階層別研修とは? 企業が取り組むメリット・企画の立て方・テーマ例
- 階層別研修
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越野 綾
「階層別研修とは何を目的に行うもの? 実施するべきか迷っている」
「階層別研修では何に取り組めばいいの? テーマや企画方法が知りたい」
企業が実施する人材育成において定番とも言える「階層別研修」。
名称を聞いたことはあるものの「何を目的に取り組むのか」「具体的に何をすればいいのか」分からない方も多いのではないでしょうか。
階層別研修とは、勤続年数や役職などの階層ごとに社員を分けて実施する研修のことです。
例えば、管理職や中堅社員、若手社員などの階層ごとに、業務で使える知識やスキルを学びます。
階層別研修は「底上げ教育」とも呼ばれており、組織全体の能力を上げることが目的です。
階層別研修をすると「社員のスキル・マインドを階層ごとに揃えることができる」「社員に求める役割が明確になる」などのメリットがあり、多くの企業で実施されています。
あなたの企業にとって価値のある階層別研修を実施するためにも、階層別研修のメリットやテーマを理解しておくことが大切です。
そこで本コラムでは、階層別研修の概要や実施タイミング、テーマ例など階層別研修を始める前に知っておきたい基礎知識をまとめてご紹介します。
8章ではテンプレートを使いながら、実際に自社に合う企画を策定する方法を詳しく説明します。
明日から使える無料ダウンロード資料もご用意しているので必見です。
この記事を読むと分かること |
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・階層別研修の概要や目的が分かる ・階層別研修を実施するタイミングが分かる ・階層別研修のテーマ例が分かる ・階層別研修を実施するメリットとデメリットが分かる ・階層別研修の実施に向いている企業が分かる ・階層別研修の企画方法が分かる ・階層別研修を実施するときの難所と解決策が分かる |
本コラムを最後まで読むと階層別研修とはどのような研修なのか理解でき、自社の課題や戦略に応じた研修ができるようになります。
階層別研修を実りのある研修にするためにも、ぜひ参考にしてみてください。
1.階層別研修とは
階層別研修 | |
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概要 | 社員を勤続年数や役職などの階層に分けて実施する研修 |
目的 | 組織全体の能力の底上げ |
対象者 | 基本的には階層ごとの社員全員 |
参加意思の確認 | 基本的には企業主導で、対象者の参加が必須となる |
ポイント | ・階層により必要なスキル・マインドは異なるため、階層ごとに異なるテーマやプログラムを設定する ・基本的には全員参加なので、業務との関連性の高い内容にする |
冒頭でも触れたように、階層別研修とは勤続年数や役職などの階層別に社員を分けて実施する研修のことです。
例えば、下記のように社員を階層別に分けて、それぞれの階層が身につけるべき知識やスキルを踏まえた研修を実施します。
階層別研修 | 対象者 | テーマの一例 |
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新入社員研修 | 新入社員 | 【新入社員として知っておくべき社内のルール・一般常識】 ・企業のルールや企業理念の理解 ・業務をするうえで必要な基礎的なスキル ・ビジネスマナー など |
若手社員研修 | 入社5年目まで | 【業務遂行・業務改善に必要な知識・スキル】 ・新入社員から一歩進んだ応用的な業務スキル ・コミュニケーションスキル ・キャリアデザイン など |
中堅社員研修 | 入社10年目まで | 【管理者昇進に備えた経営者の視点や専門性の高い知識】 ・自社の業務に関する新しい知識・スキル ・リーダーシップ力 ・部下・メンバーを育成するスキル など |
管理職研修 | 課長・部長などの 管理職 | 【問題解決力や経営者としての視座など】 ・経営学 ・チームマネジメント ・経営者(またはその補佐)としての視点 など |
社員が身につけるべきスキルは、勤続年数や役職などの立場により変わります。
例えば、管理職と新入社員とでは、求められるスキルは大きく異なります。
仮に両者が同時に同じ研修を受けたとしたら、新入社員は難しさを、管理職は物足りなさを感じてしまい十分な成果は上がらないでしょう。
このように、スキルや勤続年数が異なる全社員を一斉にスキルアップさせる研修はできないため、階層ごとに適した研修を実施するのが「階層別研修」の特徴です。
【階層別研修と選抜研修の違い】
階層別研修は勤続年数や役職などの階層ごとに社員を分けて実施する研修ですが、選抜研修は企業側が育成対象者を選抜して実施する研修です。
例えば、若手社員の階層別研修では若手社員全員が研修対象となるのに対し、若手社員の選抜研修では若手社員から選抜された数名のみが研修対象です。
階層別研修と選抜研修の目的の違いや、各研修を機能させるために大切なポイントについては下記で詳しく解説しているので、参考にしてみてください。
階層別研修と選抜研修の違い・役割
2.階層別研修の目的は「組織全体の能力の底上げ」
階層別研修は、組織全体の底上げが大きな目的です。そのため「底上げ教育」と呼ばれる場合があります。
特定の人材のスキルアップや専門的な知識の習得は目的としていないので、注意してください。
あなたの企業の新入社員を思い浮かべてみてください。
