自分と組織をアップグレードする対話とは?「対話」の質を高める鍵(後編)

2020.06.13

前編では、「よい対話とはどういう状態か」について。後編では、対話が人と組織をいかにアップグレードするのかをお届けします。

組織運営の難易度が高まる時代、リーダーシップもシェアする姿勢へ

鎌田:
すこし話を変えて、「変化に向き合うリーダーの姿勢」と「対話のあり方」をディスカッションしましょう。リーダーは、常に変化に適応することが求められていて、コロナ禍は変化のトリガーに過ぎません。

ただ今回は、人間の命に関わるフィジカルな問題と不安、リアルで会えないことから生まれる孤独感、企業活動の鈍化による経済的な影響という、同時多発した課題に向き合いました。今、企業のリーダーは、「サポーティブな姿勢」と、「危機感をもって次を創造する姿勢」のどちらが重要だと思いますか?

福田:
両方だと思います。これを機に、自律分散が促されたのは事実。ただ、その変化に対して対応できているのは、2割に満たないのではないでしょうか?8割は、戸惑いや何かしら不安を感じている。だからサポーティブにケアしないといけないでしょう。

一方で、「リーダーシップはシェアする姿勢」が重要です。希望にドライブする人、メンバーをケアする人、多様なリーダーシップが必要ですが、一人で全部は抱えきれません。しかも、複雑な時代になるほどミドルは求められる側面が増えてしまい、リーダーシップの難易度が上がっているのも悩みでしょう。

鎌田:
リーダーシップのシェアリング、いいですね。ちなみに、ミドルの難易度が高いと思う背景と、難所はどこにあると考えていますか?

福田:
ミドルは、成果創出とメンバーのサポートという両方を担う中で、ダブルバインド(二重拘束:矛盾したメッセージによって相手に混乱が生じる状態)をメンバーに対して起こしがちだからです。

例えば、「もっと能動的に動いて欲しい」と「日々の活動はきちんと報告相談して欲しい」などです。リーダー側には、メッセージの意図や背景を丁寧に伝えていく必要がある。でも、変化に追いつくスピード感がある対応に焦り、コミュニケーションに齟齬がうまれてしまいがちです。

今こそ「全社視点で人の流れを作りだせる」人事の役割が大きく問われる

鎌田:
ミドルこそ「対話」でダブルバインドを解決していく必要性がある。対話相手という意味では、「ミドルとフォロワー」「ミドルと上位層」「ミドル同士」など複数のレイヤーについてはどう考えますか?

福田:
ダブルバインドの解消には、あらゆるレイヤーで対話をして、理解・共感をもたらすことが大切です。

また、人と人との関係性やネットワークは、組織図に閉じるものではなく、縦横斜め多様な組み合わせが重要でしょう。そこに、人事部門の役割が改めて問われてくると考えています。

コーポレート部門だからこそ所属組織を超えて動け、人を繋げることができる、全社視点で人の流れをつくりだせる。いまこそ、人事の役割は大きいものになっていくのではないでしょうか。

また、ミドルは「どのような組織運営、マネジメントをしたいのか」が問われています。従来の管理統制に戻るのか? それとも、自律分散に更に進んでいくのか?

個人的には、自律分散の流れは不可逆的で、マネジメントスタイルは、より個々の状況に合わせたものになっていくと考えています。ミドル層のリーダーは、組織に対する根本的な考え方が曖昧なままにしておくと、管理統制に戻ってしまい、変化に適応できない組織になってしまうことを危惧しています。

鎌田:
上手くいくか否かは、思想に関わるという問題意識は共感します。更にいうと、経営者がその意思を持っていることや、リーダー陣のマチュアさ、成熟度も関係します。自社組織に、マチュアなリーダーが何人いるか? が問われているのでしょう。

あと、福田さんは2つのことを言っていますよね。一つは「人事が縦横で柔軟に動ける“仕組み”」、次に「自律分散して、自分で動ける人を増やす“個人への働きかけ”」です。

仕組みは、コロナ禍の前に、どのくらい準備したかに尽きます。準備できてなかった組織は、今から何をするべきでしょうか?

福田:
両方大切ですが、仕組か、個人かの二択なら「個人への働きかけ」からでしょう。というのも、縦横の柔軟な動きができる組織は、仕組みの有無以上に、誰から言われなくても自分で感じた課題意識をもとに、「まずは、やってみよう!」の人が多い。

そういう動きができる個人を増やすためには、個人の自主性を尊重できるカルチャーが基盤。仕組というハードだけでなく、ソフトとしての規律・規範の共有と、「この仕事を通じて、どんな変化と価値を生むのか?」を考え動ける自己革新力を高めることが重要です。

ハードはソフトを変えるためにある。対話によって構成員の意識を変えることにつきる

鎌田:
ハードイシューは、ソフトイシューを変えるための施策。組織の構成員の意識を変えることにつきる。シンプルにいうと、メンバー全員が同じ方向を目指し、個々の意思で動ける人を増やすということ。 「どうあるか?どうしたいか?」の対話を深めることが、組織を強くするという認識ですか?

