成果を生む管理職育成とは?
自社に最適な企画をする4ステップ

管理職研修とは

人材育成担当の方におかれましては、

  • 自社に最適な管理職研修を企画することが難しい
  • すでに取り組んでいる研修プログラムが、管理職の育成に効果があるのか不安だ

とお悩みではありませんか?
管理職研修とは、企業内の管理職(主に課長・部長級)を対象に行われる研修のことです。管理職は経営と現場をつなぐ重要な存在なので、その能力開発の手段である管理職研修は組織上とても重要な取り組みと言えます。
管理職研修では「自部署の課題解決の視点」や「問題解決能力」「実行力」など多方面のスキル・マインドを向上させる必要があります。

本コラムでは、管理職研修の目的・種類・テーマ・研修会社の選定基準など、自社に適した管理職研修の条件を網羅的に解説していきます。

※左右にスクロールします
対象者 目的 向いているケース
新任管理職研修 新しく管理職になる人
  • ①組織を円滑に運営するための知識の習得
  • ②自社の管理職としての期待役割を果たすスキル・マインドの習得
社内規定や基本的な管理職としての知識が乏しい人・期待される役割やスキル・マインドなどの役割認識が不足している人(管理職着任前に行われることも多い)
中間管理職研修 すでに任命されている中間管理職(課長・部長を含む)
  • 課長:経営戦略と現場の結節点しての行動の体得
  • 部長:経営方針を部門に間接的に落とし込む役割の理解と、組織を導くマインドの変換
  • 課長:プレイヤーの思考から課長の役割認識の転換に課題がある人
  • 部長:経営方針を部門に落とし込む役割や、矛盾を踏まえた組織の方向性を打ち出すことに課題を持っている人
女性管理職研修 女性のリーダーや管理職候補 ダイバーシティ推進と、女性としてのリーダーシップやマネジメントのスキルの向上 管理職昇進をためらっている女性管理職としての自身の役割や、組織内での女性としての期待に対する不安や疑問を持っている女性

本コラムをお読みの上、検討を進めていただくと、

  • 初めて管理職研修の企画に取り組む方
  • 管理職研修の見直しに際し、企画の糸口が分からずお悩みの方

は、検討のプロセスを適切に踏むことが出来るようになっています。
研修後の受講者の行動変容のきっかけを生み出すことに本ページをお役立てください。(実際にグロービスでご支援した事例は第8章で述べます)

監修者
田久保 善彦
グロービス経営大学院 副学長 / 学校法人グロービス経営大学院 常務理事

慶應義塾大学理工学部卒業、同大学院理工学研究科修了。スイスIMD PEDコース修了。株式会社三菱総合研究所にて、エネルギー産業、中央省庁、自治体などを中心に調査、研究、コンサルティング業務に従事。
現在グロービス経営大学院研究・執筆等を行なう傍ら、大学院及び企業研修におけるリーダーシップ開発系の教鞭を執る。経済同友会幹事、NEDO 技術評価委員、上場企業、スタートアップ企業社外取締役、顧問、一般社団法人の理事等も務める。

執筆者
上山 紗緒里

同志社大学法学部政治学科卒業、グロービス経営大学院修士課程(MBA)修了。
大学卒業後、株式会社三井住友銀行に入行。リテール部門にて個人および法人オーナーの顧客に対する資産運用、ローン、相続ビジネスニーズへのアドバイザリー業務に従事。
グロービス入社後は企業向け人材開発・組織開発サービスの企画、設計、コンサルティングに従事。
その後、法人営業部門のBtoBマーケティングチームに所属し、同社初のインサイドセールスチームを組成。

組織・運用設計・チームマネジメントを実行。
現在は、コンテンツマーケティンググループのマネジャーとして、コンテンツ作成企画・実行・グループマネ ジメントを担う。
マーケティング領域の研究グループでは各種コンテンツ・教材開発および講師を務める。
過去に執筆した記事は以下の通り:
女性リーダー研修に必要な3つのエッセンスやプロセス・比較基準を解説

CHAPTER
01

そもそも管理職研修を実施する目的とは?

年間約3,300社、年間384,400名(2022年実績)の方に向けて研修を実施してきたグロービスが考える「管理職研修を実施する目的」は、以下の4つの力を高めるためです。

図1 グロービスの考えるビジネスリーダーモデル

1-1 経営の定石

管理職研修を行う1つ目の目的
「経営の定石」を身につけ、
自部署の課題解決の視点を増やすこと

「経営の定石」とは、経営に関する問題を解決するのに必要な思考・分析の枠組み(ヒト・モノ・カネの分野)や考え方のことです。経営の定石は「知っていれば必ず勝てる」というものではないですが、それらを踏まえることにより、自社・自組織の課題解決に向けて考え抜くことが可能になるのです。

経営の定石として有名な戦略立案のフレームワークには、経営を成立させる要素としての

の基本概念、外部環境分析のフレームワーク(SWOT、5F、3C)などがあります。これらを一通り理解することで、管理職は大きな視野狭窄に陥らず、重要なポイントの見落としを防ぎながら、効率よく課題に対する分析や解決策の立案を行うことが可能になります。

1-2 考える力

管理職研修を行う2つ目の目的
「考える力」を身につけ、
問題解決能力・コミュニケーション力を
向上させる

「考える力」とは、複雑な問題の本質と原因を把握し、最善の解決策を導き出す力のことを指します。
ビジネスモデルが変化し、過去の成功パターンが通用しなくなっている今、企業が価値を創出していくためには

  • 「新たに課題を発見する力」
  • 「発見した課題を解決するためのアイデアやプロセスを考案する力」
  • 「相手の意見や考えを正確に理解する力」
  • 「自分の意見や考えを正確に理解してもらう力」

が必須となります。
これらは頭で理解することの難易度は高くないですが、ビジネスで使えるレベルで身に付けるためには高いハ ードルが存在します。多くの演習を通じて反復トレーニングを行うことで、ビジネスの現場で使えるスキルとして修得することが大事です。

1-3 人を巻き込む力

管理職研修を行う3つ目の目的
「人を巻き込む力」を身につけ、
戦略を着実に実行する管理職になる

「人を巻き込む力」とは、関係する人々に対して分かりやすく説明をし、周囲を鼓舞し、リーダーシップを発揮し巻き込んでいく力の総称です。
全てのビジネスは一人で完遂することはできず、社内外の様々な関係者と一緒に進めていく必要があります。誰しも得意・不得意があり、他人と協力、協創していく力を身に着けることは、特に管理職にとっては不可欠です。

うまくメンバーの力を引き出し、協力し合いながら進められれば、想像以上のプラスのシナジーが生み出し、大きな成果をあげることができます。
この人を巻き込む力は、理論を理解するだけでは身につけたとは言えません。組織・リーダーシップに関する知識に加え、それぞれの組織文化に根ざした正しい根回しや信頼の獲得の仕方・味方のつくり方などを理解し、業務で活用し振り返りながら自己の課題を修正していくことが求められます。

1-4 志

管理職研修を行う4つ目の目的
「志」を身につけ、
自身と周囲をリードする管理職になる

管理職をはじめとするビジネスリーダーには、最後に高い志と強い当事者意識をもって、前向きに仕事に取り組む姿勢が求められます。

志とは、自身が何を大事にし、何を達成しようとしているかを明確にしたものです。そのような志は、経営リ ーダーがぶつかるであろう(大きな)困難を乗り越えるための、原動力になります。志は自分だけでなく、ステークホルダーを巻き込むためにも欠かせません。仮に能力が同じ場合、「会社や組織から言われたことを理由に行動する管理職」と、「志(目的・目標)を明確に語り、周囲に働きかけながら行動する管理職」では、後者の方が周囲の巻き込み度合いを高め、成果を挙げることは容易に想像がつくでしょう。
「志のMBA」を掲げるグロービスは、高い志こそが多くの人々を動かし、自己実現に近づける大切な要素であることを様々な事例から観察・研究してきました(参考:グロービス経営大学院(著), 田久保善彦(著) ”志を育てる(増補改訂版)”、東洋経済新報社、2019年)。いかに志を立て、それを維持し続けるかが、チームのアウトプットを大きく左右するのです。

グロービスは
これら4つの力・要素を伸ばすことが
「意味のある管理職研修」
ために重要だと考えています。

1-5 グロービスの管理職研修を受講された方の声

実際にグロービスの管理職研修を受講いただいた方からは、このようなお声をいただいています。

西宇 淳 さん
日本たばこ産業株式会社 医薬総合研究所 生物研究所 副所長
日本たばこ産業株式会社 医薬総合研究所 生物研究所 副所長
原田 政人 さん
東京海上日動あんしん生命保険株式会社 執行役員 関東営業部長
東京海上日動あんしん生命保険株式会社 執行役員 関東営業部長
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戦略立案のプロセスを自然に意思決定に活かせるようになった

これまでも、無意識ながら戦略立案のプロセスに沿って考えていたのだと思います。しかしグロービスで学んだことを当てはめて振り返ってみると、ある程度は理にかなった考え方をしていたのだと実感できました。スキルが身についた今は、根拠を持って意思決定をし、自分の判断に自信を持てるようになったと感じています。

学び続け、進化していく重要性に気づけた

学び続けることの重要性も、グロービスの通学を通して感じました。ビジネスは変化し続けるものですし、我々が手がける創薬の分野は開発期間が長い一方、テクノロジーはものすごいスピードで進化しています。こうした環境においては、我々も変わり続けなければなりません。そのためには学び続け、進化していく必要があると思うのです。最近では、一緒に仕事をしているメンバーにもこうした考えを積極的に伝えています。

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自分に足りない価値基準に気づけた

私は保険業界一筋でキャリアを歩んでいます。歴史の長い業界ですから、脈々と築き上げられている価値観があるのでしょう。しかしながら、それを客観的に見ることは滅多にありません。グロービスのクラスでの議論は、自分に足りない価値基準に気づく貴重な体験となりました。

経営会議で経験則に頼らない議論が出来るようになった

こうした学びや気づきを経て、経営会議などでは経験則に頼らない議論ができるようになったと感じています。具体的な結果を出すのはこれからになりますが、当社の将来像を描くにあたって、今回の学びは全て活かせる手応えが得られました。

