自社の「らしさ」を伝え、コンピテンシー浸透を加速させるオンライン研修への挑戦【後編】

2020.08.27

前編では、芝﨑様と池田様に「オンライン化に向けて」の挑戦や工夫を主にお話いただきました。引き続き、オンライン化への取り組みを伺っていきます。

執筆者プロフィール
グロービス コーポレート ソリューション | GCS |
グロービス コーポレート ソリューション | GCS

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多くのクライアント企業との協働を通じて、新しいサービスを創り出し、品質の向上に努め、経営人材育成の課題を共に解決するパートナーとして最適なサービスをご提供してまいります。


「らしさ」は自分の言葉で語れるようになって浸透する

ーー前編では、芝﨑様と池田様に「オンライン化に向けて」の挑戦や工夫を主にお話いただきました。担当コンサルタントの篠田さんから、グロービスとしての工夫、効果だと感じた点を教えてください。

篠田:
私たちも、オンライン研修実績が豊富とはいえ、これだけ長期間かつ複雑な設計を完全オンライン化させていくことは決して容易ではありませんでしたので、社内の事例・知恵を総動員しながら進めていました。中でも、セガサミーらしさ、つまり『5つの力』の理解を深め自分の言葉で語っていただくという点は、リアルでもオンラインでも絶対に外せない学びのポイントなので、人財開発部の皆様や講師と議論を重ねてより良い方法を模索しました。

『5つの力』は、ミッションピラミッドに掲げる”Be a game changer~革新者たれ~”を体現するためのコンピテンシー(行動特性)です。つまり、ビジョンを実現するためには、『5つの力』の浸透の徹底は外せない。一方、抽象度の高い言葉であり、かつ、昨年完成したばかりなので『5つの力』を発揮してくださいと言われてもピンとこない方も多くいらっしゃる。

そのため、プログラムでは『具体的な行動に紐づけて理解する』『自分に引き寄せる』『持論を持つ』という流れのもと、様々な題材を通じて『5つの力』を多様な角度から考え、『対話』と『自己内省』を繰り返し行います。

前回のインタビューにて、三原様が「『5つの力』をセガサミーグループの従業員すべてが自らのコアとして意識し、自分の成長を促す対話ツールとして使い続けてもらうことで、グループに革新のマインドと行動様式が醸成されるものと期待しています。」とお話されたように、自己対話のツールとして使うことで自分の言葉になっていってほしいと、私たちも思っています。

リアルで実施していた時は、『5つの力』に関する『自己内省』のアウトプットを講師が見て回りながら受講者の理解度把握や個別フォローしていたのですが、オンラインになるとアウトプットが見えず受講者の理解度が確認しづらいという状況が生まれます。それを解消するための具体的な工夫の一つとして、『5つの力』の解釈(自己内省)を全員がチャットに書き込む場を繰り返し設けました。

これは、講師視点では受講者の理解度を確認してフォローができるというメリットがありますし、受講者からすると繰り返し書くことで持論の言語化が進むという利点もあります。また、チャットは全員の目に触れるため、逃げずに自身で考えて言語化をしなければならないという、良い意味での緊張感もプラスに作用したのではないでしょうか。そしてなにより大きな効果は、他者の多様な意見から学ぶことができるという点だったと感じています。

また、こういった『自分なりの考えを率直に語り合う』ためには、“場の作り方”も非常に大事です。特に初日は受講者同士が初対面かつオンラインという慣れない環境下での受講となるため、少しでも快適に、一体感を感じながら受講できる環境を作ることを大切にしています。そのために、冒頭での操作説明や受講者同士の自己紹介には時間を割いていますが、それが結果として、相互の関係性を作り、場へのコミットメントを高める鍵として機能していると感じています。

意見を言語化する機会が増えたことで、受講者全員を巻き込みやすくなった

ーーほかにも、オンラインの魅力で感じたことがあれば教えてください。

芝﨑様:
篠田さんのいうコミットメントに近いのですが、研修受講者全員を研修に巻き込みやすくなりました。これまでは、研修で発言数が一定の人に偏りがちになるのは仕方のないことだと思っていましたが、オンライン研修ではチャットを使うことで受講者全員に同時に意見を出してもらうことができます。

例えば、『5つの力』について納得がいかない点や疑問点などの率直な意見もチャットだと書き込みやすい。そしてチャットに出た意見を拾うことで発言してもらうことが出来るようになったのがいいですよね。これまでは、鋭い意見は持ちながらも手を挙げることに抵抗がある人もいたと思いますが、そういう方も研修に巻き込んでいけるようになったと感じます。更に、チャットでの言語化を通して、私も受講者の理解がどこまで進んでいるか分かりやすくなりました。受講者に能動的に研修に参加頂き、言語化することを通じて見える化が出来た部分は魅力だと思います。

ーー確かに、考えを言葉にして表現してもらう事で、ご自身も周囲も気づくことがたくさんありそうですね。その他、オンラインの良さとして生かしていきたい部分はありますか?

