中小企業こそ管理職研修が必要!研修内容や具体的な手順を解説
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- 「中小企業は管理職研修をするべき? 管理職研修の必要があるのか知りたい」
- 「中小企業の管理職研修はどのように実施するべき? 具体的な方法や手順を理解したい」
管理職は現場を管轄・運営する大切なポジションです。だからこそ、どのような育成が必要なのか、研修の必要はあるのかなど悩む方が多いのではないでしょうか?
結論から言うと、中小企業こそ管理職研修が必要です。大企業と比較すると管理職一人ひとりの存在が大きく、管理職研修を実施することが企業の成長や人の成長に直結しやすいからです。
しかし、トレンドの研修や実施しやすい研修に手当たり次第取り組むことは好ましくありません。
「どのような目的で研修を行うのか」「理想的な管理職の人材要件は?」「研修の内容は?」など経営陣がコミットしながらしっかりと検討し、自社に合う管理職研修を行うことが大切です。
そこでこの記事では、中小企業に管理職研修が必要な理由や具体的な方法、手順などを解説していきます。特に中小企業の管理職研修で抱えやすい課題と解決策もまとめているので、失敗を回避しながら研修を企画・実施できるようになります。
この記事を読むとわかること
- 中小企業の管理職研修とは
- 中小企業こそ管理職研修が必要な3つの理由
- 自社の課題に応じた管理職研修をすることが大切
- 中小企業の管理職研修の種類
- 中小企業の管理職研修が抱える課題と解決策
- グロービスの中小企業の管理職研修の具体的な事例
- 中小企業の管理職研修を成功に導くポイント
この記事を最後まで読めば、自社の課題や目的に応じて管理職研修を実施できるようになります。
中小企業こそ管理職研修を行い、自社の管理職のスキルを向上させることが大切なので、ぜひ参考にしてみてください。
中小企業の管理職研修とは
中小企業の管理職研修は、管理職としての知識やスキルを身につける研修のことです。管理職とは一般的に「課長」以上の役職者を指します。
一般社員は上司の指示に従って業務を行いプレーヤーとして成果を出すことを求められますが、管理職は経営者側の立場に立ち企業の運営や部下の育成に携わります。
両社の違い | 管理職 | 一般社員 |
役割の違い | 経営者の視点に立ち、組織を管理し成果を出す | 上司の指示に従って業務を行い成果を出す |
決裁権の違い | 人事や社内ルールの決裁権を持つ | 決裁権がない |
働き方の違い | 一般職と同等の労働時間・休日・残業に関する規定が適応されないことがある(管理監督者に該当する場合) | 労働基準法に従い労働時間・休日・残業が定められている |
給与の違い | 管理職手当がつき一般職より優遇される | 企業の規定・労働基準法に従い支払われる |
一般社員と管理職では業務内容や求められるスキルが異なりますが、管理職に必要なスキルや知識は通常の業務ではなかなか学ぶ機会がありません。そこで、管理職に必要なスキルを身につけて、自社のミッション・ビジョンを体現できる管理職として活躍できるよう促すのが管理職研修の役割です。
管理職研修は中小企業の現状や課題に応じたカリキュラムを実施しますが、基本的には下記の2つが研修の柱となります。
管理職研修の2つの柱両社の違い | |
組織を円滑に運営するために必要な知識 | 社内規定や管理者として知っておくべき基本知識(経営資源に関する基礎知識・労務管理・人事評価・メンタルヘルスケア・各種ハラスメント対応など) |
管理職としての期待役割を果たすために必要なスキル・マインド | 自社の人材要件(期待役割・行動・スキル・マインド)に合う管理職になるためのスキルを身につける(論理思考力・リーダーシップ・部下の育成力など) |
組織を円滑に運営するために必要な知識では、社内規定や管理職が知っておくべき基礎知識を学びます。例えば、経営資源に関する基礎知識や労務管理に関する知識です。
【基礎知識の一例】
- 経営資源である「ヒト」「モノ」「カネ」に関する基礎知識
- 労務管理
- 人事評価や目標管理
- 各種ハラスメント対応
管理職としての期待役割を果たすために必要なスキル・マインドは、自社の求める管理職像をベースに現在の管理職に不足しているスキルを身につけます。
例えば、自社のビジョンや戦略への理解が不足している場合は、経営層との対話セッションや経営戦略のカリキュラムを、リーダーとしての資質が欠けていることが課題となっている場合はリーダーシップ力を身につけるカリキュラムなどを組み込みます。
このように、中小企業の管理職研修は自社の管理職の課題や自社の理想的な管理職像に合わせて設計、実施することが大切です。