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CHAPTER
02

対象者・目的別で見る
管理職研修の特徴

管理職研修と一言で言っても、その種類は様々です。
一般的には管理職になる(=就任)タイミングや役職で分けられます。
前者の場合、「新任管理職研修(着任時)」「中間管理職研修(既任)」というように、新任か否かで分かれます。後者の場合、「課長研修」「部長研修」など、役職で区切られます。他にも女性活躍推進の流れを汲み、女性管理職研修を企画することもあります。各々の特徴と目的感について見ていきましょう。

※左右にスクロールします
対象者 目的 向いているケース
新任管理職研修 新しく管理職になる人
  • ①組織を円滑に運営するための知識の習得
  • ②自社の管理職としての期待役割を果たすスキル・マインドの習得
社内規定や基本的な管理職としての知識が乏しい人・期待される役割やスキル・マインドなどの役割認識が不足している人(管理職着任前に行われることも多い)
中間管理職研修 すでに任命されている中間管理職(課長・部長を含む)
  • 課長:経営戦略と現場の結節点しての行動の体得
  • 部長:経営方針を部門に間接的に落とし込む役割の理解と、組織を導くマインドの変換
  • 課長:プレイヤーの思考から課長の役割認識の転換に課題がある人
  • 部長:経営方針を部門に落とし込む役割や、矛盾を踏まえた組織の方向性を打ち出すことに課題を持っている人
女性管理職研修 女性のリーダーや管理職候補 ダイバーシティ推進と、女性としてのリーダーシップやマネジメントのスキルの向上 管理職昇進をためらっている女性管理職としての自身の役割や、組織内での女性としての期待に対する不安や疑問を持っている女性

2-1 新任管理職研修(着任時)

新任管理職の研修は多くの企業で実施されており、その必要性の高さも十分に理解されています。新任管理職研修の基本的な役割は、主に2つあります。

①組織を円滑に運営するために必要な知識を習得すること
②自社の管理職としての期待役割を果たすために必要なスキル・マインドを習得すること
①組織を円滑に運営するために必要な知識を習得すること

労務管理・評価方法・メンタルヘルスケアなど、組織を円滑に運営するために必要な知識の習得は、新任管理職研修で多く取り入れられています。社内規定などの習得に加え、一般的に管理者として知っておくべき基本知識を習得することは、円滑な組織運営につながるだけでなく、様々なリスクを未然に防ぐ(リスクを低減する)うえでも重要です。

②自社の管理職としての期待役割を果たすために必要なスキル・マインドを習得すること

自社の管理職としての役割を果たすために必要なスキルやマインドを習得します。
※各社で定められた「人材要件(期待役割・行動・スキル・マインド)」とも密接に関わる内容であるため、企業ごとに取り組むべき内容は異なります。

新任管理職研修の企画に必要な4つのステップを解説します
グロービスのワンポイントアドバイス
新任管理職の人材要件 見本例3選

各階層に求められる「期待役割」の一般的な例をご紹介します

  • 現場リーダー層:「実行支援」マネジャー層の右腕でとしてチームでの成果創出を推進する
  • 課長、マネジャー層:「戦略実行」戦略を達成する仕組みを組織で機能させる
  • 事業部長、部長層:「戦略構想」環境変化を捉え、次の戦略を構想する

研修の企画に落とし込むためには、ここから更に
「ではこの期待役割を行動で表現するとどうか?」
「その行動を実現するために必要なスキル・マインドは?」
とブレイクダウンします。

具体例はこちらにありますのでぜひダウンロードください

2-2 中間管理職研修(既任)

2-2-1 課長研修

一般的に、課長の役割は10人未満程度の組織※1に対して、部門方針(部のビジョンや戦略)を、「直接的に」落とし込んでいくことです。
現場を統括する管理職として、経営戦略と現場の結節点としての行動が求められます。経営層と現場を結び、メンバーと対峙しながら課を柔軟・迅速に制御するために、経営層と現場、両者の視座を行き来することを体得する必要があります。プレイヤーの業務もあわせて担う課長も昨今では多いため、いかにプレイヤーの思考から課長の役割認識に転換できるかが課題です。

※1:組織論における有名な理論でスパンオブコントロール(管理権限範囲)に基づく。

グロービスのワンポイントアドバイス
1人の管理職がマネジメントできる範囲は10人まで

スパンオブコントロールとは、ギュリック (Gurick,1937)とアーウィック(Urwick,1956) などが唱えた、「1人の上司がマネジメントできる人数には限界がある」とする考え方です。研究により多少の差はあるものの、企画・営業などの業務では概ね1人の管理職がマネジメントできる範囲は7-10人までと言われています。つまり、「7-10人の範囲で責任を持つ管理職・マネジャーが、メンバーとしっかりコミュニケーションをとること」こそが、組織方針の伝達やその先にある行動へ大きく影響を与えるということです。

経営トップがいかに優れたビジョンや戦略をつくり、発信しても、現場のメンバーの行動へ反映(浸透)するには限界があり、そのカギは7-10人のメンバーをマネジメントするミドルマネジャーにかかっているのです。

2-2-2 部長研修(上級管理職研修)

企業規模に依存しますが、一般的に、部長は7-10人(の課長)を部下に持ち管理する構造が理論上出来上っています。すなわち部長は間接的に約50 人-100人の部下が存在することになります。
上記より、部長の役割は経営層から直接聞いた経営方針(ビジョンや戦略)を「間接的に」落とし込んでいくことです。間接的である分、マネジメントの難易度も上がり、備えるべきスキル・能力・特性も多岐に渡ります。特に難しいのは「従順に組織の命題を実現する」マインドから、以下のようなマインドへの変換です。

  • 自身の目で見て環境を認識し、幅広い範囲に対して自身が主体的に方向性を打ち出し
  • 「あちら立てればこちら立たず」という矛盾を踏まえ、より良い方向性へ組織を導いて行く
  • 経営方針を我がこととしてとらえ、自らの言葉で組織構成に伝えていく

詳細は下記ワンポイントアドバイスをご覧ください。

グロービスのワンポイントアドバイス
部長は知識から根本的な能力(知性)へ学びを広げるべし

上記のように、部長以上には様々なスキルや能力、特性などが求められます。このようなことを「実業の中で、自分で身につけること」は困難を極めます。よって、これらのポイントを計画的に、実業を越えた場でも活用し身に着けていくことが求められていきます。備えるべきスキル・能力・特性が多岐に渡るからこそ、自社の部長層にはどの部分から育成施策を着手すべきかを考えましょう。

通常は、知識の幅を広げ、ベースとしての考える力を養った後に、自組織への働きかけを具体的に考える取り組みが出来ると良いです。ただし就任してある程度時間がたち、自己のスタイルが確立している場合であればあるほど、根本的な能力(知性)や特性へ働きかける必要があります。

2-3 女性管理職研修

人的資本経営における情報開示の要請もあり、労働市場や資本市場からの期待も高まり、企業は女性の活躍を推進する取り組みを進めていく必要があります。その効果の範囲も広く多大であり、より高度なマネジメントや育成が今後求められます。
日本における女性活躍推進に重要なのは、管理職登用「前」のトレーニング=研修機会です。なぜなら、トレーニングは女性管理職登用における「プラスの影響」を最大化する取り組みだからです。
後述のワンポイントアドバイスにも記載の通り、高度経済成長期以降、女性のリーダーが限られてきたのは、「女性管理職がまだ少ない」だけでなく、「日常業務の中でリーダーシップを育成する機会も、男性に配分されることが多い」ためです。明らかな差別ではなく、ちょっとした日常業務における期待のされ方・育成期会の付与度合い・女性に負荷をかけることへの上司の迷い等が、女性のリーダーとしての成長を妨げていることがよくあります。
ゆえに、女性リーダーにとって登用前のトレーニングは、男性よりも「更に」重要といえるでしょう。

過去の研究※2によれば、ダイバーシティ推進(女性活躍推進)には企業にとって6つのプラスの影響があるとされています。

プラスの影響 内容
コスト削減 ますます多様化する従業員の職務満足度が高まることで、離職率・欠勤リスクが低下し、結果としてコストが削減されます。
人材確保 ダイバーシティを推進した企業は良い評判を得、優れた人材を引き寄せる力が増します。
マーケティング 多様な背景を持つチームは消費者の行動やニーズをより深く理解し、市場や消費者行動に対して対応できる可能性が高まります。
創造性の増大 多様な視点が集まることで、プロダクトやプロセスについてアイデアが生まれやすくなります。
問題解決の進展 多様な経験や考え方が寄せられることで、問題解決の質が向上します。
組織の柔軟性の増大 ダイバーシティが高い組織は、複雑な状況やあいまいな業務に対しても柔軟に対応し、柔軟性や順応性が高まります。

組織内にプラスの影響を最大化するためにも、リーダーとしての育成が不十分な状態での登用は、本人にとっても組織にとっても、かえってリスクになります。登用後の円滑な組織運営のためにも、女性リーダー育成は何よりも急務です。

※2:Cox, T., and Blake, H. S. (1991) “Managing Cultural Diversity: Implications for OrganizationalCompetitiveness”, Academy of Management Executive, vol. 5, No.3 谷口真美,「ダイバシティ・マネジメント―多様性をいかす組織 」白桃書房, 2005.9

女性リーダー候補が管理職昇進をためらう理由として3つの要因が考えられます。

  • ①自分は管理職に向いていないとの思い込み
  • ②管理職は大変なだけという誤解
  • ③管理職のあるべき姿・行動への無理解

これらを刷新することが女性リーダー研修には求められます。詳細は下記コラムをご覧ください。

グロービスのワンポイントアドバイス
「女性管理職研修」は
特別扱いではない

管理職研修の種類の中に、「女性管理職研修」が設定されていることに対し、疑問をお感じになる方もいらっしゃるかもしれません。しかしグロービスではあえて、女性管理職研修を個別に設ける必要があると考えます。
高度経済成長期以降、男女雇用機会均等法が策定はされたものの、多くの会社組織では男性がリーダーシップの役割を果たすことが一般的であり、女性がリーダーシップをとる機会は限られてきました。
女性のリーダーが限られてきたのは、「女性管理職がまだ少ない」だけでなく、「日常業務の中でリーダーシップを育成する機会も、男性に配分されることが多い」ためです。例えば

