三菱重工業株式会社
受講者から役員を輩出。ジョブアサイン連動型タレントマネジメントで「未来を起動する」次世代リーダーを早期育成
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次世代経営人材の育成を目的に、課長層・主任層へ3種類の人材育成プログラムを実施している三菱重工業株式会社様。その取り組みについて、お話を伺いました。(部署・役職はインタビュー当時)
【三菱重工業株式会社様】
写真右から3人目:HR改革推進室長 木村 達也様
写真右から2人目:HR改革推進室 タレントマネジメント計画グループ 主席部員 吉村 卓郎様
写真右:HR戦略部人材開発グループ 人材育成チーム 上席主任チーム統括 島田 祐輔様
【グロービス担当コンサルタント】
写真左から3人目:長島 隆行
写真左から2人目:山口 貴士
写真左:畠田 樹
- 導入前の課題
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- 脱炭素社会を実現し、安心・安全・快適な社会づくりを担う次世代リーダー育成が経営の重要課題
- HR戦略「HR Innovation 2030」においても、次世代経営人材育成を重要テーマに位置付けている
- 研修内容
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- サクセッションプランのもと、課長層・主任層へ3種類の育成プログラムを実施
- 経営スキル習得だけでなく、リーダーとしての覚悟や志と向き合い、世の中のトレンドにも触れるプログラム内容とした
- 成果・効果
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- プール人材が増え、各事業部門の人事との連携により育成後のタフなジョブアサインメントを行う体制を整備
- 本取り組みを6年以上継続してきた結果、初年度のプログラム受講者から役員を輩出している
- 今後もこの取り組みを続けることで、タレントマネジメントを着実に実行していきたい
背景と課題
未来を導くリーダーを育てる
木村さん:
当社は「長い歴史の中で培われた技術に最先端の知見を取り入れ、変化する社会課題の解決に挑み、人々の豊かな暮らしを実現する」というミッションを掲げ、2040年までにバリューチェーン全体でのCO2排出量をネットゼロにする脱炭素社会の実現、および安心・安全・快適な社会づくりを目指しています。
その一環として、2030年に向けたHR戦略「HR Innovation 2030」を策定し、GX(グリーントランスフォーメーション)という新たな領域へのチャレンジもしつつ、当社の強みであるものづくりの強化を推進する人材・組織づくりのために、「次世代経営人材育成」「人材獲得・育成」「組織力強化」「従業員エンゲージメント向上」の4つのテーマを設けました。
その中でも、「次世代経営人材育成」は最重要項目の一つです。脱炭素社会へのシフト、デジタルトランスフォーメーションの進展、地政学上のリスク増大など絶え間ない環境変化の下で、経営の舵取りを担い、未来を導くリーダーを育てることは、経営における重要課題です。
次世代リーダー候補の人材プールを構築し、集中的な育成を実施
木村さん:
当社の次世代リーダーに求められる能力としては、経営スキルはもちろん、幅広い業務経験に基づき地域・事業を横断する多角的視野、既存事業の収益化と新領域開発をバランスよく進める力、ダイバーシティーに富んだ人材を活用する組織マネジメント力など、さまざまな点があります。そして何よりも、社会の進歩に貢献したいという高い志があることは必須です。
こうした未来のリーダーを輩出し続けるために、人材プールを構築して選抜人材に対する育成を行うとともに、経営上重要なポジションについては、サクセッションプランを整備しています。
検討プロセスと実施内容
長い時間軸で、グローバル社会を見渡して価値を発揮できるリーダー育成プログラムを設計
吉村さん:
次世代経営人材育成の取り組みは、タフアサインメントで経営者として必要な経験を積むとともに、Off-JTのプログラムでスキルとマインドを磨くものです。
Off-JTとしては、課長層および主任層の2階層に対し、3種類の育成プログラムを実施しています。課長層は、近い将来に部門をリードし、ゆくゆくは当社グループ全体を率いることが期待されます。そのため、研修プログラムでは経営スキルの獲得だけでなく、リーダーとしての覚悟や志にも向き合います。さらには三菱重工グループの歴史にも触れ、社会における我々の存在意義を見つめるプログラム設計にしています。