中小企業こそ管理職研修が 必要な3つの理由
「中小企業に管理職研修は不要ではないか?」と思っている方もいるかもしれませんが、中小企業こそ管理職研修を実施するべきです。中小企業は管理職研修をすることで、特に企業の成長や人の成長に直結しやすいからです。
ひとつずつ説明していきますので、なぜ管理職研修が必要なのか理解するためにも参考にしてみてください。
2-1.管理職の成長が企業の成果創出に直結しやすいから
1つ目は、管理職のスキル・マインドを育成することにより、企業として成果を創出し続けるためです。大企業と比較すると、中小企業の管理職は一人ひとりの存在が大きいため、管理職の成長は企業の成果に直結します。
とりわけ昨今は、世の中の変化が著しく先行きが予測しにくい「VUCA」の時代だと言われています。
Volatility(変動性) | 顧客ニーズや価値観の変化、AIの進歩等により、予測できない変化が次々に起こること |
Uncertainty(不確実性) | パンデミックや災害、社会制度の変化など、いつ起こるか分からない事象により将来の予測を立てるのが難しいこと |
Complexity(複雑性) | 市場のニーズや社会構造が複雑化しており優位性を見出すことが難しくなっていること |
Ambiguity(曖昧性) | 変動性・不確実性・曖昧性の3つの要素が重なったときに、過去の事例や実績が通用しない前例のない出来事が増えること |
VUCAの時代では「今までの勝ちパターンが通用しない」「従来の手法では予測ができない」など、想定外のことが起こりやすくなります。特に中小企業は時代の流れの影響を受けやすいため、管理職が現状を理解し、変化に対応するためのスキルを身につけていないと、企業として成果を創出し続けることは難しくなるでしょう。
また、VUCAの時代は新しい技術やサービスが次々と登場します。例えば、AIが多様なサービスに活用されるようになったのはここ数年のことです。AIの登場により業務の進め方が抜本的に変化した業種もあるでしょう。
このような変化が激しい時代に中小企業が成果を創出し続けるには、環境の変化を乗り越えられるスキルやマインドが必要です。中小企業を引っ張っていく管理職がスキルやマインドをアップデートするためにも、管理職研修は欠かせないのです。
2-2.管理職が人材育成を出来るようになるから
2つ目は、管理職による人材育成をするためです。中小企業は業種問わず、人材不足が深刻化しています。今後は少子高齢化に伴いますます採用や人材確保が難しくなると考えられるため、社内の人材育成が重要なポイントとなります。
管理職が人材育成に取り組み下記のようなことを実現できれば、限られた社員数でも成果を最大化することが可能です。
- 離職率を抑える
- 社員一人ひとりのパフォーマンスを向上させる
- 社員が前向きに働くための動機付けや支援を行う
- 管理職がロールモデルとなり理想のキャリア像になる
しかし、人材育成には対話力やリーダーシップ、目標管理などのスキルが必要です。中小企業の管理職は管理職になるまでプレーヤーとして活躍していたケースも多く、人材育成に携わったことがない社員も見受けられます。
そこで管理職研修を実施して人材育成に関する知識・スキルを身につけ、適切な手法で部下の育成ができるようにすることが大切です。
2-3.管理職の役割認識には研修が効果的だから
3つ目は、管理職の役割を認識するためです。
中小企業では、それまでプレーヤーだった人が、ある日突然管理職になることも少なくありません。例えば社員の退職や異動などで急に管理職のポストが空いたり、急な業務拡大により管理職ポストが新設されたりする場合です。
こうした場合に、
- 管理職にはどのような役割があるのか
- 管理職は何をしなければならないのか
など、管理職に求められる役割を認識できないケースが発生します。この状態で管理職を続けてしまうと、自社が求める管理職像になかなか近付けず、成果を出すのは難しいでしょう。そのため、管理職研修を実施して管理職の役割や心構えなどを理解し、当事者意識を持ってもらうことが大切なのです。
自社の課題に応じた 管理職研修をすることが大切
中小企業の管理職研修は、自社の課題に応じた研修を設計することが基本です。管理職研修の失敗で多いのは、自社の現状や管理職の人材要件を意識しないまま研修を実施してしまうパターンです。
管理職研修で多い失敗パターン | |
---|---|
前例踏襲 | 数年にわたり同じ内容の管理職研修を実施しているパターン。 外部環境や経営戦略、組織体制などに変化があると研修内容と現状の課題がかけ離れてしまう |
