考察します。 |
提供会社 | 株式会社グロービス | 株式会社インソース | 株式会社グロービス | 一般社団法人日本能率協会 |
日数 | 3か月間 | 2日間 | 7か月、全18日 | 3日間 |
金額 (税込み) | こちらのページからご確認ください | こちらのページからご確認ください | お問合せください | こちらのページからご確認ください |
対象層 | 部長職以上 | 役員 | 役員 | 新任執行役員 |
URL | https://gce.globis.co.jp/service/training/ges/program/emp/ | https://www.insource.co.jp/bup/bup_corporate_management.html | http://chimeishachu.globis.co.jp/ | https://jma-top.com/seminar_program/jts2023_02/ |
3-3 役員合宿(経営合宿)
役員合宿とは、新任・既任、外部・プロパーを問わず、同じ企業の役員が同じ会場(Zoomなどオンラインツールも含む)に集まり、1日~複数日掛けて経営課題について議論し、意思決定をする場のことを指します。主な目的は、役員層の共通認識の構築、チームワークの醸成、経営の意思決定とコミット、などです。
役員合宿の主な特徴は、合宿中に意思決定を行い、合宿後はすぐに行動する、という点です。あるテーマについて議論し、役員として統一した見解を持ったうえで経営判断を下し、合宿終了後からそれぞれの現場に落とし込んで行動していく、というスピード感ある場になります。
役員合宿では、自社の意図を反映させた設計が可能です。例えば緊急性の高い経営課題に焦点を合わせ、どのような順番でどの程度インプット・アウトプットを行うのか、最終的なゴールはどこにするのか、などを決めることができます。
また合宿という特性上、プログラム以外の時間の設計も重要です。例えば懇親会を純粋な懇親の場にすることも、議論の延長線上の場にすることも可能です。企画の自由度が高い点も、役員研修の特徴と言えるでしょう。
▶インタビュー全文はこちらから:DXカンパニーへの転換を加速させた、役員合宿の取り組みと効用
グロービスのワンポイントレッスン
役員合宿を外部パートナーへ発注すべき理由と、主な提供会社
役員合宿を行う場合、以下の理由から、ファシリテーターは外部パートナーへ発注すべきです。
- ファシリテーションの難易度が高いため。役員合宿の議論テーマは抽象的な社会課題であることも多く、そのような難しいテーマを、短い期間で個社の意思決定まで落とし込まねばならない
- 幅広い知識が必要になるため。多様なバックグラウンドを持つ役員同士の議論をまとめるには、社内外の幅広い知識を網羅的に習得していることが必要となる
- 第三者によるファシリテーションが必要なため。参加者である役員の部下がファシリテートをすると、議論に偏りが生じる恐れがある
以下に、役員合宿を提供している主な企業を、3社ピックアップしました(情報は2023年9月時点のものです)。
プログラム名 | テーラーメイド型役員合宿 | 役員合宿ファシリテーション | 経営幹部戦略合宿 |
---|---|---|---|
概要 | クライアントが抱える課題に合わせてテーラーメイドで合宿プログラムを設計し、限られた時間の中で最大の効果を引き出す設計・ファシリテーションを提供する | 状況認識のすり合わせや問題整理にとどまらず、トップダウン依存、意見の食い違い、堂々巡り、意思決定の根本要因となる感情対立・信念対立の超越による一枚岩化と合意創発を可能にする | 変革に関わる経営幹部がオフサイトで合宿を行い、徹底的に議論し、最適な課題設定、解決方法を導くための研修を提供する |
提供会社 | 株式会社グロービス | オーセンティックワークス株式会社 | 株式会社ブレインパートナー |
日時 | 扱うテーマや難易度によって、テーラーメイドで対応 | 半日~半年 ※扱うテーマや難易度によって実施期間は柔軟に変更 | 2日間 |
テーマ | 経営課題に合わせて、テーラーメイドで対応 | ビジョン策定/役員間の関係性構築/その他意思決定事項 | 経営ビジョンの共有、経営幹部の主体的課題解決。事業ビジョン、事業戦略の策定など |
金額 | お問合せください | お問合せください | お問合せください |
URL | テーラーメイド型役員合宿 | 役員合宿ファシリテーション | 経営幹部戦略合宿 |
3-4 エグゼクティブコーチング
エグゼクティブコーチングとは、経営層を対象としたコーチングのことです。専門のトレーニングを受けたコーチが定期的に1対1で対話を行い、役員が抱えている個別具体的な課題を解決するための支援を行います。
役員や企業の特性を理解したうえでの対話を繰り返すことで、役員の内面・深層にコーチが深く踏み込むため、他の研修と比べて認識と行動変容を促しやすくなります。
テーマとしては、役員個人が実際の業務で悩んでいることを取り扱います。具体的には会社経営のかじ取りに関することから、組織に関すること、部下に関すること、ステークホルダーに関することなど様々です。
4. 自社に合った役員研修を企画・実施するためのプロセス
役員研修を企画・実施するためのプロセスを、具体的に説明します。ここでは下の図のように4つのプロセスに分けて説明します。
役員研修を企画するステップ
- STEP1: 経営戦略や役員への期待役割を基に、あるべき役員像を明確にする