  • 他部署との調整を行う会議
  • 重要な顧客の対応
  • 新たな企画を必要とする業務

などは、女性よりも男性に配分されることが多いことが、研究から明らかにされています。

※参考論文:"Women in the Workplace" by LeanIn.Org and McKinsey & Company”

女性リーダーの育成プログラムは、これまでの不均衡を正し、多様な視点を組織に取り入れるために必要な手段です。また、リーダーシップや組織の多様性は新たな視点をもたらし、イノベーションを促進し、組織全体のパフォーマンスを向上させます。女性リーダーの育成は、組織のパフォーマンス向上に寄与するための一施策として重要と考えます。

CHAPTER
03

管理職研修の計画(企画)を立てる
4ステップ

管理職研修を成功させるためには、正しい計画(企画)の流れを把握しておく必要があります。グロービスが考える正しいステップは下記の4 つから構成されます。

※左右にスクロールします
図2 管理職研修の計画(企画)を立てる4 ステップ
  • STEP1:
    「経営戦略実行」を起点に、管理職層のあるべき姿を描く
  • STEP2:
    管理職層の現状とあるべき姿を比較し、その差分(課題)を洗い出す
  • STEP3:
    課題に優先順位をつけ、マネジメント研修の対象者を確定する。そのうえで、研修のゴール/コンセプトを設計する
  • STEP4:
    研修のゴール/コンセプトを実現するための具体的なプログラム/育成手法を策定する

各STEP について、詳細の説明をしていきます。

3-1 STEP1:「経営戦略実行」を起点に、管理職層のあるべき姿を描く

3-1-1 いきなり研修プログラム策定に移行してはいけない

管理職研修の計画(企画)を立てる4ステップの中で、STEP1が最も重要です。なぜなら、研修企画の場では往々にしてこのSTEP1が抜けたまま、いきなりSTEP4の「研修プログラムを策定する」に飛んでしまうことが多いからです。

※左右にスクロールします
図3 STEP4 の「研修プログラム策定」に飛んでしまう場合

これまでの自社の管理職研修を思い起こしてみてください。研修の立案・見直しに際し、以下のような考えが沸き起こってこないでしょうか。

このように人材育成プログラムにすぐに飛びついてしまうと、以下のような不具合が生じます。

こうならないように、最初のSTEPは欠かさないようにしましょう。

3-1-2「育成」の戦略上の位置づけ

研修とは、経営戦略(自社が競争環境で勝つ/儲けるための戦略的方向性)を実行する組織・人づくりの一手段です(下の図赤枠部分)。

図4 育成とは何か?戦略上の位置づけの観点

壮大な話に聞こえるかもしれませんが、この認識が重要な理由は以下の2 つです。

  • ①「人材育成」が外部環境ともつながっているから
  • ②「人材育成」に閉じないことが、課題解決上重要だから

①外部環境が変わると、それに適応すべく経営戦略が変わり、HRM戦略も変わり、育成も変わらねばならない、ということです。JOBマーケットだけでなく、経営戦略に影響を及ぼす要因を、日ごろから押さえておきましょう。

②外部環境の変化に伴い経営戦略を変えねばならない時、そこには何らかの課題があるはずです。その際に、人材育成だけで乗り切ろうとしてはいけません。人材育成対象者に過度な負荷をかけることにつながり、あるいは本来の課題解決に至らない可能性も高まります。

課題解決のための施策は、外部からの人材登用などを含め、人材育成以外にも考えられるはずです。内部環境にある他の戦略も組み合わせ、課題解決していくという視点を持つことがポイントです。

3-1-3 あるべき組織像を設定する

上記で理解した戦略を踏まえて、自社のあるべき人・組織の姿を描きます。ここでは戦略を実現するために必要な人材要件を定義します。戦略から人材要件を導き出す際に、実務的に考えやすいと思われる方法をここではご紹介します。いきなり「人材要件」を考えず、「あるべき組織像」から考える方法がおすすめです。

具体的には、例えば「戦略を実現するために組織全体としてどのような<行動>が求められているのか」といった、組織として共通で持ちたい「軸」(指針)をまず決めます。その指針に沿って、各階層に期待される役割や行動などの人材要件を定義する流れです。
戦略が変われば、求められる組織像が変わります。新たな戦略で求められる組織の「軸」を定めることで、「部長に何を求めるか」「課長に何を求めるか」などが考えやすくなります。
一方で、上記の様な「最初に戦略を立て、その後でその後で必要な人材要件を明らかにする」という手法が通用しづらい状況も存在します。例えば組織や人材の能力不足で戦略が実行できない、といったケースです。どれだけ良い戦略であっても、実行する能力が組織にない場合は、「机上の空論」に過ぎないでしょう。
特に、今日のビジネス環境は急激に変わっており、戦略を詳細に計画してから人材や組織の能力を向上させるような余裕はほとんど存在しません。このような状況では、最初に組織の能力≒人材を強化することが、戦略の質そのものを向上させる基礎となります。

3-1-4 あるべき人材像=求める管理職像を設定する

人材要件定義の手順としては、上で考えた組織として共通で持ちたい「軸」(指針)を元に、まず各階層の主な期待役割を定めます。そのうえで、「行動」「知識・スキル」「マインド」の3つの枠組みで整理するとスムーズです。

図5 氷山モデル(「氷山の一角」という言葉があるように、物事の見えている表面のみならず、見えていない要素も含めて全体像を捉えようという考え方)

この3つの枠組みの中で、特に「行動」が重要です。期待役割を果たし、結果、戦略を実現するのは「行動」だからです。

  • 新たな自社戦略を踏まえ、求められる行動は何か?
  • その行動を生み出すために必要な「知識・スキル」「マインド」は何か?

このように分解していけば、自社戦略に紐づいた人材要件を定義することができます。

下のスライドはこの枠組みを土台にして、管理職の人材要件を整理した一例です。内容には、会社ごとの戦略や「自社らしさ」を言葉遣いに織り込むなどして、社内の誰もが「どういう人材が求められているか」をイメージしやすい表現にしていくことが重要です。グロービスがご支援する際は、企業ごとに合わせた要件を整理いたします。

特に管理職層については、具体的にどのような行動をどのレベルで取る必要があるのか、明確に言語化しておきましょう。
STEP1で、背景⇒組織⇒人材へとプロセスを追って議論することには重要なメリットもあります。関係者の中で「本質的な課題解決につながりそうだ」という認識が醸成されることです。結果として手戻りが少なくなり、納得感のある人材育成を企画できます。

3-2 STEP2:管理職層の現状とあるべき姿を比較し、その差分(課題)を洗い出す

管理職層のあるべき姿が描けたら、現在の管理職層はどのような状態にあるのかを言語化し、それらの差分(課題)を洗い出します。

3-2-1 現状の把握

まずプログラムで解決すべき課題を特定します。STEP1で定義した「あるべき人材像」と「現状」の差が、対象となる人材の育成課題となります。
課題設定で難しいのは「現状」の把握です。人事部が全ての人材・組織の状況を実地で確認することは不可能ですし、入手できる情報も限られています。
そこで、各職場の要となるキーパーソンへのヒアリング、職場診断の結果などの様々な情報を収集することが重要になってきます。人事部が管理する情報に限る必要はありません。例えば事業部へのお客様からのフィードバックなどは、分析すれば特定の部門・機能の強みや課題を雄弁に語ってくれるものです。これら定量・定性の多面的な情報を通じて、現在の人材・組織の特徴や課題を把握しましょう。

3-3 STEP3:課題に優先順位をつけ、管理職研修の対象者を確定する。そのうえで、研修のゴール/コンセプトを設計する

次のステップでは、人材育成のコンセプトをまとめます。具体的には、

  • 1:課題に優先順位を付ける
  • 2:研修対象者を決める
  • 3:ゴールとコンセプトを明確にする

の順に進めていきます。

3-3-1 課題に優先順位を付ける

洗い出した課題に対して、優先順位をつけます。例えば以下のような切り口で、優先順位を付けてみてください。

  • 緊急度:自社の経営戦略実現のため、早急に解決すべき課題はどれか
  • 重要度:経営への影響度合いが大きい課題はどれか
  • (階層別研修の場合)共通項/最大公約数:多くのマネジメント層が抱えている課題はどれか

3-3-2 研修対象者を決める

課題の優先順位が決まったら、マネジメント研修の対象者を確定します。

3-3-3 ゴールとコンセプトを明確にする

研修の対象者が決まったら、マネジメント研修のゴールとコンセプトを明確にします。
ゴール:研修終了時に、参加者はどのような状態であるのか。
コンセプト:ゴールに到達するために研修をどのような場にするのか。
よく勘違いしてしまいますが、研修のゴール=研修参加者があるべき人材として育ち切っていること、ではありません。研修は、様々ある育成手法の1つの手段であり、魔法の杖でもありません。

図6 人材育成プログラムの「ゴール」=「あるべき人材」ではない

ここでやりたいことは以下の2つです。

  • 「あるべき人材像」と「研修後の状態」を明確に分けて考える
  • 研修後の状態(ゴール)を明確に定義して関係者で認識を揃える

あるべき姿までをステップに落とし込み、どこまで当該研修で進めるか?の位置づけを考えることが重要です。

図7 ゴールはステップで捉える(例)

必ずしも「ストレッチが必要(図7の上方)寄りなのが良い」というわけではなく、下記受講対象者の「業務と研修との関連度合い」「価値観・風土」「能力」を突き合わせ、どの位置づけが無理なくストレッチ出来そうかを考えましょう。

業務と研修との
関連度合い
  • 周囲・日常の仕事、スタイル
  • 中長期を含めたキャリアの方向性
価値観・風土
  • 学ぶ姿勢や必要性の認識
  • 学び方の慣れ・フィット感
能力
  • 概念に関する基本・全体像の理解
  • 学びを促進する経験や補助施策の必要性

