テレワーク下でマネージャーに求められる3つのスキルと育成方法

2021.11.17

テレワークの推進が進む一方、「社員との関係性が薄れた」「部下が何を考えているか察しづらくなった」など、コミュニケーションの課題にぶつかっているという声を頂戴するようになりました。特にマネージャー(管理職)層では、慣れない非対面のマネジメントにやりづらさを感じていらっしゃる方が少なくありません。

本コラムでは、「テレワーク」という環境下で必要なマネジメントスキルとは何か、マネージャー層がそのスキルを取得するためにどのような育成が必要となるのかを説明します。

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テレワーク下で求められる3つのマネジメントスキル

新型コロナウイルス感染症防止対策として、2020年の春以降、日本ではテレワークを実施する企業が急増しました。昨今ではコロナ禍の有無にかかわらず、テレワークを継続すると判断した企業が増えています。

 

さて皆さまの会社は、テレワークにきちんと順応できているでしょうか?

テレワークの最大の特徴は、社員同士が直接対面せずにコミュニケーションを行うところにあります。その際に問題となりやすいのが、部下のマネジメント。これまで対面でのコミュニケーションが常識だったマネージャー層にとって、テレワーク下で部下をマネジメントすることに苦労されている方は多いようです。

 

テレワーク下においては、どのようなマネジメントスキルが重要となるのでしょうか。筆者の提供してきた研修企画の内容を踏まえると、以下の3つに大きく分類することができます。

1:メンバーの状況変化をいち早くキャッチする力

2:エンパワーメントを促進する力

3:横のつながりで情報収集・交換をする力

それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

 

1:メンバーの状況変化をいち早くキャッチする力

1つ目のスキルは、各メンバーの状況をタイムリーに把握するスキルです。ここで知らねばならないことは、各タスクの進捗や聞かずとも明白になっているような課題だけではありません。

たとえば「今どのようなことに成長ややりがいを感じているのか/やりがいを感じていないのか」「うまく頭や心の中で整理ができていないこと」なども、マネージャーがメンバーと振り返る機会を通じて、把握する必要があります。

なぜ必要か

目的はメンバーのモチベーションアップと信頼関係を築くことです。

テレワーク下では、どうしても物理的なコミュニケーション機会が減少します。たとえば、これまでちょっとした雑談の中で行われていた上司からのフィードバックが無くなることにより、メンバーにとっての振り返りの機会が失われてしまうのです。

日々の業務を振り返る機会や、振り返る習慣がないメンバーは、自分自身の成長に気づけない場合が多くあります。成長実感がないと、このままで良いのかと不安になるでしょう。

たとえ些細な内容であっても成長を実感することがモチベーションにつながりますし、それを共有できたマネージャーとの間には信頼が生まれます。このように、部下が成長実感を持つきっかけ作りが、マネージャーの役割の1つです。

ポイントは、MBOや評価面談だけでは不十分ということです。日常の業務内容から、メンバーの状況を把握して小まめなフィードバックを送ることが、モチベーションアップと信頼関係の構築につながります。

どのように行うか

簡単に始められるHowは、オンライン雑談です。評価面談や数値目標の共有ではなく、メンバーが気軽に話せる場を設けるのです。

雑談時間ではメンバーからの「困っていることは特に無いです」という答えに安心してはいけません。マネージャーにとっては状況変化をキャッチする位置づけですから、意図的な質問で答えを引き出せるように事前準備が必要です。

2:エンパワーメントを促進する力

エンパワーメントとは、ビジネスの場では「権限委譲」などの意味で使われます。つまりマネージャーからメンバーへと業務遂行や意思決定の権限を委譲するということです(図1)。エンパワーメントにより、メンバーは今の業務よりも少しチャレンジした業務を任されることになります。

図1:エンパワーメントと命令管理型マネジメントの違い

図1:エンパワーメントと命令管理型マネジメントの違い(引用:グロービス学び放題, “エンパワメント“、Section2、2021年11月2日に確認)

なぜ必要か

テレワーク下ではちょっとしたフィードバックが難しいため、成長実感を得にくいということは、先ほどもお伝えした通りです。加えて業務内容がこれまでと同じだったり、今あるスキルで完結できたりする場合、更に成長実感は得にくくなるでしょう。

そのため、エンパワーメントにより、今の業務よりも少しチャレンジした業務を任せることが有効なのです。

いつまでも同じ仕事をさせるのではなく、マネージャーや先輩が担っていた業務を一部任せてみるのはいかがでしょうか。自律的に考える機会を与え、成長を促す機会となります。

どのように行うか

注意すべきは、マネージャーから一方的に指示する「命令管理型」ではなく、メンバーと相談しながら共に目標設定し、合意のうえで進めることです。そのため、メンバーの現状を把握し、今後の目指すべき姿を明らかにすることと、メンバーの希望(何にチャレンジしてみたいのか、など)を理解することが必要です。

3:横のつながりで情報収集・交換をする力

横のつながり、つまりマネージャー同士で互いに情報収集・交換することも有効です。

なぜ必要か

横のつながりをもつことでマネージャーの孤立を防ぎ、解決策を見出しやすくなるメリットがあります。

マネージャーといえども、テレワーク下では同僚とのコミュニケーション機会が減少し、孤立しやすくなりますので注意が必要です。ポイントは問題を1人で抱え込まないことです。

マネージャーがメンバーと向き合う中で直面する問題や悩みは、他の多くのマネージャーにも当てはまるため、共有し話し合うことで解決策を見出せるかもしれません。もしその場で答えが見つからなくても、共に考える仲間がいることが分かれば、マネージャー自身の孤立を予防することができます。

どのように行うか

マネージャー個人に任せていては、横のつながりは生じません。会社全体で一斉に取り組みを促す施策があると、より活性化が見込めるでしょう。

テレワーク下におけるマネジメントスキル、どう育成する?