- STEP2: あるべき役員像と役員の現状を比較し、その差分(=人材開発課題)を特定する
- STEP3: 役員研修のコンセプト・グランドデザインをまとめる
- STEP4: コンセプト・グランドデザインに基づいた、具体的なプログラム案を設計する
では詳細を見ていきましょう。
4-1. 経営戦略や役員への期待役割を基に、あるべき役員像を明確にする
まずは、役員像の理想の姿を明確にすることから始めましょう。
役員研修を企画するステップ
そのために踏むべきステップは4つです。
4-1-1 自社にとって重要な外部環境の変化を特定する
まずは外部環境の変化を特定しましょう。以下の観点で整理すると、自社にとって重要な環境変化か否かを整理することができます。
1. PESTELのフレームワークを使う
PESTELとは、政治(Politics)、経済(Economy)社会(Society)、技術(Technology)、環境(Economy)、法律(Legal)のそれぞれの頭文字を取ったものです。外部環境を整理する際に、広く使われるフレームワークです。
2. 自社のビジネスにとっての影響が大きいか小さいかで、整理をする
世間を騒がせている外部環境の変化も、自社のビジネスに与える影響が小さければ、考慮しないで良いかもしれません。例えば紛争などで特定の地域の地政学リスクが高まっているとしても、自社のビジネスや取引先・顧客に与える影響が小さいのであれば、優先順位を下げるべきです。
3. 時間軸(すぐ起こるのか、中長期で起こるのか)を意識して整理する
PESTELで整理した環境変化は、すぐにビジネスに影響を及ぼすものもあれば、5~10年後など中長期的に影響が起こるものもあります。時間軸を考慮して、こちらも優先順位を設定しましょう。
4-1-2 外部環境変化を踏まえ、自社の戦略がどのように変化するのかを特定する
外部環境変化の特定ができたら、次のステップでは自社の戦略の変化を特定します。
外部環境の変化によって、自社の経営戦略はどのように変わるのでしょうか。また、マーケティング戦略、財務戦略、IT戦略はいかがでしょうか。
これらを理解できていないと、次のステップである自社に必要な組織・人材の変化を適切に整理することはできません。人事部だけで検討するのは大変なので、担当部署に確認するなど適切に社内連携をし、情報を集めましょう。
4-1-3 自社の戦略の変化を踏まえ、自社の役員のあるべき姿を定義する
自社の戦略の変化を踏まえ、役員のあるべき姿を定義します。その際のポイントとして、役員に期待する役割を明確にしておくことが重要です。
自社は役員に、どのような能力や行動を期待するのか。その要件を言語化し、明確にしておくことが重要です。例えば以下のように、他の役職との違いを明確にしておくと良いでしょう。
役割が明確になっていないと、役員にどのような能力を備えて欲しいかが明確になりません。そのため、以下のようなことが生じ、必要な研修を実施できないかもしれません。
- 思い付きや流行で、研修内容を決めてしまう
- 研修会社からの提案を鵜呑みにし、そのまま実行してしまう
- 研修内容が一貫しておらず、参加者である役員が不満を持ってしまう
グロービスのワンポイントレッスン
全社戦略と役員への期待役割で、整合性が取れなかったケース
上記の通り、役員のあるべき姿は、全社戦略との整合性を取りつつ、関係者と合意を取りながら固めていくことが極めて重要です。すでに役員会などで言語化されている場合もあるかもしれませんので、確認しておきましょう。
例えば全社戦略として「グローバルへの進出」を掲げているのであれば、役員への期待役割に「グローバル進出に向けたスキルと想いがある」といった項目が必要になります。この整合性が無いと、後々で社長や役員から、「これは違う」と突き返されてしまいます。
筆者は過去、あるメーカーのCHRO(最高人事責任者)からこのような話を聞いたことがあります。
ーーSDGsについて議論する役員研修を企画したのだが、最後に社長からどんでん返しを食らってしまった
ーー企画は順調に進んでいて、プログラムも参加者も決まっていた。けれど、最後の社長決裁で「これで経営がどう良くなるの?」と言われてしまった。その場で説明はしたものの、結局は白紙に・・・
ーー周りに他の役員はいたのだが、助け舟を出してもらえなかったのも痛かった
ーー当時を振り返ると、社長も周囲の役員も巻き込むべきだった。自社の経営戦略・経営課題に紐づけて、この研修の重要性を事前に説明できていれば、また違った結果になったはず・・・
4-2 あるべき役員像と役員の現状を比較し、その差分(=人材開発課題)を特定する
続いてのステップでは、あるべき役員像と現在の役員像を比較し、その差分(=人材開発課題)の特定を行います。
役員研修を企画するステップ
4-2-1 役員の現状を分析・把握する
このステップで最も難しいのが、役員の現状分析・把握です。人事部とはいえ、役員の普段の行動や思考プロセス・リーダーシップ像などを全て把握することは困難です。過去の職場診断や研修結果など、手元にある人事情報だけでは、限界があります。
そこでおすすめするのが、足で調べることです。特に重要なのが、各事業部から情報を集めること。例えば以下のような方法が考えられます。
- 現場のキーパーソンや役員の部下から、役員の仕事ぶりをヒアリングする
- お客様の声や事業部内の職場アンケート、財務情報などから事業部の状況を把握し、役員の仕事ぶりを推測する
これら定量・定性の多面的な情報を通じて、各役員の現状を分析・把握する必要があります。
