SAPジャパン株式会社
カスタマーサクセスを追求するマネージャーの育成を通じて、日本企業のグローバル化を支援する
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日本企業の経営課題を解決に導き、グローバル化の支援に取り組んでいるSAPジャパン株式会社様。 “グローバル経営”の視座から顧客支援が可能なプロフェッショナル人材を育成すべく、Global Talent Enhancement Program(以下、GTEP)を立ち上げました。本取組みについて、お話を伺いました。(部署・役職はインタビュー当時)
【SAPジャパン株式会社様】
写真中央:バイスプレジデント&エグゼクティブオフィサー 戦略インダストリー事業統括 高塚 裕輝様
写真中右:COOオフィス SAP Sales Learning 太田 翠様
写真右:SAP Customer Experience 事業本部 シニアディレクター パートナーセールス 高橋 佳希様
【グロービス担当コンサルタント】
写真左:中島 淑雄
- 導入前の課題
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- 日々の提案活動において、お客様の経営課題の解決に紐づけられていない提案が増えていた
- 研修内容
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- 経営知識をつけたうえで、「課題を設定する力」の向上に注力する研修にした
- 具体的には経営スキルに加えて、世界や国の動き、日本企業の特徴的な経営スタイルや課題、企業固有の源流を理解する視点を養う内容も盛り込んだ
- 成果・効果
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- ビジネスプランを作ったり、お客様のエグゼクティブと話したりするときに、経営を語れるようになった参加者が何人も出てきた
- 「今までよりも大きなビジョンでお客様に提案できている」「大きな規模のビジネスを進められるようになった」といった声も
背景と課題
日々の提案活動において、お客様の経営課題の解決に紐づけられていない提案が増えていた
高塚さん:
一人ひとりのGAO(グローバルアカウントオーナー)としての日々の活動において、お客様への提案内容が経営課題の解決に紐づけられていないシーンがあったことが課題でした。
私どもは、お客様の経営状態を可視化し、分析して改善につなげるソリューションは多く持っています。しかしながら、中には自社のソリューション起点のみで物事をとらえ、お客様の真の経営課題解決に至らなかったこともありました。
提案においては、お客様の真のグローバル経営課題を捉え、具体的にどう改善していくべきかをご提案するソリューションと紐づける必要があります。このような「カスタマーサクセス」を追求すべきだと思いました。
真にカスタマーサクセスを考えれば考えるほど、我々のビジネスとのかい離が生じてしまい成り立たないこともあるのではないか、と勘違いする社員もいました。ですが、ビジネスとは一見相反するように見えることを如何に両立させるかという部分に価値があるのです。社員が経営の視点での学びを深め、それを起点に彼らのマインドセットを変えていきたいと考えていました。
太田さん:
変革の過渡期にいるお客様を支援する我々も、同時に変わっていかなかなければなりません。そのために個人の力をもっと上げていく必要性と緊急性を感じていました。マインドセットとスキルの両面で課題感がありましたね。
高塚さん:
課題感をもとに、数年前から社内で教育プログラムを組んで私も講師を担当していました。その中で社員に経営の視点をさらに深めてもらうためにグロービスのようなビジネススクールの力を借りていこうとの話に至ったのです。
太田さん:
我々の課題感は、SAPジャパン独自の課題だと認識していました。そのため、日本のビジネススクールにご支援いただくことにしたのです。こうして、GTEPの構想が立ち上がりました。
経営知識を得て、学び方や物事の見方を変え、自分で行動し始めるようになることが研修のゴール
高塚さん:
我々はプロフェッショナルとして、お客様の経営のアドバイザーであるべきです。しかし経営の知識がなければアドバイスしようがありません。社員が経営知識を得て、学び方や物事の見方を変え、自分で行動し始めるようになることがゴールでした。
高橋さん:
お客様の多くは、どう会社を変革し海外展開していくか深く悩まれています。我々はお客様の先を見据えられなければアドバイザーにもなれないし、お客様の仲間にもなれません。社員が見識を高める場をプロデュースすることで、お客様に還元できることを目指しました。
太田さん:
GTEPでは、経営知識をつけたうえで、「課題を設定する力」の向上に注力したいと考えていました。本質的な経営課題を設定するには、お客様が置かれている状況を外部環境から分析できなければなりません。さらに、企業固有のコンテクストを理解する力も必要と考えました。
