雪印メグミルク株式会社
思考のバイアスに自ら気づき、変化を起こすリーダーへ
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「企業の持続的成長を支えるのは人材だ」という西尾社長の強いメッセージのもと、さまざまな人材育成施策に取り組んできた雪印メグミルク様。その中から課長を対象とした選抜型リーダーシップ研修の取り組みについて、お話を伺いました。(部署・役職はインタビュー当時)
【雪印メグミルク様】
写真右:人事部 担当部長 守屋 彰様
写真左:乳食品事業部 統括グループ 課長 加藤 光一郎様
【グロービス担当者】
写真中:塙 達晴
- 導入前の課題
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- 管理職に対し、汎用的なビジネススキルと広い視野の獲得に向けた育成が不足していた
- ミドル層の、変革を“創っていく“リーダーシップスタイルを意識的に強化する必要があった
- 研修内容
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- ヒト・モノ・カネを使っての総合的な判断力を高めるプログラム構成にした
- 研修で得た知識・スキルを武器としながら、現場で統合させてリーダーシップを発揮できるようにするため、最終日には総合演習となるケース演習を行った
- 成果・効果
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- 受講者自ら、自分の思考の癖に気付き、社長の期待通り「考えて、考えて、考え尽くす」経験が出来ている
- 受講者一人ひとりの変化(点の変化)が、線になり面の変化になりそうな期待が生まれている
- 部門を超えた受講者同士のコミュニケーションが活性化し、仕事が円滑に進むようになった
背景と課題
西尾社長就任を契機に、人材育成の仕組みを変える取り組みをスタート
守屋さん:
当社が人材育成に力を入れ始めたきっかけは2015年、西尾の社長就任です。就任後、西尾から「企業の持続的成長を支えるのは人材だ。個人の能力開発を通じて、社員一人一人に自己実現してほしい。」という強いメッセージが発信され、人材育成の仕組みを変える取組みがスタートしました。
それまでは人材育成に十分な資源を投資できていなかったこともあり、まずは人材育成の課題をあぶり出すことから始めたのです。その結果をまとめ、4つの大きな方向性を打ち出しました。
- スキル習得に軸足を置く育成プログラム
- グループ会社まで視野に入れた人材育成
- 社員の自律的成長を促すキャリア開発支援
- 人材の多様性の確保
これらのテーマを実現するために、さまざまな人材育成施策を並行して進めていきました。
管理職に対し、汎用的なビジネススキルと広い視野の獲得に向けた育成が不足していた
この取り組みを進めていく中で、管理職育成の課題が浮き彫りになりました。当時、全社員に実施したアンケート結果では、「管理職に必要なスキルが何か分からない」「属人的なマネジメントを行う管理職が多い」といった声や、そもそも「管理職に対する教育機会がない」といった声も挙がってきていました。汎用的なビジネススキルと広い視野の獲得に向けた育成を十分に行えていないことを、明確な課題として認識しました。
改めて考えると、当社の管理職は、各部門の専門知識は非常に高いレベルで持っています。部門ごとの最適解を見つける能力も申し分ありません。しかし、部門横断的に通用する汎用的なビジネススキルや、全社視点・全社最適化といった視野に関しては、まだまだ伸ばせる余地があるように感じました。これらを人材育成施策で強化するため、リーダーシップ開発研修の構想をスタートさせたのです。
ミドル層の、変革を“創っていく”リーダーシップスタイルを意識的に強化したかった
守屋さん:
リーダーシップ開発研修の目的は、次世代リーダーの育成という位置づけでスタートしました。単にミドル層の強化という文脈に留まらず、当社の未来を切り開くためのリーダーシップを獲得してもらいたいと考えていました。
例えば変革のリーダーシップ。当社は食品業界ということもあり、安全・安心が大切です。そのため、規定やルール通りに仕事を進める管理タイプのリーダーシップは高いレベルにあります。一方で、問題の根本原因を突き止め、周りを巻き込んで課題解決にまい進する、といった変革を“創っていく“リーダーシップスタイルは、従来の業務の中では培えていない部分があり、意識的に強化していく必要がありました。
研修のゴールは、研修で得た知識・スキルを武器として身に付け、現場で統合させてリーダーシップを発揮できる人材の育成
また、リーダーシップの議論で西尾がよく口にするのは、Integrated Leadership。
リーダーシップに必要とされるスキルは、ロジカルシンキング、問題解決、ファシリテーション、チームビルディング・・・など、様々なスキル要素を含みます。Integrated Leadershipとは、これらのスキルを課題領域や場面に応じて適切に組み合わせ、使い分けることができるリーダーシップのことです。それに加えて、経営戦略・マーケティング・アカウンティング・ファイナンスといったヒト・モノ・カネを使っての総合的な判断力を兼ね備える。
