人事担当者が最低限知っておきたいコーポレートガバナンス・コードの要点とは?
- 経営人材育成
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御代 貴子
コーポレートガバナンス・コードは、東京証券取引所へ上場する企業が遵守すべきガイドラインで、日本取引所グループ(JPX)のWebサイトに全文が公開されています。
ただ、難しい表現の文章も多いため、きちんと理解するのに苦労されている方も多いのではないでしょうか。
今回は、コーポレートガバナンス・コードが制定された背景やその内容について、基本的な部分に絞ってお伝えします。
さらに、特に企業の人事担当者が知っておきたい
・コーポレートガバナンス・コードが人事施策へ与える影響
・コーポレートガバナンス・コードを遵守しない際のペナルティ
については、6章と7章で説明しています。
「まずはコーポレートガバナンス・コードの概要を知りたい」という方は、ぜひ今回の記事を読んで理解していただければと思います。
1.コーポレートガバナンス・コードとは
1-1.上場企業の企業統治(コーポレートガバナンス)に必要な原則や指針を示したもの
金融庁と東京証券取引所が2015年に策定した上場会社に対するガイドラインが、コーポレートガバナンス・コードです。
企業統治(コーポレートガバナンス)に取り組むための原則や指針が書かれており、日本取引所グループ(JPX)のWebサイトで見ることができます。2018年と2021年にそれぞれ改訂されており、2024年時点では2021年の内容が最新です。
1-2.コーポレートガバナンスとは
企業が株主などステークホルダーの立場をふまえたうえで、不正や不祥事が起こるのを防ぎ、経営において公正な判断や健全な意思決定ができるための仕組みを企業統治(コーポレートガバナンス)といいます。
コーポレートガバナンスは上場・非上場を問わずすべての企業に求められるものですが、上場会社が不正を起こしたり、公正な判断ができなかったりすると社会に与える影響が大きいことから、コーポレートガバナンス・コードを定めているのです。
2.コーポレートガバナンス・コードが制定された背景
金融庁と東京証券取引所がコーポレートガバナンス・コードを作った背景には、日本企業の国際的な競争力が下がってしまったことがあります。
2-1.日本企業の稼ぐ力や企業価値の低下
2010年代前半、海外投資家を中心に、日本企業の経営目標の置き方や実績などへの批判が集まっていました。
具体的には、
・自己資本比率(ROE)や株価が低いこと
・企業価値やROEといった収益性の指標を経営に組み込んでいないこと
・中期経営計画等の実行力が低いこと
・コーポレートガバナンスの仕組みを導入していないこと
といったことへの指摘が相次ぎ、投資家にとって日本企業へ投資するメリットが少なくなっていたのです。これらの問題点については、経済産業省が発表した「伊藤レポート1.0」(2014年)に詳しく書かれています。
出所:経済産業省 サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会 2019年11月 事務局説明資料(2024年10月確認)
なぜ、このような批判の声が大きくなったかというと、1990年代までは日本の上場会社の株主に海外投資家は少なく、メインバンクや取引先などのいわゆる「モノ言わぬ株主」が多かったからです。利害関係者同士がお互いの株式をもつ「株の持ち合い」も少なくなく、株主の利益を尊重することを明確に意識しなくとも、経営者は批判されにくい状況でした。
ところが、バブル崩壊や金融市場の規制緩和によって海外の投資家が増え、日本企業の「株主軽視」の姿勢に対する批判と、ガバナンス改革を求める声が大きくなっていったのです。
こうした状況を受けて日本政府は、海外投資家が日本企業への投資を避けないようにするための対策をし、日本企業の国際的な評価を高めるために、コーポレートガバナンス・コードを制定することにしたのです。
※参考:GLOBIS 学び放題×知見録「ガバナンス強化の背景と問題点、コロナ禍のガバナンス改革 ~よくわかる!はじめてのコーポレートガバナンス vol.2~」(2024年10月確認)
2-2「攻め」の経営をして国際競争力が高い日本企業を増やすためのガイドライン