「ビジネスマナーが備わっているな」「企業のルールを理解しているな」という社員もいれば「まだ業務に慣れていないな」という社員もいるでしょう。
階層別研修を実施する前の社員は下記のように個人差があり、人によっては企業が求める水準に至っていないことがあります。
そこで階層別研修を通して、各階層の基礎的なスキルレベルを揃えることで、組織全体の能力をワンランクアップさせます。
例.新入社員研修の場合 | |
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新入社員研修 実施前 | ・ビジネスマナーができる社員とできない社員がいる ・企業のルールや理念が分かっている社員と分からない社員がいる |
新入社員研修 実施後 | ・全員がビジネスマナーを守れるようになった ・全員が企業理念やルールを理解できた →新入社員全体の知識・スキルがワンランクアップ |
先ほどの新入社員の例で言うと、研修の実施前にはビジネスマナーができる社員とできない社員がいても、研修を実施した後は誰もが一定のビジネスマナーを遵守できるようになるでしょう。
このように、階層ごとのレベルアップを目指すことで、組織全体の能力を上げることが階層別研修の目的です。
組織全体の底上げができると、継続的な企業成長や企業の利益拡大が見込めます。
このことから、階層別研修は企業が描く戦略を実現するために必要な研修の1つだと言えるでしょう。
【ワンポイントアドバイス】階層別研修はすべての階層で実施することが必須ではない
階層別研修はすべての階層で取り組むのが理想ではありますが、予算や他の研修との兼ね合いで難しいケースがあるでしょう。
その場合は「管理職研修」と「若手社員研修」のみ実施するなど、優先度の高い階層を限定して実施することも1つの方法です。
研修に費やせる予算と階層ごとの課題の切迫度などに応じて、実施する階層の優先順位を検討するとよいでしょう。
3.階層別研修で身につくスキルは? テーマ例
階層別研修で取り組むべきテーマは決まっているわけではなく、企業の戦略や課題に合わせて策定することが大切です。
ここでは一例として、役職ごとにテーマを策定するケースと年次ごとにテーマを策定するケースをご紹介します。
3-1.役職ごとにテーマを策定した例
役職ごとに階層別研修のテーマを策定した一例は、下記のとおりです。
階層別研修例 | テーマの一例 | プログラムの一例 |
---|---|---|
新入社員研修 | ビジネスマナーや自社理解などの基本的なスキル習得 | ・ビジネスマナー研修 ・自社の企業ルールや企業理念研修 ・メンタルヘルス研修 ・ExcelやWordなどの基礎的なビジネススキル研修 |
若手社員研修 | 業務遂行や業務改善に必要なスキル習得 | ・コミュニケーション力強化研修 ・論理思考力研修 ・リーダーシップ研修 ・デジタル基礎スキル研修 |
中堅社員研修 | 管理職昇進を見据えて組織を引率するスキル習得 | ・リーダーシップ研修 ・部下・メンバー育成力強化研修 ・セルフコーチング研修 ・自社理解や顧客理解研修 ・論理思考力研修 ・業務分野に応じた知識習得研修 |
管理職研修 | 経営者またはその補佐としての視点・考え方の習得 | ・経営学研修 ・マネジメント研修 ・リーダーの役割認識・行動強化研修 ・組織変革のリーダーシップ研修 ・問題解決力研修 |
新人社員研修では、まだまだ社会に慣れていない社員が課題を感じるビジネスマナーや基礎的なビジネススキルをテーマに扱うことが多いです。
例えばビジネスマナー研修では、話し方や聞き方、電話応対、ビジネスメールの書き方などを学び、全新入社員が社会人として適切な立ち振る舞いができることを目指します。
若手社員研修では新入社員研修から一歩進み、業務遂行や業務改善など業務をするうえで必要なスキルをテーマにする傾向があります。
例えば業務で問題が起きたときにどのように解決するのか、上司や同僚とどのようにコミュニケーションを取るのかなど円滑に業務ができる知識を身につけます。
中堅社員研修は管理職昇進を見据えて、組織を引率する知識を身につける傾向があります。
リーダーシップ力や組織のマネジメント力、部下・メンバー育成力など、自ら判断をして周囲を巻き込んでいくスキルを身につける研修が中心になるでしょう。
管理職研修は管理職としての考え方や経営者の補佐としての視点の習得を目指す研修が多いです。
管理職といっても上位管理職とそれ以外では役割が異なることが多いため、部長研修や課長研修など、さらに細かく階層を分けて実施するケースもあります。
3-2.年次ごとにテーマを策定した例
20代・30代・40代と年次ごとに階層別研修のテーマを策定した一例は、下記のとおりです。
階層別研修例 | テーマの一例 | プログラムの一例 |
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20代 | 自社理解や業務に必要なスキル習得 | ・自社の企業ルールや企業理念研修 ・メンタルヘルス研修 ・ExcelやWordなどの基礎的なビジネススキル研修 ・モチベーションアップ研修 |
30代 | 次世代リーダーとしての知識や課題解決能力の習得 | ・課題解決力研修 ・論理思考力研修 ・リーダーシップ研修 ・キャリアデザイン研修 |
40代 | 自社で長く活躍するための新しい知識・スキルやマネジメントスキルの習得 | ・リーダーシップ研修 ・部下・メンバー育成力強化研修 ・セルフコーチング研修 ・マネジメント研修 ・期待役割に応じた新しい知識・スキルの研修 |
20代では、自社理解や業務に必要な基礎的なスキルを身につける傾向があります。
