管理職研修お役立ちコラム
新任管理職研修の3つの落とし穴~多くの企業で勘違いされていること~

執筆:奥 康訓・小島 和也・小平 崇

2019.05.23

新任管理職研修は、マネージャーとしての役割や行動に役立つ内容にしたいもの。しかし実態はそうなっていません。新任管理職研修を成功させるために、目的やカリキュラムの選定などで気をつけたいポイントをご紹介します。

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新任管理職研修は「前例踏襲」か「流行りもの」

新任管理職の研修は、多くの企業で実施されており、その必要性の高さも十分に理解されています。実施することが当たり前、だから毎年、新任管理職研修の内容を決める時期には、次のようなケースが多く見られます。

  1. 1. 自社で過去実施してきた研修から、ほぼ変更せずに実施し続けている
  2. 2. 他社で実施していることをそのまま実施している
  3. 3. これからの新任管理職向け研修、というタイトルの外部の定型研修を実施している

つまり、自社・他社の「前例踏襲」か「流行りもの」を実施することが多いのです。
しかし、そのような研修で成果が出ないこともしばしば。本コラムでは、新任管理職研修で陥りがちな3つの落とし穴を紹介します。


新任管理職研修は毎年同じでよいと思っていないか?

1つめの落とし穴は「前例踏襲」パターンです。毎年同じでよいとするその理由は、下記のような研修担当者の前提に起因しています。

  • ・新任管理職に求められる能力・行動と、受講者の課題は、過去から変わっていない
  • ・他社もだいだい同じである

この前提に落とし穴が隠れているのです。私が多くの企業で話を伺う限り、新任管理職に求められる能力と行動、それに対しての受講者の抱えている課題は各社それぞれ、かつ時代とともに変化しています。その理由は、以下の2点が考えられます。


外部環境が変われば、会社の経営戦略が変わり、それに伴い組織及び新任管理職に求められることも変わるから。
企業によって、採用基準、評価、配置、そして任せられる仕事が違うため、新任管理職になるまでに培われる能力は異なるから。

まず、外部環境がここ何年も変わっていない企業はほとんどありません。加えて、採用状況も変わっており、入社時の能力やマインドも変化。管理職昇進までに経験した仕事も過去から変わっています。少し立ち止まり、自社・自組織が置かれている環境を冷静に把握しつつ、いま一度、研修の目的・内容にフィット感があるか見直しましょう。


「流行りもの」のテーマ・カリキュラムに飛びついていないか?

「前例踏襲」の次の落とし穴は「流行りもの」パターンです。具体例でお話しましょう。ある企業の新任管理職研修のご相談をいただいていた時のことです。

“最近、指令型のマネジメントではなく、対話型マネジメントが注目されていますね。うちにもぜひ対話型マネジメントを取り入れたい”

上司と部下の対話強化をコンセプトに、1on1(1対1の面談)を実施するための対話力、フィードバック力を鍛えたいという相談でした。もうすでにここに落とし穴があるのがおわかりでしょうか?


まず、なぜ対話型マネジメントが重要なのか? さらに言うと、それは同社の経営戦略を推進するにあたり、組織課題として解決すべき優先順位の高いテーマなのか? 対話が流行りだから、自社でまだやっていないから取り組む、というのは短絡的です。

当たり前のことを書いていると思われるかもしれませんが、こういった短絡的なケースが実在するのです。組織として取り組む理由・目的が明確でないと、せっかく学んだスキルが生かせずに形骸化してしまいます。どんなスキルを学んでも、生かせなければ、忙しい社員からはありがた迷惑と思われ、経営陣からは「研修成果は? 意味があるのか?」と詰められてしまうのです。

繰り返しになりますが、外部環境、自社の戦略がどう変化しているか? その変化が組織にどう影響しているか? という論点をしっかりとおさえましょう。そのうえで、何が組織の解決すべき課題になっているかは、ざっくりとでもストーリーで押さえておきたいところです。

汎用的な内容の一例でお伝えすると、以下のようなイメージです。

外部環境の変化から導かれる管理職研修のテーマ例

外部環境の変化から導かれる管理職研修のテーマ例

新任管理職の能力開発すべきポイントを見誤っていないか?