企業統治(コーポレートガバナンス)というと、その言葉から、不正を起こさないための「守り」の仕組み作りを想像する人も多いと思いますが、コーポレートガバナンス・コードは、「攻め」の経営をして国際競争力が高い日本企業を増やすためのガイドラインなのです。
日本政府が第2次安倍内閣の時代に発表していた国の成長戦略である「日本再興戦略」において、2014年に発表された「『日本再興戦略』改訂2014-未来への挑戦-」に、コーポレートガバナンス・コードを制定することが書かれました。
「コーポレートガバナンスの強化により、経営者のマインドを変革し、グローバル水準のROEの達成等を一つの目安に、グローバル競争に打ち勝つ攻めの経営判断を後押しする仕組みを強化していくことが重要である」 (『日本再興戦略』改訂2014-未来への挑戦-」より抜粋)
いわば「攻めのガバナンス」の実現を目指すものです。
攻めのガバナンスとは、経営陣に迅速・果断な意思決定を促し、成長と企業価値向上を目指すものです。
出所:金融庁:「コーポレートガバナンス・コード~会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために~(改訂案)」、2024年10月確認
3.コーポレートガバナンス・コードの5つの原則
3-1 企業が守らなければならない5つの基本原則
コーポレートガバナンス・コードは5つの章から構成されており、各章には企業が守られなければならない5つの「基本原則」が書かれています。
- 株主の権利・平等性の確保
- 株主以外のステークホルダーとの適切な協働
- 適切な情報開示と透明性の確保
- 取締役会等の責務
- 株主との対話
難しい表現が並んでいますが、「会社は株主をはじめとするステークホルダー(利害関係者)を尊重し、公正な意思決定をしましょう」という趣旨の内容です。
本文の各章では、基本原則・原則・補充原則が述べられており、企業が遵守しなければならない範囲は、上場している市場によって異なります。
項目 | 内容 | 対象企業 |
---|---|---|
基本原則 | ガバナンスの基本的な理念や目標 | ・プライム市場 ・スタンダード市場 ・グロース市場 |
原則 | 基本原則を具体化したもの | ・プライム市場 ・スタンダード市場 |
補充原則 | より具体的な行動指標を示したもの | ・プライム市場 ・スタンダード市場 |
3-2.5つの基本原則の内容
3-2-1.株主がもつ権利を、すべての株主に平等に与えるように配慮する(株主の権利・平等性の確保)
1つ目の基本原則は、「株主の権利・平等性の確保」です。会社の持ち主である株主を大切にしよう、という内容です。
株主がもつ権利のうち、代表的なものとして以下があります。
株主の権利 | 内容 |
---|---|
議決権 | 株主総会に出席して、会社の方針や取締役の人事などを決める際、1株あたり1票を投じることができる |
配当請求権 | 配当金をもらえる |
残余財産請求権 | 会社が解散したときに残った財産をもらえる |
議題提案権 議案提案権 | 株主総会で議題や議案を出せる |
会計帳簿閲覧謄写請求権 | 貸借対照表や損益計算書などの計算書類を見ることができる |
上場会社は、株主がもつこれらの権利が侵害されることのないよう環境を整え、必要な情報を発信して、対話などの場を設けることが求められます。
また、
・資本政策(事業に必要な資金を調達する計画)
・取引先の株式(政策保有株式)の購入
・買収防衛策
・増資やMBO(マネジメント・バイアウト:経営陣による株式の買収)
など、株主の利益に影響が出ることを行う際は、その方針を株主に説明しなければなりません。
そして、株主はこれらの権利を保有株式数に応じて平等にもち、少数株主や外国人株主が不平等にならないよう配慮すべきとされています。
3-2-2.従業員、顧客、取引先などの権利や立場を尊重する(株主以外のステークホルダーとの適切な協働)
会社には、株主以外にも従業員や顧客、取引先、金融機関、地域住民などのステークホルダーがいます。経営者はこうしたステークホルダーの貢献によって会社が存続していることを認識し、ステークホルダーに不利益が起きないよう、その権利や立場を尊重しなければなりません。
そのための経営理念や企業文化、行動基準などをつくることが求められるのが、2つ目の基本原則である「株主以外のステークホルダーとの適切な協働」です。
企業は中長期的に企業価値を向上できるよう、