主任層向けプログラムでは、基本的な経営スキルを身につけるとともに、テクノロジーをはじめとする世の中の動向やトレンドに触れています。また、社内の人的ネットワークを形成し、キャリアの早い段階から視野を広げてもらうことを意図したプログラム内容です。
木村さん:
各プログラムに共通するテーマは、「先を見る」「外を見る」というものです。エナジートランジッションの実現にしても、十年以上の単位で、世界を見渡して地域ごとのニーズに応えるソリューションを提供することが我々には求められています。広く社会を見渡すことができるリーダーを育成すべく、プログラム設計においては、社内外のリーダーの講話を取り入れるなどの工夫もしています。
非管理職層からもプール人材を選抜し、早期育成に取り組む
島田さん:
主任層を対象にした育成プログラムは、2年前から新たにスタートしました。経営幹部に必要な経験を積む前の段階からプール人材を選抜し、スキルアップとリーダーとしてのマインドセットを育成プログラムに取り込み、より意識的に業務のアサインメントをしていこうと考えたのです。
この階層では、より幅広いプール人材を発掘する目的のもと、プログラム受講者の一部を公募制にしています。公募においては、エントリーシートを提出してもらい、基礎的な経営知識を学習したうえで試験も実施し、最終的には面接を実施して選考しています。
応募するハードルがかなり高いにもかかわらず、応募者は毎年増え続けています。プログラム受講者が周囲の社員に参加を勧めるケースも増えてきました。多くの社員にとって「負荷がかかっても挑戦したい」と思えるプログラムになってきていることを感じます。
成果と今後の展望
プール人材が増え、育成とジョブアサインメントを連動させる体制が整いつつある
木村さん:
次世代経営人材育成プログラムを始めた2017年から毎年、多くの受講者が本研修に対して「今まで参加した研修の中で、最も印象に残っている」という声を寄せてくれています。経営スキルの習得だけでなく、リーダーとしての生き方や、社会にどう価値提供すべきかを考える機会を持てた点が貴重だったようです。
また、当社のような大きな組織では部門間の交流が希薄になりがちですが、受講者同士が実務においてクロスドメインで繋がる機会が生まれています。三菱重工グループの総合力を生かす観点でも、この取り組みによる成果が上がっていることを感じます。
取り組みが始まってから6年以上が経ち、プール人材も増えてきました。育成プログラム実施のみならず、その後のアサインメントまでを一貫して計画し実行する体制が整いつつあります。このサクセッションプランのもと、各事業部門でも、経験拡大のために他部門へ異動や海外拠点への駐在などのタフアサインメントが意識的に行われています。
吉村さん:
次世代経営人材育成の取り組みを続けられている要因は、大きく三点あると考えています。まずは、タレントマネジメントプロセスの一環として、本研修を位置付けていることです。本研修が人材育成のサイクルの端緒になり、後続のプロセスに繋がっています。
二つ目は、経営幹部が高いコミットメントを示していることです。多忙な中でも多くの時間を割いて、次世代経営人材育成の議論をしたり、実際にプログラムへ参加したりするのです。こうした経営幹部の姿勢は、受講者に対しても前向きなメッセージになっていますし、大きな刺激にもなっています。
そして三つ目は、毎年チューニングを加えつつ、コロナ禍を経ても取り組みを止めなかったことです。近い将来の経営を担う人材のパイプラインが確実にできていることを実感しています。
木村さん:
本取り組みを継続してきた結果、初期のプログラム受講者が役員に就くケースも出てきました。まさに「継続は力なり」ですね。経営幹部全員が本研修を知っているほど浸透していますし、次世代リーダーが現経営幹部の胸を借りて本気で自己研鑽をする場に進化していることを感じます。
今後も経営リーダーを輩出し続けるタレントマネジメントを継続していきたい
吉村さん:
次世代経営人材育成のパートナーとしてグロービスにご協力いただいているのは、経営スキルの習得だけでなく、受講者一人一人にリーダーとしての志に向き合ってもらうプログラムにしたいという当方のニーズがあり、そこに寄り添ってくれたからです。当社のリーダー育成における目指す姿を実現するために、何度も打合せを重ね、一緒になって考えてくれました。
その後も、毎年グロービスと相談しながらプログラム内容をアップデートしています。担当コンサルタントである長島さん、山口さん、畠田さんには、当社の事業計画を深く理解するだけでなく、社風や社員の傾向といった、言葉にしにくい部分も把握していただいている心強さがあります。だからこそ、このプログラムが単なる研修ではなく、タレントマネジメント施策の一環として社内で着実に浸透してきたのだと思います。