「前例踏襲」「流行りもの」に続く3つめの新任管理職研修の落とし穴が、カリキュラム選定時に受講者の能力開発すべきポイントを取り違えることです。先ほどの例でいうと、「対話型マネジメントを確立したい」という目的のために、新任管理職研修で「対話スキル」のトレーニングを行おう、と考えること、それこそが落とし穴です。その理由をお教えします。


多くの企業で、新任管理職のコミュニケーションの課題として以下のような実態を伺います:

  • ・自分の経験談を押し付けて、部下の納得を得ることができない
  • ・アドバイス内容に抽象的な表現が多く、部下の理解が進まない
  • ・部下の主張に対し、気になった点を思いつくままに指摘してしまう
  • ・部下にアドバイスしているつもりが、自分の主張に誘導している
  • ・「なぜ?」「本当に?」という問いかけで、部下を委縮させてしまう
  • ・部下の育成ではなく、業績や進捗管理をすることが目的になっている

このような実態を認識することはとても重要です。なぜかといえば、この6つの事象を分類すると以下のように分けられるからです。

  • ・物事を相手に解りやすく伝える、質問するという「論理思考力」の課題
  • ・自分本位ではなく、また業績達成だけではなく部下を育成するという「役割意識不足」の課題

つまり、論理思考力という「スキル課題」か、役割認識という「マインド課題」の2つの別々の課題がありうるわけです。しかし、実際の管理職研修では、スキル課題があるにも関わらず、マインド課題を解決する研修を実施しているケース、またその逆のケースが実に多いのです。

先日筆者が遭遇したケースでは、管理職が部下を育成することの重要性を理解されていないというマインド課題が強固であるにもかかわらず、部下にわかりやすく伝える方法を強化するスキル研修(コミュニケーション力)を実施されており、育成担当者は研修の成果が出ないと嘆いておられました。これでは本来解決したい課題が解決できずに終わってしまいます。重要なことは、現状自社で起きていることは何かを押さえ、どんな状態が理想(ありたい姿)であり、それに到達するためには、どんな能力を付与すべきかを具体的に捉えることです。


以上まとめると、

新任管理職研修を考えるにあたっての落とし穴として以下の3つがあります。

  1. 1. 毎年同じ内容を踏襲しがち
  2. 2. 流行りものに飛びつきがち
  3. 3. 受講者の能力開発すべきポイントを取り違える

よって、こうならないためには、新任管理職研修の目的、すなわち

  • ・自社の取り巻く環境の変化を捉え、新任管理職に求められていることは何かを考える
  • ・職場で起こっている事象を押さえ、能力開発すべきポイントを具体的に捉える

ことを意識し続けることが重要となります。

育成担当者の皆さん、企業にとっても受講者にとっても本当に意味のある、よい研修を実施していけるよう、ぜひ一緒に取り組んでいきましょう。

執筆者プロフィール
奥 康訓 | Oku Yasunori
奥 康訓

同志社大学商学部卒業、グロービス経営大学院修士課程(MBA)修了。

大手研修サービス会社に入社後、横浜・名古屋・盛岡の3拠点において、企業の人材育成、組織開発のコンサルティング企画営業、プロジェクトマネジメント、チームマネジメントに携わる。

グロービスに入社後は、東海圏の新規のお客様を中心に、企業の人材開発・組織開発サービスの企画・設計に従事。現在は営業法人部門のマネージャーとして、マーケティング企画立案、チームマネジメントとともに、思考系領域の研究グループに所属し、各種コンテンツ・教材の開発および講師を務める。


執筆者プロフィール
小島 和也 | Kojima Kazuya
小島 和也

関西学院大学法学部卒業。グロービス経営大学院経営学修士課程(MBA)修了。
精密機器メーカーにて大手直販顧客へのカスタマイズ製品の企画・提案、販売チャネルのプロモーション業務等に従事。
グロービス入社後は、企業向け人材育成・組織開発プロジェクトの企画・設計・コンサルティング業務に従事する。
また、マーケティング領域のコンテンツ開発に携わるとともに、講師として同領域を担当する。


執筆者プロフィール
小平 崇 | Kodaira Takashi
小平 崇
慶應義塾大学法学部卒業後、IT・通信企業にて多国籍軍さながらのチームでProject Manager、Bid Managerを担当。多様性の中で仕事をすることの楽しさ・難しさを経験しながら、日本のビジネスパーソンの能力開発の必要性を実感。 現在グロービスにおいて顧客企業のグローバル化を担う専門チームに所属。グロービスの海外展開にも従事している。講師としては、企業内研修を中心に、グローバル戦略を始め、思考系科目、リーダーシップ、経営戦略を担当。 IESE Business School PLD 修了。

※文中の所属・役職名は原稿作成当時のものです。

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