人材育成プログラムの設計精度を高める3つのポイント

2021.09.03

本コラムでは、人材育成プログラムの設計精度を高めるポイントとして、「あるべき人材像」「研修のゴール」「企画を進める上での必要な配慮」の3つをご紹介します。
この3つはとても重要ですが、実務が忙しいと気づきにくいポイントでもあります。ぜひ本コラムを読んで、その要素を1つでも取り入れてみてください。

執筆者プロフィール
小島 和也 | Kojima Kazuya
小島 和也

関西学院大学法学部卒業。グロービス経営大学院経営学修士課程(MBA)修了。
精密機器メーカーにて大手直販顧客へのカスタマイズ製品の企画・提案、販売チャネルのプロモーション業務等に従事。
グロービス入社後は、企業向け人材育成・組織開発プロジェクトの企画・設計・コンサルティング業務に従事する。
また、マーケティング領域のコンテンツ開発に携わるとともに、講師として同領域を担当する。


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設計の精度を高めるためのポイント

 

人材育成の設計ポイント1:
あるべき人材像を具体的に押さえる

1つ目のポイントは、「あるべき人材像を具体的に押さえる」です(図1)。

図1:人材育成プログラムとあるべき人材像の関係性

図1:人材育成プログラムとあるべき人材像の関係性

あるべき人材像を具体的に押さえるには、どのような工夫があると良さそうでしょうか? 普段、皆さまはどのようなことを意識されているでしょうか?

意識してほしいポイントは2つ。1. 行動で定義する、2. 分解して考える、です。

1. あるべき人材像を行動で定義する

あるべき人材像は、行動で定義しましょう。たとえば「コミュニケーション力が高い人」は良い人材像でしょうか? 答えはNoです。この定義は抽象的すぎるため、「実務における姿が想定しづらい」「研修の達成度が分かりづらい」といったデメリットが生じます。


では「コミュニケーション力が高い」を行動で定義すると、どのようになるでしょうか? たとえば「部下の特性を理解し、納得感のある形で方針や目標を伝えることができる」と表現できるかもしれません。この表現であれば、従業員の皆さまは実務上の姿が想像しやすく、皆さまにおいては育成効果の確認がしやすくなります(図2)。

図2:あるべき人材像を行動で定義する

図2:あるべき人材像を行動で定義する

2. あるべき人材像を分解して考える

あるべき人材像を行動で定義した後は、分解による詳細な定義を試みましょう。分解にもさまざまな方法がありますが、ここではプロセスに沿った分解をご紹介します(図3)。

図3:あるべき人材像の行動を分解する

図3:あるべき人材像の行動を分解する

図3では、リーダーが成果を出すために必要な行動を「ビジョン・ゴールを設定」と「計画策定」と「計画実行・改善」に分解し、その過程で「人材育成」も行う、としました。

このように分解することで、課題を具体的に特定しやすくなり、課題解決に必要なスキル・マインドの検討も容易になります。

人材育成の設計ポイント2:
ゴールをステップでとらえる

2つ目のポイントは、「ゴールをステップでとらえる」です。皆さまは、研修のゴールを設定する際、どのようなことを意識されているでしょうか?


研修のゴールとはすなわち、本研修を通じて、受講者をあるべき人材像へどこまで近づけるのか、ということ(図4)。なお、誤解しがちな点として、あるべき人材像と研修のゴールは、多くの場合同じではありません。

図4:研修のゴール設定のイメージ

図4:研修のゴール設定のイメージ

たとえば、社内に新システムを導入・展開していくための講習会を企画する、という事例について、ゴール設定を考えてみましょう。

ここでも、分解の手法が使えます。たとえば実現の難易度で分解することで、ストレッチが必要なのか、ある程度現実的なところにとどめるのか、を段階的に考えることができます(図5)。

図5:あるべき人材像の分解(例)

図5:あるべき人材像の分解(例)

図5のようにあるべき人材像を具体的に言語化したら、関係者と協議しながら、「この研修でどこまで行くべきなのか、行けそうなのか」を決めていきます。その結果、研修のゴールを設定でき、具体的な研修プログラムの企画に進むことができるのです。

人材育成の設計ポイント3:
人材育成プログラムの企画を進める上で
必要な配慮を考える

3つ目のポイントは、「人材育成プログラムの企画を進める上で必要な配慮を考える」です。

ゴールの置き方や育成プログラムを企画したとしても、参加者・組織にはさまざまな事情があります。参加者・組織の事情により、育成施策がどんどんブレてしまったという経験はないでしょうか。

そのため、人材育成プログラムを企画する際には現場の方々を思い浮かべ、どのような配慮が必要かを考える必要があります。たとえば、以下の項目はありがちな失敗例と配慮例です。

・普段の仕事の仕方や組織の価値観・風土と、研修内容がかい離しているため、講師の話を素直に受け入れられない

⇒(配慮例)導入背景を説明する時間を多めに確保し、丁寧なコミュニケーションを取る

・研修内容が応用的すぎて、受講者の現在の知識・知見では理解しきれない

⇒(配慮例)足りない知識を補うため、動画学習ツールによる事前学習を用意することや、基礎→応用の2ステップの設計に見直す

・受講者の時間的な制約により、実際には全員が集まることができない

⇒(配慮例)余裕を持った早めのスケジューリングを行う。受講者の上司の協力を予め取り付ける

研修企画の完成度が高いだけでは、絵に描いた餅です。より良い形で研修を実行するためにも、現場の事情をすくい上げて配慮することが求められます。

最後に

本コラムでは、人材育成プログラムの設計制度を高める3つのポイントを押さえてきました。要約すると、「研修プログラムと実態をフィットさせる」ことが、何よりも重要です。そのための具体的な方法として、人材像を行動で定義すること、分解して考えること、必要な配慮を踏まえることについて解説しました。

本コラムが、皆さまの会社で人材育成プログラムを設計するための一助になれば幸いです。人材育成の企画・設計について、より詳細を知りたい方や資料をダウンロードしたい方は、ぜひ動画セミナーを視聴してみてください。

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設計の精度を高めるためのポイント

 

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【第1回】人材育成プログラムの効果的な設計方法
【第2回】人材育成プログラム設計における2つの難所
【第3回(本コラム)】人材育成プログラムの設計精度を高める3つのポイント

※文中の所属・役職名は原稿作成当時のものです。