マネジメント研修を企画する際に考えるべきこと

2020.10.20

「マネジメント研修を企画するよう上長から指示があったが、どのようなプログラム内容が最適かわからない」というご相談を、人事担当者の方からよくいただきます。本コラムでは、自社のマネージャー層にとって適切で有用な研修プログラムを企画するための、手順や考え方を解説していきます。

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階層別研修と選抜研修の違い・役割

 

マネジメント研修は何を基準に選ぶべき?~新任研修企画担当者の悩み~

人事の重要テーマとして、組織の中枢を担うマネージャー層の強化をあげる企業が増えています。少子高齢化に伴う労働人口の減少、経営環境の変化の激化、などが理由のようです。筆者がお会いしたお客様、特に研修企画を新たに担当することになった方々からは、下記のような相談をよくいただきます。

「マネジメント研修を企画するようにと、経営層から指示があった。ネットで情報収集したが、さまざまな研修会社があって選べない。グロービスの研修プログラムの中から、おすすめを教えてほしい」

 

こういったご相談に対し、実績が豊富で人気のある研修プログラムをご紹介することは可能です。ですが皆さまの会社に必要な研修は、果たして人気のあるプログラムなのでしょうか?

まずお伝えしたいことは、研修や育成は目的でない、ということです。研修や育成は、組織/人の課題を解決して企業が求める成果(=経営戦略の実現)を達成するための、手段の一つです(図1)。

図1:経営戦略と育成(研修)の関係性

図1:経営戦略と育成(研修)の関係性

経営戦略や社内の人材レベルは企業ごとに異なるため、解決しなければならない課題も一律ではありません。そのため、課題を解決するための手段である研修も、自社の課題に合わせたものを選定すべきです。多くの企業に共通する課題は存在しても、万能薬的な研修は存在しないということですね。

では自社のマネジメント層の育成課題は、どのように特定すればいいのでしょうか? 次項から研修を企画・立案する際に役立つ【研修プログラム策定のSTEP】を紹介します。

マネジメント研修企画にあたって踏むべき手順とは?【研修プログラム策定のSTEP】

適切なマネジメント研修企画を導き出すための流れは、図2の通りです。

図2:研修プログラム策定のSTEP

図2:研修プログラム策定のSTEP

STEP1:「経営戦略実行」を起点に、マネジメント層のあるべき姿を描く

STEP2:マネジメント層の現状とあるべき姿を比較し、その差分(課題)を洗い出す

STEP3:課題に優先順位をつけ、マネジメント研修の対象者を確定する。その上で、研修のゴール/コンセプトを設計する

STEP4:研修のゴール/コンセプトを実現するための具体的なプログラム/育成手法を策定する

各STEPについて、詳細の説明をしていきます。

 

STEP1:「経営戦略実行」を起点に、マネジメント層のあるべき姿を描く(図3)

図3:「経営戦略実行」を起点に、マネジメント層のあるべき姿を描く

図3:「経営戦略実行」を起点に、マネジメント層のあるべき姿を描く

研修とは、経営戦略(自社が競争環境で勝つ/儲けるための戦略的方向性)を実行する組織・人づくりの一手段です。そのため、研修を企画する際の起点は、経営戦略であるべきです。経営戦略を踏まえ、実行部隊である組織・人材のあるべき姿を描きます。特にマネジメント層については、具体的にどのような行動をどのレベルで取る必要があるのか、明確に言語化しておきましょう。

 

図4は、国内大手食品メーカーのグループ会社A社(従業員数300名程度)向けに作成した、STEP1の一例です。

図4:経営戦略の方向性から描いたマネジメント層のあるべき姿(A社の例)

図4:経営戦略の方向性から描いたマネジメント層のあるべき姿(A社の例)

図4では経営戦略を軸とし、実行のために必要な組織へとブレイクダウンした上で、あるべきマネジメント層の姿について仮説を立てています。ポイントは、あるべき姿をできるだけ具体的に、精度高く定義することです。具体化することで、その後の研修で受講者の行動変容を促しやすくなります。

 

STEP 2:マネジメント層の現状とあるべき姿を比較し、その差分(課題)を洗い出す(図5)

図5:マネジメント層の現状とあるべき姿を比較し、その差分(課題)を洗い出す

図5:マネジメント層の現状とあるべき姿を比較し、その差分(課題)を洗い出す

マネジメント層のあるべき姿が描けたら、現在のマネジメント層はどのような状態にあるのかを言語化し、それらの差分(課題)を洗い出します。

A社の事例では、図6のような形でまとめました。

図6:課題特定について(A社の例)

図6:課題特定について(A社の例)

STEP3:課題に優先順位をつけ、マネジメント研修の対象者を確定する。その上で、研修のゴール・コンセプトを設計する(図7)

図7:人材育成のコンセプト(方針・グランドデザイン)をまとめる

図7:人材育成のコンセプト(方針・グランドデザイン)をまとめる

次のステップでは、人材育成のコンセプトをまとめます。具体的には、1:課題に優先順位を付ける、2:研修対象者を決める、3:ゴールとコンセプトを明確にする、の順に進めていきます。

 

1:課題に優先順位を付ける

洗い出した課題に対して、優先順位をつけます。例えば以下のような切り口で、優先順位を付けてみてください。

  • ・緊急度:自社の経営戦略実現のため、早急に解決すべき課題はどれか
  • ・重要度:経営への影響度合いが大きい課題はどれか
  • ・(階層別研修の場合)共通項/最大公約数:多くのマネジメント層が抱えている課題はどれか

