人事施策にアセスメント・ツールが必要な理由

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テーマ
  • アセスメント
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  • グロービス コーポレート エデュケーションのプロフィール

    グロービス コーポレート エデュケーション

社会は不平等です。たまたま力のある上司の下に配属されて出世できる人もいれば、上司のミスを押し付けられてしまうような人もいるでしょう。「自分や組織の強み・能力を適切に判断したい」「公平公正な人事評価や採用活動をしたい」。このような課題意識から、さまざまなアセスメント・ツールが開発・公開されています。本コラムでは人事施策とアセスメントの関係性について解説します。

人事施策にアセスメント・ツールが必要な理由

「測定できないものは管理できない」「測定できないものは改善できない」という言葉をご存知でしょうか? 企業経営にとって「測定」は重要な行為です。人事部の皆様にとっての「測定」は、「評価」と密接に関係しています。具体的には「人の評価」と「組織の評価」です。

評価結果は個人/組織の能力を正確に表していて、主観による判断余地のないことが求められます。評価者の主観でさまざまな解釈ができてしまうと、評価結果に基づいた意思決定がばらついてしまうからです。

また「人の評価」には、合理性・信頼性が求められます。評価を参考に人事上の意思決定(採用や昇進昇格、配置異動など)がされるため(図1)、評価結果は、被評価者の人生に影響を及ぼすためです。

図1:評価結果と人事上の意思決定の関係性
図1:評価結果と人事上の意思決定の関係性

評価が被評価者の人生や組織の意思決定を左右するため、評価ツールであるアセスメントへの理解が浅いままではいけません。アセスメントに関わるすべての人が「そもそもアセスメントとはどうあるべきか?」「人事施策にどのように反映すべきか?」など考える必要があるのです。

余談として、経営の世界に最も貢献した測定ツールの一つは、複式簿記です。複式簿記が完成するまでは、企業の会計(商売の勘定)はどんぶり勘定でした。中世ヴェネツィアの商人が複式簿記を完成させたことで、経営者は帳簿上の数字を見て適切に意思決定できるようになりました。複雑な企業経営システムを管理できるようになり、巨大な企業の発展へとつながったのです。

複式簿記のような万能の測定ツールは、残念ながら人事/人材育成領域にはありません。それでも、能力試験・適性検査・キャリア診断・多面観察評価・アセスメント研修など、さまざまなアセスメント・ツールが存在します。まずはアセスメントの目的を明確にしたうえで、アセスメント・ツールごとの特長を把握し、使い分けることが重要です。

アセスメントの対象(「職務」のアセスメント/「職場」のアセスメント)

アセスメントは、対象によって目的や手段が異なります。一般的にイメージされるのは「人」のアセスメントですが、本章では「職務」「職場」を対象とした場合のアセスメントについて紹介します。

「職務」のアセスメント

職務のアセスメントは、職務分析ともいわれます。目的は、職務の定義、範囲を明確にしていくことです。たとえば職務にもとづく給与を決める場合(職務給の設計)、新しい人材の採用要件を明確にする場合、などに用いられます。

一般的に日本では「職務」のアセスメントはあまり進んでいません。各部署が受け持つ業務の責任範囲が不明瞭だからです。「役割」を中心にした業務設計をしている企業が多く「職務」に人をアサインする企業はまだ多くないでしょう。

「職場」のアセスメント

職場のアセスメントは組織診断ともいわれ、職場の状態を知るために行います。たとえば以下のような手法があります。

  • 従業員満足度調査(ES調査)
  • 組織の活性度やストレス度の診断
  • コミュニケーションの状態の可視化

アセスメントの手法(さまざまなアセスメント・ツール)

アセスメントの手法を以下にまとめました(表1)

  • 適性検査や能力検査などのペーパーテスト(以下「テスト」)
  • 研修の中で評価をするアセスメント研修
  • 日常の職務行動を評価するMBOなどの面談や多面評価システム など

表1:さまざまなアセスメント・ツール

名称測定項目回答者内容
ペーパーテスト能力・特性など本人自己回答形式で設問に回答し、能力・スキル・行動特性などを測定する。コンピテンシー調査など、多面観察評価でも同様の項目を測る場合、結果の正確性は多面観察調査より劣ることが多い。
アセスメント研修能力、コンピテンシーなど本人と他の候補者(集合形式)受講者を集め、グループにケーススタディなど課題を与えて、その言動をアセッサーが観察して受講者の能力や行動特性を評価する。
MBO(目標管理制度)能力、適性、コンピテンシー、リーダーシップスタイルなど上司期初に定めた目標と期末の成果を比較し、達成度合いに応じた評価を行う。部下は業務の進捗に応じて上司へ支援を求める必要があるため、期中の密なコミュニケーションが必要となる。
多面観察評価能力、適性、コンピテンシー、リーダーシップスタイル、組織風土など本人、上司、同僚、部下、クライアントなど本人の他、多数の観察者にも受験してもらうことで、自己回答調査よりも客観的な評価が得られるとともに、自他ギャップも把握可能。ただし、結果は回答者の評価の厳しさに依存するため、必ずしも正確ではない。人材開発に関わる多くの会社がこの調査を提供している。

アセスメントの手法のうち、テストには以下のような特徴があります。

  • 大勢の人たちを、公平に評価できる
  • 結果が数字で表れるため、科学的・客観的にその人物の能力や性格を把握できる
  • まじめにテストを行う集団に対して、正しい結果が得やすい

みなさんは今まで何回くらいテストを受けてきましたか? 学生の間に何十回(何百回?)と受けてこられたのではないでしょうか。就職後も、就職試験や資格試験などでペーパーテストを受ける機会がある方も多いでしょう。

実はテストは、人間の行動を変えるのにレバレッジが効く手段なのです。テストができた/できなかった、100点だった/40点だったなど、テスト結果を気にする方が多いでしょう。そのため人は、テストのために行動を起こしたり、テスト結果を踏まえて更に勉強したり、テスト結果によって立場が変わったりするのです。

一方、テストの問題そのものがよかったのかどうか、気にする方は少ないように思います。テスト結果を使って意思決定しようという立場の方(たとえば人事部)も、結果は気にするものの、テストの内容に関心を持つことは少ないようです。

テストを扱うすべての人たちは、ぜひテストの良し悪しにも大いなる関心を持って取り扱っていただきたいものです。

※文中の所属・役職名は原稿作成当時のものです。

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