場合によっては今後のキャリア設計を明確にしてモチベーションを高めるために、早期からキャリアデザイン研修を行うケースもあります。
30代では、次世代リーダーとしての知識や課題解決力を養う研修を実施する傾向があります。
部下育成に携わる社員が大多数の場合は、部下育成研修なども検討できるでしょう。
40代では、自社で長く活躍できるように新しい知識・スキルの習得やマネジメントスキルを身につける傾向があります。
社内外の環境変化に負けずに力を発揮し続けるために、デジタルスキルの習得やセルフマネジメントの習得を視野に入れるケースもあるでしょう。
このように、階層別研修では「階層ごとの役割認識」と「業務で活用できる知識・スキルの習得」を軸にテーマプログラムを決めていきます。
階層別研修と選抜研修の違い・役割
4.企業が階層別研修に取り組む4つのメリット
階層別研修の概要が理解できたところで、企業が階層別研修に取り組むメリットが気になるところです。
ここでは、企業が階層別研修に取り組むメリットをご紹介します。
階層別研修は階層ごとのスキルを揃えることができるのはもちろん、役割の明確化や新しいスキルの習得など様々なメリットがあります。
取り組むべきか悩んでいる場合は、ぜひ参考にしてみてください。
4-1.社員のスキルを階層ごとに揃えることができる
企業が階層別研修に取り組む最大のメリットは、階層ごとに社員のスキルを揃えられることです。
階層別研修では、同じ階層の全社員が業務で活用できるスキルを学びます。
例えば若手社員研修前には「ビジネス文書作成が苦手な社員が多い」「業務が早い社員と遅い社員の差が大きい」という課題があったとしましょう。
全若手社員を対象にこの課題を解決する階層別研修を実施すると、ビジネス文書作成スキルや業務効率化スキルをある程度まで揃えることが期待できます。
若手社員研修前 | ・ビジネス文書作成が苦手な社員が多い ・業務が早い社員と遅い社員の差が大きい |
若手社員研修後 | ・全員がビジネス文書作成スキルを習得できる ・業務効率化のポイントが分かり生産性を向上できる |
その結果、若手社員層なら誰に業務を依頼したとしても、一定のクオリティが担保できるようになるのです。
社員一人ひとりのパフォーマンスが向上すると組織力の強化につながり、最終的には企業の成長や価値向上につながります。
【スキルを揃えることによるメリット】
・社員の誰もが生き生きと活躍でき企業成長につながる
・クライアントなど第三者からの評価が高くなる
・成果を出しやすくなり企業価値が向上する
このように、突出したスキルを育成するのではなく社員全員の底上げができることで企業が成長するための基盤を整えられます。
4-2.社員に求める役割が明確になる
階層別研修を実施すると、各階層の役割が明確になります。
企業側 | ・どの階層にどのような役割を求めるのか言語化できる ・自社の戦略から人材育成、評価までに一貫性を持ちやすくなり、透明性の高い経営を実現できる |
社員側 | ・企業側が求める役割やスキルが理解できる ・目標や将来設計が立てやすくなる |
企業側は階層別研修の企画を通して、各階層の社員に求める役割やスキルを言語化できます。
自社の戦略から人材育成、評価までに一貫性を持ちやすくなり、透明性の高い経営を実現できるでしょう。
社員側は、企業が各階層にどのような役割やスキルを求めているのか認識できます。
役割が不明確だと「何をすれば昇進できるのか」「どのような役割を担えばいいのか」分からず、モチベーションが低下する可能性があります。
企業側が求める役割が分かれば1つの指標となり、目標や将来設計を立てやすくなるでしょう。
階層別研修は業務に役立つスキルを身につける場ではありますが、企業が求める役割を認識してもらい足並みを揃える機会としても活用できます。
4-3.社員のモチベーションがアップする
階層別研修は、社員のモチベーションアップにもつながります。
業務内容にもよりますが、業務遂行に必要なスキルは、社会人になり実務の中で身につけていくことが一般的です。
例えば営業職の場合、学生生活の中で顧客との交渉方法やステークホルダー間の調整業務を学ぶことはほぼありません。
そのため業務について悩んでいることがあってもなかなか解決策が見つからず、業務に対するモチベーションが徐々に下がってしまうケースがあります。
そこで、階層別研修を通して業務に必要な基礎的なスキル・知識を学ぶと、新たな気付きや改善点を見つけられます。
若手社員研修の一例を見てみると、論理思考力研修では考え方そのものに関する気付きが、コミュニケーション力強化研修では、相手に分かりやすく伝えるスキルの習得など、コミュニケーション課題の解決が期待できるでしょう。
【若手社員研修の例】
・論理思考力研修:ビジネスでの考え方を深く理解でき、悩んだときや課題にぶつかったときに落ち着いて対応できるようになる
・コミュニケーション力強化研修:部下や上司とどのようにコミュニケーションを取ればいいのか分かり円滑なコミュニケーションが取れる
階層別研修を通じて業務に役立つスキルを身につけていくことで仕事がしやすくなり、社員のモチベーションアップにつながります。
4-4.時代に応じて必要なスキルが習得できる
階層別研修は、時代に応じて必要なスキルを習得するためにも活用できます。
昨今はVUCA時代(不確定要素が多く先行きが不透明な時代)に突入し、時代やニーズの変化に応じたスキル習得が必須になりました。
10年前、20年前に習得したスキルが時代のニーズと合致しないことは多々あり、企業として成長し続けるためには常に変化を求められます。
例えば、10年前に習得したデジタルスキルのみで、企業戦略を実現できるでしょうか?