芝﨑様:
アットホームな環境を作り出し、本音を引き出しやすくなる事だと思います。実は、新入社員向けのタウンホールミーティングを開催し、里見治紀社長と新入社員約200名が対話する機会を設けました。今回オンラインで開催したところ、終始アットホームな空気感で質問や対話が多く生まれていました。オンラインは無機質な印象に捉えられがちですが、新入社員にとっては自宅など落ち着いた環境から参加ができるし、社長の表情や仕草が画面越しに間近に感じられたことで、本音を引き出し易い環境に近付いたのではないかと思います。

池田様:
物理的には離れていても、オンラインだと一対一で向き合っているという感覚が生まれ、むしろ心理的安全性が高いような感じがしますよね。

次世代の研修の在り方

ーーコロナ禍の後の研修の在り方、構想があれば教えてください。

芝﨑様:
オンラインと集合型の融合がAfterコロナの研修の在り方なのかなと思います。集合型の良さはコミュニケーションの取りやすさ(気軽に話し掛ける、情報や連絡先を交換するなど)にあるので、例えば、研修はオンラインというツールを使いつつ、場所は共有し、休憩はリアルの場で一緒に話し合ったり、研修後に一緒に飲みに行くということが出来そうですよね。

池田様:
人の熱量やエネルギーに直接肌で触れ刺激やパワーを得ること、空間や場を共有することで自己を見つめ直すこと、この辺りも集合型ならではの良さかなと思います。例えば経営塾で直接会長や社長と対話すること、あるいはマインドフルネスなどの取り組み。これらは場を共有することで得られるもので、リアルでないと効果が薄れてしまうと思います。

一方でオンラインの良さとしては、オンラインでは自分の意図が伝わりにくいという特徴がある分、構造的・論理的な話し方を鍛えられるという効果もあることですね。受講者の実際のコメントにも、論理的に伝える実践ができたとか、自分の伝え方を振り返れたというフィードバックがありました。それはまさにオンラインの良さで、オンラインという環境になって改めてその力を試されることになったと思います。

また、録画ビデオを活用することで、自分のペースで視聴できるし、分かりづらかった部分は戻って見直せるというコメントもありました。こうした個々のペースに合わせた学びはリアル研修にはない、オンラインならではの良さだと思います。

そういう特徴を、上手く使い分けたいと思うんです。聞いて理解する部分は録画を好きな時間に見てもらい、一部はライブで実施するなど、一つのプログラムの中でもリアル研修とオンライン研修とハイブリッドで実施するというのが、将来的な研修の在り方なんじゃないかと思います

「SEGA SAMMY College」が文化の体現者。「自分のコンパスを磨く」ことで、「セガサミーらしさ」の浸透に挑戦する

ーー最後に、今回のオンライン化推進を振り返っての感想と、今後の挑戦を教えてください。

池田様:
繰り返しになりますが、コンピテンシーの“決断力”“徹底力”を発揮し、『絶対やり切るぞ』という強い思いがあって進めていました。不安感というより課題感、困難が大きかった。だからこそ感染症拡大が懸念され始めた時点から、予定通り、リアル研修を行う通常プランと、コロナ禍が進んだ場合のバックアッププランの両方を検討していました。

やや余談になりますが、この検討プロセスの中で、セガサミーらしい“共感力”が発揮されたと感じています。研修の準備を進める中、関係各位からもたくさん協力してもらっていたんですよ。グループ各社人事部からは新入社員のメンタルケアに協力してもらい、総務からはマスクの確保、加えて、役員の方々からは研修用ビデオ撮影に協力をしてもらったり、IT部門からは受講環境整備に協力してもらったりもしましたね。さらに受講者である新入社員からも、研修の場をよりよくするためにグループセッションを増やしたいという提案がありました。全員が自発的に共感力を発揮してくれたのだと思っています。

芝﨑様:
『SEGA SAMMY College』事務局として、「誰よりも革新者でありたい」と思っています。”Be a game changer~革新者たれ~”というビジョンの体現のために、『5つの力』の浸透を推進している我々の行動が革新者らしくないといけないですよね。そのために、日頃から問題に直面しても『できる理由から考える』ことを意識しています。

例えばコロナ禍では研修をやれない理由ばかり考えたらマイナスにしかならないですよね。逆に、『この状況下で何ができるのか?』という事を一歩踏み込んで考えるようにすれば、出来る事を2倍も3倍も考えらます。厳しい状況下だからこそ、『反射的に1歩プラスの方向で動く』という姿勢をメンバー間で共有している姿勢を継続したいです

ーー「SEGA SAMMY College」事務局が文化の体現者であるという意識がとても強いと感じます。ここまで強い意識を持つ研修担当者の方は、なかなか他に見られないのではないでしょうか?

芝﨑様:
『5つの力』の中に『自分のコンパスを磨く』という言葉があるのですが、自分の信念や軸を磨くというのは日々実践しないといけないと思っていますね。この姿勢はチームで共有されていて、我々メンバー一人ひとりが革新者であり続け、革新者であり続けるために『5つの力』を自分自身の対話ツールとして取り入れています。セガサミーらしい文化を創ることは簡単なことではありませんが、全従業員がセガサミーらしい革新者になれるよう、これからも研修を進めていきたいですね。

【編集後記】
セガサミー様の人財開発部の方々は皆とても前向きで、信念を持った方々だと感じます。今回のインタビューの中でも、人財開発部の方々はもちろんのこと、他部門の方も『共感力』をはじめとした『五つの力』を発揮されたエピソードが披露されるなど、着実に根付き始めていることが印象的でした。(編集担当:筒井秀美)

※文中の所属・役職名は原稿作成当時のものです。