4-2-2 あるべき姿と現状を比較し、差分(=人材開発課題)を特定する。数が多い場合は優先順位をつける
あるべき姿と現状との差分が、現在の役員の人材開発課題です。この課題を解決するために、役員研修を企画する必要があります。
もし差分の数が多くなってしまった場合は、優先順位を付けましょう。例えば以下のような観点が考えられます。
- 緊急度の高さ:PESTELの時間軸分析も踏まえ、緊急度が高いものを選びましょう
- 重要度の高さ:こちらもPESTELの自社へのビジネスへの影響度も踏まえて選びましょう
4-3 役員研修のコンセプト・グランドデザインをまとめる
課題を特定し、優先順位をつけることができたら、研修のコンセプト・グランドデザインの整理に入りましょう。
役員研修を企画するステップ
具体的には、以下のようなことを検討します。
- 研修の目的は何か
- 研修に期待するゴールは何か
- どの役員に研修に参加してもらうか
- 人数はどの程度になりそうか
グロービスのワンポイントアドバイス
研修のゴール設定は、ステップで考える
このプロセスにおいて一番困難な項目が、研修に期待するゴール設定です。研修のゴール設定は、あるべき役員像にどのくらい近づけるのかによって変わります。
下の図は、研修のゴールの位置づけを示したものです。
研修のゴールは、あるべき役員像の手前に設定する
この図で大切なことは、研修のゴール≠あるべき人材像の達成、という点です。あるべき人材像の達成は研修を含む複数の施策で達成するものと考え、研修のゴールはあるべき人材像の手前に設定します。
4-4 コンセプト・グランドデザインに基づいた、具体的なプログラム案を設計する
次のステップでは、コンセプトやグランドデザインに基づいた、具体的なプログラム案の設計を行います。
役員研修を企画するステップ
例えば、以下の項目について検討します。
- 研修手法(学び方)は何にするか
- 研修テーマは何にするか
- 内製で行うのか、外部企業へ依頼するのか
- 講師は誰にするか
- 日程は何日にするのか
- リアルで行うかオンラインで行うか
- リアルの場合は会場をどこにするか
- 研修後の振り返りはどうするか
グロービスのワンポイントアドバイス
役員研修の振り返り方は、企画の段階で決めておく
役員研修をどのように振り返るかは、事前に検討しておく必要があります。どのような項目で評価を行うのかを決めておかないと、研修中も漠然と過ごしてしまい、研修終了後に何を振り返ればいいかが分からなくなってしまいます。
例えば下の図のように、狙いに対する評価項目を複数設定し、それぞれに対して成果と課題・反省点をまとめる等が有効です。
研修振り返りの評価項目の一例
▶参考コラム:役員育成/役員研修の選抜方法
5. 役員研修を成功させる8つのポイント
この章では、役員研修を失敗せずに成功させるためのポイントを見ていきましょう。ポイントは8つあります。
- 伸ばしたい項目を明確にする
- 制約を最初から意識しすぎない
- 外部パートナーを適当に決めない
- 社長の鶴の一声に任せ過ぎない
- 外部パートナーへ丸投げしすぎない
- 受講者へ丁寧に説明する
- リスクフリーの場づくりを行う
- 研修終了後の行動まで決める
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
5-1 企画の時のポイント
5-1-1 役員研修で伸ばしたい項目を明確にする
役員研修を成功させるポイント その1
具体的なプログラム検討の前に
役員研修で伸ばしたい項目を決める
研修で役員に何を学んでほしいのか、何を伸ばしてほしいのかを、できる限り明確にしておくことが一つ目のポイントです。例えば下の図は、グロービスがクライアントと議論する際に用いる図の1つです。
役員の方に何を変えてほしいのか(会社or個人)、何のテーマを取り扱うか(戦略・ビジョンor価値観・リーダーシップ)で整理をします。
研修で、役員の方のに何を伸ばしてほしいのか?
研修で伸ばしたい項目が明確になれば、具体的にどのようなプログラムをすべきかも自然と定まってきます。
これらができていないと、
- 思い付きで研修内容を決めてしまう
- 研修会社からの提案を鵜呑みにし、そのまま実行してしまう
- 研修内容が一貫しておらず、参加者である役員が不満を持ってしまう
が生じ、自社で本当に行うべき研修が実施できなくなってしまいます。
5-1-2 研修予算や時間などの制約を、最初から意識しすぎない
役員研修を成功させるポイント その2
最初からコストや時間を意識しすぎず
目的の達成に焦点を当てる
研修企画の際に皆様が一番頭を悩ませるのは、研修予算や時間などの制約でしょう。「年間の予算がXXX万円だから、これ以上は掛けられない」「各拠点にいる役員を一同に集めるとすると、できる日程は限られてくる」など、非常に重要な論点です。しかし企画段階から予算等を過剰に意識しすぎると、せっかくの研修も成果が伴わなくなるかもしれません。
特に役員研修においては、機会損失コストに注目することが重要です。役員研修における機会損失コストは、役員が経営活動に使う時間を削るコストのことです。このコストは経営活動において非常に大きく、研修にかかるコストはそれに比べて微々たるものです。
機会損失コストを低減させるためにも、役員研修の目的に照らして、研修の成果を最大化させることが大切です。先ほど言語化した期待役割や学んでほしいことを踏まえ、理想と現実の丁度良い所を選択し、適切な研修を企画することが求められます。
そのため、研修の目的達成に意識を向けることが、特に役員研修では大切なポイントとなります。
