DX時代を勝ち抜く人材育成と組織開発~withコロナ

2020.05.15

「DX時代に勝ち抜くためには、改めて組織の実行力が問われる。戦略は実行を伴ってこそ価値を発揮するからだ。」新型コロナウィルス感染症という困難に向き合い働き方が変化したことで、オンラインにおける育成と組織開発のあり方が問われています。有事の今こそ、合理と情理に配慮できるリーダーシップと、フラットでオープンな組織開発が欠かせません。

 

今回、大学院では3日間で300クラスを全面オンライン化したノウハウを持ち、3800社の人材育成をサポート、1992年から経営者と経営幹部の外部パートナーとしてリーダー育成に携わってきた知見をふまえて、グロービスだから貢献できることはなにか、グロービス ・コーポレート・エデュケーション部門マネジング・ディレクター西恵一郎と、オンライン戦略に携わるディレクター加藤康行の二人が対話をしました。

経営戦略だけではDXは実現しない。求められるのは組織の実行能力。

加藤:
世界が「新型コロナウィルス感染症拡大」という共通の困難に唐突に向きあい、一定期間は共存せざるを得ない状況になりそうです。今後の企業の組織の方向性や、課題意識など、どのように変化すると考えていますか?

西:
コロナショックの前から、日本企業の間では「DX(デジタルトランスフォーメーション)に向かうべき」と、議論されていました。そして、既存ビジネスをDXにシフトする戦略を考えて、仕組として新しい部門やツールの導入など、準備をしていた企業が多かったのではないでしょうか。ただ、それだけだとDXは実現しにくいですよね。なぜなら、優れた経営戦略があっても、組織の実行能力がないと絵に描いた餅に終わってしまうし、それが日本企業の課題だと考えています。

以前、取材で話をしたのですが、課題意識はそんなに変わっていなんですよ。

そして、コロナショックに向き合うことになった。

「オンライン会議、テレワークは難しい」と言っていた企業も、強制的にオンラインに移行しないといけない状況へ。結果として、働き方と、働く人の考え方が変化しつつある。もし、自粛期間が3週間で収束したなら、価値観は大きく変えずにやり過ごせたかもしれません。しかし、自粛期間が延長されたこと、感染症の第2波など長期戦の可能性も考えると、「新しい働き方」に本気で取り組んでいかざるを得ない。これを契機にDXへの企業の取り組みの本気度が変わるんじゃないでしょうか。

ちょっと乱暴ですが、「リアルじゃないと業務は出来ない、組織は作れない、育成はできない」と言っている限り、DXは本質的には実現しない。オンライン上でも行えるようになることで、組織のケイパビリティ(能力)が高められるチャンスだと思います。

リーダー自身が「オンラインでも育成ができるという原体験」を持つことがカギ

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加藤:
「一旦全てをオンライン化」くらいの意気込みが必要そうですね。そうなると、企業の人材育成や組織開発の方針は、どのように変わり、何が重要になりますか?

西:
「オンラインでも人を育てられるという原体験をリーダーにいかに持たせるか」が、リーダー育成の肝になってくるでしょうね。

オンラインでも人を育成できる力は貴重な能力だと思います。

何気ない会話や、横に座って教えることが出来ないというオンラインの環境で人を育成するためには、リーダー側の「どのように育成したいのか」というプランニング能力が問われます。「なんとなく」では立ち行かない世界ですから。

ビジョンを描き、役割分担を行い、プロセス設計して、柔軟な対応で業務をを進め、成果を出していく。そのためには、リーダーの具体的に考える力、オンラインでも通じるコミュニケーション力、人に影響を与える力がより必要でしょう。

オンラインの環境で、いかにしてリーダーに、成果創出、プロジェクト運営、人材育成といった原体験をつませるか?それが企業のDX化、あたらしい育成・組織開発のカギになると感じています。

「働き方」と「評価」の変化が、組織の自律性を高めて、大きなカルチャー変革につながる

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加藤:
働き方のオンラインシフトとなると、どのような変化が想定されますか?

