コラム
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ミドルマネジメントにとって、経営視点がますます重要な時代に ~他流試合が必要な理由~

将来の経営幹部候補と目されるミドルマネジメントに対し、「経営視点を持って職務を遂行してほしい」といった期待を、経営陣からよく伺います。そうした中、経営視点とは具体的にどのようなものを指すのか、社内で共通の定義ができていることは意外と多くないようです。

本コラムでは、日頃何気なく口にすることが多い、経営視点とはなにか。改めて認識を揃えたうえで、ミドルマネジメントが経営視点を持つことの重要性と、身に着けてもらうための育成手法について考えます。

第1章 
経営視点とはなにか

経営視点とは、経営者の立場に立ち、経営者が日々目指していることを追求し、判断を行う視点のことです。そして、経営者が日々目指していることを一言で表現するならば、ステークホルダーに約束した成果をあげることです。

柳井正氏も著書で、“経営者とは一言でいえば、「成果をあげる人」です。そして成果とは「約束したこと」です。やると宣言したことに固執し、それを何としてもやり遂げようとする。それが経営者の役割です。“と記しています1)

では、成果を上げる経営者になるために、求められる視点とは何でしょうか。経営環境と経営視点の関係性(図1)から見ていきましょう。

図1:経営環境と経営視点

図1:経営環境と経営視点

1-1. 外部環境

第一に、自社を取り巻く外部環境について、短・中・長期それぞれの時間軸で変化をとらえる多角的な視点です。

ここでは、市場の変化を引き起こすマクロ環境、顧客ニーズの変化、それに伴う市場の成長性や規模の推移、競合の動向等を、正しく分析したうえで、自社が何をすべきかを構想することが求められます。

代表的な分析手法として、5つの力分析があります(図2)。

図2:5つの力分析とは

図2:5つの力分析とは2)

1-2. 内部環境

続いて内部環境、つまり自社組織について把握します。例えば以下のような観点があります。

  • 外部環境変化に対し、どのような組織体制で対応しようとしているのか?
  • 各部門の強みや特性は?
  • 各部門の売上に対する新規事業・既存事業の割合は?
  • 部門間のパワーバランスはどうか?

自社の現状を俯瞰しながら、全体最適の形を作り上げるための広い視野と、戦略を実行するために、自社の人事制度や運用、組織風土が適したものになっているか、収益が出やすい体制を作れているか等、多面的に見渡して判断する力が求められます。

ここでは分析手法として、7Sがよく使われます(図3)。

図3:7Sとは

図3:7Sとは3)

ここまでを踏まえると、経営視点=自社を取り巻く事象の全体像とその変化を整理・解釈し、自らが果たすべき役割を考え続けるための視点、と言い換えることができます。

第2章 
ミドルマネジメントに
経営視点が必要な理由と、育成方法

ミドルマネジメントが経営視点を持つべき主な理由は、以下2つです。

理由1:各部門の判断や行動の精度・スピードが上がりやすくなる

  • ミドルマネジメントが自社を取り巻く環境変化を正しく理解できると、自ずと会社全体がどの方向に動いていくべきなのか、各部門(現場)が経営の意向を汲み取れるようになります
  • 経営の意向と部門の状況を照らし合わせて判断することで、全社戦略と整合した部門戦略を、スピーディーに立案、実行できます

理由2:経営陣および部下とのコミュニケーションが円滑になる

  • 経営陣とのコミュニケーションにおいて、経営陣が必要とする情報を適切な表現で伝えられるため、結果として経営陣の判断、レスポンスのスピードアップにつながります
  • 部下とのコミュニケーションにおいて、所属部門の戦略や方針をその背景と併せて語ることで、個々人の目標設定や評価に納得感を持たせることができます

現代のようなVUCA(「Volatility」(激動)、「Uncertainty」(不確実性)、「Complexity」(複雑性)、「Ambiguity」(不透明性)の頭文字を取った造語)と呼ばれる、変化の激しい昨今のビジネス環境下においては、まさに必須スキルです。