ゴールを決めたら、それを実現するために「この育成プログラムで何を重視するか」というコンセプトを決めます。コンセプトを決めるには、例えば「参加者が色々な人と交わり、そこで積極的に意見交換することで視野を広げる」などといった、この研修の場や期間において外せない要素を洗い出し、絞り込んでいきます。

3-4 STEP4:研修のゴール/コンセプトを実現するための具体的なプログラム/育成手法を策定する

最後に、ゴールとコンセプトを実現するための具体的な研修カリキュラムを策定していきます。
例えばプログラムや最適な手法(企業内研修/オンライン研修/アセスメント/eラーニングなど)を決めていきます。予算・日数などの制約条件も、このステップから考慮していきましょう。

3-4-1【重要】人材育成プログラムの議論に関係者を巻き込む

最後に重要なのは、育成プログラムに落とし込むプロセスをしっかりと、人事部内部・研修パートナーと議論することです。このプロセスを疎かにすると、講師ありき・手法ありきの研修になってしまうなど、適切なプログラムの設計ができなくなります。加えて、プログラム実施中・実施後に立ち返る指針がなく、軌道修正や振り返りが難しくなります。

※左右にスクロールします
研修において重要な要素 社内関係者・研修パートナーと議論した場合 社内関係者・研修パートナーと議論しなかった場合
Quality:研修の品質
  • (社内外パートナーとの議論の結果)講師に求める要件が明確になりやすい
  • 「教材の質」や「研修会場のロケーション」など、講師以外の要素の検討漏れが少ない
  • 講師に求める要件が明確にならない
  • 「教材の質」や「研修会場のロケーション」など、講師以外の要素の検討漏れの懸念
Cost:費用対効果
  • 社内での合意形成がスムーズ
  • コストを効果的に使い、良好なROI(投資対効果)を達成
  • 社内での合意形成が困難
  • 期待されるROI が得られない可能性
Delivery:デリバリの質
  • 希望日程や研修に求める条件を決めやすい
  • 上記ゆえ、研修会社へのデリバリ上のリクエストが円滑に連携される
  • 希望日程や研修に求める条件が決めにくい、決めてもちゃぶ台返しに遭う懸念
  • 上記ゆえ、研修会社へのデリバリ上のリクエストが後手になる
Development:能力開発の内容
  • 研修の目的や目標が明確
  • 必要なスキルや知識を適切にカバー
  • 実践的で効果的な内容
  • 研修の目的や目標が不明瞭
  • 必要なスキルや知識を見逃す可能性
  • 効果的でない内容の可能性
Management: 運営体制
  • 信頼関係が築かれる
  • 双方の期待や役割が明確化し、都度のチューニングがスムーズ
  • 本質的な議論が可能
  • 改善点が具体的に示され、次回への改善が円滑
  • 信頼関係が希薄
  • 連携の摩擦やミスマッチが発生する可能性
  • 手法ありきの議論
  • 何を改善すれば良いかが不明確で、次回への改善がしにくい

特に、「Management:運営体制」は重要です。
研修会社の担当者は、事前ヒアリングや研修後のフォローなど、自社のニーズに応えてくれるかどうかは大事なポイントです。

導入事例
雪印メグミルク株式会社 様
人材育成担当者様の声はこちら
  • グロービスの担当者から受講者アンケートを取りまとめてご報告いただいたり、プログラムを更に良くするにはどうすればよいか、知見をいただけていたりしているので、それらを踏まえながら定期的にブラッシュアップしています。
  • 佐々木さんから提示される資料は、過去に人材開発に携わってこなかった私にも、非常に分かりやすいものばかりでした。また、佐々木さんはグロービス入社前はメーカーで働かれていたので、前職時代の経験も交えながら、ビジネスベースでの人材育成論を交わせたことも非常に良かったと思います。情報交換を通じて信頼関係が生まれていたので、その後の提案も違和感なく受け入れることができましたね。

また、事後のフォローや、効果検証には、人事部だけでなく現場のマネジメントに協力してもらう必要が出てくるかもしれません。プログラム実施前に事後のフォローを設計し、関係者に協力を取り付けておくことで、より企画意図にかなった研修にすることができます。関係者を巻き込む際には、STEP1・2・3の整理が役立つはずです。プログラムを必要とする理由・目的・ゴールを筋道立てて説明し、協力を得ましょう。

役職別に求められるリーダーシップは違う!人材要件のご参考に
管理職研修企画のステップ4 をさらに詳細解説

特に上記4つのステップの中でも、STEP1の管理職層の人材要件の言語化にお悩みになる企業も多いことと思います。
グロービスでは、これまで累計約6,700社(年間約3,300社)への多種多様なサービスとソリューション提供を通して、国内外の各業界をリードする企業様の育成サポートをさせて頂いております。人材要件・各階層のあるべき姿の言語化・研修のゴール・コンセプト設定・育成手法の策定までお手伝いすることが可能です。上記のプロセスのご相談は無料でお気軽に出来ますので、下記よりお問い合わせください。

CHAPTER
04

管理職研修の内容
(カリキュラム・プログラム)

では、具体的に管理職研修の計画(企画)を立てる4ステップを経て研修のゴールやコンセプトを決めた後は、いよいよ具体的なプログラムを策定するフェーズになります。研修の種類と内容に関し、検討すべき軸は2つあります。

  • 研修手法(学び方)
  • プログラムの種類(学ぶ内容)

です。
それぞれ特徴がありますので、メリットとデメリットを踏まえ選択・使い分けをすることをおすすめします。

4-1 研修手法の種類(学び方)

※左右にスクロールします
対面研修
(自分以外の誰かと学ぶ)
非対面研修
(自分一人で学ぶ)
企業内研修 スクール通学 e ラーニング
概要 社内・外部講師を用い、同じ会社の社員と学ぶ手法 外部スクールなどへ通い、他社人材と学ぶ手法 動画視聴など、受講者による自己学習が中心の手法
メリット
  • 自社ならではの目的・課題に合わせた研修設計が可能
  • 社内人材の交流や共通言語づくりが可能
  • 一度にまとまった人数が研修受講できるため、スクール通学型研修と比べ、受講者一人当たりの費用を抑えやすい
  • 受講者の課題や期待に応じて、個別に派遣可能
  • 業界・職種・年齢・性別などが異なる他社人材との議論や交流が可能
  • 一人から受講可能であり、予算や日程などの調整がしやすい
  • 派遣先にもよるが、一般的には手離れがよく、人材育成担当者(事務局)で対応することは少ない
  • 時間と場所を選ばないため、多くの従業員に提供できる
  • (左記と比べて)安価で導入できるため、研修コストが削減できる
  • 幅広いテーマを一斉に提供できるため、受講者の興味関心に沿った学びを提供できる
デメリット
  • 社内がゆえに同じ思考、行動様式、価値観を持つ人材が集まりやすい
  • 社員一人ひとりの個別性に合わせた研修の実施が難しい
  • 他流試合型研修と比べ、人材育成担当者の皆様への負担がかかりやすい
  • テーマ、開催時期、時間帯、会場場所、講師など、自社でコントロールできない
  • 他社受講者の人数、属性などの詳細は、参加するまでわからない
  • 業務を優先してしまい、受講の優先順位度が下がりやすい
  • 自己学習で完結するため、期待できるゴール(受講後の到達度合い)は知識習得までになり、業務パフォーマンスに直結しにくい
  • 受講者の目的意識・課題意識が明確でないと、受講テーマを選択出来ない
向いている
ケース
  • 意図した学習効果を、対象層へ一度に生み出したい時
  • 組織内に共通の思考の型、価値観、課題意識を共有したい時
  • 部門横断の人的ネットワークを意図的に構築したい時
  • 対象層に業界、自社、自分特有の思考の癖の自覚や客観視の機会を持ちたい時
  • 他社人材との議論を通じ、異なる視点を得ることで、対象層の視野を広げたい時
  • 研修の全体コストを下げたい時
  • 対象者自身に強い目的意識、課題意識がある時
  • 受講後のフォローまで一貫して設計出来る時

それぞれ向いているケースが異なるため、特徴を知って使い分け・併用しながら育成を進めることが必要です。

4-1-1 対面研修

対面研修とは、「自分以外の誰かと一緒に学ぶ」学習形式を言います。リアル形式で物理的に集合して研修を受けることもあれば、Zoom などのオンライン形式で集合することもあります。いずれにせよ、講師に加えて他の受講者と共に学ぶことで、自分になかった視点や気づき・多様な視点を得ることが可能です。

対面研修での学習手法には下記のような手法が含まれており、1日の研修の時間内で受講者のペースにあわせてそれらを効果的に組み合わせることが重要です。

座学

講師から受講者に対し一方通行でレクチャーを行い、各階層別に必要な業務知識やスキルを社員にインプットするものを言います。学校教育より慣れ親しんだ学習手法ではありますが、座学はあくまで知識やノウハウをインプットすることに主眼を置いています。得られた知識を実践でいかに使っていくかは、多くの場合受講者一人ひとりに委ねられているのが実情です。

グループワーク

受講者数名を1つのグループにし、グループごとに議論を行い、考えを深めていく手法をグループワークと言います。クラス全体で議論を行うよりも発言のハードルが低く、受講者の参加度合いが増すのがメリットです。ただ、グループの人数が多くなるほど、フリーライダー(ただ乗りする人)が発生する懸念が高まるため、1グループの適正人数は4~5名と言われています。単に議論を行うだけでなく、時間内にグループごとに1つの結論を出させることで

  • 論理的に自分の考えを説明する能力
  • グループメンバーを説得する能力
  • 異なる意見をまとめ、合意形成をする能力

を醸成することも可能です。

ロールプレイ(ロールプレイング)

受講者同士で実際のビジネスシーンを想定した模擬的な劇を実施し、そこでの言動を観察または相互評価する手法を言います。学んだ内容を実際に研修中に試すことが出来るのがメリットです。また、その中で出来なかったことは自身の課題感として受け止めることが出来ます。
「劇だから」といい加減に行うと学びを得ることが出来なくなるので、受講者が真剣に行うよう場面設定を行うことが必要になります。