西:
まずは「業務評価」でしょう。働き方をオンラインに移行させると、個人の行動、プロセスが見えにくくなるため、アウトプットベースで評価していくことになる。「在宅でも成果がだせればいい」となり、「アウトプット志向」になっていくと思います。

また「働き方」と「評価」が変わると、個人の自律性が高く求められ、組織全体の自律性が高まります。これは大きなカルチャー変革につながると予想しています。

例えば、育児や介護で「実は、家で仕事をしたい」と言い出せない方は、一定数いたと思います。それが、「在宅でも、成果をだせば評価に繋がる」という世界ができれば、場所や時間という制約が無くなり、ダイバーシティが加速します。まさに、コロナ禍によって機会が訪れたと強く感じています。

加藤:
面白いですね。ポジティブ面もありつつ、評価がアウトプット軸になると、雇用される側が、「管理が厳しくなるのではないか?雇用は?」というネガティブな印象を持つ可能性もありそうですね。

西:
というより、「ポジティブな方向に繋げた企業が強くなる」と考えています。繋げられないと、ネガティブ面がフォーカスされてしまう可能性もあるでしょう。

オンライン時代のリーダーは、「目標達成」と「集団への配慮」の高度なバランス感覚が求められる

加藤:
リーダーシップの理論に「PM理論」ってあるじゃないですか。評価やアウトプットの変化は、成果創出という「P軸(パフォーマンス)」に影響があるけど、組織つくりにおいては、「M軸(メンテナンス)」も同時に重要だということですよね。そうなると、リーダーシップの難易度が大幅にアップして、高度なバランス感覚が求められますね。

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西:
そのバランス感覚はとても大切で、メンバーを丁寧にケアしながら、必要な変革を推進することが重要です。加えて、リーダーの属人的なコミュニケーションスキルに頼るのではなく、仕組みでフォローアップの体制も考えていかないといけないですね。

「オープンでフラットな組織つくり」には、ビジョン浸透とナレッジ還流の仕組みと落とし込みが必要

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加藤:
このバランス感覚は、コロナ禍に限らず、変革を推進する上でも重要です。メンバーへの接し方で意識していることはありますか?

西:
オンラインで減ることの一つは「雑談」ですよね。リーダーの仕事には「ビジョンを描く」がありますが、方針とかビジョンって、雑談をきっかけに、意図をお互いに確認したりすることで浸透していくもの。

雑談がない世界では、何気ないコミュニケーションの縦と横を、「オンライン上でも行えるようにしていけるか?」が難所であり突破口だと考えています。そこで大事なのが、お互いのアイディアやナレッジを共有しあうこと。お互いが情報や知恵のシェアを行い、多様なメンバー同士で意見交換が始まっていくことが望ましいと思ってます。

そのためには、コミュニケーションしやすいツールの確保と同時に、コミュニケーションの量を増やす導線設計も重要です。なにより、オンライン上のコミュニケーションにおいては、上意下達の世界観は作ってはいけません。

オープンでフラットに情報をシェアする姿勢に対するアクナレッジ(尊敬しあう姿勢)と、誰もが意見交換をおこなう風土の後押しを、組織全体で作れることが大事でしょう。

オンライン環境のリーダーは「ファシリテーション能力」と「ビジネス設計力」が求められる

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加藤:
グロービスならではという特徴で、お客様の組織開発やリーダー教育でお役に立てることは、どんなことがありますか?