グロービスのワンポイントアドバイス
制約を意識しすぎてしまい、100点の成果を提供できなかった研修事例
グロービスが提供した研修事例の中から、お客様から最大の評価を得られなかった事例をご紹介します。
とある機械メーカー様へのご支援事例です。執行役員を対象とした研修を企画・実施したのですが、時間や予算の関係上、研修は1日にせざるをえませんでした。
特に困難だったのが、時間が短かったこと。そのため参加者である役員の方に対して、研修の共通見解(例:社長が何を目指しているのか、この研修に何を期待しているのか)を揃えきることができませんでした。
結果として参加者の皆様に、この研修の目的や必要性を訴求しきれず、研修成果を最大化できなかった、という悔しい経験があります。
特に企画段階では、理想ベースで考える事も大事だとグロービスでは考え、クライアントの皆様にもご提案するようにしています。
5-2 外部パートナー選定のポイント
5-2-1 値段・開催地・日程・会社のネームバリューなどわかりやすい項目だけで選ばない
役員研修を成功させるポイント その3
外部研修パートナーを選ぶ際に、
分かりやすい項目に飛びつかず、
網羅的に検討したうえで判断する
皆様が研修パートナーを選ぶ際、どのような項目をチェックしますか?おそらく多くの方が、値段・開催地・日程・会社のネームバリューなどをチェックしているのではないでしょうか。
たしかにこれらの項目は比較しやすく、社内への説明もしやすいでしょう。ですが、役員育成は自社の命運を左右する重要な施策です。ぜひ、様々な視点から選ばれることをおすすめします。
第8章に、外部パートナー選定のチェックリストを作成しました。自社にとって最適なパートナーを選定できるように、ぜひ、参考にしてください。
5-2-2 社長の鶴の一声に任せすぎない
役員研修を成功させるポイント その4
社長の鶴の一声に任せ過ぎず、
人事が主体的に、学びの再現性を作る
グロービスのクライアントから良く聞く失敗事例の一つが、「社長の知り合いのコンサルタントに任せてしまう」です。このような社長の鶴の一声があったとしても、人事の皆さまにはぜひ、声を上げるべき点は上げていただきたいと、グロービスでは考えています。
もちろん、自社の外部環境に人一倍目を配り、役員の皆様の長所・短所まで把握している社長の意見は非常に重要です。しかし社長の考えに、人材育成のプロである人事の皆様の意見を加えた方が、より良い施策になることは間違いありません。
特に学びに再現性を持たせることは、人事の皆様の大切な業務の一つです。課題や目的から丁寧に言語化し、プログラムを設計する事で、役員の入れ替わりがあったとしても、学びに再現性を持たせることが可能です。
第5章で説明した、役員研修を企画する際のプロセスが参考になるはずですので、ぜひご覧ください。
5-2-3 外部パートナーへ丸投げしすぎない
役員研修を成功させるポイント その5
外部パートナーへ丸投げしすぎず、
人事が果たすべき役割を遂行する
役員研修に限らず多くの研修でありがちなのが、研修へ派遣したら満足してしまうことです。これは特に、スクール型研修にありがちな事象で、派遣すれば十分な学びを得て帰ってくるだろう、と安心してしまうのでしょう。
しかし、全てを外部パートナーに任せていては、役員研修の効果を最大限享受することはできません。例えば以下の事に留意しながら、研修を進めていくべきです。
派遣前
派遣の目的や期待していることを、役員に明確に伝えましょう。例えば以下のような内容を伝えられると効果的です。
- なぜこの研修に参加するのか?何を学ぶのか?
- 自分にとってどのような意味・メリットがあるのか?
- 学びたいと思える講師か?
- どのように学ぶのか?楽しく学べそうか?
派遣中
役員が集中して学べているか、気を付けましょう。特に業務が多忙になると、研修へ積極的に参加する意欲や、物理的な時間が足りなくなってしまう方もいらっしゃいます。そのような場合に、人事からどのようなサポートができるかを考えることが重要です。
派遣後
役員から研修の感想や学んだ内容をヒアリングしましょう。次回の施策の振り返りに活用できます。
以下のコラムは役員研修の話ではありませんが、研修を進める際に気を付けるべきことが整理されています。役員研修にも通ずる部分があるので、より理解を深めたい方はぜひ読んでみてください。
▶研修を企画する際に気を付けるべきポイント:
階層別研修の効果を高める3つのポイント
他流試合型研修を人材育成体系に取り入れるポイント
5-3 研修準備・実施の時のポイント
5-3-1 受講者に役員研修の目的や必要性を丁寧に説明する
役員研修を成功させるポイント その6
参加者が腹落ちするまで、
研修の目的や重要性を丁寧に説明する
研修前の説明も必要ですが、研修プログラムの最初でも必ず、役員に対して「研修の目的」「なぜこの研修を実施するか」を丁寧に説明しましょう。オリエンテーションの時間を作り、直接説明する時間をつくることが有効です。
役員が取り扱う業務は戦略やビジョンなど、抽象的な内容が多くなりがちです。そのため、役員研修で取り扱うテーマも抽象的になりやすく、目的の理解もしづらいものです。そのような場合でも、役員の方々は理解力が高い方が多く、かつ臨機応変な行動ができるため、曖昧な状況でも発言できてしまいます。しかしそれでは、狙った成果を得ることは難しいでしょう。
オリエンテーションや研修初日には、目的や必要性を丁寧に説明し、参加者の中で合意を取っておくことが重要です。
グロービスのワンポイントレッスン