そのため、プログラムには経営スキルに加えて、世界や国の動き、日本企業の特徴的な経営スタイルや課題、企業固有の源流を理解する視点を養う内容も盛り込みました。さらに、これらの学びを実践に落とす形で2つのアウトプットを作成し、最終日に経営陣と対話を行う設計にしました。アウトプットの一つ目は、一人ひとりの主要な顧客に対するアカウントプラン(本質的な経営課題と追求すべきカスタマーサクセス)、二つ目はGAOとして大切にしたい行動指針(GAO Way)の策定です。
高塚さん:
我々はプロのアドバイザーですから、自己鍛錬が必要です。花形のプロスポーツ選手でも努力をし続けるのと同じです。
提案内容をどうやってお客様に採用してもらうかという、自社目線に閉じてはいけません。カスタマーサクセスの意識を持ち、経営視点で議論できるか否かで、提案の質は異なります。キャッチーな言葉で表現すると、お客様に「この人、天才だな」と思われるようなプロフェッショナリズムを追いかけてほしいと思っていました。
SAPは全世界に、各領域のプロフェッショナルメンバーがいます。GTEPに参加する社員は、お客様の真の経営課題を捉えて社内のプロフェッショナルに届けて、巻き込む役割もあるのです。ただ御用聞き的にお客様からヒアリングするのではなく、自ら本質を掴んで、社内の各分野のプロフェッショナルと一緒にお客様の課題を解決できることが理想です。そのためには経営を学び、まずはお客様が置かれた状況を理解することが求められます。その上で初めて、SAPのグローバルチーム力が発揮されるのだと思います。
研修企画にあたり、カスタマーサクセスの浸透にこだわった
高塚さん:
カスタマーサクセスの浸透にこだわりました。これはグローバル全体のテーマでもあります。
数年前の社内プログラムでは、チャレンジャーセールスの浸透がテーマでした。チャレンジャーセールスとは、単にお客様が欲しいものに応えるのではなく、本当に必要なものを考える営みです。考える起点は自分達です。
GTEPの大きなチャレンジは、それまでのチャレンジャーセールスの浸透というテーマを更に深掘りするために、カスタマーサクセスの視点を更に深掘りして加えるという考え方の理解です。
高橋さん:
「カスタマーサクセス」は抽象度が高い言葉なので、思い描くカスタマーサクセス像や求める基準は人によって違うでしょう。GTEPを通して、カスタマーサクセスとは具体的に何を目指すのか、本質的にどこまで理解すべきかを考えるきっかけになればと思っていました。
検討プロセス・実施内容
参加者一人ひとりが主体的に学びのサイクルを回し、行動変容を起こせるかはチャレンジだと思っていた
高塚さん:
多忙な日常の中で、参加者一人ひとりが主体的に学びのサイクルを回し始められるか、行動変容を起こせるかはチャレンジだと思っていました。1年間、グロービスに学びをお手伝いいただいたからといって、いきなり極められるわけではありません。
太田さん:
参加者の気持ちや環境が整っていないと学びきれないのではないかという懸念もありました。私の役割として、参加者全員と1on1をして状況を聞き、時間管理も含めて学びきってもらうための工夫やウォッチをしていました。
高塚さん:
これらの懸念を踏まえ、当社の特徴のひとつである「ノミネーションアンドコミットメント」も意識しました。自分が得た機会には自分の意志で自分事としてコミットし、責任を果たすというプロセスです。
弊社では重要な社内プログラムの参加対象になる場合には、まずはノミネーション(指名)をして対象者に案内します。その上で、対象者は獲得した権利を使うか否かを自分で判断することが求められます。GTEPも他人事にならないよう、「ノミネーションアンドコミットメント」に則って参加者に伝えました。
それでも1年間続くGTEPの中で、課題が提出されなかったり、一時的に意欲が低下したりした参加者もいましたが、高橋さんや太田さんは丁寧に個別フォローしてくれたと思います。
太田さん:
グロービスのサポートに助けられた部分もあります。我々のリクエストに応えるだけでなく、全体感や細かい点にもアドバイスくださることがありがたかったです。講師の皆さんは、セッションの中で「御社」や「あなた」ではなく、「私たち」と言ってくれました。「私たちはどうしますか?」と同じ立場での問いかけが何回もあり、当社の立場で考えてくださっているのだと嬉しくなりました。
高塚さん:
まさに「伴走」いただきました。中島さんやアイステさん(グロービスの担当コンサルタント)には、我々の立場で物事を考え、プログラムの途中で様々なプランニングや調整をしていただきました。1年間のプログラムの中では講師には私から意見をしたこともありましたが、大きな器で受け止めていただきましたね。
高橋さん:
同感です。プログラムの企画前から終了まで、グロービスのコンサルタントの皆さんと講師の皆さんが一体となり、妥協せず伴走いただいたことに、感謝の気持ちでいっぱいです。
時には講師陣から参加者へ鋭い質問が投げられました。「あなたがその会社のCEOや株主だったら、あなたが言う経営課題を評価しますか?」と。ただファクトを並べるだけでなく、その裏側にある会社の源流や社会変化にもアンテナを立てないと、顧客課題の本質に迫ることはできないことを強く印象付けるファシリテーションでした。
アカウントプランの作成にはしっかりと指導いただき、またGAO WAY作成では自分たちが納得するものを自分たちの想いと議論を繰り返しながら作成することを重視いただきました。