AIやデジタルマーケティングなど新しい知識が求められる中で、企業の人材も知識をアップデートし続ける必要があるのです。
階層別研修では階層ごとに求める役割に応じて、下記のような新しい知識やスキルの習得の場として活用することもできます。
【階層別研修に組み込むプログラム例】
・AIに関する基礎知識の習得や業務での活用を検討する
・DX推進のためのデジタル知識・組織変革を推進するリーダシップを身につける
・データ解析やデータ分析に関する知見と事例を学ぶ
「自社の社員は業務の基礎的なスキルが備わっている」と感じている企業であっても、新しい知識やスキルの習得、役割認識の再確認といった視点をもつと、階層別研修を有効活用できるでしょう。
【階層別研修は、振り返りや内省の場としても活用できる】
階層別研修は業務に必要な知識を学ぶ場としてだけでなく、振り返りや内省の場としても活用できます。
「人生100年時代」と言われるなかで社会人として長く活躍するには、自身のスキルを振り返り、どのようなビジョンを描けばよいのか整理することも大切です。 階層別研修を通じて、改めて自社の考え方や求められる役割・スキルを知ることで、「自分には何が足りないのか」「どのようなスキルを身につける必要があるのか」を考える機会にもなるでしょう。
5.階層別研修のデメリット
階層別研修のメリットが理解できたところで、次に気になるのはデメリットです。
階層別研修のデメリットとしては、下記の点が考えられます。
デメリット | 解消するヒント |
---|---|
全員が参加するため、やらされ感が出やすい | 研修の目的や受講者にとってのメリット、業務との関連性を明確に伝え、前向きに参加してもらう |
研修が形骸化しやすい | 「8章【体系図を作成できる】階層別研修を企画するステップ」に沿って、自社に合う研修を企画する |
コストがかかる | 自社で実施している研修全体のコストを見て調整をする |
階層別研修は階層に属する全社員を対象とするため、義務感が出て受け身の姿勢になりやすい研修です。社員のやらされ感を防ぐため、受講者にとって何のメリットがあるのか?どう仕事に活きるのか?など、業務との関連性を受講者が把握し、前向きに参加しやすくすることが重要です。
また、研修内容が会社の目指す方向性とマッチしているかを定期的に見直して自社に合う企画をしていくことが、研修の形骸化を防ぎます。
他にも、階層別研修のコストが気になるといった声もありますが、研修費用全体の中で、どの程度の優先度として予算を確保すべきかを念頭に置いて計画を立てるといいでしょう。
どうしても予算的に厳しい場合は、新入社員研修と管理職研修のみなど、課題の緊急度・重要度が高い階層を優先的に選び、実施するのも1つの方法です。
6.階層別研修が向いている企業
階層別研修のメリットとデメリットが理解できたところで「自社でも挑戦してみようかな」と感じた方も多いでしょう。
階層別研修は基本的にはどのような企業にもおすすめですが、とくに向いている企業は下記のケースです。
階層別研修が向いている企業 | |
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社員全体のスキルを底上げしたい場合 | ・社員一人ひとりのスキルに差があり、業務の質が一定以上に担保できない ・企業が求める一定ライン以上のスキルや知識を身につけてほしい |
体系的な研修を実施したい場合 | ・若手社員から管理職まで、必要な時期に必要な学びを習得できる体系を整えたい |
新しい知識やスキルを習得する場を設けたい場合 | ・時代の変化に伴う新しい知識を身につけてほしいが、機会・タイミングがない |
階層別研修は底上げ教育と呼ばれているように、社員全体のスキルを底上げしたい場合に向いています。
「組織力の低下が気になっている」「社員によるスキルの差が気になる」という場合には、階層別研修がおすすめです。
また、階層別研修は企業の基準で階層を区切り階層に応じた研修ができるため、研修を体系化したい場合にも活用しやすいでしょう。
一方で、階層別研修が向いていない企業は、既に似たような研修をいくつも実施している場合です。
階層別研修が向いていない企業 | |
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・既に似たような研修をいくつも実施している場合 |
階層別研修は業務で使えるオーソドックスな知識やスキルを身につける研修が多いため、似たような研修を複数実施していると内容が重なってしまう傾向があります。
階層別研修に統合する、あるいは研修全体の設計を見直すなど、企業内の研修を整理する必要があるでしょう。
7.階層別研修を実施するタイミング
ここでは、階層別研修を行う時期について説明します。
結論からお伝えすると、階層別研修に決まったタイミングはなく、各社の状況に応じて実施時期は異なります。
タイミングが決まっていない大きな理由は、企業により階層の分け方が異なるからです。
階層の主な分け方は、下記の3種類です。
階層の分け方 | 実施タイミングの一例 | 階層別の例 |
---|---|---|
役職による分類 【※主流】 | 役職が変わったタイミング | 役職ごとに階層を分ける方法 ・若手社員 ・中堅社員 ・管理職 ・課長 ・部長など |
年次による分類 | 年次が上がったタイミング | 年次ごとに階層を分ける方法 ・新入社員 ・3年目 ・5年目 (20代/30代/40代など、年代で区切る場合もあります) |
スキルによる分類 | 新しい知識・スキルが必要になったタイミング | スキルごとに階層を分ける方法 ・営業 ・経理 ・人事など |
役職ごとに階層を分ける場合は、役職が変わったタイミングで実施することが多いです。
年次ごとに階層を分ける場合は年次が上がったタイミングで、スキルごとに階層を分ける場合はスキルの見直しや追加が必要なタイミングで実施する傾向があります。
このように、階層別研修のタイミングは階層の分け方に応じて柔軟に設定することをおすすめします。
【階層別研修以外の研修がある場合は、実施タイミングのバランスを取る】
階層別研修以外にも研修を実施している場合は、研修施策全体のスケジュールを見ながらタイミングを調整しましょう。