・社会や環境といったサステナビリティの課題へ対応すること
・女性の活躍推進などダイバーシティを確保すること
などが必要になります。万が一、ステークホルダーに不利益が起きた際は、内部通報ができる体制も整えておかなければなりません。
3-2-3.会社の業績や財務情報、経営戦略やリスクなどの情報を開示する(適切な情報開示と透明性の確保)
上場会社は法令で開示が定められている情報だけでなく、それ以外の情報も主体的に株主へ提供していくべきという基本原則が、「適切な情報開示と透明性の確保」です。
会社がもつ情報は、大きく以下の2種類があります。
情報の種類 | 内容 |
---|---|
財務情報 | 会社の財政状態、経営実績など |
非財務情報 | 経営戦略、経営課題、リスク、ガバナンス、社会・環境問題に関する情報など |
このうち、数字で表しきれない非財務情報については、抽象的な情報しか公開されていないケースが多くあります。これでは、経営の状況や課題に対して、株主などのステークホルダーが経営陣と同じ認識をもつことは難しくなります。
コーポレートガバナンス・コードではこうした現状を問題視し、会社の情報を主体的に、具体性をもって提供していくことを求めているのです。さらに、プライム市場へ上場している会社は、英語でも情報を開示すべきとされています。
3-2-4.取締役会は、会社が中長期的に成長するための責務を果たす(取締役会等の責務)
株式会社には、経営方針を決めたり代表取締役を選んだりするなどの重要な意思決定を行う「取締役会」という機関が必ずあります。この取締役会が果たすべきことが書かれているのが、四つ目の基本原則である「取締役会等の責務」です。
取締役会は、株主への責任をふまえて、会社が中長期的に成長し企業価値を上げるために、
・経営戦略などの方針を説明すること
・適切なリスクを取った経営ができるよう環境を整えること
・経営陣を客観的に監督すること
をしなければなりません。
この役割をしっかり果たすために、取締役会はさまざまな知識や経験をもつメンバーで構成され、ジェンダーや国際性、職歴、年齢などの点でも多様性があるべきとされています。
そして、監査役や監査役会は、取締役がこれらの責務を果たしているかを適切に判断し、必要に応じて取締役会や経営陣へ意見することが求められます。
3-2-5.株主へ経営方針を具体的に説明し、建設的に対話する(株主との対話)
最後の基本原則は「株主との対話」です。上場会社は、事業への出資者である株主の話を聞き、経営方針を株主に理解してもらえるよう説明し、会社が持続的に成長していけるよう建設的な対話をしていくべき、とされています。
経営方針の説明においては、戦略の概要だけでなく、収益計画や資本政策、収益力と資本効率の目標値なども示し、その実現のために、設備や研究開発、人的資本への投資について何を実行するのかまでを明確にすることが求められます。
4.コーポレートガバナンス・コードの特徴
4-1.大枠の基本原則のみ定められており、詳細はそれぞれの企業に判断を委ねる
コーポレートガバナンス・コードは大枠の原則のみが書かれており、企業に自由度や柔軟性が与えられている「プリンシプルベース・アプローチ(原則主義)」が採用されています。
この反対の考え方は、「ルールベース・アプローチ(細則主義)」です。細かいルールまでを決めて、すべての企業がそれを守ることが求められます。
コーポレートガバナンス・コードがプリンシプルベース・アプローチ(原則主義)を取っているのは、市場環境が変化し、細かいルールが実情にフィットしなくなり、それによって企業価値の向上が妨げられないようにするためです。
4-2.原則を守らない場合は、その理由を説明しなければならない
2つ目の特徴は、基本原則を遵守し、そうでなければその合理的な理由を株主などのステークホルダーへ説明しなければならないという「コンプライ・オア・エクスプレイン(comply or explain)」の考え方です。
これらの特徴をふまえると、上場会社は「ガイドラインを100%遵守している」だけでは十分でなく、経営者の意思と、透明性と説得力がある説明責任が求められていることがわかります。
5.改訂コーポレートガバナンス・コード(2021年)のポイント
コーポレートガバナンス・コードは2015年に制定されてから、2018年と2021年に改訂されています。2021年に改定された最新版では、以下4つの「補充原則」が追加されました。