2:研修対象者を決める

課題の優先順位が決まったら、マネジメント研修の対象者を確定します。

3:ゴールとコンセプトを明確にする

研修の対象者が決まったら、マネジメント研修のゴールとコンセプトを明確にします。

ゴール:研修終了時に、参加者はどのような状態であるのか

コンセプト:ゴールに到達するために研修をどのような場にするのか

 

図8は参考までに、A社向けに描いた研修のゴールとコンセプトです。

図8:研修のゴールとコンセプト(A社の例)

図8:研修のゴールとコンセプト(A社の例)

STEP4:研修のゴール・コンセプトを実現するための具体的なプログラム・育成手法を策定する(図9)

図9:研修カリキュラムを策定する

図9:研修カリキュラムを策定する

最後に、ゴールとコンセプトを実現するための具体的な研修カリキュラムを策定していきます。

たとえばプログラムや最適な手法(集合研修/オンライン研修/アセスメント/eラーニングなど)を決めていきます。予算・日数などの制約条件も、このステップから考慮していきましょう。

マネジメント研修の企画時にありがちな落とし穴とは?

マネジメント研修プログラムを策定するまでの流れは前章に述べた通りですが、企画時に押さえるべきポイントは他にもあります。本項では“マネジメント研修企画3つのあるある”を通じて、企画時に押さえるべきポイントについて解説します。客観的にチェックするための材料としてお役立てください。

 

あるある1:社内の既存の研修との整合性が取れておらず、ダブりが発生してしまう

皆さまの勤め先では、複数の研修会社を利用していませんか? 特に階層別研修において、複数の研修会社を利用する企業は多いです。

その場合、教育体系の全体像を把握しつつ企画していく意識を持たないと、研修プログラムのダブりが発生します。たとえばマネジメント手前の段階(あるいはその後)で、似た内容の研修を実施していた! というケースを、筆者はよく耳にします。

 

大切なことは、教育体系の全体像を捉えて企画することです。特にマネジメント研修の企画となると、施策寄りの論点(例:マネジメントに対してどのようなプログラムを実施するべきか?)を考えてしまいがちです。

ダブりを防止して研修予算を最大限活用するには、教育体系図の作成がお薦めです。どの階層で何の研修を実施しているのか、図10のようにまとめて整理しておきましょう。

図10:教育体系図の一例(※青色部分はグロービスで提供しているものとして整理)

図10:教育体系図の一例(※青色部分はグロービスで提供しているものとして整理)

 

 

あるある2:研修をやりっぱなしにしてしまう

研修を受けたからといって、魔法のようにマネジメント層が変化し、あるべき姿で描いた行動を取れるようになるわけではありません。研修後の行動が重要です。そのためには、研修後の設計も企画段階から進めてしまいましょう。

 

具体的には、研修施策内に振り返り施策を組み込んでおくことです。振り返り方法としては、以下のような施策が考えられます。

  • ・研修での学びを言語化する
  • ・研修のアンケートを実施する
  • ・研修の学びを実務に活かしてもらうための仕掛けを考える など

 

グロービスの研修においても、研修後のアンケート・学びの言語化を重視しています。また、弊社が提供する研修フォローアップサービス(図11)を利用する企業様も、増えています。もちろん自社で振り返りの場を用意できるのであれば、全く問題ありません。研修設計の際に「研修をやりっぱなしにしない」という意識を持てているとよいでしょう。

図11:研修フォローアップサービスの概要

図11:研修フォローアップサービスの概要

 

あるある3:前年踏襲で同じ研修を続けてしまう

マネジメント研修を何年にもわたり、同じテーマで実施している企業を時々目にします。

繰り返しお伝えすると、研修は組織/人材の課題解決のための一手段です。経営戦略の方向性が変わればマネジメント層のあるべき姿も変化しますし、マネジメント層の現状が変われば課題、つまり研修として実施すべき内容も変化します。

あるべき姿を定義/現状分析し、どこにどのような差分があるのか、いかに差分を埋めるか、を考える。この営みを定常化(常にアップデートし、最新化)していくことが重要です。

最後に

2020年4月、新型コロナウィルスの影響により、緊急事態宣言が発令されました。それに伴い、皆さまも激動の数か月間を過ごされたのではないでしょうか。経営状況への影響を踏まえた経営戦略変更、リモートワークなど新たな働き方の推進とそれに伴う新入社員受け入れ方法や研修方法の変更など、未知の問題に直面していることと思います。

人事の方々と会話をしていると「有事だからこそ真のリーダーシップが問われている。自社のマネジメントを強化していく必要性を感じた」と言ったことを耳にします。新型コロナウィルスが日本経済に与える影響は甚大であり、今後も景気後退が続くといわれている中、これからの激動の時期に力強く組織を牽引していけるマネジメント層が、より一層求められていくでしょう。

このコラムが皆様にとって、今後の企業成長のためにあるべきマネジメント像について考える上での一助となれば嬉しいです。マネジメント研修について更に知見を深めたい方は、下記資料もおすすめです。

▼コラムに関連するお役立ち資料はこちら▼
階層別研修と選抜研修の違い・役割

 

執筆者プロフィール
今西 友子 | Imanishi Yuko
今西 友子

名古屋大学大学院国際開発研究科卒業後、広告代理店にに入社。
媒体管理業務や自社メディア・新規媒体開発業務に従事。
その後、ITベンチャー専門のヘッドハンティング会社にて採用支援業務に携わる。
現在は、グロービスにて企業の組織開発・人材育成支援を行う法人営業部門のチームリーダーを務める。


※文中の所属・役職名は原稿作成当時のものです。