前章でお伝えした3つのスキルを身に着けるには、マネージャー自身の取り組み意識に加えて、会社側の主導も重要です。どのような支援(育成の場の提供)が必要となるのかお伝えします。

必要スキルの洗い出しと、育成手段の選択

まずはテレワーク下でのマネジメントに必要なスキルを洗い出し、そのうえで育成手段を選択します。多くの方は育成手段から考えてしまいがちですが、それはいけません。

はじめに、必要となるスキルを洗い出したうえで、スキルを細かく分解します。たとえば「意図的な雑談スキル」を細かく分解すると、「部下に率直に意見を出してもらうための質問力」、「部下の発言を適切に捉えるための、論理的に考える力」、「論理的に考えた結果を分かりやすく伝える力」などが考えられます。

育成スキルを細かく分解したのち、自社にとって不足しているスキル・これから重要となるスキルを選別します。各社のリーダーシップの育成度合いや重要度によって、必要なスキルは異なります。

ここまで考えたうえで、育成手段の検討を始めるのです。たとえば洗い出したスキルは、動画学習で取得可能なのか?ケーススタディを用いながら議論して鍛えた方が効果的なのか?なども検討しましょう。

マネージャーへの模擬体験の提供

スキルの重要性は頭では分かっていても、それを取得するモチベーションが湧かずに長続きしないこともあります。大切なことは、取り組みの必要性を体感できる場=メンバーと自身の日頃のコミュニケーションを客観的に捉える場を設けることです。

コミュニケーションを客観的に捉える場を設けるとは、マネージャーがメンバー側の立場を経験できる場を設けることです。

たとえば以下のような体験がお勧めです。

・自分の上司との雑談の場で、「最近困っていることある?」という大雑把な質問を投げかけられて困ってしまう体験

・自分の上司との1on1で、返答しやすい質問や投げ込みをもらうことで、上司と腹を割って話すことができたという体験

自分自身がメンバー側の立場に立つと、質問力などのスキルの必要性に納得が行きます。

このような場はマネージャー自身で設けることは難しいので、部署や人事が主体となってください。その際、マネージャー層の上司の方々からの協力が不可欠なため、戦略的に上層部を巻き込むことが重要です。当然ですが、この模擬体験はオンライン(テレワーク下)で実行することが必須です。

テレワーク下でのマネジメントスキル育成を企画する際の難所

上記のようなマネジメントスキルを育成する際に、大きな2つの難所(乗り越えるべき課題)があります。育成に取り組む際には、ぜひ次の点も意識しながら行ってください。

「オンラインに順応できなくても仕方ない」と言い訳してしまう

テレワーク下になったからマネジメントに課題を感じるようになった、と思っている方がいらっしゃるかもしれません。しかし、それは本当でしょうか。

対面していた頃なら、メンバーの本音を引き出す質問ができていたのでしょうか。毎日顔を会わせていた頃なら、チームでエンパワーメントを促進できていたのでしょうか。厳しい問いですが、あえて投げかけさせていただきます。

実はオンラインやテレワークへの環境変化で、もともと存在していた課題が浮き彫りになっただけなのかもしれません。であるならば、オンラインならではのスキルは必要ではなく、普遍的に必要なマネジメントスキルの育成が必要になるでしょう。

課題を認識できた今だからこそ、マネジメントスキル・リーダーシップを根本的に見直すチャンスです。

マネージャーのみに課題があると信じてしまう

非対面でのマネジメントの難しさは、本当に中間マネージャーのマネジメントスキルを育成すれば解決されるのでしょうか。

たしかにマネージャー層は、上層部にもメンバー層にも直接コミュニケーションを取れる立場にいるため、組織内で重要な役割を担います。しかし会社という大きな組織は、マネージャーの存在だけで成り立つわけではありません。マネージャーの上層部・マネージャーの部下も、組織の一員であり、マネジメントを難しくしている要因だとは考えられないでしょうか。

上層部であれば組織を牽引する力や、マネージャーにリーダーシップを発揮させるためのスキルが必要です。部下には部下としてのリーダーシップ・フォロワーシップ・マネジメントスキルが求められます。

マネージャーさえ育成出来れば組織のマネジメント能力が向上する、とは限りません。取り組みの優先順位をつけ、必要な階層への育成を企画・実行することが大切です。

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執筆者プロフィール
田中 寛子 | Hiroko Tanaka
田中 寛子

大学院卒業後、国内コンサルティングファームにて、商社・鉄道・化学業界を中心に業務集約化や基盤システム導入プロジェクトに従事。その後、アメリカMBA留学を経てグロービスに参画。

現在は、グロービス法人コンサルティング部門にて、リテール・石油・自動車等幅広い業界を担当し、人材育成体系構築支援や次世代リーダー人材育成の企画・設計・実行支援に従事している。

早稲田大学大学院アジア太平洋研究科(国際関係学修士)修了、米バージニア州ウィリアム・アンド・メアリー大学ビジネススクール(MBA)修了


※文中の所属・役職名は原稿作成当時のものです。

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