ケースメソッド

ケースメソッドは一言で言うと「企業経営の仮想体験」と表現出来ます。「ケース」とは、ある企業が実際に直面した状況を忠実に再現した教材のことです。ケースには、ある企業の置かれた市場環境や競合状況・社歴やリーダーの性格・技術的な強みや製品の特徴・財務情報など、あらゆる情報があえて雑多に書き込まれています。
ケースメソッドでは、このケースに基づいた環境分析から戦略立案、意思決定までのプロセスを、クラスディスカッションなどを通じて実際に体験します。その過程で、経営課題を解決するための「答え」を自ら導き出せるようになることを目指します。

対面研修の手法は主に【企業内研修】と【スクール通学】があります。

【企業内研修】自社ならではの目的・課題に合わせた研修設計が可能

企業内研修の最も大きなメリットは、自社でコントロールを効かせやすいことです。
どの経営課題を解決するか、そのためにだれを集め、どのようなテーマを扱うか、など自社の意図を反映させた設計が可能です。管理職研修は自社の経営課題に即した課題感に基づき設計されることが多いので「一定の対象層が存在し、社内の共通言語をつくることを優先したい」という意味合いで企業内研修を選択されることが多いです。

グロービスの企業内研修は①事前の徹底準備②当日の徹底した議論③振り返りによる学びの定着によって、学びの効果を最大限に高めています。

事前予習
事前予習で各自の見解を用意し、クラスに臨んでいただきます。
  • 事務局様との連携による参加者の状態把握
  • 講師の選任と期待値・目的のすり合わせ
クラス当日
導入
グループディスカッション
クラスディスカッション
まとめ
自らが主体的に考える力を育成するための「思考力開発型」のスタイルが特徴です
  • ワークショップ方式:数多くの演習問題を受講生同士で議論します
  • インタラクティブ・レクチャー方式:講師からの問いかけを通じて、フレームワークに対する理解を深めます
  • ケースメソッド方式:実際の企業事例(ケース)をもとに、課題解決力(分析・課題特定・意思決定)を鍛えます。
事前予習
3つの考え方で振り返り、学びを定着させます
  • 考えたことや感じたことを言語化します
  • 学びから普遍的な教訓を引き出し、原理原則化します
  • 「本当に自分ができるか?」と自分事化します
【スクール通学】異業種交流での刺激

スクール通学型の大きなメリットはもちろん、他社人材との交流です。
一人ひとりの受講者の持つ課題や期待役割に合わせたスクール・科目への派遣が叶うため、主に選抜研修に用いられることが多いです。管理職研修の場合は「対象層が多くなく(企業内研修を実施するほどは存在せず)、社外の同じ立場の管理職人材と交流し対象層の視野を広げてほしい」という意味合いでスクール通学を選択されることが多いです。

グロービスのスクールでは、多様性に富んだ受講者同士が切磋琢磨する他流試合の場として、実践的なマネジメントスキル開発、人的ネットワークの構築が可能です。社内では得られない緊張感と刺激が、視野を広げ、固定化した考え方を解きほぐします。1名様からでもご派遣が可能な一方、企業内研修と組み合わせた長期の研修プログラムとしてもご活用いただいています。

4-1-2 非対面研修

非対面研修とは、「自分一人で学ぶ」学習形式を言います。時間や場所を問わずに学びの機会を提供できる便利さから、多くの企業で導入されています。ただ、一人で学びを完結させるので学習効果も限定的になることを知ったうえで、最大限の効果を得られるための活用をすることが必要です。

【e ラーニング】自律的に学ぶ

e ラーニングは動画などで自己学習を進める学習手法です。 以下のようなメリットを享受出来る手法として、コロナ禍以降急速に普及しました。

  • 時間と場所を選ばないため、多くの従業員に提供できる
  • (企業内研修と比べて)安価で導入できるため、研修コストが削減できる
  • 講師が介在しないため再現性のある学びが提供でき、一定の質が担保される
  • 幅広いテーマを一斉に提供できるため、受講者の興味関心に沿った学びを提供できる

一方、導入するだけなら手軽ではあるものの導入後の運用が難しく、多くの工数/手間や運用のためのナレッジが必要です。なぜならe ラーニングはその手軽さゆえ、学習する/しないは、受講者の主体性に委ねざるを得ないからです。例えば「時間と場所を選ばない」という特徴は、受講者が業務を優先してしまい、e ラーニングの優先順位を下げる理由になるでしょう。

e ラーニングを活用した育成施策を成功させるためには、コンテンツの良し悪しはもちろんのこと、運用における育成担当者の工夫が不可欠です。

4-1-3 学習手法のブレンディング

育成手法に完璧なものは存在しません。どれを選択しても必ずメリットとデメリットがあります。しかし、複数の育成手法を組み合わせることで、それぞれのデメリットを最小化できるのがブレンディッドラーニングの特長です。ブレンディッドラーニングとは、「企業内研修やe ラーニングなどの複数の育成手法を組み合わせた学習形態」のことを指します。

コロナ禍以降、リアルとオンラインのブレンディッドラーニングも増えています。どのような軸で学習手法のブレンドを行うべきかについては、下記コラムをご参照ください。

CHAPTER
05

管理職研修における、プログラムの
主な種類(学ぶ内容)

管理職研修に必要なプログラムの種類には以下の6種類があります。受講対象者層の課題に応じて優先順位をつけ、期間や予算などの制約条件によって調整していきましょう。

5-2-1 思考系領域

チーム・部門を率いる管理職に対し正しい思考プロセスを身に付けるために、問題解決力やコミュニケーション力、仮説構築力などを強化する科目です。管理職が担う「自部署の問題解決をする」「制度や仕組みの企画を立案する」「部門を越えて自らの企画をプレゼンテーションする」「難しい場面での折衝を行う」にあたり不可欠な要素をカバーします。

思考系領域のプログラムラインナップはこちら
5-2-2 ヒト系領域

ビジネスにおいてチーム・部門が成果を出すために必要なことを、リーダーシップ、組織のあり方、人事制度などから考えるプログラム群です。リーダーがメンバーより一段高い視野を持つ重要性を認識するとともに、周囲を動かす影響力をどう行使するかも学びます。

ヒト系領域のプログラムラインナップはこちら
5-2-3 モノ系領域

企業や組織がどのように目指すべき方向性を設定し、達成に向けた道筋を描くかを、経営戦略・マーケティングという観点から考えるプログラム群です。リーダーシップ発揮にあたっては、より高い視座から自分や自社を取り巻く環境を捉えることが必要であることを理解する必要があります。戦略立案の意味と意義を理解し、基本的な分析手法を習得することで戦略的な視野を培います。

モノ系領域のプログラムラインナップはこちら
5-2-4 カネ系領域

アカウンティング(財務諸表の読み解き)とファイナンス(投資の定量的評価)の観点から、企業や組織の活動を考えるプログラム群です。戦略や事業の現状、特徴がどのように財務データに反映されているのか、財務データから経営上の問題をどう発見し、意思決定を行えば良いのかをつかみます。

カネ系領域のプログラムラインナップはこちら
5-2-5 志領域

志(自らの軸)や理念(企業の軸)と向き合うことを通じて、使命感を醸成することを目指します。
ビジネスの現場や意思決定で大きな壁に直面したとしても、揺るがない「志」があれば諦めることなくチャレンジを続けられます。自らの内面と徹底的に向き合う経験は、湧き上がるエネルギーの源になり、困難な意思決定の場面においても自らを支えます。

志領域のプログラムラインナップはこちら
5-2-6 統合領域

企業が競争優位を築くために必要な、経営のメカニズムを理解します。顧客価値を作り出すために、自社のビジネスシステム・経営資源・マネジメント・理念・組織文化等が全て機能していることを理解し、総合的な意思決定の疑似体験を行います。

統合領域のプログラムラインナップはこちら

5-2-7 テーマ選びに迷ったら

テーマ選びに迷ったら、第3章に立ち戻り、下記の問いに答えていきましょう。そうすることで今着手すべき優先的なテーマが絞り込まれてくるでしょう。

  • 育成の目的は何か?(出来るだけ具体的に)
  • 育成対象の重点課題や、特に期待するコンピテンシーは何か?
  • 能力開発課題や期待するコンピテンシーの強化に資するスキル・マインドは何か?
  • 育成のゴールはどこか?(研修終了時点で、携えてほしい意識・姿勢、知識レベル、行動発揮などで状態定義される)
  • ゴール到達に向けたコンセプト(場の位置づけ、成長ストーリー・道筋)をどうするか?
  • 制約条件や自社・自部門の育成方針はどのように定義されているか?

社内で十分に課題整理することが難しい場合はグロービスにお問い合わせください。現状について伺いながら、課題整理から伴走させていただきます

CHAPTER
06

管理職研修の対象の
選定方法

6-1 対象層選定で起きる悩ましさ

階層別研修を新たに立ち上げた場合、受講対象層の判断は非常に悩ましいものです。階層別に対象が分かれているはずなのに、なぜ悩ましいのでしょうか?
それは、たとえ同じ課長クラスであっても、経験・思考・意欲に幅があるからです。着任間もない方もいれば5~10年キャリアを積んだ方もいるはずです。学習意欲が高いベテランの方であれば、「自分の課長就任時には研修の機会がなかった」と不公平を感じることもあります。一方、「自分は経験豊富なベテランだから、研修など必要ない」と口にする方もいるでしょう。

6-2 対象層選定で意識したいこと

特に管理職研修の立ち上げ初期は、受講対象層に頭を悩ませる人事の方は多いようです。以下2 点の大切なことを意識してみると良いでしょう。

定義と根拠を明確にする

例えば「新しい階層別研修は着任何年目までを対象とし、一巡した後は新任者のみを対象とする。なぜならば・・・」のような定義と根拠を現場に示す。

納得いくまで現場と対話を重ねる

現場からフィードバックをもらい、定義に反映させることで、現場の納得感を得られます。また、共に考えるというプロセスを踏むことで、現場の当事者意識を引き出すことも可能です。こころよく対象者を送り出して貰うためには、細やかなオペレーション面にも気を配らなければいけません。

CHAPTER
07

管理職研修の
実施時間・期間・頻度

対象層の次に重要な点としては「いつ」実施するかというところです。多忙な管理職の時間を押さえるのは容易なことではありません。とはいえ管理職の繁忙に配慮をし過ぎて教育機会が制限される状況は、本来あるべき姿ではないでしょう。受講者本人・現場の納得を得た状態で研修に臨んでもらうためにも、下記の問いに十分答えられる状態にすることが望ましいです。

7-1 受講開始日・時期はいつか?