福田:
はい。対話は企業のあらゆる有形無形の資産とつながります。

経営者やリーダーは、価値を創造して企業を成長させ、従業員との対話で理解を深めることはもちろんのこと、同時に、自社の利益だけでなくSDGsなど社会的規範に沿う経営をしなくてはならない。そうなると、経営者・リーダーも常に学習して、自分自身の認識をアップデート、アップグレードしていくことが求められるでしょう。

鎌田:
まさに、経営者育成プログラム「知命社中」とも通じます。社会はどうなっているのか? を学び、自分はどうしたいのか? を問い続けること。

リーダー教育は、アラインメント(適応)だけじゃ意味がない。自分で未来を変えていくこと、未来を定義して創造していく人、つまりファーストペンギンをどう誕生させるか?です。福田さんの考えはいかがでしょうか?

福田:
もちろん、リーダー全員がそうなれるのが理想ですが…。ただ、2割は変化が重要だと思います。そこからファーストペンギンが生まれ、多くの人に影響を与える。その流れができると望ましいですね。

認識は、「対話の習慣化(量)」×「対話における究極の問い(質)」でアップグレードされる

鎌田:
僕も一人でも多くファーストペンギンに誕生してもらいたい。そして、対話からファーストペンギンは生まれると思う。

僕が、知命社中を主催する中で得た確信は、「量が質の転化を促す」ということです。まずは「対話」が当たり前の習慣である環境を作り、対話量を増やすこと。その中で、リーダーとしての自己認識が深まるような問いかけを促すことが重要です。

僕らは、「対話の中心の問い」になにを置くといいのでしょうか?

福田:
「あなたは何を成し遂げたいか?」を聴きたい。うーん、いや、ちょっと違う。いま、鎌田さんの期待する答えを探しているかも(苦笑)

正直に言うと「大事にしたいこと、を聴きたい」しか浮かばなかったんです。「大事にしたいこと、本心でやりたいことがなにか?」それが中心におくキークエスチョン。相手が、自分から動きたいと思うことが出てくるまで丁寧に繰り返す対話でありたい。

鎌田:
「対話頻度」×「究極の問い」の掛け算だけが唯一の方法論ではないにしても、認識がアップグレードしていくことが重要です。

「認知の拡大は不可欠」で、シンプルにいうと「認知拡大=勉強する」だし、学習が自分の習慣になるためのエンジン、動機が大切ですよね。それはどうしたらいいと思いますか?

「無知の知」という豊かさが自分を成長させる

福田:
心持ち、マインドセットだと。大人になるほど「知らないこと」があるのは幸せなことで、豊かになれると思います。だからこそ、「自分の学び方」を知ることに意味があります。

つい人に「どうしたらいいですか?」と学び方を聞いてしまいがちですが、自分で「学び方を学ぶこと」がアップグレードのエンジンになっていく。

例えば、本は体系的に知識を、インターネットは最新情報を、他者との対話から異なる視点を。自分がどういうバランスで学ぶかを知っていることが大事で、「『無知の知』という豊かさに気づけるか」だと考えています。

鎌田:
学び方を修めることがアップグレードの鍵。次の学びの好奇心を呼び起こすということですね

福田:
はい。例えば、何かを学ぼうとしてその内容が「既に知っている。もう学ぶ必要ない」と決めつけてしまうとその瞬間に学びが狭まる。

既知の情報であっても、「これは如何にして成果に結びつけるか? のアイデアを学ぶ必要がある」という気づきを得られたと捉えると、学びの機会が広がります。

知らないことを学ぶサイクルを回し続けること。「そんなことは知っている」という傲慢さが学びを止めてしまいます。ミドル以上こそ、自らの謙虚に学びを止めない姿勢が大切ではないでしょうか。

対話によって気づきを得て、執着を手放した時に自分が作りたい未来が見える

鎌田:
最後に、高い難易度が求められミドル、マネージャーの皆さんにお伝えしたいメッセージがあれば。

福田:
私の失敗体験からの学びとしてもお話しましたが、ミドルが最も苦しむのは「手放せない」構図だと考えています。変化の時代には、誰しも不安が先立ちます。

やるべきことは山積しており、1人では抱えきれないから、リーダーシップもシェアしなくてはいけない。でも、シェアの仕方が分からないから不安になる。そして、自分のこだわりが見えていないと、何を自分に残すのか、何を手放すのか判断ができない。

そんな時、対話で自分を知ることがある。相手の意見で「自分のこだわり」がわかり、手放す感覚が持てることで、自らがなすべき行動に気が付くことは多い。

対話によって気づきを得て執着を手放した時、自己認知がアップデートされ、自分が作りたい未来が見えていると信じています。

 

【編集後記】
先日、zoom飲み会で「メタ認知能力はどう高めるのか?」の話題に。まずは自分との対話。でも内省だけでは世界は広がらず、独善的になるリスクがあるから他者のフィードバックは不可欠。例え納得できない言葉に出会っても、一つの真実として受け入れる訓練こそ「大人になるということ」だよねと盛り上がりました。今回編集しながら、他者との対話から、自分が何に喜び、怒り、悲しみを感じるのかを知ること、そして弱さを認めながら未来を作る決意することがメタ認知を高めることになり、それが「成熟」なんだよねと、自分の失敗を思い浮かべつつ思いました。
(編集担当:赤崎述子)
執筆者プロフィール
グロービス コーポレート ソリューション | GCS |
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※文中の所属・役職名は原稿作成当時のものです。