それぞれの内容を説明していきます。
5-1.取締役会が機能するための要件を定義
改訂コーポレートガバナンス・コードでは、取締役会がよりその機能を発揮できるよう、以下の具体的な要件が盛り込まれました。
・プライム市場上場会社は、独立社外取締役(※)を3分の1以上選任する
・指名委員会・報酬委員会を設置する
・経営戦略に照らして取締役会が備えるべきスキル(知識・経験・能力)と、各取締役のスキルとの対応関係を公表する
・他社での経営経験をもつ経営人材を独立社外取締役へ選ぶ(※独立社外取締役:親会社や子会社、取引先と関係がないなど、企業の経営陣から独立した立場にあり、社内の取締役と同じように経営を監督する責務を負う社外取締役)
5-2.管理職を含む中核人材の多様性推進
取締役会だけでなく、企業の中核を担う管理職についても、多様性を求める補充原則が加わりました。
上場会社は、女性の活躍推進のみならず、外国人や中途採用者も管理職へ登用する目標を設定することになります。さらに、そのための社内環境整備や人材採用、人材育成などの方針と、実施状況を公表していくことも必要です。
5-3.サステナビリティへの取り組みの明確化
改訂コーポレートガバナンス・コードでは、サステナビリティへの方針だけでなく、具体的な施策の開示も求められることになりました。
中でも、プライム市場上場会社は、気候変動によるリスクや収益の機会について、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)などの国際的な枠組みに基づいて情報開示すべきであるとされています。
5-4.その他の主な課題
・上場会社の子会社におけるガバナンスの明確化
プライム市場に上場する子会社では、独立社外取締役を過半数選任するか、利益相反を管理する委員会を置くことが求められます。
・株主が権利を行使しやすい仕組みの整備
議決権電子行使プラットフォームを利用するとともに、英文でも情報開示すべき、とされています。
6. 【重要】コーポレートガバナンス・コードが人事施策に与える影響
人・組織領域において、上場企業では「取締役の機能発揮」・「中核人材の多様性確保」が焦点になり、サステナビリティについても人的資本への投資への開示が求められています。上記の図のように、コーポレートガバナンス・コードの改定は、人材育成領域において相互に関連しあっています。
6-1.取締役のスキル・マトリックスの開示
改訂コーポレートガバナンス・コードでは、取締役会が備えるべきスキルと各取締役のスキルとの対応関係を公表することを求めています。このような、各取締役の知識・経験・能力等を一覧化したものをスキル・マトリックスといいます。
そのため、上場会社は、
・自社の経営戦略をもとに、取締役会メンバーがもつべきスキルを定義する
・各取締役のスキルを定義する方法と、公表の仕方を決める
といった対応が必要になるのです。さらに、必要なスキルをもつ取締役が不足しているなら、次回の取締役の候補者を検討しなければなりません。
6-1-1.取締役のスキル・マトリックスの開示において人事部門が意識すること
もう少し具体的に人事領域の施策として考えると、下記のようなキーワードが関係します。
・スキル可視化のための「タレントマネジメント」
・スキル・マトリックスを支える「ジョブ型雇用」
・自律的なキャリア形成につなげるための「自律的な学び」
・経営戦略として持ち合わせたい「DXスキル」
人事部門はこうした対応に関与する可能性がありますし、次期経営者候補を育成するサクセッションプランも、このスキル・マトリックスが軸になるため、意識して施策を進めましょう。
6-1-2.取締役のスキル・マトリックスの開示における企業事例
取締役のスキル・マトリックスを開示している企業の事例として、丸井グループがあります。同社の「共創経営レポート」では、取締役のみならず、監査役や執行役員も含めた全経営陣がもつスキルと、その根拠となる経験を「役員スキルマトリックス」という一覧表にして公開しています。
▶参考:CO-CREATION 共創経営レポート 2023(2024年10月確認)
6-2.中核人材の多様性確保
コーポレートガバナンス・コードを遵守するためには、経営陣だけでなく管理職にも女性や外国人、中途採用者などを積極的に登用し、多様性をもたせなければなりません。人事部門は、各ポジションへの登用基準の見直しや、運用実態をチェックするとともに、人材採用においても方針や広報のあり方を再検討して、多様な人材が活躍する組織をつくることになります。