研修の対象者や選定方法によって適切な時期は異なりますが、例えば新任管理職向けの研修の場合は、実務に入る前・任命後まもなく研修を行うことが多いでしょう。2-1にもあるように、組織を円滑に運営するために必要な知識や期待役割を果たすためのスキル・マインドを習得することを目的とするためです。既任者の場合は、業務繁忙の時期や年度初め・年度終わりの時期を避けてスケジューリングを行うことが多いです。
また、何日かにまたがる日程の場合、以下も悩ましいところです。

①一気に行う

受講者同士での凝集性が高まりやすく、その分議論が深まりやすい側面がありますが、管理職が職場を不在にする期間も長くなります。

②時期を分けて行う

1回あたりの受講者の負担が軽く済みますが、インターバル期間中の学習や受講者同士の交流度合いを決めることで、中だるみを防ぐことが必要になります。

7-2 社内通知はいつ、どのような媒体でどのように行うのか?

社内告知は主に受講者本人向けとその上長向けと2種類あります。基本的に上長通知と本人通知が同時になされるか、または上長通知の方が先にされるかのどちらかになるでしょう。告知の際にはメールまたはラーニングシステム上の告知などで、下記が通知されることが多いです。

  • 研修日程
  • 研修の目的
  • 対象者
  • 研修内容
  • タイムスケジュール
  • 講師(プロフィール)
  • 事前準備の要否とその内容

事前準備がある場合、実務に忙殺され十分に出来なかった…ということがないように、約1か月程度の余裕をもっておきたいものです。

7-3(外部委託する場合)いつまでに、どのように発注するか?

研修を外部委託する場合、「研修実施希望日の●日前までに発注することが必要」といった制約が設けられている研修会社もあります。「実施希望日に研修実施が出来ない」という事態を防ぐためにも、検討初期に発注時期と希望日に実施をすることが可能かの確認はしておくべきでしょう。

7-4(外部委託する場合)研修のキャンセル判断は、いつ、何を基準に行うか?

滅多にないことですが、下記のような異例事態に見舞われた際に、日程変更やキャンセルがどのようになされるか・簡便に出来るかの確認も必要です。

  • 台風などの災害時
  • 受講者人数が大幅に減った時
  • 講師が急病などの時
CHAPTER
08

【重要】管理職研修の効果測定の
方法

研修の効果測定をどうすべきか。研修の効果測定・効果検証の重要性は高い一方、人の行動・能力・意識の変化を促すという研修の性質上、効果の測定・可視化は困難です。困難なりにどのような取り組みができるか、グロービスなりの方向性を示したいと思います。

8-1 効果の定義(何を効果とするか)

研修効果は、参加者の「意識・マインド」「能力」「行動」の変容により構成されます。研修で目指す、「意識・マインド」「能力」「行動」の状態(ゴールイメージ)や変容の度合いは、プログラムにかける物理的な時間の長短によっても変動します。研修の効果を「意識・マインド」「能力」「行動」のどこで測定したいかを決めることが第一歩となります。

※左右にスクロールします
図8 研修効果の定義例

8-2 効果測定の手法

次に、効果(意識・マインド、能力、行動の変容)を測定する際には

  • 誰が(本人・上司・周囲)
  • いつの時点で(研修直後、研修数か月後)
  • 何を(意識・マインド、能力、行動)
  • どのように(アンケート、面談、報告、アセスメント・テスト、行動調査、課題)

測定するかを決めておくことが重要です。

8-3 効果を高めるための仕掛け

プログラムの質が高くても、参加者の実務における「意識・マインド」、「能力」、「行動」につながる仕掛けがなければ、実務に活かしきれずに終わってしまう人が増えてしまいます。「効果測定」だけでなく、「効果を高める仕掛け」の両方をあらかじめ検討しておくことが重要です。
例えば、下記のように研修受講前・受講中・受講後で分けて考えることが出来ます。

  • 受講前:事前説明会・オリエンテーション、上長との目標設定
  • 受講中:社内での中間報告会、振り返りアサインメント(学びの言語化)、アンケート
  • 受講後:社内での研修報告会、フィードバック面談、アセスメント・テスト、多面的な定量評価(360 度行動調査など)
事例付きお役立ち資料
CHAPTER
09

管理職研修の成功事例と
成功のポイント

9-1 日立アカデミー株式会社:オンライン研修で、管理職の手前層に経営知識やスキルを付与する

日立アカデミー株式会社では、アシスタントマネージャー層からマネジャー層の方向けに研修のオンライン化を進めています。
表れていた課題として、

  • マネージャー層の研修の場で、経営知識が不足しているマネージャーも散見されている
  • そのため、アウトプット中心のマネージャー研修を、効果的な場にできなかった

ことから「マネージャーになってからマネジメント教育をやっても遅いのだ」と、日立の『オンラインMBA』を立ち上げられることになりました。そこには「マネージャーに必要な経営知識やスキル」を自律的に身につけて欲しいという願いがあったそうです。

そこでグロービスに相談をいただき、日立の「オンラインMBA」の普及や進化について一緒に進めてまいりました。日立の「オンラインMBA」の開催当初は地方拠点の受講者や既任のマネージャー層から「この研修を受けたい」とのご期待の声が届いたそうです。数年継続して受講者が増え、人材育成を支える存在になりつつあります。
これにより、単に「リアルでの研修をオンラインに移行させた」だけではない「自律的・自発的学習」の土台になる学びを整備することが出来ました。

図9 日立アカデミー株式会社での事例

今後はオンライン研修そのものを進化させてリアル型研修と使い分け、より深い学びと感動を与えられる研修にブラッシュアップしていきたいとのことです。日立アカデミー株式会社様の事例は下記で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。

グロービスのオンライン研修はこちら

9-2 事例から学ぶ成功のポイント

上記事例からは、管理職研修の企画について大きく2つの成功ポイントが伺えます。

  • 自社の取り巻く環境の変化を捉え、管理職に求められていることは何かを具体的に考えること
  • 継続してプログラム・仕組みのアップデートを行うこと

9-2-1 自社の取り巻く環境の変化を捉え、管理職に求められていることは何かを具体的に考えること

研修プログラムを考えるには、第3章でお伝えしたようにまず「どのような人材を育成すべきか?」「どのような組織をつくるべきか?」という人材・組織の戦略を立ち止まって考えてみることが重要です。

※左右にスクロールします
図10 管理職研修の計画(企画)のSTEP1
STEP1「外部環境の変化」~「自社戦略の変化」

上記を理解するために「環境変化」と「戦い方」に注目します。
例えば、

  • マクロ環境の変化のうち、自社ビジネスに大きな影響を及ぼすものは何か?
  • 顧客が求める価値はどのように変わっていくのか?
  • それに対し競合はどのような戦い方をするのか?

環境変化に関するこれらの問いの答えが、自社の戦略には集約されています。

STEP1「自社組織の変化」

次に「自社組織の変化」を明らかにしていきます。

  • 経営陣は自社の強みをどのように捉え、活かし、勝とうとしているのか?
  • それを実行する人材・組織に求められる変革の度合いはどのくらいか?
  • 変革のスピードはどうあるべきか?
  • 変革において何が難所となりそうなのか?

これらを押さえることが、戦略実現のために人事として注力すべきことの優先順位付けやロードマップ(行程)策定につながります。
一般に、人・組織の変化には時間がかかるものです。だからこそ人事部はいちはやく自社の戦略を押さえ、先を読み、「戦略を実現するための人・組織の姿≒管理職の姿」を準備する必要があるのです。

9-2-2 継続してプログラム・仕組みのアップデートを行うこと

研修プログラムは一度策定し、実施して終わりではありません。受講者の行動変容につながったかどうかを効果検証し(効果測定の方法については第8章で述べています)、アップデートを行うことが重要です。
しかし、研修に対する受講者からのアンケート数値や一部の生の声といった「言語化され表面的に見えているもの」に敏感になりすぎると本質を見落とすことがあります。

もちろん、アンケート数値や生の声をしっかりと把握し、研修の振返りの材料とすることも重要です。しか し、人材の育成を担い、ひいては組織の成長を預かる育成担当者として

  • 何のために行う研修か
  • 研修を通じて、受講者にどのような気づきや行動を促したいのか

という企業側の意図(場合によっては言語化されづらく、表面的には見えにくいもの)にしっかり目を向け、そのうえで育成施策の見直しを進めることも重要ではないでしょうか。
制約があってもあきらめず、目的の達成に向けてより良い方法はないかと常に見直すことが重要です。

CHAPTER
10

管理職研修でやりがちな3つの
失敗要因(難所)と
その乗り越え方

「管理職研修は実施することが当たり前」とされていることから、下記の落とし穴に陥ることが多くあります。

このような落とし穴に陥らないためにも、あらかじめ失敗要因と乗り越え方を確認しておきましょう。

10-1 前例踏襲で進めてしまう

新任管理職に求められる能力と行動、それに対しての受講者の抱えている課題は各社それぞれ、かつ時代とともに変化しています。その理由は、以下の2点が考えられます。

  • 1.外部環境が変われば、会社の経営戦略が変わり、それに伴い組織および新任管理職に求められることも変わるから
  • 2.企業によって、採用基準・評価・配置・任せられる仕事が違うため、新任管理職になるまでに培われる能力は異なるから

まず、外部環境がここ何年も変わっていない企業はほとんどありません。加えて、採用状況も変わっており、入社時の能力やマインドも変化。管理職昇進までに経験した仕事も過去から変わっています。少し立ち止まり、自社・自組織が置かれている環境を冷静に把握しつつ、いま一度、研修の目的・内容にフィット感があるか見直しましょう。

10-2 流行りものに飛びついてしまう

最近よく聞くトレンドのテーマをうまく自社の研修に取り入れたいーそういったオーダーを企業様からいただくことも多いですが、グロービスでは「少し待ってください」とお伝えするようにしています。

  • なぜそのテーマが重要なのか?
  • それは同社の経営戦略を推進するにあたり、組織課題として解決すべき優先順位の高いテーマなのか?