研修の初日に、社長から一言いただくことも有効
役員研修の目的を、社長から直接語ってもらうことも有効な手法です。グロービスが企画する役員研修でも、研修冒頭に社長から一言いただくケースは多いです。
社長の口から直接、
- 自社を取り巻く環境
- 自社に必要な変化
- そのために役員に期待していること
- この研修をどのような思いで企画したか
等を語ってもらうことで、役員の方々の研修理解が進むでしょう。
また直属の上司である社長が研修の重要性を語ることで、研修の参加へのモチベーションが上がるといった副次効果も期待できます。
5-3-2 リスクフリーの場づくりを行う
役員研修を成功させるポイント その7
社内での立場や発言力に左右されない、
リスクフリーで議論しやすい場を作る
これは特に、社内の役員同士が集まる研修にて注意いただきたいポイントです。
役員にも上下関係があります。役員歴が長い方の方が役員としての経験が多いことから、社内での発言力も大きくなりがちです。その関係性を研修の場に持ち込んでしまうと、議論や対話が進まず、研修の目的を達成できないことがあります。研修の場は上下関係がない、リスクフリーの場であることを繰り返し強調し、議論・対話を促進させることが重要です。
5-3-3 研修終了後の行動まで決める
役員研修を成功させるポイント その8
研修を学びだけで終わらせず、
明日から誰がどう動くかまで決める
先ほども述べた通り、役員の業務範囲は戦略やビジョンなど抽象的であり、役員研修自体も取り扱うテーマが抽象的になりやすいです。そのため、研修終了後に「良い話をした(聞いた)なぁ」で終わってしまうことがあります。講演会や役員合宿でありがちな落とし穴です。
役員合宿であれば、経営上の意思決定をしたうえで、「誰がやるか」「責任範囲はどうするか」「どのような仕組みで動かせそうか」まで話し合うことで、合宿の翌日から会社がその方向性で動くことができます。スクール型研修であれば、判断軸を見つめ直したうえで、自分は明日から何をどう行動するのかを表明してもらうことが、効果的です。
グロービスのワンポイントアドバイス
研修の最後にコミットメント・社長就任演説を入れることも有効
講演会・読書会やスクール型研修では、研修後の行動を明確にするため、研修プログラムの最後にコミットメントや社長就任演説を入れ込むことも有効です。一人当たり数十分程度の時間を掛け、以下のようなことを語ってもらいます。
- 将来に向けた自社のビジョン(組織が向う方向、組織のあり方)
- ビジョンを達成するために今から必要となるアクション
- リーダーとして自身がコミットすること
参加者の本気度を促すため、社長就任演説では、プロの記者・撮影者を交えて、質疑応答を行う役員研修もあります。
6. グロービスと実施した、役員研修の成功事例
この章では、具体的な役員研修の事例として、グロービスが支援した富士通様(役員合宿)と三菱地所リアルエステートサービス様(スクール型研修)の2事例を紹介します。インタビュー記事へのリンクも付けてありますので、もしお時間があればそちらもご覧ください。
6-1 株式会社富士通:DXカンパニーへの転換を加速させた、役員合宿の取り組みと効用
DX(デジタルトランスフォーメーション)カンパニーへの転換、ジョブ型雇用の推進などの全社的な変革を前に、新役員陣の結束を固めることを目的として、2泊3日の役員合宿(経営方針の討議)を実行された富士通株式会社様。その内容について、本合宿に参加された同社の執行役員常務 総務・人事本部長 平松浩樹様にお話を伺いました。(部署・役職はインタビュー当時)
6-1-1 富士通の抱えていた課題
6-1-2 設定したゴール
6-1-3 役員合宿の内容
6-1-4 役員合宿で得られた成果
▶インタビュー全文はこちらから:DXカンパニーへの転換を加速させた、役員合宿の取り組みと効用
6-2 三菱地所リアルエステート:役員層はエグゼクティブ・スクールへ通学。上位層からの組織変革に本気で取り組む
全社視点や全体最適に立った連携の意識、ならびに意思決定した事項の浸透などに課題を感じ、5年前からグロービス・エグゼクティブ・スクールへの経営幹部層の派遣を始めた三菱地所リアルエステートサービス株式会社様。その内容について、同社の人事部 次長 能力開発課長 兼務 原栄市様と、受講者だったコーポレートスタッフ 執行役員 総務部長 吉田恭彦様にお話を伺いました(部署・役職はインタビュー当時)。
6-2-1 三菱地所リアルエステートが抱えていた課題・ゴール
6-2-2 役員研修としてこだわった点
6-2-3 役員研修で得られた成果
▶インタビュー全文はこちらから:役員層はエグゼクティブ・スクールへ通学。上位層からの組織変革に本気で取り組む
7. 役員研修の企画でよくあるFAQ
7-1 企画の際によくあるFAQ
7-1-1 うちの役員は経営に関する学習をしたことがないから、研修でしっかり学べるか不安です
研修前に事前課題を設定し、必要な知識のインプットを済ませておくことが効果的です。
事前課題としては、以下のようなものがあります。
- 課題図書を読み、感想や自身に役立てられそうなことを整理する
- 学習用の動画を視聴し、議論のベースとなる知識を事前に頭に入れてもらう
グロービスが提供する役員研修では、動画学習サービスを事前に視聴してもらうことも多いです。
グロービスの提供する動画学習サービス
7-1-2 役員がモチベーション高く研修に参加してくれるか不安です
役員のモチベーションの源泉を探り、モチベーションが満たされるように働きかけていきましょう。