講師陣の一言一言が、受講者に「このレベルではダメだ」と思わせ、ストレッチして学ぶためのサポートだったと感じます。プランには実現性があるのか、ステークホルダーを巻き込めるか、お客様に価値訴求できるものなのか、といった指摘を多くいただきました。単にグロービスのプログラムが提供されるのではなく、当社が真に実現したいことへ向けたサポートをしていただきました。
高塚さん:
講義の中で、我々のビジネスプランとお客様の幸せを追求するカスタマーサクセスプランは分けて考えたいと、参加者が言い始めた場面がありました。その際、講師の方が「一見相反するようなものを両立するところに、私たちの存在価値がある」「これを学ぶためのプログラムだ」とはっきり伝えてくださったのです。これは私が当初から参加者へ繰り返しメッセージしてきたことでもありました。最終的には多くの参加者が両立する視点に変わっていきましたね。
高橋さん:
答えを与えるのではなく議論するきっかけを作り、問いを投げ、深めていく。ここがグロービスの価値のひとつですね。
成果と今後の展望
お客様のエグゼクティブと話すときに、経営を語れるようになった参加者が何人も出てきた
高塚さん:
これまで経営の考え方から遠かった参加者であればあるほど、学びのサイクルが回り始めている実感があります。ビジネスプランを作ったり、お客様のエグゼクティブと話したりするときに、経営を語れるようになった参加者が何人もいます。GTEPで学んだことに加えて、自分で理解を深めるべき分野を見つけてセルフラーニングし始めた証拠だと思っています。正に我々が狙っていた行動変容に繋がったという事です。
社内からは「次回は、私の部門のメンバーも入れてくれませんか」という声も出てくるようになったほどです。会社のステークホルダー達にも参加者の行動変容が感じられたという手ごたえがありました。
高橋さん:
今回の受講者全員に、研修後の成果をヒアリングしたところ、「今までよりも大きなビジョンでお客様に提案できている」「大きな規模のビジネスを進められるようになった」といった声が何件も出てきました。視点が変わるとお客様へのアプローチも変わり、生まれるビジネスのスケールも変わってくることの現れです。
実際のビジネスとして成果が出るには引き続き参加者の行動変容が求められると思いますが、お客様に対する提案力や価値訴求力が格段に上がったと感じます。
太田さん:
社内で標準化されているビジネスプランの質も上がりましたね。参加者がプランニングすることの価値に気づき、自ら周囲と調整を進める動きが見られました。
高塚さん:
参加者の中には、以前はビジネスプランのテンプレートを埋めることが目的になってしまっている者もおりました。ですが、社員がビジネスプランから顧客インサイトを考えるようになり、それがビジネスに活きていることも、手ごたえのひとつです。
太田さん:
こうして振り返ると、運営面では私たち3人のバランスが取れていましたね。私たちは人事部ではないので、他の業務もしながらGTEPの運営をしています。ダイバーシティがある体制だからこそ、うまくいったのだと思います。
高塚はマネジメントリーダーなので、GTEPを組織的な取り組みとして成功させることが重要になります。私はバックオフィスの立場として、プランニングやオペレーションを進めました。高橋は普段は現場にいますが、その自分の役割を超えて動いてもらいました。ひとつの部門で運営していたら、もっと苦労していたかもしれません。
高塚さん:
ひとつの部門だったら難しかったと思います。本職が全然違う私たちを動かしているものは志なんですよ。これがSAPの特徴ですね。もちろんデイリーワークもやりますが、「自分の志はこうだからこういう仕事でありたい」という逆方向からの発想も問われる会社なのです。
実は、グロービスがいいと思った理由のひとつに、志にこだわっている点がありました。
太田さん:
GTEPは、志でつながった非公式ネットワークの力で成り立ったと思います。当社がそれをできる会社だったことに救われました。
高塚さん:
グローバルで人材育成をするメンバーもGTEPを支えてくれています。日本から始まったGTEPが、グローバルSAPのプログラムへどう昇華させられるかという視点で話をしています。私たちの志で生まれたプログラムを、より質の高いものにするために人材育成のプロが入ってアドバイスしているのです。
非公式のネットワークで始まったプロジェクトがグローバルに拡大した前例はいくつもあるので、GTEPも続きたいですね。
第二期は参加者を部長職中心にし、個の成長を組織の力につなげていこうと考えている
高橋さん:
第一期は個の成長をテーマにしました。第二期では組織にどう展開するかの観点も入れていく予定です。第二期は参加者を部長職中心にし、個の成長を組織の力につなげていこうと考えています。グロービスとは、カスタマーサクセスを全社に浸透させるためのパートナーとして、引き続きお力添えいただきたいです。
高塚さん:
ビジネス面のみならず、志や意義も追求してくれるのがグロービスの価値だと思います。当社は外資系でドライだと思われがちですが、生身の人間が働いているのですから志の考え方が通用しないはずはありません。ビジネスと志の両面で今後もご一緒したいと思っています。
太田さん:
そうですね。グロービスと一緒に、日本の産業を盛り上げていけたらいいなと思っています。
グロービス担当コンサルタントの声
中島:
