人々の関心、視線を常に外部に向けさせる力(1/2)

公開日
テーマ
  • 次世代リーダー育成
執筆者
  • 鎌田 英治のプロフィール

    鎌田 英治

    グロービス講師

仕事柄、企業の経営者、或いは経営層の方々とのディスカッションを通じて、彼らの社員に寄せる期待や想いに接する機会が多い。業種や事業環境の違いによって様々な考えがあるのは事実だが、一方でよくよく耳を澄ましてみると、究極的に経営者が社員に期待していることは、至ってシンプルかつ本質的な以下の2点に集約される様に思う。その第一は、「社員が主体的に自らの頭で考える」ことへの期待だ。別な言い方をすると、前回までのコラムで考えてきた「当事者意識を持て」ということになる。そして、もう一点これと比肩するのが「社内に閉じるな。外を見よ」ということだ。今回と次回では、このニ番目の観点、「人々の関心、視線を常に外部に向けさせる」ということの意味と、更にその為にリーダー達はどんな力を発揮する必要があるのかについて考えてみたい。

「関心と視線を外部に向ける」と何が良いのか?そうしないと何がまずいのか?

最初に、外に目を向ける必要性を整理しておこう。一見すると敢えて議論するまでもない様にも感じるのだが、その必要性を分解整理したうえで具体的に実感しておくと、人間は「当たり前を実現する」ために、自覚的に一層の努力を払うようになるものだ。

例えば、人間の脳の働きに置き換えて考えてみる。

我々は五感を通じて外部の様々な現象や事実を「受信」する。受信情報は刺激として脳へのインプットとなる。脳は、それらの刺激を認識し、解釈し、何をするか/しないかを考える=いわば「計算」するのだ。計算結果は、各筋肉(口、目、手足・・・)の「運動」としてアウトプットされる。更にこの「運動」(アクション)の結果によって生じる刺激が次のインプットとして受信され・・・、となる。

養老孟司氏によると、このサイクルが「計算」機能の強化(学習と進化、成長)に繋がっていくのだという。もしも、この「受信」自体なかったらどうなるのか。「受信がない」(=インプットとしての刺激がない)ということは、何も起きない(アウトプットがない)し、脳の「計算」機能の強化(学習と進化、成長)もない。単純な話だが、脳の機能は「停滞」もしくは「低迷」を余儀なくされるだろう。

さて、ビジネスの現実に話を戻そう。世はグローバル・ベースの大競争時代だ。競争相手は必死に凌ぎを削っている。お客さんの要求水準も高まるし、ニ-ズそのものがあっという間に変わってしまうことも頻繁だ。

そんな気が抜けない状況下、「本当に顧客起点で考えているのか」とか「世の中の動きにしっかりアンテナを張っておけ」といった現場に対する厳しい指摘を聞くことが多い。これこそまさに「受信障害」が起きていることを物語っている。

受信していない(知らない、外を見ていない)ことによって、然るべきアクション(アウトプット)が無いのである。環境変化の激しい現在、こうした何もしない事態を「停滞」という言葉で片付けることは出来ない。周囲が変わっている中で「何もしない」ことは、むしろ相対的「退化」や「劣化」が生じており、大きなリスクと捉えるべきである。

もうひとつ、よく耳にする声がある。「旧来の発想ややり方から脱却できない」「過去の経験に頼った直感や思い込みのみで動いている」「”AといえばB”のパターン化された直線思考に陥っている」といったものだ。これらも、例外なくどんな企業でも聞かれることである。(余談になるが、”クリティカル・シンキング”などの思考力強化プログラムへの学習ニーズが高まっている背景にはこうした事実がある。)

既にお分かりの通り、これも受信障害によるものだ。結局「計算」機能の進化と成長が促されず、「思考の固定化」を招いているのである。変化の激しい知識集約型社会の現代では、「思考の固定化」は、むしろ「脳疾患」あるいは「機能不全」といった方が事態を正しく描写しているのかも知れない。