一方で責任感が強く、自分の持ち場に強くコミットする人ほど、視界や責任の範囲を限定的に捉えがちです。責任の範囲が限定的であればあるほど、部分最適の思考に陥りやすくなり、経営視点を持ちづらくなるのは必然でしょう。

経営視点を持つ一番の近道は、実際の業務で経営判断の経験値を積むことです。具体的には中期経営計画を策定するようなプロジェクトに参画する、あるいはプロジェクトのリーダーとして先導する、等が考えられます。とはいえ、いきなりの実践には業績リスクを伴うため、組織・対象者のスキルの状況によっては、すべてを任せることは難しいのが実情かと思います。

そこで育成施策の一つとして、他流試合型研修を活用される企業も増えてきています。次の項目で、期待できる効果について見ていきましょう。

第3章 
他流試合型研修を、
経営視点の獲得に活かす

他流試合型研修の代表例は、大学・研修会社等の外部機関が運営する公開講座に、一定期間参加するパターンです。他流試合型研修への参加は、自社・自分自身の常識・考え方を客観視するきっかけになると、筆者は考えています。

同じ会社に長く勤め、類する関係者と長く仕事をしていると、慣性から置かれた環境に染まってしまい、周囲や全体に対する注意力が散漫になり、物の見方が固定化する傾向が見られます。また日々の業務に追われる中で、既存の枠組みに囚われて柔軟性を失ったり、自身が成し遂げたかった想いを見失ったりする人は案外多いものです。

そのような方に他流試合型研修へ参加してもらうことで、多角的な視点・広い視野の獲得が期待できます。他社・他者の異質な価値観・意見・疑問に触れることで、自組織の論理に囚われていないか内省するきっかけとなるからです。

前提の異なる他者に自分の意見を論理的かつ効果的に伝えようと努力することで、「ここは譲れない」という自分の判断軸が明確になった、という話もよく耳にします。

以下のリストのいずれかに当てはまる人には、ぜひ、他流試合型研修を通じて視野を広げ、次なる挑戦のヒントを得ていただけたらと思います。

  •  (自分視点で) 自分の仕事の範囲を限定的に捉えてしまう
  •  自分の仕事の範囲ではないと判断した仕事には、まったく関心を寄せない
  •  顧客の動向や業界の動向について聞かれても、回答に窮してしまう
  •  自部署にとってメリットがあるかなど、部署 (部分) 最適の視点で判断してしまう
  •  (結果として) 前例踏襲や保守的になり、新しいことにチャレンジしたがらない

第4章 
最後に

本コラムでは、「経営視点」の構成要素と必要性を確認したうえで、その習得に効果的な育成方法についてご紹介しました。

変化の激しい今の時代、経営視点を持つミドルマネジメントの育成は喫緊の課題であり、まずは小さく着手されることをお勧めします。その際、1社1名から派遣可能な他流試合型研修は、使い勝手の良い研修方法です。

組織や人材の課題は、組織風土も影響することから複雑な場合が多く、どこから手を付けてよいか分からないといった方も多くいらっしゃいます。自社の人材育成についてお困りの際は、ぜひお気軽にグロービスにお問い合わせください。組織の状況・今後の目標について、一緒に丁寧に検討し、効果的な施策を考えていきましょう。

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引用/参考情報

  1. 引用:柳井正、”経営者になるためのノート”、PHP研究所、2015年8月、P.10
  2. 引用:グロービス学び放題、”5つの力分析とは”、Section1、2022年6月に確認
  3. 引用:グロービス学び放題、”7Sとは”、Section5、2022年6月に確認
  4. 参考:野中郁次郎、“全員経営 ―自律分散イノベーション企業 成功の本質”、日本経済新聞出版、2015年

※文中の所属・役職名は原稿作成当時のものです。

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