リーダーシップに質的変化がおきている背景

2006.04.27

求められるリーダーシップに質的な変化が生じている。「リーダーの教科書に、これまでとは異なる履修範囲が加わった」のである。背景にあるポイントを3点に集約してみたい。

1:競争環境の激化

第一が、競争環境の激化である。競争の土俵はグローバル化し、競争のルールそのものがどんどん塗り替えられていく。また、商品開発や顧客対応など主たる企業活動においてスピードと質が厳しく問われている。


2:従業員の多様化

第二に、従業員の多様性–世代、性別、国籍、それにともなう価値観や労働観の多様性–が急激に高まることで、組織運営の複雑性が一層増している。組織の一体感醸成、経営理念など基盤となる考え方の共有・浸透が一筋縄ではいかなくなっている。


3:差別化の源泉の変化

そして第三は、差異化の源泉(=価値創出の源泉)が、目に見えるモノという資源から、人の「知恵」や組織風土などのソフト・イシューに移ってきたことである。こうした無形資産をいかにマネージし、その質的向上を図っていくかが問われている。


これからのリーダーシップとは

戦略の寿命が短く、市場の変化に現場が自律的かつタイムリーに適応することが求められる時代には、かつての「組織管理」の発想は通用しない。企画部門が立案した戦略を上意下達で徹底する”中央集権スタイル”。「予定通り数値目標は達成しているか」に軸足を置いた”予実差異コントロール型のマネジメント”。「やり方は実践を通じて俺から盗め、後は自分で考えろ」といった”背中のみで語る、お任せリーダーシップ一辺倒”。これらが、現代の競争環境では全く機能しないのは周知の通りだ。


これからは、社員一人ひとりが持つ可能性を十分に引き出すことのできない企業は継続的な競争優位性を築くことが出来なくなるだろう。個人のモチベーション(当事者意識やコミットメント)と能力(特に問題解決能力や創造力、対人関係力、協働力など)を最大限に高め、それを企業目標の達成に向け束ねられた企業のみが大きな優位性を構築できるのだ。3Mやトヨタ、 J&Jといった、個人尊重の姿勢を重視している企業が長年にわたって優れた業績を残しているのは決して偶然ではない。そして、組織全体が変化に即応するのみならず、変化を予想して手を打つことが出来る経営の柔軟性を高めていくことが大事になっている。

本シリーズでは、こうした時代認識に基づき、今日「リーダーが発揮すべきチカラ」を次の4点から浮き彫りにしていきたい。

1.人々の当事者意識を引出す力
2.人々の関心、視線を常に外部に向けさせる力
3.人々に伝える力、浸透させる力
4.自らに問う力

次回は、1つめの「当事者意識を引出す力」について考えていきます。

執筆者プロフィール
鎌田 英治 | Eiji Kamada
鎌田 英治

株式会社グロービス
マネジング・ディレクター  
Chief Leadership Officer(CLO)

北海道大学経済学部卒業。コロンビア大学CSEP(Columbia Senior Executive Program)修了。日本長期信用銀行から1999年グロービスに転ずる。長銀では法人営業(成長支援および構造改革支援)、システム企画部(全社業務プロセスの再構築)、人事部などを経て、長銀信託銀行の営業部長としてマネジメント全般を担う。グロービスでは、人事責任者(マネジング・ディレクター)、名古屋オフィス代表、企業研修部門カンパニー・プレジデント 、グループ経営管理本部長を経て、現在はChief Leadership Officer(CLO) 兼コーポレート・エデュケーション部門マネジング・ディレクター 。講師としては、グロービス経営大学院および顧客企業向け研修にてリーダーシップのクラスを担当する。著書に『自問力のリーダーシップ』(ダイヤモンド社)がある。経済同友会会員。


※文中の所属・役職名は原稿作成当時のものです。