トレンド | コーチングやコンプライアンス、エンゲージメントなどトレンド感のある人気の研修を ‟何となく” 実施してしまうパターン。 自社にとって本当に必要な研修内容なのか分析し実施する必要がある |
前例踏襲は、数年にわたり同じ内容の管理職研修を実施しているパターンです。「2.中小企業こそ管理職研修が必要な理由」でも触れたように、時代の変化により必要なスキルは変化していきます。同時に社内の環境や管理職の課題も変わるため、いつまでも前年踏襲を続けていると現状の課題とはかけ離れた研修になってしまうリスクがあります。
また、よく耳にするトレンド感のある研修は、自社の管理職の課題と合っているのか確認したうえで実施する必要があります。例えば、昨今コーチングやエンゲージメントなどの言葉をよく耳にしますが、自社の管理職に他の課題がある場合には、その課題を解消できる研修を実施したほうが成果が出やすいです。
つまり、中小企業の管理職研修の内容は、どの企業でも同じことを実施すればいいわけではないのです。自社が掲げる理想的な管理職に近づくために何が必要なのかという観点で、下記3つの視点から研修内容を考えてみてください。
Why どのような目的のために? | なぜ管理職研修を行うのか明確にする |
What どのような人材要件に対して行う? | 自社の「あるべき管理職像」を明確にする(スキル・知識やマインド・行動) |
How どのような管理職研修を実施する? | 管理職研修の目的や理想的な管理職像を踏まえて、自社の課題を解消できる研修を設計する |
管理職研修の具体的な事例は7.グロービスの中小企業の管理職研修の具体的な事例で触れています。カリキュラムの一例も提示しているので、参考にしてみてください。
▶参考資料をダウンロードする:研修体系の考え方(ワークシート付)
中小企業の管理職研修の種類
中小企業の管理職研修には、主にOJTとOFF-JTがあります
項目 | OJT | OFF-JT |
---|---|---|
概要 | 職務現場で業務を通じて学ぶ | 通常の業務や職場から離れて行う育成全般 |
メリット | ・現管理職や経営陣から直接業務を学べる ・対象者の課題やペースに合わせて進行できる | ・学びの質を均一化できる ・社内にないノウハウや知識を学べる |
デメリット | ・育成担当者の負担が大きい ・育成担当者のスキルに研修成果が左右される | ・コストがかかる ・内容・手法によっては業務でのアウトプットまで時間がかかることがある |
向いているケース | ・実務に直接役立つ内容を習得したい場合 ・自社の管理職としての立ち振る舞いやマインドなどを直接見ながら習得したい場合 | ・管理職に必要な知識を体系的に学びたい場合 ・社内に蓄積されていないノウハウを学びたい場合 |
研修の種類を把握しておくと自社に合う研修が検討しやすくなるので、参考にしてみてください。
4-1.OJT
OJT(On-The-Job Training)とは、対象者が現管理職と一緒に業務を行い、具体的な業務内容や心構えを学ぶ方法です。新任管理職は、部下の管理や企業全体の運営など、今までにはない業務を行います。これらを現管理職から直接教えてもらうことで、具体的な業務内容や立ち振る舞いが習得できます。
【OJTの一例】
- 現管理職の近くで業務や立ち振る舞いを学び、一緒に実践する
- 現管理職から直接心構えや部下への接し方などの話を聞いて実践する
管理職に必要なスキルの中でも心構えや立ち振る舞いは、座学だけでは習得しにくい部分です。例えば、トラブルが起きたときにどのように対応しているのか、部下への指導はどのように進めているのかなど現場での行動を目の前で見て学ぶことで、実務に活用しやすくなります。
【OJTが向いているケース】
- 実務に直接役立つ内容を習得したい場合
- 自社の管理職としての立ち振る舞いやマインドなどを直接見ながら習得したい場合
4-1-1.OJTのメリット
OJTの主なメリットは下記のとおりです。
【OJTのメリット】
- 現管理職や経営陣から直接業務を学べる
- 対象者の課題やペースに合わせて進行できる
- 実務ですぐに活用可能な技術やスキルを学べる
OJTの最大のメリットは、現場で活躍している管理職や経営陣から直接業務を学べる点です。管理職に求める姿や業務は中小企業に異なるため、自社の管理職像に合う業務や知識を習得できます。
例えば、部下育成が課題となっている場合は、部下育成に精通している経営陣から直接学ぶことで心構えや部下との接し方、管理方法などが身につきます。
また、OJTでは実務で使える実践的な内容を学べるためアウトプットしやすく、管理職研修の成果として行動に結びつきやすいでしょう。
4-1-2.OJTのデメリット