研修で得た知識・スキルを武器として身に付け、現場で統合させてリーダーシップを発揮する、そんな人材を西尾も期待していたと思います。
検討プロセスと実施内容
リーダーシップ強化のため、プログラムとして何を組み込むか、ケースに何を用いるかにこだわって設計した
守屋さん:
プログラムとして何を組み込むか、ケースに何を用いるかはかなりこだわりましたし、グロービスに何度も相談しました。最終日には総合演習として、1日ケーススタディを行いたいという要望を出しました。ケーススタディ選定の場面では、グロービスから西尾へ内容を直接説明してもらうなど、トップからのコミットも強かったですね。
また、一度プログラムを作って終わりということではなく、プログラムの見直しを毎年行っています。例えばどのような順番で進めるか。一つ一つの科目内容を理解することもさることながら、全体を統合したリーダーシップを身に付けてもらうための最適解を探し続けています。グロービスの担当者から受講者アンケートを取りまとめてご報告いただいたり、プログラムを更に良くするにはどうすればよいか、知見をいただけていたりしているので、それらを踏まえながら定期的にブラッシュアップしています。
社長や担当役員からの期待・直接の声掛けが、参加者の高いモチベーションにつながった
加藤さん:
我々受講者は、担当役員から声を掛けてもらっていましたし、研修冒頭では社長から直接「次世代経営層の一部はこの中から出てくることになると思う」という言葉を受けていました。その為、選抜という言葉の意義や経営層からの期待を十分感じられ、研修中のモチベーションにつながっていました。
守屋さん:
社長の西尾が強い思いで本研修に関わっていたので、受講者も高いモチベーションを維持できたのではないでしょうか。あらゆる場面で「企業の持続的成長を支えるのは人材だ」というメッセージを社員へ発信していました。また、本研修の参加者は、担当役員からの選抜です。受講者は研修の重みや周囲からの期待を感じやすかったのではないかと思います。
講師のファシリテーションにより、自ら思考のバイアスに気付くことができた
研修を見て改めて感心したのは、講師のファシリテーションスキル・インストラクションスキルの高さです。答えを示したり受講者に直接指摘したりするのではなく、受講者への質問や受講者同士の話し合いによって、本人自ら思考のバイアスに気付かせるスタイルは素晴らしいです。「自分のバイアスは自ら気づかないと変容できない」。この要諦をベースとしたインストラクションだと思います。グロービスの持っているケーススタディやテキストが優れていることは知っていましたが、議論の回し方にも驚きました。
グロービスは、いつも期待以上の回答・情報を提供してくれた。不安を抱かずに研修を実施できた
守屋さん:
本研修はトップの強いコミットがありましたし、グロービスに対しても気がかりな点はありませんでした。実は人材育成施策の見直し段階から、グロービスの佐々木さん(グロービス前担当者)とは様々なテーマで定期的に情報交換の機会をいただいていました。
私は2016年に人事部門に配属され、それまでは全く違う部門にいたのです。そのため、人材育成についてあまり詳しくなかったこともあり、佐々木さんにいろいろと質問をしていました。いつもこちらの期待以上の回答・情報をいただけていたことが強く印象に残っています。
佐々木さんから提示される資料は、過去に人材開発に携わってこなかった私にも、非常に分かりやすいものばかりでした。また、佐々木さんはグロービス入社前はメーカーで働かれていたので、前職時代の経験も交えながら、ビジネスベースでの人材育成論を交わせたことも非常に良かったと思います。情報交換を通じて信頼関係が生まれていたので、その後の提案も違和感なく受け入れることができましたね。
成果と今後の展望
受講者自ら、自分の思考の癖に気付き、社長の期待通り「考えて、考えて、考え尽くす」経験が出来ている
加藤さん:
受講後、私がすぐに実行したのは自分の“考え方”から変えることでした。例えばクリティカル・シンキングのプログラムでは、「自分とはこのような考え方の癖を持っているのか」ということを自覚できました。
職場では自分の考えをしっかり相手に伝え、周りに意図を理解してもらうことを意識しています。そうすると、動きやすい環境ができてきます。組織を変えていくには、人を巻き込み、動かすことが必要です。そのためにも、目の前のできることから変えていこうと思っています。
本研修のコンセプトは、「考えて、考えて、考え尽くす研修にするように」と西尾から話があったと聞いていました。まさに、それに適った研修になっていると思います。
守屋さん:
正直、会社・組織といった単位での変化はまだ強く実感するところではありません。しかし、リーダーシップ開発研修を3年間続けてきて、加藤のように、個々人での変化(点の変化)は確実に起きていると思います。それは、受講者自身の声ももちろんですが、受講者の部下からもこんな報告も受けました。
「研修後、課長が変わりました。『その仕事の目的はなんだったのか、そこを考えなさい』『ゼロべースで発想しなさい』という発言は、以前はありませんでした。課長からフォローを受けていて、とても勉強になっています。」