例えばその役員のモチベーションが「実務で成果を出すことが大事(研修で学ぶことに意味はない)」というものであれば、どのような解決策が考えられるでしょうか。
- 社長から、この研修の重要性や、役員にこの研修で成長してほしいことを直接話してもらう
- 他の企業の優秀な役員層と対話・議論し、学びが成果につながった経験を共有してもらう
等が考えられそうです。なぜその役員のモチベーションが低くなるのかを紐解き、役員の目線で解決策を考えてみることが有効です。
7-2 外部パートナー選定の際によくあるFAQ
7-2-1 研修会社が多すぎて、どのように選べばいいのかわかりません
まずは複数の会社に問い合わせ、打ち合わせをしてみることをおすすめします。最初の打ち合わせでは、”すぐに具体的な手法を提示してこないこと”に着目すると良いでしょう。
コラム本文でも書きましたが、役員研修の企画プロセスにおいて、解決策である研修プログラムは最後に検討します。なぜならその前段階である経営戦略の理解や、あるべき役員像と現状とのGAP把握がないと、具体的な解決策となる研修プログラムは検討できないからです。
そのため最初の打ち合わせでは、皆様の話を傾聴し、現状を把握してくれようとする担当者を見つけられると良いでしょう。
そのうえで、第8章でお見せするチェックリストを併用することで、良い外部パートナーを選定できるはずです。
7-3 研修実施・運営の際によくあるFAQ
7-3-1 参加者である役員が、研修内容に不満があるらしい。どうしたらリカバリーできるだろうか
まずは不満の理由を、その役員や周囲の関係者から丁寧にヒアリングしましょう。そのうえで、対応が必要か否かの判断をします。
まずは、何に不満を持っているのか、それはなぜなのか、を聞くところから始めます。不満の種が小さければ、話を聞くことで不満が小さくなって解消するかもしれません。もし、その不満が大きくかつ妥当なものであれば、対応するようにしましょう。
対応に当たっては、幾つかの方法が考えられます。
- 不満を直接取り除く
- 不満を持っている方の気持ちが前向きになるように支援する
- 周囲の方からモチベートしてもらう
グロービスのワンポイントアドバイス
丁寧なコミュニケーションが、不満解決のカギ
グロービスが支援した研修でも、参加者が不満を持ってしまうことがあります。その際も、関係者と丁寧に会話をし、不満に思っていることを解きほぐしてあげることから始めます。
過去のグロービスの事例を紹介します。とある金融業のクライアントに提供した役員研修で「研修の期間が長すぎる」「モチベーションが続かない」という不満が出たことがありました。その際にグロービス担当者は、以下のステップを踏み、結果として、参加者に前向きに参加いただくことができました。
- 先方の研修窓口(人事部)の方と面談し、現状をヒアリングしつつ、研修設計の意図がずれていないかを確認
- 参加者と面談し、不満の根本原因をヒアリング
- 講師と面談し、ヒアリング内容を踏まえながら対応策を検討・実施
- 参加者の周囲(上司や同僚)へ連絡し、参加者のモチベートに協力いただけないか打診では、プロの記者・撮影者を交えて、質疑応答を行う役員研修もあります。
8.自社に合った役員研修の
外部パートナーを見つけるためのチェックリスト
この章では、皆様にすぐに使っていただける、外部パートナーチェックリストを用意しました。明日からすぐ使えるように、印刷用のPDFも用意してあります。ぜひダウンロードしてお使いください。
これまで見てきたように、役員研修の企画・実施は、他の研修と比べても難易度が高いです。検討プロセスは多く、内容も抽象的で複雑になりやすく、当日の運営も考慮すべきことが多いです。
そのため全てを内製するのではなく、プロである外部の研修会社をパートナーとして選び、共に企画・運営することが必須と言ってもいいでしょう。
一方で役員研修を提供する会社は多く、どのように選定すれば良いかを悩まれている方も少なくありません。自社に合った役員研修の外部パートナーを見つけるには何に注意すれば良いのでしょうか。
グロービスにて、役員研修の外部パートナーを見つける際に確認すべき13個の項目を選定しました。このチェックリストを、ぜひ使ってみてください。
8-1 自社の課題感に沿った、適切な提案をしている
- 経営課題の分析から人材育成課題の特定まで一緒に考えてくれて、その内容も適切である
- 人材育成課題と紐づけた、適切な教育プログラムが提案されている
- 担当者のスキル・熱意が高く、長期間の研修運営を共に完遂できる信頼感がある
8-2 自社に必要な品質が担保できる
- アサイン可能な講師が、自社の課題に沿った講義ができる実績や経歴を持っている
- 役員のレベルや課題感に合わせた教材を用意できる
8-3 適切な料金である
- 他社と比較しても、費用対効果の高い見積もりが提示されている
8-4 研修のデリバリー能力が高い
- 研修の目的や自社の拠点を鑑み、適切なロケーションの研修会場が選定・提案されている
- こちらの研修希望日に、柔軟に対応してくれる
8-5 研修フォロー体制が整っている
- 研修開始後も適切にフォローし、柔軟に変更・対応してくれる
- オンラインなど不測の事態が起きやすい場合における、フォロー体制が整備されている
- 研修後の振り返りまで対応でき、最後までパートナーとして伴走してくれる
8-6 十分な実績がある
- 研修会社として、過去に十分な数の役員研修を企画・開催している
- 担当者が過去に役員研修を企画・運用・提案した実績がある