また、担当講師にも当社社員の特徴を深く理解したうえでセッションを進行いただいています。当社の社員は、グローバルでの社会課題を解決したいという強い意欲を持っています。ところが、それを事業計画に落とし込もうとすると、思いが先行するあまり、事業性や市場性の検討が不十分となってしまうことがあります。そうした際には市場分析やビジネスモデル、顧客視点といった観点から鋭く指摘いただき、より適切な事業計画を立案できるよう、丁寧に指導いただいています。
木村さん:
どのような環境下でも変化に対応できる経営体制を構築し、グローバルを舞台に活躍できるリーダーを継続的に輩出していく重要性は今後も変わりません。これからも骨太のタレントマネジメントを実行できるよう、次世代経営人材育成の取り組みを続けていきたいと思います。
グロービス担当コンサルタントの声
長島:
三菱重工業様における次世代経営育成は、人のプロであり、組織のプロであり、事業のプロである木村様、吉村様、島田様と共創してきた取り組みです。我々から一方的な提案をすることはなく、ディスカッションを重ねて一緒に作り上げてきました。こうした関係性があるからこそ、世の中の変化や三菱重工業様の戦略の状況などをふまえて、プログラムを毎年リニューアルできていると思っています。
さらには、社長をはじめ経営幹部の皆様が本研修に高くコミットメントされており、受講者の方々とコミュニケーションする時間を割いていただいていることは、サクセッションプランが機能している大きな要因だと捉えています。
三菱重工業様の皆様は日本やグローバルに対する確固たる貢献意欲をお持ちで、プログラムにおける経営提言においても国家の視点で社会をより良くすることを前提に検討がなされています。今後も、社会課題解決を実現するリーダーを多く輩出できるご支援を続け、日本企業におけるサクセッションプランの先駆けとなるようなモデルを作っていきたいと考えています。
山口:
三菱重工業様における2つの選抜研修を現在担当しております。
いずれの研修も経営幹部層の方々が惜しげもなく時間を割いて受講者と対話をする様子がとても印象的です。こうした経営幹部層の育成施策へのコミットが研修全体によい緊張感を生み出し、受講者の本気を引き出す大きな要因になっていると感じます。
また受講者の皆様もそれに呼応するように、真摯に研修に取り組み、自らの成長に実直に向き合われています。受講者同士の連帯感も強く、毎回のセッションで活発な議論が行われ、それと同時に温かな雰囲気も醸成されています。
HRの皆様とはこのようなよき場を維持・進化させるため幾度も議論を交わしています。共通の想いとベクトルを持つことで毎回とても建設的な議論ができており、これはとてもありがたいことだと思います。一過性の取り組みで終わらせず、将来に続くコミュニティを作るという構想もあり、アルムナイ向け施策の企画についても実装が進んでいます。このように、選抜研修の主要関係者のそれぞれのコミットがあることで現在のよき選抜育成体系が形作られていると感じます。現在の選抜体系をさらに素晴らしいものにできるようグロービスの担当者としてもますます貢献していきたいです。
畠田:
今年度で3期目を迎える主任層向け人材育成プログラムに、継続して伴走させていただいております。経営幹部や人材育成チームの皆さまが熱い想いを持って受講者の皆さまと向き合う姿に、私自身も日々大きな刺激を受けています。
本プログラムを通じて、将来の幹部候補の皆さまが自身と向き合い、成長できる環境をいかにして提供するかを常に考えています。
プログラムが終了するたびに振り返りを行い、次回に向けた改善点を検討し、必要に応じてプログラム中に細かなチューニングを行うこともあります。こうした受講者ファーストのアプローチでプログラムを磨き上げ、現在の形に至りました。
すべての受講者がプログラム開始時から経営リーダーを目指しているわけではありません。実際、プログラム初日には「経営リーダーは自分には縁遠い存在なのではないか」という声が多く聞かれます。しかし、プログラムが進むにつれ、受講者の皆さまが経営リーダーとは何かを真摯に考え、その過程でリーダー候補としてのマインドセットが徐々に醸成されていく様子を目の当たりにしています。プログラムの最終日には、受講者の皆さまから「この研修に参加できたことに感謝しています」「課題は多かったが、非常に有意義で満足度が高かった」といった多くのポジティブなフィードバックを頂戴しております。
25年度に向けて、新たな取り組みについて議論を進めているところですが、引き続き三菱重工業様の人材育成を精一杯ご支援させていただきます。
本事例に関連するお役立ち資料
企業内研修
グロービス・エグゼクティブ・スクール
グロービス・マネジメント・スクール
アセスメント・テスト(GMAP)
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