西:
グロービスは、出身企業がベンチャー、大企業、外資系、官公庁など、多様な背景を持ったメンバーが集まっていますが、入社後は「グロービス」という共通のカルチャーを醸成していきます。この、よきカルチャーを共に作り、共に組織を成長させていくことを“全員で実践する組織”ーー。これは組織開発を行う企業のショーケースになると感じています。

しかも、今回のコロナショックにおいても、オンライン上でも業務の遂行と組織つくりが出来ているのは、平時の時から実践してきたからこそ。

とはいえ、グロービスも数年前に、人・組織に関する悩みを抱えた経験があったから語れるわけです。目指すべき状態に組織の成長スピードが追い付かない、短期的な仕事に時間が取られ、中長期を見据えた戦略が立てられない。その結果、思うようにチャレンジ出来ず、モチベーションが保てない若手が増えた。カルチャーでいうと、発信が義務の時代があり、やらされている感の蔓延、レスポンスも特定の人になる。メンバーからの真摯なフィードバックを受けて「乗り越えるべき壁」に向き合い、組織内で対話を通じて、今に至っています。

自らが実践しているから見えたこと、我々が向き合った課題意識、施策の具体事例、組織開発のソフトイシューに関する難所とその乗り越え方は、実践者としてお客様に伴走できると考えています。

あとは、オンラインの環境では、高い「ファシリテーション能力」「リーダーのビジネス設計力」が求められます。その学習プロセスと学びの再現性のノウハウは、グロービスが知見として蓄積しています。

人・組織開発に関する「ソフトイシュー」と、オンライン環境でより求められる「スキルの学習方法と再現性」の両面で貢献できるはずです。

お客様とノウハウを共有して成功体験を一緒に作る。そして、組織と未来を創造する。

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加藤:
最後に、「こういう世界をつくりたい」という思いがあれば。

西:
日本は、方向性や戦略が定まれば、プロセスの調整、縦横の柔軟なコミュニケーションで、改善していく能力は高い。足りないのは、方向性を打ち出すリーダーシップだとずっと思っています。

日本でも、リーダーの方向性が明確な企業は強さをみせています。

DXが進むと、経営戦略を大きく変化せざるを得ない可能性も高いでしょう。
まずは戦略を作れる力が求められます。次に、組織が機能するように実行能力を高められる育成体系の構築と、仕組みでサポートしていかないと、戦略は絵にかいた餅で終わってしまいます。

withコロナ、DX時代においては、今まで以上に経営の舵取りの難易度があがるため、経営者と組織との距離がでるでしょう。だからこそ、「オンライン上でも組織を作れる、育成ができる」状態が実現するように、経営者や経営幹部の外部パートナーという立場で、グロービスがサポートする意味があると思っています。

ただ、私たちグロービスが実践できないと、納得感をもって頂けないですよね。まずは試行錯誤して、自分たちの組織でやってみる。お客様と一緒にノウハウを共有しあいながら、成功体験を一緒に作る、そして、惜しみなく発信していく。

私たちの成功体験というより、お客様と一緒に成功体験を作り、お客様の組織で役立てていただき、世の中に発信して、一緒に未来を創造できることを願っています。

【編集後記】
3月から、テレワークの推奨、会議はzoomを積極的に活用してましたが、「完全在宅勤務」は動揺しました。「人と会わないと、人に会えない」はこんなにも違う、と。でも、「はなれて、つながる」と組織テーマが発信されたことで、1on1増加、slackでの雑談、zoomランチ、zoom飲み会(テーマ:ラジオ風、手相、スナックetc. )を実施。「仕事以外の何気ない会話からの気づき」とか、やって分かることもありました。東京は緊急事態宣言が継続されますが、皆様が心身ともに健やかでありますように。長文お付き合いありがとうございました。(編集担当:赤崎述子)
執筆者プロフィール
グロービス コーポレート ソリューション | GCS |
グロービス コーポレート ソリューション | GCS

グロービスではクライアント企業とともに、世の中の変化に対応できる経営人材を数多く育成し、社会の創造と変革を実現することを目指しています。

多くのクライアント企業との協働を通じて、新しいサービスを創り出し、品質の向上に努め、経営人材育成の課題を共に解決するパートナーとして最適なサービスをご提供してまいります。


※文中の所属・役職名は原稿作成当時のものです。