本研修では、顧客の課題と未来について、「顧客が言っていることや公開資料に書かれていることでなく、受講者である皆さんはどう考えるのですか?」を繰り返し問い続けました。結果として、受講者の皆さまの考え方や視点が変化する瞬間に伴走でき、とても嬉しく思っています。
GTEPは、一般的な研修ではありません。「日本企業のグローバル化を支援する」というSAPジャパン様のビジョン実現のための戦略的な取り組みです。グローバルでトップを走り続けるSAPジャパン様のパートナーに選ばれたことは大変光栄なことですが、それ以上に大事なのは、グロービスもSAPジャパン様と共に、日本企業のグローバル化を支援しているということです。GTEPがSAPジャパン様の先に存在する日本企業の成功に繋がっているのか?我々はやるべきことをやれているのか?を常に問い続けたいと思います。さらに、今後のSAPジャパン様の取り組みである、「カスタマーサクセスの全社浸透」「ビジネスと志の両面からの支援」にも、パートナーとして全力で伴走させていただきます。
最後に、高塚様、高橋様、太田様(さらに今回インタビューでは登場いただきませんでしたが、オペレーションを支えた宮崎様)をはじめ、関係者皆様の“志でつながった非公式ネットワーク”のパワーは、本当に力強く、素晴らしいです。我々もそのネットワークの一員に加わらせて頂いたことに、心から喜びを感じています。
私たちのチームは、日本企業を中心にグローバルで活躍するリーダー育成に取り組んでおり、対象者は日本人に限らず世界中の社員です。その中でGTEPは特別な位置づけです。SAP様はドイツに本社を置く世界のリーディング企業ですが、日本企業のグローバル化を支援するために、日本企業の進出先にいるSAP様のグローバルな拠点/人材も巻き込みながら、グローバルチームとしてプロジェクトをリードできる人材育成を狙っています。
さらに、このGTEPという育成施策そのものが、日本発でSAPのグローバルに波及していく可能性も秘めています。日本というローカル市場を起点にしつつも、このようなスケール感のあるプロジェクトに携わっていることは本当に光栄です。
私たちは、GTEPの受講者に対して単に顧客を理解する力を高めるだけでなく、未来にどのような顧客のカスタマーサクセスを描くのか?を求めています。GTEPの一つひとつのコンテンツは、日常業務で今すぐ使えるようなテクニカルなものは少ないかもしれませんが、まさにそのような顧客の未来を描くためのさまざまな視点や考え方を磨くためのものが組み込まれています。受講者をはじめGTEPに関わる方々の素晴らしい能力と志に触れた今、日本企業のグローバル化というSAPジャパン様のビジョンは、必ず実現されていくものと信じています。
At GLOBIS we strive to develop visionary leaders who create and innovate societies. In most cases we do this for Japanese companies, either in programs designed for Japanese or for their international participants from all over the world. GTEP was special: The program created an opportunity to recognize and realize synergies inherent in SAP’s business model that are relevant and applicable in a local Japanese context. It was indeed our honor to be part of this learning journey of a globally leading company.
We challenged the participants not only to understand their customers, but to reimagine their future when competing and being successful on the global stage. Many of the program elements were not directly and immediately applicable to the participants’ day-to-day job, but I am confident that the learning journey throughout this program nurtured the participants’ ability to think thoroughly for their customers from various perspectives. Sharing a strong feeling for the vision that SAP Japan has, I hope for their continued success when supporting Japanese companies going global!
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