次の役員、選び方を変えたいのですが・・・ 

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役員の選抜方法に不安を覚える理由とは?

グロービスで組織開発・人材育成のコンサルタントをしている川崎です。「次期社長候補でもある役員をどのように選出すべきか?」は、最近多くの企業からご相談を受けるホットテーマです。ご質問にある「社長が目をかけている人物」だと、なぜ不安に感じるのでしょうか。そこに解法への糸口があると思います。

社長のお眼鏡に適って役員に選ばれるのですから、これまで、しっかりと実績を上げてきた優秀な方々でしょう。しかし、欠かせないポイントは“これからも“成果を上げられるかどうかです。不安の根源にはその視点があるのではないでしょうか。

今の経営環境は、VUCA(Volatility/変動性、Uncertainty/不確実性、Complexity/複雑性、Ambiguity/曖昧性)と言われるように、不透明で不確実性の時代にあります。でも、社長も役員も、安定した既存市場において、確立した既存事業を、調整型マネジメントによって成長させてきた「成長時代の功績者」が選ばれていることがまだまだ多い。それが実態なのではありませんか。

経営陣がそうした方々ばかりで占められていたとしたら、どうでしょうか。新たなビジネスモデルを構想し、企業や業界の枠を超えた協働によって全く新しい事業を立ち上げて行く――ということは、なかなか進みそうにありません。

経営層を選抜する判断軸

では、何を判断軸として経営層を選抜すればよいのでしょうか。

1つの視点を提供したいと思います。私が所属するグロービス・コーポレート・エデュケーション(法人部門)では今年8月、企業における経営者育成の現場で活躍中のコンサルタントと研修講師20名を選び、『これからの経営リーダーに求められる要件とは何か?』というテーマで調査を行いました。

年間1200社に対して経営人材育成の支援を行い、延べ6万人のビジネスリーダー育成を手掛けてきたグロービスの知見を抽出することによって、現代的リーダー像や評価軸を浮き彫りにしようと考えたのです。

まず、コンサルタントと講師に「これからのCEO、CXOに必要な要件は何か?」について3~5項目を挙げてもらい、そう考える根拠を記述してもらいました。それらのデータから要素を抽出、整理を進めたところ、「11の要件」に一次集約されてきました。

現在、それぞれの要件をしっかりと定義して、コンサルティングや育成プログラムに活かすべく、侃侃諤諤(かんかんがくがく) の議論を繰り返しているところです。

先見性に基づく構想力 と志・信念

さて、この「経営リーダーに求められる11の要件」の中から、個人的に重要度が極めて高いと考えるものを2つご紹介しましょう。それは、

「先見性に基づく構想力」
「志・信念」

です。

VUCA時代においては、将来を正確に予測することなどできず、どれだけ精緻なシミュレーションをしたとしても、想定外の事態が次々と発生してくると言われています。しかも、テクノロジーの飛躍的な進化によって既存ビジネスモデルが次々に書き換えられる「テクノベート」(テクノロジー+イノベーション)の時代でもあります。

こうした時代の経営を担うリーダーは何をすべきか――。

まずは、アンテナを高く上げ、変化の方向性を掴み、社会の未来を見通す。そして、時代の流れにただ身を委ねるのでなく、自分はどのような社会を創っていきたいのか、自社はどんな存在でありたいのか、誰に対してどのような価値を提供したいのかを「一人称」で考え、語り、伝える。

そんなリーダーが求められると私は強く思うのです。「先見性に基づく構想力」 と「志・信念」は、そのための必須要件だと思います。

何を軸として次世代リーダーを選ぶのか、そして、育てるのか、という視点がますます重要になっているのです。

最後に

ご質問にあるように「現社長のお気に入り」というブラックボックス化した選択軸を紐解き、改善策や方法を模索している企業人事の方は増えています。ただ、経営トップに対して「あなたの後継者選びのやり方は時代に合っていない」と直言することは、組織の中ではなかなかできませんよね。

しかも、「11軸」を洗い出したプロジェクトチームのメンバーの一致した見解は、そうした要件をすべて兼ね備えた人材は非常に希少であり、選ぶだけでなく、育成する努力が必要だということです。その流れを戦略的に作っていくことが今の人事部には求められていますし、私たちの使命もそこにあると思っています。

その第一歩として、自社の次世代リーダーにどのような「軸」が求められているのかを明確にし、組織の合意を取る。まずは、ここから始めてはいかがでしょうか。

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※文中の所属・役職名は原稿作成当時のものです。

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