自社の「らしさ」を伝え、コンピテンシー浸透を加速させるオンライン研修への挑戦【前編】

2020.08.26

「研修オンライン化への挑戦は、自社コンピテンシーの一つ『徹底力(荒波でもオールをとめない)』を発揮できたと思う」セガサミーホールディングス株式会社 人財開発部 芝﨑幸一様は、インタビューで、コンピテンシーについてさらりと語られた。

 

バリュー(価値観、DNA)・ミッション(存在意義)への共感と理解、ビジョン(ありたい姿)を体現する力をもつ人、つまり自社らしい人財を増やすことは、企業を成長させる大きな力になる。しかしながら、「ビジョンを体現するための思考・行動」を自分の言葉で語り実行できるように、コンピテンシーを浸透させる道のりは平担ではない

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グロービス コーポレート ソリューション | GCS |
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荒波でもオールを止めず「セガサミーらしい新人に育てる」という目標に向きあった

ーー19年度に初めてグループ横断の新入社員研修の取り組みを開始され、2年目でコロナ禍となり、オンラインでの研修実施へ変更されました。今年度200名以上がご入社されたとのことですが、本当にオンラインで研修ができるのか悩まれたのではないでしょうか。

芝﨑様:
元々グループ横断で新入社員研修を行う意図として、『セガサミーらしい新人に育てる』ということを目標に掲げていました。その中で、ミッションに掲げる『感動体験』とは何か、ビジョンとして掲げる『革新者たれ』とは何か、そしてコンピテンシーである『5つの力』とは何かを、オンラインの集合研修で新入社員に理解してもらうことに軸足を置いていました。

ハードルは高いと思いましたが、『5つの力』にも掲げる『徹底力』、すなわち「荒波でもオールを止めない」と表現するところを、研修オンライン化では発揮できたと思います。コロナ禍で想定出来る状態をレベル1~3で設定し、どのように対処するか段階的に準備しました。

担当する各社の人事は皆大変だったのですが、『セガサミーらしい新人に育てる』という想いに共感して頂けたので、この状況下でも進められたのだと思います。

池田様:
今年の2月から感染症拡大への懸念が本格的に叫ばれるようになり、研修の実施方法をコロナ禍のレベル毎にどんどん移行させていったのですが、研修中止という選択肢は全く考えていませんでした。「SEGA SAMMY College」のミッションは、セガサミーグループの新入社員研修をきちんと提供し、セガサミーらしい新入社員の状態で配属することなので、ミッションを放棄するという選択肢はありませんでした。

コンピテンシー『5つの力』でいう決断力に近いのかもしれませんね。セガサミーらしい新入社員に育てるため、今置かれた状況で最大限できることは何だろうと、2月から4月までずっと考えていました。

情熱や一体感はリアルと同じように伝わるのか?という不安は、受講者同士の言葉のギフトで払拭された。

ーープログラムの中でコンピテンシーの理解を組み込むだけでなく、事務局の皆様が自らコンピテンシーの実践を意識して行動されていたのですね。一方、新入社員研修の傍らで実施していた「階層別研修」は、クライマックスである最終回に差し掛かるタイミングでオンラインに切り替わりましたが、不安はありましたか?

芝﨑様:
最初は不安しかなかったですね。階層別研修は、ケースセッションや対話を通して自身のありたい姿を具体化し、その実現に向けて最終日にスピーチで宣言をするという構成です。これをオンラインで実施するにあたり、特に『スピーチの温度感や情熱、一体感がリアルの集合型研修と同じように伝わるのか?』という不安がありました。しかし実際にオンラインでやってみると、想像以上に良かったと感じました。

スピーチ後には受講者同士でフィードバックをギフトとして贈り合うのですが、集合型だと時間の都合上で、2~3人からしかフィードバックを受けられないところ、オンラインだと全員からコメントをチャットで贈り合える。そのギフトも、単に『素晴らしいスピーチでした』だけではなくて、『もう少し、この部分はこうしたらどうですか?』という忌憚ないフィードバックもあれば、『私ならこういうサポートできます』といった参加者同士の新たなコミュニティ形成を予期させるコメントもあります。集合型よりも率直に意見を贈り合える、そんな良さと言葉の力にも気づきました。

自社の「らしさ」を伝え、自らの「感動体験」を通じてミッションへの共感と幅広い事業への理解を生んでいく

ーーオンライン化の困難を乗り越えてでも絶対に届けたい価値はどのようなものでしたか?

池田様:
“雰囲気づくり”に近いものですが、例えオンラインであったとしても、直にお会いしたときと変わらないくらいの『セガサミーらしさ』が感じられる研修にしたいねと話していました。例えば研修の最中、いくら準備や運営が大変だったとしても、辛い姿は見せずに、楽しく笑顔で取り組む、そんな心づもりで臨んでいました。

ーー「らしさ」は、オンラインで伝えにくいものの一つですが、「セガサミーらしさ」を伝えるための工夫やこだわりはどのようなものがありましたか?

池田様:
新入社員研修には、ビジネスマナーなど基礎的なことから、“らしさ”を伝え感じてもらうためのコンテンツとして、役員講話などがありますが、オンライン化を理由に省いたものは一つもありませんでした。どのコンテンツも何らかの形で必ず提供しました。コンピテンシーでいうと、われわれ事務局側の『徹底力』が試される取り組みだったと思います。

芝﨑様:
オンラインという環境を活かして、弊社がオンラインで提供するパチスロやゲームをユーザーとして楽しんでもらう機会を設けました。『やってみると意外に面白い!』とか『セガサミーグループの事業・製品の幅広さに改めて気付けました』という反応があって、これは、ミッションにある『感動体験』を、セガサミーらしさと共に、新人の皆さんに自ら感じ取ってもらう機会にもなり、幅広い事業をやっていることの理解にもつながったと思っています。

※文中の所属・役職名は原稿作成当時のものです。