OJTの主なデメリットは、下記のとおりです。
【OJTのデメリット】
- 育成担当者の負担が大きい
- 育成担当者のスキルに研修成果が左右される
- 体系的な知識の習得には向いていない
OJTは、研修を実施する育成担当者の負担が大きい点がデメリットです。中小企業の管理職研修となるとOJTの育成担当者も多忙なので、OJTをする時間の創出が難しい場合や、時間は取れたとしてもしっかりと教えるノウハウがないという場合も考えられます。
また、OJTは育成担当者のスキルに成果が左右されるところも懸念点です。例えば、管理職の部下育成が課題となっている場合は、部下育成の手本となる担当者が研修を実施することが好ましいです。
4-2.OFF-JT
OFF-JT(Off-the-Job Training)は、通常の業務や職場から離れて行う人材育成全般を指します。主な手法には、次の3つがあります。
OFF-JTの代表的な手法 | |
---|---|
企業内研修 | 研修の目的や課題に応じて講義やグループワークなどを行う |
スクール型研修 | 外部のビジネススクールを活用し、他社の受講者と共に経営スキルを体系的に学ぶ (通学とオンラインの2パターンがある) |
eラーニング | パソコンやスマートフォンを使い、インターネット経由で動画・スライドなどを見て必要な知識・スキルを身につける |
企業内研修は、管理職研修の目的や課題に応じて必要な講義やグループワークを行う手法です。外部から講師を招き、マネジメントスキルやリーダーシップ力を学ぶことが該当します。
スクール型研修では、外部のビジネススクールを活用し、他社の受講者と共に経営スキルを体系的に学びます。
例えば、管理職には「ヒト」「モノ」「カネ」など経営資源に関する知識が必要ですが、社内で教えられる人材はなかなかいません。そこで、ビジネススクールを活用すると、プロの講師から正しい知識を習得できます。
なお、1社1名から派遣ができるといった利便性も兼ね備えているため、中小企業には特にお勧めのOFF-JT手法と言えます。
スクール型研修(他流試合)の効果については下記の記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。
当社コラム:ミドルマネジメントにとって、経営視点がますます重要な時代に ~他流試合が必要な理由~
eラーニングは、インターネット経由で動画やスライドを見ながら知識を習得する手法です。パソコンやスマートフォンがあれば学習を進められるので、忙しい管理職にも学びの機会を提供しやすいです。
OFF-JTの手法はどれか1つを選択することもできますが、課題に応じて企業内研修とeラーニングを組み合わせるなど、複数の研修手法を活用しプログラムを設計することが多いです。
【OFF-JTが向いているケース】
- 管理職に必要な知識を体系的に学びたい場合
- 社内の育成に関する負担を軽減したい場合
- 社内に蓄積されていないノウハウを学びたい場合
4-2-1.OFF-JTのメリット
OFF-JTの主なメリットは次の4つです。
【OFF-JTのメリット】
- 社内の負担が少ない
- 学びの質を均一化できる
- 社内にないノウハウや知識を学べる
- 体系的な知識を習得しやすい
OFF-JTは通常の業務や職場から離れて行う研修手法なので、社内への負担が少ない点がメリットです。OJTのように育成担当者が指導する、フィードバックする、などの負担をかけずに実施できます。
また、スクールやeラーニングではあらかじめ決まったカリキュラムを学ぶため、誰がいつ受講しても学びの質を一定に保てます。教え方により成果が変わるリスクを軽減できます。
4-2-2.OFF-JTのデメリット
OFF-JTの主なデメリットは下記のとおりです。
【OFF-JTのデメリット】
- コストがかかる
- 内容・手法によっては業務でのアウトプットまで時間がかかることがある
OFF-JTは外部講師への依頼やビジネススクールへの通学など、OJTよりもコストがかかります。費用対効果を考えながら検討する必要があるでしょう。
また、スクールやeラーニングは基礎知識を習得できても、アウトプットをして行動変容を起こるところまで到達しにくいです。実務で活用できる知識にするには、プログラム設計に工夫が必要です。
4-3.OJTとOFF-JTは組み合わせることができる
中小企業の管理職研修の方法としてOJTとOFF-JTを紹介しましたが、OJTとOFF-JTはどちらかに絞る必要はありません。自社の管理職の現状や課題に応じて、必要な方法を選択することが大切です。
一例として、実務はOJTで学び、管理職に必要な知識やマインドは企業内研修・スクール型研修で学ぶ、そして管理職研修の予習や反復学習はeラーニングで行うなど、複数の研修手法を組み合わることも効果的です。