例えば、次世代リーダー研修と若手社員研修が重なってしまうと、一部社員の負担が大きくなります。
社員によっては研修が立て続けになると業務とのバランスが取れず、心身ともに疲弊してモチベーションが下がる可能性があります。実りのある研修にするためにも、他の研修とのバランスを見ながら計画を立てるといいでしょう。
8.【体系図を作成できる】階層別研修を企画するステップ
ここからは、階層別研修の企画を作成するステップをご紹介します。
テンプレート付きなので、手順に沿って取り組めば初めての階層別研修であっても「何に取り組むべきか」「どの階層にどのようなテーマを用意するべきか」を明確にできます。
4ステップでテーマまで決めることができるので、ぜひ取り組んでみてください。
8-1.自社の事業環境を正しく捉える
階層別研修のテーマを決める前に、自社の置かれた事業環境を正しく捉え経営課題を明確にします。
ここで、なぜ人材育成に事業環境が関連するのか疑問に感じる方もいるかと思います。
その理由は、そもそも人材育成とは「自社の経営戦略を実現するための取り組み」だからです。自社の経営戦略の実行に資する人材を育成するためには、人材育成テーマが自社の経営戦略に沿ったものであることが重要なのです。
選抜研修のテーマ選定が先行してしまうと、一貫性のない研修となってしまい成果が出にくいので、テーマ検討をする前に下記の視点で事業環境を分析してみましょう。
確認したい項目 | 概要 |
---|---|
①自社の経営戦略 | 自社の経営戦略を深く理解する 例:自社の強み・市場での優位性・課題など |
②外部環境の変化 | 自社を取り巻く環境を理解する 例:法律の改正・景気・競合他社の動向など |
③組織戦略・組織構造 | 自組織の戦略や課題を理解する 例:自律的に行動できる人材を求めている |
企業のビジョンや戦略を理解しておくと、求める人物像を描きやすくなります。
組織ごとにビジネスプロセスや業務形態が大きく異なる企業の場合は、求める人材像も組織によって異なる可能性があります。企業だけでなく組織としての戦略も念頭に置いて考えておくといいでしょう。
また、事業環境を理解するときには企業内だけでなく「企業外」に目を向けることも欠かせません。
外部環境の変化に応じて、どのようなスキルや知識が求められるようになるのか分析してみてください。
例えば、外部環境ではデジタル化やデジタルツール活用が進んでいても、自社では取り組めていない場合は組織としての課題だと言えるでしょう。
このように、まずは3つの視点で事業環境を深く理解してみてください。
【経営戦略を理解する必要性が分かる事例】
とある部品メーカーのA社さまからこんなご相談をいただいたことがあります。
「これからの時代は、誰かがではなく『全員が』顧客視点を持つことが大事だ。組織全体に顧客視点を根付かせるうえでも、まずは中核を担う管理職層に顧客視点を強化する研修を実施したい。」そこで人材要件書を拝見したところ、驚くことに一言も「顧客」や「顧客視点」などの言葉が盛り込まれていませんでした。
必要スキルとして記載されていたのは「課題解決」や「専門性」といったものばかり。これでは研修の対象者に、研修を通じて顧客視点の必要性を理解してもらうことが難しい状態です。このように戦略と人材要件がきちんと結びついていないと、必要なスキルを身につけることができません。
少し遠回りのように感じたとしても、まずは事業環境を捉えるところから始めることが重要です。
8-2.あるべき姿を設定する
続いて、階層ごとのあるべき姿を設定します。
あるべき姿とは簡単に言うと「ロールモデル」のことです。
先ほど理解した企業戦略を達成するにはどのような人物が求められているのか、下記のワークシートを埋めていきます。
このワークシートを埋めるには3つのステップが必要なので、1つずつ確認していきましょう。
あるべき姿を設定する3つのステップ | |
---|---|
1)あるべき姿に期待する役割を定義する 2)期待する役割を果たすための行動を決める 3)行動するために必要なスキル・マインドを決める |
▶本章でご紹介のワークシートを含むお役立ち資料のダウンロードはこちら
「研修体系の考え方(ワークシート付)」
8-2-1.期待する役割を定義する
まずは、下記のワークシートに沿って階層ごとにどのような役割を期待するのか明確にします。
このときに期待役割を果たせる人材を「いつまでに・何人」必要なのかも決めてみましょう。
期待する役割を決めるときに重要なのは「なぜその役割が必要なのか」と「経営戦略との紐づけ」の2つを説明できる状態にすることです。
自社ならではの視点で階層ごとに必要な役割を考えるだけでなく、なぜ自社がこの役割を求めるのかを、経営戦略を根拠に説明できることが大切なのです。
一例として自社の経営戦略に「新規事業開発をスピーディに推し進める」という要素があるとしましょう。
この要素をベースに自社らしいリーダー層をイメージすると、「周囲の巻き込み力」と「思考力」が重要だという結論になりました。
そこで、リーダー層に求める役割は「周囲の巻き込み力と思考力を持つリーダー」として、5年後までに50人輩出したいと設定しました。
階層別研修の対象 | 求める役割 | いつまでに | 何人 |
---|---|---|---|
現場リーダー層 | 巻き込み力と思考力を持つリーダー | 5年 | 50人 |
このように、できるだけ具体的に各階層に求める役割を決めていきましょう。
8-2-2.期待する役割を果たすための行動を決める
あるべき姿に求める役割が決まったら、求める役割を果たすための行動を考えます。
なぜ行動を決めることが重要なのかは「氷山モデル」と呼ばれるフレームワークを見ると分かりやすいです。
氷山モデルでは下記のように、人の目に見えるのは「行動」のみであることを示しています。
行動の根源には目に見えない知識やスキル、マインドがありますが、まずは求める行動を定義しないと付随するスキルや知識が見えてこないのです。
そこで、求める役割を果たすにはどのような行動が必要なのか、できる限り具体的にしましょう。
先ほどの例では、現場リーダー層に「周囲の巻き込み力と思考力を持つリーダー」という役割を定義しました。
この役割を果たすためにどのような行動をするべきか考えていきます。