組織として取り組む理由・目的が明確でないと、せっかく学んだスキルが生かせずに形骸化してしまうからです。どんなスキルを学んでも、生かせなければ、忙しい社員からはありがた迷惑と思われ、経営陣からは「研修成果は? 意味があるのか?」と詰問されてしまうでしょう。
繰り返しになりますが、外部環境、自社の戦略がどう変化しているか? その変化が組織にどう影響しているか? という論点をしっかりと押さえましょう。そのうえで、何が組織の解決すべき課題になっているかは、第3章で述べたSTEPに沿ったストーリーで押さえておきましょう。

10-3 受講者の能力開発すべきポイントを取り違える

3つめの管理職研修の落とし穴が、カリキュラム選定時に受講者の能力開発すべきポイントを取り違えることです。
例えば、論理思考力や経営戦略の視点といった「スキル課題」か、管理職としての役割認識という「マインド課題」といった別々の課題が管理職に存在しうるわけです。しかし、実際の管理職研修では、スキル課題があるにも関わらず、マインド課題を解決する研修を実施しているケース、またはその逆のケースが実に多いのです。これを取り違えると、本来解決したい課題が解決できずに終わってしまいます。
重要なことは

  • 現状自社で起きていることは何かを押さえ
  • どのような状態が理想(ありたい姿)かを考え
  • ありたい姿に到達するためには、どのような能力を付与すべきか

を具体的に捉えることです。

CHAPTER
11

現場の要である管理職研修は、
外部の研修会社活用がおすすめ

11-1 外部研修会社を活用すべきか

管理職研修は組織上重要な取り組みだけに、研修を外注/外部委託をするべきか、もしする場合、どのようなポイントで選べば良いのか迷うものです。そこでおすすめしたいのが、マトリクス表を活用して方向性を決める方法です。例えば「人事部門の業務はひっ迫しているか?」×「内容は自社で出来る難易度か?」の2つの軸で整理するような考え方があります。

特に後者の「内容は自社で出来る難易度か?」の点では、外部委託であれば人材育成のプロフェッショナルに研修を委託できるため、手間をかけず質の高い研修を実現できます。

一般社団法人日本経済団体連合会が実施した「人材育成に関するアンケート調査結果」では、高度専門分野における能力や幅広い知識・教養の取得・開発をするために、「外部との連携を検討している/取り組んでいる」という回答が75%を超えています。この結果からも、人材育成の方法として外部研修を選択しているケースが多いことが分かります。

内部研修と外部委託では、自社企画運営か委託先の企画運営かが大きな違いとなります。特に管理職研修では自社にノウハウのない高い知識や技術の習得や、注力したい課題やテーマへの取り組みに集中することが多いため、外部委託をおすすめします。

※左右にスクロールします
内部研修 外部委託
概要 自社内で企画、運営する研修 外部の研修会社に委託して実施する研修
代表的な研修方法
  • OJT
  • 企業内研修(自社で企画、運営)
  • 企業内研修(委託先が企画・運営)
  • スクール通学(公開型研修)
  • 企業内研修(講師派遣型)
メリット
  • 自社の考えやビジョンを反映できる
  • スケジュールやプログラムなどのコントロールができる
  • 金銭的コストを抑えられる
  • 人材育成に携わるプロの視点でプログラム設計や研修ができる
  • 社内での負担が少ない
  • 社内にないスキルや技術を学べる
デメリット
  • 社内での負担が大きい
  • 自社に知識やノウハウがないと実施しにくい
  • 開催場所やスケジュールのコントロールがしにくい
  • 自社の考え方に合う研修にならない場合がある
  • 金銭的コストがかかる
柔軟性
自社でコントロールできる
自社でコントロールしにくい
知識やノウハウ
不足しやすい
目的や課題に応じて対応
柔軟性
社内負担が大きい
社内負担が少ない

11-2 管理職研修を外部委託する場合の選定ポイント

社内研修か外部委託かの判断ができ、研修会社に外注/外部委託するというコンセンサスが取れたら、管理職研修の要件をまとめて各社に提案を募ります。その際、事前に「どうやって選ぶのか」の決め方も決めておくことが望ましいでしょう。ただ、いざ考え出すと、どのような視点で選べば良いのかと迷うものです。
その際、役立つのが「QCDDM」というフレームワークです。

図11 研修会社を選ぶときのポイント「QCDDM」

管理職研修開催にはそれなりの費用が掛かります。また、忙しい管理職を一定時間拘束し、なおかつ事前課題の準備や移動・宿泊の手間などの負荷(見えないコスト)も掛かります。研修中は実務がストップするので、機会損失も出てきます。それだけの投資をする訳ですから、研修会社の選定はこだわりましょう。

QCDDMの詳細についてはこちらのコラムをご覧ください
CHAPTER
12

グロービスの管理職研修
ソリューションのご紹介

12-1 企業内研修

グロービスでは、人材育成ご担当者様との議論を通じて、最適な企業内研修プログラムをご提案いたします。お客様企業の人・組織に関する経営課題に応じ、定型・テーラーメイド型いずれかのプログラムを、リアル/オンラインを問わずご提供しております。

※左右にスクロールします
定型プログラム テーラーメイド型プログラム
プログラム要素 人・組織に関する共通性の高い課題を解決するために、体系化されたプログラムを個社ごとに組み合わせて提供 人・組織に関する個社ごとの課題に対し、テーラーメイドで設計したプログラムを提供
提供方法 リアル / オンライン
定員 1クラス8名〜25名
研修期間 1日7時間(リアル)
1日3時間×2回(オンライン)
1日3.5時間〜(リアル/オンライン)

弊社の専任担当が、貴社の研修プロジェクトを最初から最後まで一貫してサポートします。当初の目的から逸れることがないよう、事務局様や経営幹部の皆さまと連携しながら、研修前の打ち合わせからゴールまで、成果を最大化する役割を担います。

講師には、経営学の体系的な理解に加え、自らビジネスリーダーで現場感覚を備え、実践につながる学びの場作りができるスキルが不可欠です。グロービス講師陣はこのティーチングスキルを徹底的に鍛えており、継続的にスキル向上に努めています。

12-2 スクール型研修

グロービスでは様々な異業種オープンスクールを「リアル」でも「オンライン」でもご提供しています。
多様性に富んだ受講者同士が切磋琢磨する他流試合の場として

  • 実践的なマネジメントスキル開発
  • 人的ネットワークの構築

が可能です。社内では得られない緊張感と刺激が、視野を広げ、固定化した考え方を解きほぐします。
1名様からでもご派遣いただくことができる一方、企業内研修と組み合わせた長期の研修プログラムとしてもご活用いただいています。

12-3 e ラーニング

良質なデジタルサービスで、効率的かつ効果的な能力開発をしていただけます。定額制動画学習サービス「GLOBIS 学び放題」「GLOBIS Unlimited」や、アウトプットを重視した動画学習サービス「eMBA2.0」などをご用意しています

12-4 アセスメント・テスト

グロービスの提供するアセスメント・テスト(GMAP)とは、ビジネスパーソンの能力を客観的に測定するテストであり、測定領域としては、

  • 考える力・論理思考(クリティカル・シンキング)
  • 経営の定石(ビジネス・フレームワーク)

があります。GMAPは、グロービスが提供している「通学型ビジネススクール、企業内研修、e ラーニング、書籍」 といったコンテンツの基本的な考え方をベースに開発しており、経営知識の理解度に加え、実践での活用度も測定します。日本のビジネスリーダー層との相対的な比較も可能です。

12-5 組織開発/事業開発

グロービスの組織開発/事業開発の提供価値は、HRBP(HRに関する外部のビジネスパートナー)と同じ「事業開発ができる組織/人をつくる」ことです。単なる研修の枠を超え、人と組織を変えることで経営者の課題解決にまで踏み込みます。

・組織開発

グロービスの組織開発支援サービスでは、企業の中核人材である、経営リーダーの意識・行動を変え、組織への働きかけが変わることをサポートします。その結果、良い組織づくりへ繋げます。良い組織とは“健全さ(メンテナンス)”と“成果を出す強さ(パフォーマンス)”を兼ね備えた組織であり、これらを両立して高めることを目指します。(≠健全さのみ高める)

・事業開発

グロービスの新規事業開発支援サービスでは、貴社の事業開発におけるアウトプットの創出を力強く後押しします。
ビジネスアイデアの探索・検証(アイディエーション)から事業モデルの検討(アクセラレーション)といった事業開発の序盤は、行きつ戻りつの連続で迷走がつきものです。
そのような場において、グロービスが経営教育で培った知見ならびに合意形成・意思決定を後押しするファシリテーション力は、非常に有効です。貴社の新規事業開発チームに、健全な試行錯誤の機会を提供します。

12-6 グローバルでの研修(英語)

グロービスでは、グローバル人材として力を発揮するための人材育成プログラムを、英語、中国語、日本語の3言語にて幅広く提供しています。グロービスのサービスは、

  • 実務で使える実践的な学び
  • 選び抜かれた実務家講師
  • 先進的なオンラインの取組み
  • 専任コンサルタントの伴走

といった4つの特徴を備えています。
グロービスは、日本と中国(上海)、シンガポール、タイ、ベルギー、アメリカに拠点を構え、これまでに、海外15ヶ国以上での研修実績があります。オンラインでの提供実績も豊富にあり、様々な国籍の方に向けて、グローバル人材育成プログラムを手がけてきました。またグローバルネットワークを活かし、海外の一流ビジネススクール(ISB、CEIBS)との提携も実現し、イマージョン・プログラム(海外の現場に飛び込み実体験するプログラム)も実施しています。