6-2-1.中核人材の多様性確保において人事部門が意識すること
人事領域の施策として考えると、下記のようなキーワードが関係します。
・多様な視点を経営に取り込むための「ダイバーシティ」
・ダイバーシティを支える「新しい働き方」
経営に多様な視点を入れるためには、多様な人材がお互いを尊重し、認め合う組織文化を醸成する必要があります。したがって、採用、配置、報酬など人材マネジメントにおけるさまざまな観点で、人事部門は多様性の確保を促すことが求められるのです。
▶【お役立ちコラム】:企業成長に不可欠な「DEI」推進のメリットと好事例・取り組む内容
6-3.人的資本とサステナビリティへの取り組みの開示
コーポレートガバナンス・コードでは、サステナビリティの観点で内容を開示することを求めています。人事機能の中でも、人材育成や労務などの業務に密接に関わる内容が多く含まれるので、経営陣と連携しながらコーポレートガバナンス・コードを遵守する施策を進め、情報開示の対応をすることになります。
6-3-1.人的資本とサステナビリティへの取り組みの開示において人事部門が意識すること
人事領域の施策として考えると、下記のようなキーワードが関係します。
・人権の尊重、従業員の健康・労働環境への配慮や公正・適切な処遇
・人的資本への投資
それぞれの内容について、経営戦略と整合性のある方針を作り、目標と進捗を定性・定量データの両面から開示していくことが必要です。
6-3-2.人的資本とサステナビリティへの取り組みの事例
持続可能な企業の成長を実現するためには、従業員は重要なステークホルダーである、との考え方から下記のように従業員への対応を意識することが大切です。
- 企業としての人権に対する考え方の策定および公表
- あらゆるステークホルダーの人権侵害が起きていないかをチェックする仕組みの整備
- 人権尊重に関する従業員への教育
- 従業員の過重労働対策やメンタルヘルス対策など健康経営の推進
- ハラスメントを防ぐ仕組みや内部通報ルートの整備、および従業員教育
- 従業員の能力を向上し、働きやすい環境を整えるなど人的資本への投資
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7.コーポレートガバナンス・コードを遵守しない際のペナルティ
7-1.すぐに罰則が課せられるわけではない
コーポレートガバナンス・コードはあくまでガイドラインであり法的拘束力がないため、遵守していない内容があっても、すぐに罰則が課せられるわけではありません。
7-2.各原則を実施しない理由が説明されない場合は、公表措置などが課される可能性がある
罰則はないものの、「コンプライ・オア・エクスプレイン(comply or explain)」という考え方に沿って、
・プライム市場・スタンダード市場の上場会社は、コードの全原則について
・グロース市場の上場会社は、コードの基本原則について
実施しないものがある場合には、その合理的な理由を説明しなければならないことが上場規則で求められています。
この説明を行わない企業は、公表措置などの対象になる可能性があります。東京証券取引所から「コーポレートガバナンス・コードを遵守していない会社」として企業名を発信されてしまうと、会社の評判が落ち、株価や企業価値にも影響を及ぼしかねません。つまり、法的拘束力がなくても、コーポレートガバナンス・コードに従わないことによるデメリットは非常に大きいのです。
8.まとめ
コーポレートガバナンス・コードは、日本企業の価値を向上させるために国が主導して制定したガイドラインです。上場会社であれば遵守することが事実上必須になりますし、上場を目指している企業でも遵守するための準備を進めることが求められます。
その内容は人事施策に与える影響も大きく、コーポレートガバナンス・コードに沿った制度や仕組みづくりは短期間でできるものではありません。
今回の記事が、
・自社がコーポレートガバナンス・コードを遵守できているかの確認
・どのようなことから検討を始めるかの参考
として役立つことができれば幸いです。
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