「周囲の巻き込み力と思考力を持つリーダー」を体現するには、自分で考えることや率先した行動が必要だと判断し下記のような行動を定義しました。
階層別研修の対象 | 求める役割 | 求める行動 |
---|---|---|
現場リーダー層 | 周囲の巻き込み力と思考力を持つリーダー | ・全社方針の意図を正確に汲み取り、目標を自らの組織に落とし込む ・他部署との緻密な連携・調整を通じて、最大限の効果を効率的に発揮する ・チームメンバーの心情をくみ取りながら現場での経験を通じて指導する |
8-2-3.行動するために必要なスキル・マインドを決める
あるべき姿に必要な行動が分かったところで、その行動をとるために必要なスキルとマインドを検討していきます。
例えば、全社方針の意図を正確に汲み取り目標を自らの組織に落とし込むには、計画立案力が必要でしょう。
他部署との緻密な連携・調整を通じて、最大限の効果を効率的に発揮するには、合意形成力や組織牽引力が求められます。
このように、行動と紐づくスキルとマインドを具体的に挙げてみましょう。
期待する役割 | 求める行動 | スキル・マインド |
---|---|---|
周囲の巻き込み力と思考力を持つリーダー | ・全社方針の意図を正確に汲み取り、目標を自らの組織に落とし込む ・他部署との緻密な連携・調整を通じて、最大限の効果を効率的に発揮する ・チームメンバーの心情をくみ取りながら現場での経験を通じて指導する | ・計画立案力 ・合意形成力 ・組織牽引力 ・チームマネジメント力 |
ここまで考えることができたら下記のシートに期待する役割と行動、スキルとマインドをまとめてみましょう。
【作成例:各階層の期待役割、求められる行動、必要なスキル・マインド】
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「研修体系の考え方(ワークシート付)」
8-3.階層ごとにあるべき姿と現状のギャップを明確にする
ここまで取り組むと自社の戦略に合うあるべき姿が明確になったと思います。
続いて、階層ごとにあるべき姿と現状のギャップを明確にします。
あるべき姿にあって現状の社員にはない部分こそが、育成課題となるからです。
ここで重要となるのは、社員の現状を正しく理解することです。
上司が理解していることや人事部が把握していることは、氷山の一角に過ぎません。
下記のように、様々な視点から階層ごとの社員の現状を収集するようにしましょう。
【社員の現状を収集する方法】
・現場や本人にヒアリングをする
・アセスメントや360°評価を実施する
・人事評価を参考にする
情報収集をもとに現状を整理し、どのようなギャップがあるのか下記のように書き出してみましょう。
周囲の巻き込み力と思考力を持つリーダー | |
---|---|
あるべき姿 | ・全社方針の意図を正確に汲み取り、目標を自らの組織に落とし込む ・他部署との緻密な連携・調整を通じて、最大限の効果を効率的に発揮する ・チームメンバーの心情をくみ取りながら現場での経験を通じて指導する |
現状 | ・短期的な目標しか立てられない ・他部署との調整にいつも時間がかかる・チームメンバーの間に、やらされ感が生じている |
ギャップ | ・全社方針や会社の戦略を理解する力が弱い ・他部署など前提が異なるメンバー間の納得感を得られない ・相手の立場に立って「何を伝えるべきか」を考え、論理的に伝える力が弱い |
8-4.階層ごとの研修テーマを決める
階層ごとにあるべき姿と現状のギャップが明確になったら、ギャップ部分を参考に研修のテーマに落とし込みます。
ここで注意したいのは、「今回の階層別研修のゴール=あるべき姿」ではないことです。
なぜなら、たった一度の階層別研修だけで、一足飛びにあるべき姿に到達するのは難しく、幾度か研修を重ねながら少しずつ近づいていくものだからです。
そのため、「今回の階層別研修ではどこまでを目指すか」を毎回設定することが重要です。
階層別研修のゴールを決める際は、あるべき姿と現状のギャップに優先順位を付けて、今回取り組むべき課題を決めましょう。
先ほどの例では3つのギャップがありましたが、今回は「全社方針や会社の戦略を理解する力が弱い」を優先すべき課題として取り組むことにしました。
周囲の巻き込み力と思考力を持つリーダー | |
---|---|
あるべき姿 | ・全社方針の意図を正確に汲み取り、目標を自らの組織に落とし込む ・他部署との緻密な連携・調整を通じて、最大限の効果を効率的に発揮する ・チームメンバーの心情をくみ取りながら現場での経験を通じて指導する |
現状 | ・短期的な目標しか立てられない ・他部署との調整にいつも時間がかかる・チームメンバーの間に、やらされ感が生じている |
ギャップ | ・全社方針や会社の戦略を理解する力が弱い ・他部署など前提が異なるメンバー間の納得感を得られない ・相手の立場に立って「何を伝えるべきか」を考え、論理的に伝える力が弱い |
今回の研修の ゴール・テーマ | 全社方針や会社の戦略を理解したうえで、自組織の目標に落とし込めるように、「経営戦略」をテーマにした研修を実施する |
階層別研修のゴールとテーマが見えてくると、戦略実現のために必要なプログラムを見つけられます。
このように、階層別研修では最初からプログラムやテーマを決め打ちすることなく、自社の戦略やあるべき姿から現状の人材課題を理解し、自社に合うテーマを見つけることが大切です。
9.階層別研修を実施する2つの方法
自社で取り組むべき階層別研修のテーマが分かったところで、どのように研修を行うのか具体的な方法が気になるところです。
階層別研修を実施する主な方法には「内製研修」と「外部委託」があります。
項目 | 内製研修 | 外部委託 |
---|---|---|
概要 | 自社内で企画・運営する研修 | 外部の委託会社を利用する研修 |
代表的な研修方法 | OJT 企業内研修(企業内で企画・運営) | 企業内研修(委託先が企画・運営・もしくは講師派遣) 外部スクール通学 |
メリット | ・自社の考えやビジョンを反映できる ・実務で活用する専門的なスキルを直接教えられる ・コストを抑えられる ・スケジュールのコントロールがしやすい | ・プロの視点でプログラム設計や実施ができる ・自社にないスキルや知識を学べる ・社内の負担が少ない |
