今改めて、女性活躍推進を人材育成の観点から考える

2021.11.29

女性活躍推進の歴史は古く、1985年の男女雇用機会均等法、2015年の女性活躍推進法などさまざまな法律が整備されてきました。また、2003年に内閣府が掲げた内閣第5次男女共同参画基本計画の「202030目標」では、女性管理職を3割まで増やすという目標が示されました。

 

一方、世界経済フォーラムが公表している「ジェンダー・ギャップ指数2021」によると、日本は153か国中 120位と、諸外国に比べて遅れているのが実態です。

 

このような状況に、人材育成担当の皆さまができることはあるのでしょうか。本コラムでは、女性活躍推進を実現していくために、育成担当者として何を考え、取り組むべきか、解説します。

なぜ女性活躍推進の施策が必要なのか?

なぜ、女性活躍促進の施策が必要なのでしょうか。理由は2点あります

1点目は、義務の側面です。2019年に改定された女性活躍推進法では、301名以上の事業主には、以下の項目が義務付けられています

1:自社の女性の活躍状況の把握・分析

2:上記の把握・分析を行うための、数値目標と行動計画の策定および届出

3:自社の女性活躍に関する情報の公表

2点目は、必要性や効果・効用の側面です。以下の3つが期待できます。

1:労働人口が減少する日本においても、ビジネスの安定継続が図れる

2:企業のイメージアップにより、従業員の採用や離職防止につながる

3:組織の多様性が高まることにより、業績の向上が見込める

女性の活躍を阻む組織とは?

義務とメリットがあるのに、なぜ女性活躍推進は進まないのでしょうか。職場の面に限っていえば、筆者は2つの問題があると考えています。1:女性の機会不足/自信のなさ、2:ロールモデルの不在です(図1)。

図1:女性の活躍を阻む2つの問題

図1:女性の活躍を阻む2つの問題

 

1:女性の機会不足/自信のなさ

性別によって業務アサインを制限したり、年齢やライフステージの変化に伴って本人の希望なく業務負担を変えたり、といったことが、慣例になっていないでしょうか。この場合、会社が、女性の業務経験の機会を奪っている可能性があります。

そのような会社では、業務のアサインをする際に、以下のような声が生まれてしまうのです。

「育児をしながらこの仕事をやってもらうには、負担が大きいのではないか」

「このポジションに女性が就いた前例がない、やはり次も男性で」

 

これらは、親切心から出てくる言葉かもしれません。しかしながら見方を変えると、女性からやりがいのある仕事と、経験を積むきっかけを奪っている、とも言えます。このように仕事ときっかけを奪われた女性は、自身の活躍する枠を自ら狭めがちです。

これは何も、社会人だから生じる話ではありません。筆者の考えとして、特に女性は幼少期から近しい出来事が発生していると推察しています。その蓄積により、女性は男性と比べて「未知の経験であっても自分はできる」と思える自己効力感を育みにくく、社会人になっても自信を持ちづらい傾向にある、と考えています。

 

2:管理職昇進の意欲を削ぐ、職場の環境要因

女性は管理職を望む傾向が男性に比べて低い、という調査結果があります(図2)。言い換えると、意欲を削ぐ何かしらの環境要因がある、ということです。

図2:管理職になりたい人の割合

図2:管理職になりたい人の割合<性年代別>(引用:パーソル総合研究所、 “「管理職になりたがらない女性」を「意欲が低い女性」と同一視してはいけない~時間や場所に縛られない職場が未来の管理職をつくる~“、2021年10月に確認)

 

たとえば以下のような組織では、女性は「同じような仕事の仕方、成果の挙げ方はできない」と考え、管理職になりたいとは思えないでしょう。

1:現在の管理職が激務のため、ワークライフバランスが取れていない

2:男性的なリーダー像の管理職が評価・賞賛されている

知らず知らずのうちに、やりがいのある仕事に就くチャンスを女性から奪っていませんか? こういった組織の背景や女性特有の状況に、気づいていない企業が多いようです。

女性活躍推進に向けて、人材育成担当者がやるべきこと

前項で述べたように、女性の機会不足/自信のなさや、女性が管理職になりたいと思える環境の整備が必要です。具体的な進め方を、4ステップに分けて説明します(図3)。

図3:女性活躍推進に向けて、人材育成担当者がやるべきこと

図3:女性活躍推進に向けて、人材育成担当者がやるべきこと

 

ステップ1:社内の合意形成

まずは、社内の関係者や経営陣を巻き込み、女性活躍を推進する意義を合意しておきましょう。その際は、将来実現したい組織の姿を踏まえて女性活躍推進の意義を検討できると、より一貫性のある施策にすることができます。