以上、見てきたとおり、外部に目を向けず、内向き思考に陥ると、変化を看過し、変化に適切に対処できなくなる。視野狭窄によって、ビジネスのやり方、戦い方が固定化し、いずれは立ち行かなくなる。ここに「外部に目を向ける」ことの必要性がある。

次回も引き続き 「2. 人々の関心、視線を常に外部に向けさせる力」 を考えます

※文中の所属・役職名は原稿作成当時のものです。

こちらの記事もおすすめ

この記事をシェア

3,300社以上の実績をもとに
実践性を追求した研修

経験豊富なコンサルタント

企業の戦略を実現できる人材の育成を、
短期~中長期まで段階的に設計してサポートします。

まずは相談してみる

グロービスが
まるごとわかる3点セット

グロービスがまるごとわかる3点セットサンプル

サービス詳細、事例集、会社案内の資料を
一括でダウンロードいただけます。

今すぐ資料を申し込む

メルマガ登録

人材育成・企業研修に役立つメソッドをはじめ、
セミナー開催情報や最新のコラム情報などを週に一度お届けします。

メルマガを登録する

事例紹介

日経225の88%の企業へ研修サービスを提供

企業内研修有益度

4.6 5段階
評価
2024年3月「テーラーメイド型プログラム」を除く平均値

導入企業数

3,300

社/年

受講者数

43.8

万名/年
スカイマークらしい人財育成体系をゼロから構築! 航空業界におけるチャレンジャー企業として成長を続ける

スカイマーク株式会社

スカイマークらしい人財育成体系をゼロから構築! 航空業界におけるチャレンジャー企業として成長を続ける

部長層 課長層 一般社員層
日本語
企業内研修 スクール型研修 eラーニング アセスメント・テスト
「自ら学び、社会から学び、学び続ける」風土改革への取り組み

日本生命保険相互会社

「自ら学び、社会から学び、学び続ける」風土改革への取り組み

課長層 一般社員層
日本語
スクール型研修 eラーニング アセスメント・テスト
受講者から役員を輩出。ジョブアサイン連動型タレントマネジメントで「未来を起動する」次世代リーダーを早期育成

三菱重工業株式会社

受講者から役員を輩出。ジョブアサイン連動型タレントマネジメントで「未来を起動する」次世代リーダーを早期育成

課長層 一般社員層
日本語
企業内研修
世界各国で活躍する社員の自律的なキャリア形成をするために必要となる、経営スキルを磨く場を提供

伊藤忠商事株式会社

世界各国で活躍する社員の自律的なキャリア形成をするために必要となる、経営スキルを磨く場を提供

一般社員層
日本語
スクール型研修
トップダウンから脱却し、自律自考のできる次世代リーダー集団の育成

株式会社大創産業

トップダウンから脱却し、自律自考のできる次世代リーダー集団の育成

部長層 課長層
日本語
企業内研修
非連続の時代を生き抜くために管理職がビジネススキルを磨き、経営視点をもつリーダーになる

株式会社コロワイド

非連続の時代を生き抜くために管理職がビジネススキルを磨き、経営視点をもつリーダーになる

役員 部長層
日本語
スクール型研修 eラーニング
カスタマーサクセスを追求するマネージャーの育成を通じて、日本企業のグローバル化を支援する

SAPジャパン株式会社

カスタマーサクセスを追求するマネージャーの育成を通じて、日本企業のグローバル化を支援する

部長層 課長層
英語
企業内研修
360度サーベイで75%の受講者がスコアアップを実現!自らの課題を意識した学びで、受講後の行動が変化

レバレジーズ株式会社

360度サーベイで75%の受講者がスコアアップを実現!自らの課題を意識した学びで、受講後の行動が変化

課長層
日本語
スクール型研修
DXカンパニーへの転換を加速させた、役員合宿の取り組みと効用

富士通株式会社

DXカンパニーへの転換を加速させた、役員合宿の取り組みと効用

役員
日本語
企業内研修