オリンピック期間中も企業研修を継続実施するための4つの対策

2019.12.26

開催を目前に控えた2020東京オリンピック。期間中の交通混雑を見据え、リモートワークの推進など柔軟な働き方が注目されています。本コラムでは「働き方」に比べて見逃されがちな「学び方」、すなわちオリンピック期間中の研修実施に焦点を当てます。数多くの企業と接点をもつ弊社から見た企業動向を、各社の具体的な検討事例・取組事例を交えながら見ていきましょう。

 

執筆者プロフィール
塙 達晴 | ban tatsuharu
塙 達晴

青山学院大学経済学部卒業、グロービス経営大学院修士課程(MBA)修了
大手自動車メーカーグループの金融部門にて、自動車ディーラーの収益力向上や財務体質の改善に向けた、コンサルティング営業に従事。グロービス入社後は、コーポレート・エデュケーション部門にて、国内企業の人材育成・組織開発の企画・設計・コンサルティングに従事。現在は、法人向けスクール事業の推進責任者として、企画・オペレーション等、サービス全般にも携わる。


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第1章 
オリンピック期間中に研修を実施する際の懸念点

オリンピックの開催予定日は2020年7月24日~8月9日 、パラリンピックは2020年8月25日~9月6日です。この期間中になんらかの研修を実施する企業は多く、弊社にも以下のようなご相談が寄せられています。

  •  ・全社的にテレワークや休暇取得の推奨がされている。そもそも研修を実施すべきなのか?
     ・オリンピック期間中の繁忙が予想されている。そもそも研修の実施が可能なのか?
     ・日中の過度な交通渋滞が予想されている。研修実施場所への移動は可能なのか?
     ・全国から都内に受講者を集める場合、研修所や宿泊施設の確保が難しいのではないか?


オリンピックが始まらないと状況がわからないという不透明さが、各社の懸念を増幅させているようです。一方で3月決算の企業であれば、遅くとも2月中には方向性の意思決定が求められるでしょう。次項では、意思決定のご参考として、具体的な対応方針を4つご紹介します。

第2章 
オリンピック期間中に研修を実施する際の対応方針とメリット・デメリット

多くの企業は、以下いずれか、またはその組み合わせの対応により、オリンピック期間中も継続実施するようです。

  1. 1:時期の変更   ・・・実施の時期を前倒し、もしくは後倒しにする
  2. 2:手法の変更   ・・・集合研修での実施をやめ、オンラインによる研修へ切り替える
  3. 3:場所の変更   ・・・混雑が予想される都内での開催をやめ、都内以外で実施する
  4. 4:研修実施の見送り・・・2020年度の研修を行わない

それぞれのメリット・デメリットを、表1にまとめました。

表1:オリンピック期間中に研修を実施する際の対応方針とメリット・デメリット
対応方針 メリット デメリット
1

時期
変更

・研修内容には変更が無いため、意思決定が容易

・受講者や研修実施場所・宿泊施設の都合が付くか確認が必要

2 手法
変更

・働き方改革に伴う学び方改革を推進する社内への訴求が可能

・研修場所への移動時間がゼロになるので、受講生の負荷・現場への負荷が減る

・交通費や宿泊費などの研修付随コストが減る

・オリンピック期間後も利用可能

・オンラインで実施する機材の用意が必要

・社内のシステム部門との連携が必要

3 場所
変更

・研修内容には変更が無いため、意思決定が容易

・受講者や研修実施場所・宿泊施設の都合が付くか確認が必要

・交通費や宿泊費などの研修付随コストが増える

4 研修実施の見送り

・短期的な業務負担が減る

・一度研修をやめると、次年度以降の再開が難しい

・社内で学習機会の不均等が生じる

第3章 
オリンピック期間中に研修を実施する企業の具体事例

ここからは、前述の1:時期の変更と2:手法の変更、それぞれの対応について、弊社のお客様の具体的な事例をご紹介します。

3-1. 「時期」の変更の具体事例

事例1:集合研修

・研修内容:

管理職未満の階層別研修。全国に拠点があるため、受講者は都内に数日間集まり、企業内集合研修を実施していた

・実施時期:

毎年7月に実施していた(年度初めの異動や昇進・昇格が落ち着くタイミング)

・変更点:

前月(6月)に前倒しで実施することとした

・社内の反応:

わずか1ヶ月の前倒しだったため、各種調整も容易で、意思決定もスムーズだった

事例2:通学型研修

・研修内容:

3ヶ月間の管理職向け通学型研修(グロービス・エグゼクティブ・スクール派遣)に、課長層・部長層の選抜人材を数人派遣していた

・実施時期:

毎四半期ごとに対象者が希望する期に派遣していた。今回は、7月~9月の派遣について検討

・変更点:

オリンピック期間の前の期(4~6月)、もしくは後の期(10~12月)の通学を人事部から推奨

・社内の反応:

受講タイミングの最終的な決定は受講者に委ねたため、社内での意思決定がスムーズだった

3-2. 「手法」の変更の具体事例

事例3:集合研修

・研修内容:

ビジネススキルを習得するための選択型研修

・実施時期:

毎年6~8月の間に実施していた

・変更点:

自宅から受講可能な「オンライン型集合研修」に19年度から切り替え。導入に際し、機材の用意や社内ネットワークについて確認した

・社内の反応:

働き方改革としてテレワークが導入されていたこともあり、オンライン型集合研修も新しい学び方として認知されつつある。他の研修についてもオンラインに切り替えるかどうかを検討中

事例4:通学型研修

・研修内容:

3ヶ月間の通学型研修(グロービス・マネジメント・スクール派遣)。全社員を対象に公募で派遣者を募り、東京校、大阪校、名古屋校への派遣を行っていた

・実施時期:

毎四半期ごとに対象者が希望する期に派遣していた。今回は、7月~9月の派遣について検討

・変更点:

地方勤務者や、育児休暇取得者への学習機会を提供したいという意向のもと、オンラインクラスへの派遣も選択肢に入れた

・社内の反応:

今まで通学できなかった社員をメインに、徐々にオンラインクラスへの通学者が広がっている

第4章 
最後に

本コラムでは、オリンピック期間中の研修に関する各社の動向についてご紹介しました。個社ごとに置かれている状況が異なるため、自社に適した対策を講じることが重要です。

もし対策についてより具体的な事例が知りたい、自社に沿った対策案を提案してほしいと思われましたら、お気軽に弊社までご相談ください。豊富な事例を交えながら、貴社に沿った対策案を一緒にお作りします。

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※文中の所属・役職名は原稿作成当時のものです。