人材育成プログラム設計における2つの難所

2021.09.03

本コラムでは、人材育成プログラムを企画/設計するうえで陥りがちな難所を、2点ご紹介します。難所1:人材育成の戦略上の位置づけが希薄になりがち、難所2:目の前の人材育成プログラムへ飛びつきがち、の2点です。

 

なぜこれらの難所は起きがちなのか、それを回避するためにはどうすれば良いのか、一緒に学んでいきましょう。

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育成プログラム設計における難所

 

 

育成企画の難所1:人材育成の戦略上の位置づけが希薄になりがち

人材育成プログラムの企画/設計において、よくある難所の1つ目は、人材育成の戦略上の位置付けが希薄になってしまうという点です。


まずは全体像を把握するために、人材育成と企業活動の関係性を見てみましょう。企業活動を図1のように分解してみると、育成は人事制度の中に含まれると分かります。

図1:外部環境・上位戦略と人材育成施策のつながり

図1:外部環境・上位戦略と人材育成施策のつながり

 

人事制度の上位概念は、HRM(Human Resource Management)戦略です。HRM戦略は、会社の方向性を示す経営戦略と密接にかかわります。経営戦略の上位概念である企業理念・ビジョンも含め、内部環境(経営活動)が展開されていくわけです。

一方で外部環境として、人事制度が直接関係するのはJOBマーケットです。その他の外部環境として、マクロ環境や、市場/お客様のニーズ、そして業界の競争環境や競合の動きなどがあります。それらから導かれるKSF(Key Success Factor:業界の成功要因)と、自社の経営戦略は密接に関係しています。

 

戦略上の位置づけを踏まえたうえで、人材育成担当者の皆さまが押さえるべきポイントは2点です。

1つ目は、人材育成が外部環境ともつながっているという意識を、しっかり持つことです。外部環境が変わると、それに適応すべく経営戦略が変わり、HRM戦略も代わり、育成も変わらねばならない、ということです。JOBマーケットだけでなく、経営戦略に影響を及ぼす要因を、日ごろから押さえておきましょう。

2つ目は、人材育成施策だけに閉じないことです。外部環境の変化に伴い経営戦略を変えねばならない時、そこには何らかの課題があるはずです。その際に、人材育成だけで乗り切ろうとしてはいけません。人材育成対象者に過度な負荷をかけることにつながり、あるいは本来の課題解決に至らない可能性も高まります。


課題解決のための施策は、人材育成以外にも考えられるはずです。内部環境にある他の戦略も組み合わせ、課題解決していくという視点を持つことがポイントです。

育成企画の難所2:目の前の人材育成プログラムへ飛びつきがち

前項で論じた通り、人材育成プログラムの設計にはさまざまな視点を持たねばなりません。しかし実際には、多くの担当者は目の前の育成プログラムに集中しがちです。この難所を乗り越えるため、設計における重要な論点から押さえていきましょう。


図2をご覧ください。人材育成プログラムを考えていく上では、背景となる「事業・組織の課題」を解決するための「あるべき人材像」を特定します。そのうえで、「受講者の現状」とのギャップ(=育成課題)を特定して、研修のゴールを設定し、人材育成プログラムを検討します。

図2:人材育成プログラムの設計における重要論点

図2:人材育成プログラムの設計における重要論点

 

人材育成プログラムへ飛びついてしまうと、人材育成プログラム以外の論点があいまいとなり、結果として人材育成プログラムの検討の甘さにつながります(図3)。

図3:人材育成プログラム以外の論点があいまいなケース

図3:人材育成プログラム以外の論点があいまいなケース

 

では、なぜそのような事態に陥ってしまうのでしょうか。少し具体的に考えてみましょう。

 

営業所を展開する、とある企業を想定してください。経営課題は、新規顧客の獲得です。近年は商談スキルに関する外部識者の講演を実施していて、評判は上々。

皆さんが人材育成担当者として、新たに本件の担当になったという状況を想定してみてください。以下のようなケースは、往々にして起こりえます。

・事業部まで情報を取りに行かないといけない

・関係者が多い

・時間がない

・外部識者の講演は、評判が良かった

⇒だから、今年も講演でいいか

このように人材育成プログラムにすぐに飛びついてしまうと、以下のような不具合が生じます。

・問題意識や目的とプログラムがつながっていない

・プログラムの手法を選択する根拠や基準が定まっていない

・過去に好評だった手法・講演が選ばれてしまう

・企画プロセスが甘くなる

 

本来は、たとえば以下のようなプロセスを押さえられると、整合性を持ったプログラムが設計できます(図4)。

図4:経営課題と人材育成プログラムの整合性(例)

図4:経営課題と人材育成プログラムの整合性(例)

1. まずは事業・組織の課題を押さえます。「いま事業にはどんな課題があるのか」「なぜ新規顧客獲得のための取り組みが必要なのか」、この辺りは把握する必要があるでしょう。

2. 上記課題を解決するために、誰が研修の対象者になるのか、対象者にどのような行動をとってほしいのかを決めます。

3. 現状とのギャップ(育成課題)を特定します。

4. 「今回の研修でどこまで行くのか」、「研修終了後、営業所長にどういう状態になってほしいのか」を考えます。

5. ゴールにつながる人材育成プログラムを考えます。

人材育成プログラムの設計に向け、意識したい3つの問い

2つの難所を踏まえてつまづかないようにするために、人材育成担当者の皆さまに意識していただきたい3つの問いをご紹介します。

1. 効果的な人材育成プログラム設計のために、自社の経営課題に関する理解を怠っていないか?

2. 参加者の状態を押さえ、人材育成プログラムによって実現可能なゴールを設定しているか?

3. 当たり前のことをやり抜くことは簡単ではない。陥りがちな難所を明らかにして、対処し続けることができているか?

これらの問いに答えるには、関係者と協議をして前に進める努力をしたり、人事だけに閉じずに外に情報を取りに行ったりする姿勢が重要です。複雑な問いですので、決して自分一人で抱え込まないようにしてください。


また本コラムでは、人材育成を考える際にはプロセスを通じて考えることをご紹介しました。しかし実際に行ってみると、全プロセスの検討が淀みなく進むことはあり得ません。実際は、プロセス上を行ったり来たりしながら整合性を取っていく、ということになるでしょう。

最終的に全体がつながり、整合したストーリーを紡げることが重要です。

最後に

本コラムでは、人材育成を企画する際にありがちな、2つの難所について解説しました。具体的な設計の際には、参加者の状態、その背景にある構造・難所を踏まえて、人材育成プログラムの設計を進めていくことが重要です。しかし当たり前に見えるプロセスでも、やり抜くことは簡単ではありません。まずは事業・組織の課題を押さえるということから、ぜひスタートしてみてください。

人材育成の企画・設計について、より詳細を知りたい方や資料をダウンロードしたい方は、ぜひ動画セミナーを視聴してみてください。

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育成プログラム設計における難所

 

 

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【第1回】 【第2回(本コラム)】【第3回】

執筆者プロフィール
小島 和也 | Kojima Kazuya
小島 和也

関西学院大学法学部卒業。グロービス経営大学院経営学修士課程(MBA)修了。
精密機器メーカーにて大手直販顧客へのカスタマイズ製品の企画・提案、販売チャネルのプロモーション業務等に従事。
グロービス入社後は、企業向け人材育成・組織開発プロジェクトの企画・設計・コンサルティング業務に従事する。
また、マーケティング領域のコンテンツ開発に携わるとともに、講師として同領域を担当する。


※文中の所属・役職名は原稿作成当時のものです。

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