9. 役員研修を企画する際は、グロービスにもお声がけください
もし役員研修を外部の研修会社に依頼しようとしているなら、ぜひグロービスへもお問い合わせください。以下の図に示す通り、グロービスは豊富なプログラムを有し、決して他社に劣らないご提案を致します。
グロービスへのお問い合わせをお勧めする理由を5つ、以下に示します。
役員研修ならグロービスをお勧めする5つの理由
- 役員研修の全ての範囲を提供できるから
- 豊富な役員研修プログラムを持っているから
- 各分野の専門家とのネットワークを有しているから
- 各分野の専門家の話と経営を紐づけできるから
- 役員研修後の行動についてもコミットできるから
9-1 役員研修の全ての範囲(経営戦略から研修のオペレーションまで)を提供できるのは、グロービスだけだから
9-1-1 皆様の会社の経営課題を特定できる
グロービスにお任せいただければ、皆様の会社の課題に沿ったプログラムの設計・提案をいたします。なぜならグロービスの担当者はほぼ全員、MBAを所有しており、経営上流の議論が可能だからです。他の研修会社との大きな違いは、この点です。
本記事で繰り返しお伝えしてきた通り、役員合宿の企画には、経営課題の把握が不可欠です。その分析・特定の際には、社長へのインタビューによる目的の確認・すり合わせが必要な場面も出てきます。そのような場面でも、グロービスの担当者が対応可能です。
研修事務局の皆様と連携し、経営陣の皆様の課題を確認・すり合わせながら、皆様の期待に沿った成果を生み出すプログラムをご提案します。
9-1-2 経営課題を、研修プログラムへ落とし込める
意外と落とし穴になるのがこの点です。せっかく特定した経営課題を、研修プログラムでどう解決していくかの設計が、意外と難しいのです。
ありがちなのが、経営課題の特定はコンサルタント会社に依頼し、研修プログラムは研修会社へ依頼するというケースです。この場合、両者をつなぐのは人事部の方の役割となりますが、伝言ゲームとなってしまうため、微妙にずれてしまうことが往々にしてあります。
その点グロービスであれば、経営課題を特定した担当者がそのまま、研修プログラムの設計も伴走します。そのため、経営課題を解決するための研修プログラムが設計可能です。
9-2 豊富な役員研修プログラムを持っているから
グロービスでは、以下の3つの役員研修プログラムを提供可能です。
- 企業内研修
- スクール型研修
- 役員合宿
9-2-1 企業内研修
グロービスでは貴社の経営課題に合わせて、最適な役員の方向けの企業内研修プログラムをご提案可能です。皆様の制約にも合わせられるよう、定型・テーラーメイド型、双方のプログラムをご用意しています。
定型プログラム | テーラーメイド型プログラム | |
---|---|---|
プログラム概要 | 人・組織に関する 共通性の高い課題を解決するために、体系化されたプログラムを個社ごとに組み合わせて提供 | 人・組織に関する個社ごとの課題に対し、テーラーメイドで設計したプログラムを提供 |
提供方法 | リアル/オンライン | |
定員 | 1クラス8名~25名 | |
研修時間 | 1日7時間(リアル) 1日3時間×2回(オンライン) | 1日3.5時間~(リアル/オンライン) |
弊社へお問い合わせいただきましたら、貴社への専任担当から皆様へご返信させていただき、役員研修プロジェクトを最初から最後まで一貫してサポートします 。
9-2-2 スクール型研修
グロービスでは、”エグゼクティブ・マネジメント・プログラム(EMP)”という役員層向けのスクール型研修を提供しています。
EMPでは、以下の3つについて、深く考え会得していきます。
1. 経営者の視座・視点を獲得する
企業が果たすべき役割とは何か?経営者たる自身は何を求められているのか?といった論点について、深く考察し、組織や個人として目指したい姿を考え抜きます。
2. 意思決定力・組織マネジメント力を養う
役員として直面する困難なビジネスシーンにおいて、自身はどのような決断を下すのか?意思決定力や組織マネジメント力を磨き、様々なシーンについて考え抜き、自らの意思決定力を磨きます。
3. 志や責任感の涵養を図る
厳しい決断を下す際、判断軸となるのは価値観や信念。自分自身と深く向き合い、これまでの学びを振り返りながら、最後はリーダーとして成し遂げたい事柄をコミットします。
EMPの概要
対象者 | 部長層以上 |
---|---|
受講形態 | リアルもしくはオンライン |
定員 | 約30名(1クラス) |
受講期間 | 3か月 |
受講料 | こちらから最新情報をご確認ください |
9-2-3 役員合宿
グロービスでは役員合宿のプログラム策定・当日のファシリテーションも対応可能です。主に以下の3点が、グロービスが役員合宿で担う役割です。
- 限られた時間の中で、最大の効果を引き出す設計をする
- 社長と対話し、経営アジェンダ(本質課題)を押さえる
- 参加者の現状(マインド・スキル・行動、参加者同士の関係性)を念頭に、経営アジェンダが有効に議論できるよう、適切なコンテンツ・問いを設計する
- 向き合うべき共通の問いを特定する
- 現状のしがらみや短期的課題から離れ、社長の立場で「理想を描く・語る」
- 「創りたい未来と現状」「経営の意思と現場」「あるべきリーダー像と現状」など、どこにどのようなギャップがあるのか、難所は何か、中立な立場から具体化に切り込む
- 「何を考える必要があり、何は今考えなくて良いのか」問いを設定し、常に立ち返る