CHAPTER
13

管理職研修でよくある疑問と
その回答

13-1 管理職研修で学ぶべきスキルがたくさんあるようで、どれから優先順位をつけるべきか分かりません。

第3章で述べたSTEPに沿ってある程度のテーマが絞り込めても、管理職に求められる知識・スキルやマインドの中から研修のテーマを選ぼうとすると、なかなか議論がまとまりませんよね。
そこでまずやるべきは、管理職がこれまで必要な能力を身に付ける機会があったかを整理し、不足している点を特定することです。その際、OJT(業務経験)、Off-JT(研修をはじめとする学ぶ機会)に分けて考えてみると良いでしょう。次に、「なぜ、それらの能力はこれまで身に付けられなかったのか」を考えます。そのうえで、それらのうち、本当に研修で取り組むべきものはどれかと絞り込んでいくのです。
詳細な考え方については下記コラムを参照ください。

13-2 グロービスの研修の強みを教えてください。

以下の5つが挙げられます。詳細については弊社営業担当よりご説明いたしますので、お気軽にお問い合わせください。

特長1. 豊富な実績に裏付けられた高い品質

グロービスでは国内で年間約3,300社とのお取引を通じ、年間約384,400名もの企業人材育成をお手伝いしています。海外でも、中国、シンガポール、タイ拠点を中心に年間60社/2,500名以上の方にご利用いただいています。また、毎年1,000名以上が入学するグロービス経営大学院では常に科目開発が行われ、新しいサービスを生み出しています。

こうした実績をベースに開発される研修やサービスは高い品質を誇り、その証として「クオリティ・ギャランティー(品質保証)制度」を設けております。 提供された研修やサービスにご満足いただけない場合には、料金を全額返金いたします。この制度は、提供サービスに対する弊社の姿勢そのものであり、クライアント企業のみなさまのご満足を徹底して追求しています。
※一部研修・サービスにて対象外のサービスがございます

特長2. 実践性にこだわったサービス

グロービスにおける教育理念の中核は実践性の追求と言っても過言ではありません。
経営教育の本質は、企業に創造や変革をもたらすリーダーを輩出することにあります。グロービスは、企業の経営環境や組織課題、学習者の特徴を正しく捉え、学びを実務で再現するための要因を深く考慮したプログラム設計を行っています。

また、グロービスの講師陣は、「経営」の教鞭を執るに相応しいアカデミック・バックグラウンドを有しているのみならず、アカデミックに閉じない実務家講師である点に大きな特徴があります。

特長3. 最適な学習方法を選べる多様なバリエーション

グロービスでは、お客様それぞれに最適な学習方法をご選択いただけるよう、第12章で述べたように様々な研修タイプをご用意しています。

特長4. 経営基礎スキル獲得から「志」の醸成まで対応可能な幅広いコンテンツ

グロービスではビジネスリーダーに必要なスキルやマインドを育成するための、幅広いコンテンツを備えてい ます。

図12 グロービスの考えるビジネスリーダーモデル(再掲)
特長5.ユニークさを実現する研究開発体制

グロービスには研究開発部門があり、実践的且つ最先端の経営研究を行い、「コンテンツ開発」「ティーチング・メソッド開発」「講師育成」のエキスパートとして、グロービスのクラスの特長を実現しています。

図13 ユニークさを実現する研究開発体制

13-3 自社独自の人材要件に即した研修を提案していただけるのでしょうか。

はい、ご提案可能です。
差し支えない範囲で貴社の人材要件や育成の目的感などをご教示いただければ、それに合致したソリューションをご提案・ご提供・フォローアップをさせていただきます。

人材要件がまだ明確になっていない場合でもご安心ください。貴社戦略・人事組織課題議論から人材要件を整理するお手伝いをさせて頂くことも可能です。人材要件には、会社ごとの戦略や「自社らしさ」を言葉遣いに織り込むなどして、社内の誰もが「どういう人材が求められているか」をイメージしやすい表現にしていくことも重要です。その点を意図しながらご一緒に言語化してまいりましょう。

13-4 研修内容のカスタマイズは出来ますか?

弊社では研修プログラムを設計する際、学びのポイントを設定したうえで、それを実現する手段として、「どのような題材が適切か」「その題材でどう学ぶか」等をデザインしております。例えば企業内研修の場合、

  • テーラーメイド型研修の場合、研修内容等のカスタマイズは可能です。
  • パッケージ型の研修におきましても、多数のコンテンツの中から、貴社のご実施目的や課題感に相応するものを選定し、ご提案差し上げることが可能です。コンテンツ・ケースはいずれも普遍性・汎用性の高いものご用意しています。

また、テーラーメイド/パッケージのいずれにされるかは、ご相談を進めながら選定いただくことも可能でございます。(テーラーメイド/パッケージそれぞれで費用感が異なります)
詳細に関しては、営業担当にご相談くださいませ。

13-5 問い合わせから研修の実施までどのくらいの期間が必要でしょうか。

企業内研修の場合、ご発注期限は希望実施日の2ヶ月前までとさせていただいております。ご相談開始からご発注まである程度のご相談期間が必要であることや、講師のアサインを円滑にさせていただくことを鑑み、お問い合わせから研修実施までは最低3ヶ月程度は見込んでいただけますと幸いです。

13-6 学習内容の定着に向けてどのようなご提案をしていただけますか。

「学び」と「実践」とを紐づけ、定着するには、研修のインターバル期間に受講者にどのような行動を課すのか(課題を与えるなど)を設計することに加え、上長との関わり(面談など)も設計することが重要です。グロービスでは例えば、下記を具体的な例やフォーマット含めてご提案いたします。

  • インターバル期間の上長との面談時期の目安(受講者が設定する場合)
  • 実践目標・課題をどのようにするか

※スクール型研修、企業内研修では、学習内容と今後の行動指針を整理するための振り返りツール(振り返りアサインメント・レビューブック・コミットメントシート・振り返りシートなど)もご用意しております。

また、研修のインターバル期間の上長の役割も重要です。受講対象者のみならず、その上長まで含め取り組みをご提案いたします。

13-7 グロービスの講師の特徴を教えてください。

グロービスでは講師の要件として、実践での再現性を意識した学びの場づくりができるスキルをもっとも重要視しています。社内に講師トレーニングの仕組みを備え、全ての講師が育成を受けたうえで登壇しています。受講者満足度(クラス後アンケート)も、5段階評価で「4.6」を超えていますので、品質にはご安心いただけるかと存じます。

図14 グロービスの講師要件

13-8 受講した管理職はどのように変わったのでしょうか?(受講者の声を知りたい)

グロービスの管理職向け育成サービスをご利用になった受講者の方からは、下記のようなお声を頂いています。

戦略を立てる際、学んだことを特に活かせている実感があります。戦略立案とは、外部と内部の環境を分析して、市場を細分化し、ターゲットを決めて戦っていくことだという考え方を強く意識するようになりました。スキルが身についた今は、根拠を持って意思決定をし、自分の判断に自信を持てるようになったと感じています。
学んだことを現場でフル活用している感覚があります。例えばマーケティングで学ぶ消費者の購買決定プロセスを、部下と営業活動の計画や振り返りを行うときに取り入れました。これまでは一度商談して手応えがなければ諦めてしまっていた訪問先でも、購買に至るまでのどの段階にあるのかを考えてみると、次のアクションを具体的に考えやすくなります。商談をストーリーで考える習慣をつけるよう、営業所全員でがんばっているところです。
クラスの内容だけでなく、グループワークそのものからも多くの学びが得られました。経験してきた業種や職種が違うと、物事に対する捉え方も異なるんですね。私は営業や企画の経験が長いので、逆に、研究開発職の方の着目点や意見から多くの気づきがありました。また、グループワークでは数回に1 回は自分が議論をファシリテートすることになります。私は部門横断プロジェクトの業務が多いため、多様なメンバーの議論をまとめるスキルは大いに役立てられそうです。
他社の皆さんとの議論を通して、同じ問いに対する意見が様々であることを感じ、自分がいつの間にか「自社の色に染まっている」と痛感しました。こうした学びや気づきを経て、経営会議などでは経験則に頼らない議論ができるようになったと感じています。具体的な結果を出すのはこれからになりますが、当社の将来像を描くにあたって、今回の学びは全て活かせる手応えが得られました。

詳細なご感想・成果は下記をご参照ください。

受講者の声はこちら

まとめ

管理職研修を実施する目的は、以下の4つの力を高めるためです。

図15 グロービスの考えるビジネスリーダーモデル(再掲)

管理職研修を成功させるためには、正しい計画(企画)の流れを把握しておく必要があります。正しいステップは下記の4つです。

STEP1
「経営戦略実行」を起点に、管理職層のあるべき姿を描く
STEP2
管理職層の現状とあるべき姿を比較し、その差分(課題)を洗い出す
STEP3
課題に優先順位をつけ、管理職研修の対象者を確定する
そのうえで、研修のゴール/コンセプトを設計する
STEP4
研修のゴール/コンセプトを実現するための具体的なプログラム/育成手法を策定する

反面、下記の落とし穴に陥ることが多くありますので注意しましょう。

  • 1.前例踏襲で進めてしまう
  • 2.流行りものに飛びついてしまう
  • 3.受講者の能力開発すべきポイントを取り違える

これらのステップを進めるうえで、人材育成ご担当者の方は自ら動き、様々な社内接点から情報を得たり、分析したりする必要があります。簡単ではないかもしれませんが、戦略を実行するのは、最後は人であり組織です。人材・組織戦略を担う専門家として、グロービスがお手伝いをさせていただきます。
研修の目的や人材要件がまだ明確になっていない場合でもご安心ください。グロービスではこれまで約6,700社(年間約3,300社)への多種多様なサービスとソリューション提供を通して、国内外の各業界をリードする企業様の育成サポートをさせて頂いております。現在お感じになっている課題感・景色感から紐解いて具体化することが可能です。

管理職研修という組織課題に直結する重要な研修だからこそ、受講者の行動変容に立ち会えたときの感動はひとしおです。貴社の大切な取り組みの実現に向け、ご一緒に進めてまいりましょう。