デメリット | ・自社にノウハウがない分野は対応しにくい ・社内の負担が大きい | ・コストがかかる ・開催場所やスケジュールのコントロールがしにくい |
知識・ノウハウ | ||
コスト削減 | ||
負担の少なさ |
ここでは、内製研修と外部委託のメリットやデメリットを踏まえて、どのように階層別研修を実施するべきかご紹介します。
9-1.内製研修
内製研修 自社で企画・運営する研修 | |
---|---|
メリット | ・自社の考えやビジョンを反映できる ・実務で活用する専門的なスキルを直接教えられる ・コストを抑えられる ・スケジュールのコントロールがしやすい |
デメリット | ・自社にノウハウがない分野は対応しにくい ・社内の負担が大きい |
向いているケース | ・社内のルールや戦略、企業理念などの知識を学ぶ場合 ・上司や管理職から直接実務に関わるスキルを学ぶ場合 |
内製研修は自社で企画・運営する研修のことです。
・管理職が自社のルールや企業理念を伝える研修をする
・上司が部下に実務内容を直接指導する
・自社の社員が持つ知識(アポイントを取得するための独自ノウハウや自社サービスに関する知識など)を教える研修をする
など、上司や知識・経験が豊富な社員が講師となって進める研修が該当します。
内製研修は、自社の考えやビジョンを反映できる点が大きなメリットです。
階層別研修で重要となる各階層の役割を自社の考えや戦略を踏まえながら説明できるでしょう。
自社の知識を学ぶ場合や、上司から直接業務に関するスキルを学ぶ場合にも向いています。
一方で、自社にノウハウがない分野では成果を出しにくいです。
最新のデジタルスキルや経営学など専門性の高い分野は、社内の人材だけでは対応できない可能性があります。
また、自社で企画から運営までをしなければならないため、担当部署の負担が大きい点もデメリットだと言えるでしょう。
9-2.外部委託
外部委託 外部の委託会社を利用する研修 | |
---|---|
メリット | ・プロの視点でプログラム設計や実施ができる ・自社にないスキルや知識を学べる ・社内の負担が少ない |
デメリット | ・コストがかかる ・開催場所やスケジュールのコントロールがしにくい |
向いているケース | ・専門性の高い知識やスキルを学ぶ場合 ・成果を重視して企画から運営までをプロに任せたい場合 |
外部委託は、外部の委託会社を利用する研修です。
・外部から講師を招き、専門性の高い知識・スキルを学ぶ
・外部の委託会社に企画から運営までを担ってもらう
・外部のビジネススクールに通学する
など、外部の力を活用する研修が該当します。
外部委託は自社にはないスキルや知識を学べる点が大きなメリットです。
例えば、リーダーシップを問われるときに自社の社員で的確に教えられる人材はなかなかいないでしょう。
「自社におけるリーダーシップにはどのようなスキルが必要なのか」「今の時代にはどのようなリーダーシップが求められるのか」など一歩踏み込んだところまで教えてもらえるのは外部委託ならではです。
専門性の高いスキルを学びたい場合や、プロの講師から分かりやすく学びたい場合には、外部委託が向いています。
一方で、外部委託は講師のスケジュールや外部スクールの開催日時など、各所とのスケジュール調整が必要です。
自社の都合だけでは進められないため、計画的に進めることが重要になります。
階層別研修では、研修内容や課題に応じて内製研修と外部委託を使い分けるといいでしょう。
・自社の理念や社内ルールを伝える部分は内製研修を実施し、その他の部分は外部委託する
・企画から運営までを外部委託して、必要に応じて自社の社員が講師をする
など、双方のメリットを活用すると階層別研修を進めやすくなります。
10.階層別研修を実施するときの課題・解決策
最後に、階層別研修を実施するときに多い課題と解決策をご紹介します。
階層別研修の難所となりそうな部分をあらかじめ知っておけば対策がとれるので、ぜひ参考にしてみてください。
階層別研修で課題になりやすい部分 | 解決策 |
---|---|
社員のモチベーションが上がらない | 研修は最初の30分が勝負!対象者の疑問を解決する |
階層別研修をしても成果を感じられない | 一度の研修で終わらず復習をする |
何年も同じプログラムを実施している | 毎年プログラムを見直しする |
10-1.社員のモチベーションが上がらない
階層別研修は、基本的に階層に在籍する全社員が対象です。
そのため、やる気のある社員もいれば「なぜ研修をするのか分からない」「仕事を優先したい」などの声も聞こえてきます。
中にはなかなかモチベーションが上がらず、やらされている感が拭えないという悩みも見受けられます。
研修は社員が前向きに取り組んでこそ成果を発揮できるため、モチベーション管理が課題になるケースが多いです。
10-1-1.解決策:研修は最初の30分が勝負! 対象者の疑問を解決する
大人の学びは「目的意識」「自己不足感」「主体性」の3つを満たす必要があります。
1つでも欠けると学ぶ意欲が最大限に高まらないと言われています。
つまり、対象の社員に3つの要素を持ってもらえないことがモチベーション低下の原因になるのです。
そこで、階層別研修の冒頭30分を使い、社員の疑問や不安を払拭するようにしましょう。
【階層別研修の冒頭30分で伝えたいこと】
・研修の目的や意義
・対象者が学ぶメリット
・講師のプロフィール
・研修の進め方や具体的な内容
階層別研修の前に目的やテーマが明確になっていれば、「目的意識」や「主体性」を満たせます。
また、学ぶメリットや具体的な内容が分かると「自己不足感」も満たせるでしょう。
階層別研修の冒頭30分で研修の意義をしっかり共有すると、対象者のモチベーションを上げた状態で研修に進みやすくなります。
10-2.階層別研修をしても成果を感じられない
階層別研修を実施しても、思ったような成果を得られなかったという声もあります。
【階層別研修を実施した企業の声】
・行動やマインドの変化を感じられない
・きちんと理解しているのか分からない
・成果を高めるにはどうすればいいのか分からない
「4.企業が階層別研修に取り組む4つのメリット」でも触れたように、階層別研修は適切に実施できれば企業にとって意義のある研修になります。