- 一人ひとりが納得し、行動変容できるレベルで、取るべきアクションに落とし込む
- 各人の本音を引き出す(特定の人に発言を集中させない・一方的に押し付けない)
- 社内では解決しきれないしがらみや歪みを解きほぐし、取るべき行動をわかりやすい言葉で(=自分の言葉で)落とし込む
役員合宿についての詳細は、ご面談で説明させていただきます。是非お問合せください 。
9-3 各分野の専門家とのネットワークを有しているから
グロービスは、各分野の専門家と広く深いネットワークを有しています。なぜなら我々は、G1サミットやGLOBIS 学び放題等、多くのプラットフォームを有しているからです。一例として、G1サミットをご紹介します。
G1サミットとは、”日本・世界を担っていくリーダーたちが学び、交流し、絆を強め、日本を良くする行動を起こすためのプラットフォーム”です。毎年3日間、経営の意思決定に必要な各分野の専門家のパネルディスカッション+参加者との議論が繰り広げられる場です。G1サミットの詳細はこちらのページをご覧ください。
”経営の意思決定”に必要な各分野について精通した専門家ネットワークを、十分な範囲と量で有するという点は、他にはないグロービスの強みです。このネットワークを存分に生かし、貴社に必要な役員研修のプログラムを提案させていただきます。
9-4 各分野の専門家の話と経営を紐づけることができるから
一方で、話を聞いて「良い話だったなぁ」と満足するだけではいけません。役員にとっては、その分野に精通することは目的ではありません。自社の経営と紐づけた理解が重要です。
各分野の話を経営と紐づけるという点でも、グロービスは他社にはない強みを持っています。なぜならグロービスは教育業界の最先端(デジタル化、AI活用など)を走っており、その過程で各専門分野の話と経営・事業を結びつける、ということを行ってきたからです。
専門的な話を聞き、実務としてどう生かすか、経営の論点にどう生かすか。それを研修プログラムの一連の流れでどう学んでいただくか、といった設計は、他社にはないグロービスならではの強みです。ぜひお任せください。
9-5 役員研修後の行動についてもコミットできるから
最後の理由は、役員研修が終わった後についてもコミットできるからです。
役員研修の目的は最初にお伝えした通り、「既存の発想をアップデートし、自身の判断軸や人間的魅力を磨き込む」ことです。しかし大切なことは、役員研修の後、実務で更に活躍していただけるか否かでしょう。その点についても、グロービスはコミットできます。
役員合宿を例にお話しします。役員合宿では、経営の意思決定とコミットがゴールです。意思決定をした後は、各事業部が決定事項に沿って動く必要があります。この点でも、グロービスが全面的にサポートさせていただきます。
例えば以下のようなサポートが可能です。
- 役員合宿で出てきた経営課題を用いた自社課題研修(経営課題について学習しながら課題解決に取り組む研修)を、次期役員候補に受けてもらう
- 役員研修で扱ったテーマを、下位レイヤーにも浸透させるための研修プログラムを企画する
- 役員合宿のアウトプットを踏まえた、人事改革のアドバイスを行う
まとめ
本コラムでは、役員研修とは何かその意味を説明したうえで、企画プロセスや成功のポイントを解説しました。
この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。
- 役員研修とは、自社の取締役・執行役員を対象に、既存の発想をアップデートし、自身の判断軸や人間的魅力を磨き込む研修の事です
- 役員研修を企画する際には、以下のプロセスで検討を進めましょう
- プロセス1:経営戦略や役員への期待役割を基に、あるべき役員像を明確にする
- プロセス2:あるべき役員像と役員の現状を比較し、その差分(=人材開発課題)を特定する
- プロセス3:役員研修のコンセプト・グランドデザインをまとめる
- プロセス4:コンセプト・グランドデザインに基づいた、具体的なプログラム案を設計する
- 役員研修を成功させるポイントは、以下の8つです
- ポイント1:伸ばしたい項目を明確に
- ポイント2:制約を最初から意識しすぎない
- ポイント3:外部パートナーを適当に決めない
- ポイント4:社長の鶴の一声に任せ過ぎない
- ポイント5:外部パートナーへ丸投げしすぎない
- ポイント6:受講者へ丁寧に説明する
- ポイント7:リスクフリーの場づくりを行う
- ポイント8:研修終了後の行動まで決める
- 役員研修を成功させるには、外部パートナーへ外注すべき。その際には、8章に記載したチェックリストを活用することで、自社に合った外注パートナーを選定できます
役員研修の企画を進めるうえで、人材育成ご担当者の方は自ら動き、様々な社内接点から情報を得たり、分析したりする必要があります。簡単ではないかもしれませんが、戦略を実行するのは、最後は人であり組織です。人材・組織戦略を担う専門家として、グロービスがお手伝いをさせていただきます。
研修の目的や人材要件がまだ明確になっていない場合でもご安心ください。グロービスではこれまで約6,700社(年間約3,300社)への多種多様なサービスとソリューション提供を通して、国内外の各業界をリードする企業様の育成サポートをさせて頂いております。現在お感じになっている課題感・景色感から紐解いて具体化することが可能です。
役員研修という組織課題に直結する重要な研修だからこそ、受講者の行動変容に立ち会えたときの感動はひとしおです。貴社の大切な取り組みの実現に向け、ご一緒に進めてまいりましょう。