受講者一人ひとりの変化(点の変化)が、線になり面の変化になりそうな期待が生まれている
この声を聴いて、とても嬉しかったですね。点の変化が、線の変化になろうとしている。即座に会社がガラッと変わることは難しくとも、こうしたことを繰り返していくうちに点が線に、そして面の変化になって、会社全体が変わっていくのでしょう。
加藤さん:
点の変化としては、研修を受けたことで自身の得意不得意が自覚でき、学ぶことの大切さを認識できたことです。私はずっと営業企画をやっているので、マーケティングは比較的得意です。一方、財務会計やキャッシュフローにはあまり接することがなく、決算書を斜め読みするレベルでした。このあたりをもっと理解できると、自分の仕事の幅が広がるかな、と。苦手な分野は「GLOBIS 学び放題」(グロービスの動画定額視聴サービス)で継続的に勉強しています。自分の仕事に活かして終わりではなくて、研修後もどんどんと学びにつなげていける研修でした。
部門を超えた受講者同士のコミュニケーションが活性化し、仕事が円滑に進むようになった
また、研修ではさまざまな部署から受講者が集まっていました。品質保証だったり、生産だったり、財務だったり、関係会社だったり・・・。他部門への人脈ができたことで、わからないことがあれば詳しそうな部署の人に気軽に聞けるようになりました。互いに悩みを聞いたり、解決策のアドバイスをもらえたり、コミュニケーションをとるフットワークが軽くなり、仕事が円滑になったと感じています。
今後は、全く違う業界の人たちから考え方を学ぶ機会を創り、“いい”気付きを得たい
守屋さん:
会社に入って10年も経てば、思考様式が似てきます。弊社のような食品業界であれば、お客様の安全・安心が第一。どうしてもディフェンシブな思考になりがちです。変革のリーダーシップを追求するのであれば、全く違う業界の人たちから考え方を学ぶ必要があると考えています。
ロングセラー商品が多いのは食品業界の特徴ですが、他の業界では10年前のサービス・商品が市場にないことが珍しくありません。そのような業界で働いている人と自分の思考様式を比べると、必ず“いい”気付きを得ることができると思います。企業内研修ならではの良さを残しながら、他流試合も視野に入れてブラッシュアップしていきたいですね。塙さん(グロービス現担当者)からの適切なアドバイスに期待しています。
向上意欲の高い社員に向けて、より学びの機会を提供していきたい
また、リーダーシップ開発研修以外だと、向上意欲の高い社員に向けて、より学びの機会を提供していきたいと考えています。これまでの育成施策では階層別研修が主軸となっており、昇級しないと研修機会を得ることができないといった側面がありました。実際に、今年の社員アンケートでそういった声が挙がり、人事部としては真摯に受け止めています。そこで、階層別研修の一部を公募型の研修にシフトし、社員が望めば学びが得られる環境を整えていきたいと構想しています。
キャリア開発支援を全世代に広げていくことも検討している
そして、同じ社員アンケートでは、「キャリアの関心度」と「仕事のやりがい」に明確な相関があることを確認しました。キャリア開発支援に関して、今まで若年層と中堅社員を中心に組み立てていたのを今後はベテラン社員まで視野にいれて、全世代に広げていくことを検討しています。
「能力開発を通じた社員一人ひとりの自己実現」。ここに近づくために、次世代リーダー育成を目的とした管理職選抜型研修、やる気のある社員が自ら手を挙げて教育機会を得る公募型研修、そして全世代へのキャリア開発支援をさらに進化させていきたいと考えています。
グロービス担当者の声
塙;
雪印メグミルク様の研修テーマは、自社の未来を切り開く「次世代リーダーの育成」でした。
「次世代リーダー」と一口にいっても、各社様が置かれている外部環境やビジネスモデルによって、求めるリーダー像(到着点)はもちろん異なります。また、それに対して、対象者の受講前の状態(出発点)も、業界特性・会社方針・組織文化・過去の成功/失敗の体験・自身の役割認識・・・とさまざまな要素から影響を受けて規定されています。そのため、対象者を到達点に導くには、ビジネス全般にまたがる幅広い観点に考えを馳せたうえで、次世代リーダーの育成を検討することが重要と言われています。
その点、雪印メグミルク様と前担当の佐々木の間では、食品業界を取り巻く環境、会社として向かいたい方向、またメーカーの組織特性など、幅広く議論をさせて頂いておりました。 その議論における守屋様の熱量は、相当なものであったと伺っております。結果として加藤様にお話し頂きましたように、受講者の皆様に響くプログラムを選定できた要因になっているのではないか、と思います。
とはいえ、環境変化の激しい現代において、求めるリーダー像も変化していきます。また、対象者の受講前の思考・行動特性も、異なってくる可能性もあります。 そのため、今後も守屋様と対話を重ねて、企画当初に置いていた”前提”を適宜問い直しながら、プログラムのブラッシュアップを続けていきたいと思います。
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