現場の社員が成果を感じられないと思っている場合は、何らかの改善をする必要があるでしょう。
10-2-1.解決策:一度の研修で終わらず復習をする
階層別研修の成果を高めるには、研修で学んだことを復習する機会を設けることがポイントです。
エビングハウスの忘却曲線(時間経過による忘却を分かりやすく示したもの)を見ると分かるように、定期的に復習を行うことで、時間が経過しても知識として身につきやすくなります。
階層別研修をして終わりではなく、業務の中で復習や振り返りをしましょう。
【階層別研修をした後の復習例】
・1on1やミーティングで、学んだことを他者に説明する
・簡易的なテストを実施する
・業務内で実践する機会を設ける(部下を育成するスキルなら実際に育成を任せるなど)
例えば、1on1やミーティングなどで研修内容を共有しながら、どのように業務に活用していくのか目標を立てるのも1つの方法です。
また、階層別研修のプログラムが座学であれば、簡易的なテストで知識の習得度を確認することも検討できます。
定着を促すために、業務内で実践する機会を設けるのも良いでしょう。
【思ったように成果が出ない場合は研修の企画から見直す】
階層別研修の復習を実施しても企業が思う成果が出ない場合は、能力開発するべきポイントを間違えている可能性があります。
「8.【体系図を作成できる】階層別研修を企画するステップ」に沿って、もう一度自社に合う階層別研修の企画から見直しましょう。
10-3.何年も同じプログラムを実施している
階層別研修は企業の定番研修として、毎年同じプログラムに取り組んでいる企業も見受けられます。
同じプログラムでもゴールを達成できている場合は問題ありませんが、「成果が出にくくなっている」「プログラムが実態に合っていない気がする」という声が少しでも挙がる場合は、見直しが必要なサインです。
10-3-1.解決策:毎年プログラムを見直しする
階層別研修のプログラムは、基本的には毎年見直しをしましょう。
「8.【体系図を作成できる】階層別研修を企画するステップ」でも触れたように、階層別研修のテーマは企業の戦略や外部環境、社員の状態により変わるからです。
10年前にプログラムを作成した際の新入社員と、今の新入社員の課題は異なるはずです。それでも同じプログラムを継続してしまうと、必要なスキルを身につけられず、階層別研修の成果を実感しにくくなります。
現状の各階層に応じた研修を実施するためには、定期的に内容を見直すことが大切なのです。
階層別研修のプログラムの見直し方は下記の記事で解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
▶参考コラム:階層別研修の設計・運用で考慮すべき3つのポイント
11.階層別研修はグロービスにお任せください
ここまでお読みいただき、階層別研修の重要性や取り組む方が理解でき「自社でも実施してみよう」と思えたでしょうか。
階層別研修のプログラム設定や実施に悩んでいる場合は、ぜひ私たち「グロービス」にお任せください。
グロービスは階層別研修の要となる各階層の研修実績が豊富です。
また、グロービスにお任せいただければ、皆様の会社の課題に沿ったプログラムの設計・提案をいたします。なぜならグロービスの担当者はほぼ全員、MBAを所有しており、経営上流の議論が可能だからです。他の研修会社との大きな違いは、この点です。
グロービスの階層別研修 | |
---|---|
役員研修 | 自社の課題と専門性の高い知識の双方に対応できる研修を提供しています |
管理職研修 | 成果につながるグロービスならではの管理職研修を提供しています |
中堅社員研修 | 経営の定石(問題解決力)から実践的スキルまで、中堅社員に必要なスキルを総合的に身につける研修を提供しています |
グロービスでは、実務での再現性が高い学びを多くの企業に提供し続けるために、さまざまなノウハウを蓄積しています。
階層別研修についてお悩みのことがあれば、お気軽にご相談ください。
12.まとめ
今回は、階層別研修の概要やメリット、具体的な企画の立て方など階層別研修を実施する前に知っておきたい知識をまとめて解説しました。
最後にこの記事の内容を簡単に振り返ってみましょう。
〇階層別研修とは勤続年数や役職などの階層ごとに社員を分けて実施する研修のこと
〇階層別研修は組織全体の能力の底上げが目的
〇企業が階層別研修を実施するメリットは下記の4つ
1)社員のスキル・マインドを階層ごとに揃えることができる
2)社員に求める役割が明確になる
3)社員のモチベーションがアップする
4)時代に応じて必要なスキルが習得できる
〇階層別研修はどのような企業でも実施するべきだがとくにおすすめのケースは下記のとおり
1)社員全体のスキルを底上げしたい場合
2)体系的な研修を実施したい場合
3)新しい知識やスキルを習得する場を設けたい場合
〇階層別研修を企画するステップは下記のとおり
STEP1:自社の事業環境を正しく捉える
STEP2:あるべき姿を設定する
STEP3:階層ごとにあるべき姿と現状のギャップを明確にする
STEP4:階層ごとの研修テーマを決める
〇階層別研修を実施する主な方法は次の2つ
項目 | 内製研修 | 外部委託 |
---|---|---|
概要 | 自社内で企画・運営する研修 | 外部の委託会社を利用する研修 |
メリット | ・自社の考えやビジョンを反映できる ・実務で活用する専門的なスキルを直接教えられる ・コストを抑えられる ・スケジュールのコントロールがしやすい | ・プロの視点でプログラム設計や実施ができる ・自社にないスキルや知識を学べる ・社内の負担が少ない |
デメリット | ・自社にノウハウがない分野は対応しにくい ・社内の負担が大きい | ・コストがかかる ・開催場所やスケジュールのコントロールがしにくい |
階層別研修は企業全体の能力を底上げでき、企業の持続的な成長を支えます。
階層別研修の企画や運営にお困りの場合や成果につながる階層別研修を実施したい場合は、私たちグロービスにお気軽にお声がけください。
※文中の所属・役職名は原稿作成当時のものです。
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