短期かつ義務的な検討ではなく、長期かつ発展的な視点を持って合意形成ができれば、これ以降のステップが進めやすくなります。

ステップ2:現状の把握

次のステップとして、企業の現状把握が必要です。性別を軸にした場合に、どのような差分があるのか、定量・定性的に把握しましょう。

その際は、女性という属性のみで一括りにするのではなく、個人に焦点を当て、把握していくことも重要です。人によって環境はさまざまであり、仕事の志向性など個性も違うことを、忘れてはいけません。

ステップ3:育成施策の企画と実行

次のステップとして、育成の企画に着手しましょう。ポイントは、以下3点です。

■「経験不足」を補完する知識・スキルの習得を促す

研修で身に付く知識やスキルであれば、それを得られる機会を作ることは効果的です。たとえば論理思考力、戦略的な視点で物事を捉える力などがあれば、自信につながります。

グロービスで開講している女性リーダー向けプログラムでも、参加者の多くは自身の可能性に気付いて、新たな一歩を歩みだしています。

■自分も「できる」と思える気持ちの醸成を促す

物事をリードする・前へ出る、といったリーダーシップに対し、心理的な抵抗感をなくす事も重要です。

その場合、自分自身の強みを理解してもらい、自分も「できる」というイメージを徐々に持ってもらうことが効果的です。一方的に「あなたはできる」と伝えても、リーダーシップへの抵抗感は残り、自信につながらないでしょう。

■自分がなりたいと思えるリーダー像を描かせる

旧来のリーダー像を自身に無理に当てはめることなく、自身がどのようなリーダーになりたいかを考える必要があります。大切なことは、目指すべきリーダー像がどこかにある、という思い込みを取り払ってもらうことです。自らの強みを活かして、どのようなリーダーになりたいかを考えて言語化する事で、一歩踏み出す勇気を持つことができます。

ステップ4:働きやすい環境の整備

育成以外の人事施策を見直したり、柔軟性を持たせたりすることで、育成施策と連動させる事を忘れてはなりません。継続して女性が活躍していくには、人事制度の柔軟性を高める事も重要です。

働き方の改善として、定時退社や子供の行事等で休暇をとりやすい風土・制度を作る必要があります。また、休暇申請時に周囲の目を気にしてしまう、といったことがないよう、組織風土を変えていく必要もあります。

たとえば、アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)を払しょくする機会が有効です。女性リーダーの上司に対して、ダイバーシティの必要性の理解や、アンコンシャスバイアスに関する研修を実施することも検討してみましょう。

制度の変更は中期的な施策ですが、組織風土の変革は長期スパンで取り組まねばなりません。「なぜ自社で女性活躍を推進する必要があるのか」の理由を社員に繰り返し伝え続けることが求められます。人材育成担当者の皆さまも自分事として、意図的に風土を変えていく気概が求められるでしょう。

女性向け人材育成プログラムのゴール

ここまで読んでこられた方には、このような違和感を持たれた方もいるかもしれません。「なぜ女性だけの施策が必要なのだろう」「男性だけの施策は必要ないのか」、と。

筆者も同じ気持ちです。将来的には、「受講対象を女性に絞った研修が不要な組織」=「性別にかかわらず、従業員が各々のポテンシャルを十分に発揮しながらパフォーマンスが出せる組織」となることを、企業として目指すべきではないでしょうか。

 

そのため、女性を対象とした育成プログラムを社内で企画・実施されているならば、それはあくまでステップの一つである、という認識を持ってください。そのうえで「この認識を企業全体に発信していくことは、育成担当者のミッションの一つだ」という認識も、ぜひ持ってください。

とはいえ、「受講対象を女性に絞った研修が不要な組織」に一足飛びでなれるわけではありません。従業員それぞれが持っているポテンシャルを十分に発揮し、最大限のパフォーマンスを実現できる組織の第一歩として、女性向け育成プログラムの成功をまずは目指しましょう。

執筆者プロフィール
大人 睦海 | Mutsumi Ohito
大人 睦海

グロービス・コーポレート・エデュケーション コーポレート・ソリューション・チーム シニア・コンサルタント
東京都立大学大学院 理学研究科修士 修了
大学院修了後、デジタル地図メーカーに入社。企画・開発・リサーチを担当。
グロービスでは東京・大阪にて、インフラ、製薬、小売、サービス等の幅広い業界の人材育成の企画・実行支援を行う。
選抜経営者育成のアセッサーを担当。大阪法人拠点のマーケティングリーダーを務める。
ヒト・組織研究開発グループに所属し、コンテンツ作成や新サービスの開発に携わる。


※文中の所属・役職名は原稿作成当時のものです。

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