【管理職研修の一例】
- 実務をOJTで学ぶ
- 管理職に必要な知識やマインドは企業内研修やスクール型研修で学ぶ
- 予習・反復学習をeラーニングで行う
研修方法はあくまでも手段に過ぎないため、自社の管理職の課題を解消できるかどうかに重きを置いて、適切な方法を検討してみてください。
中小企業の管理職研修が 抱える課題と解決策
ここからは、中小企業の管理職研修が抱える課題と具体的な解決策をご紹介します。
どのような課題を抱えやすいのか理解しておくと事前に対策ができるため、チェックしてみてください。
5-1.管理職としての自覚を促す必要がある
中小企業の場合は突然管理職になり、管理職としての自覚が足りないケースが見受けられます。管理職として何をすればいいのか理解しておらず、企業が求める管理職としての役割をなかなか遂行できません。
また、中小企業の場合は、管理職とプレーヤーを両立しているケースも少なくありません。その場合はプレーヤーとして結果を残せても管理職の業務まで手が回らず、管理職として物足りなさを感じることがあります。
5-1-1.【解決策】役割認識を行う
管理職としての自覚が足りない場合は、管理職の役割を認識できていないことが多いです。管理職の役割認識ができていないとどのような行動をすればいいのか判断できないため、まずは管理職の役割認識を促すことが大切です。
管理職の役割認識をするときには、下記の6つの問いを活用してみましょう。管理職一人ひとりが下記の問いに対して明確な答えを持っているか確認してみてください。
管理職の役割認識を促す6つの問い | |
---|---|
我々はどこに向かうのか?なぜそこに向かう必要があるのか? | 現状を踏まえて適切な目標とゴールを設定し、なぜそのように設定したかを自分の言葉で説明する |
メンバー特性に合わせたアプローチで納得感・共感を生むことができているか? | メンバーの特性(知識・経験・格など)に合わせたコミュニケーションを実施し、当事者意識を持った行動をサポートする |
我々はどの道を歩み、立ちはだかる難所をどうやって超えるのか? | 目標からゴールに向かうシナリオをボトルネックや難所を踏まえて明確にイメージする |
考えるきっかけを作り、さらなる自主性を生むような働きかけができているか? | メンバーが難所にぶつかった際に、すぐに答えを与えるのではなく、自ら課題に気づくためのヒントを出し深く考えるきっかけを作る |
メンバーを信頼し、任せることができているか? | メンバーの特性・スキルに応じた権限を与え、業務を遂行する経験を積ませる |
現在地を正しく伝え、適切なフォローとフィードバックをすることができているか? | メンバーの良い点と悪い点をバランスよく伝え、気付きとやる気を与える |
例えば「メンバーを信頼し、任せることができているか?」という問いに対して、メンバーの特性やスキルを適切に把握できていないことが分かったとしましょう。管理職の役割を認識できたことで、メンバーのことを知るための対話の機会をつくるなどの行動変容が起こります。
このように、管理職の自覚が足りない場合は、管理職の役割を明確にし、出来ていることと出来てないことが分かるようにしましょう。
5-2.管理職を育成する風土がない
中小企業の場合は管理職を育成をする風土がなく、管理職を育てるものだと考えていないこともあります。一昔前までは管理職は経営陣の背中を見て学ぶものだと考えられている時代もありました。
しかし「2.中小企業こそ管理職研修が必要な理由」でも触れたように世の中の変化が著しく先行きが予測しにくい時代となり、経営陣の背中を見ているだけでは知識やスキルの習得が間に合わないのが現状です。そこで、初めて管理職の育成が課題となり、どのように取り組むべきか悩むケースが見受けられます。
5-2-1.【解決策】管理職の育成に経営陣がコミットする
中小企業の管理職研修は、経営陣が積極的に関与することから始めましょう。管理職は勝手に育つのではなく、自社のビジョンや課題に応じて管理職を育てる意識が大切です。
「6.中小企業の管理職研修を行う手順」で詳しく解説しますが、経営陣が積極的に関与し、
- 管理職の育成課題の設定
- 研修のコンセプト設計
- 育成カリキュラムの選定
などを行い、管理職を育成する風土を構築していくことが求められます。
5-3.人材育成をする時間がない
中小企業では、人材育成をする時間の確保が課題となる場合があります。「実務が忙し過ぎる」「管理職がプレーヤーを兼ねているため取り組む時間がない」など、管理職の育成に使える時間がないと耳にします。
管理職研修に取り組む時間が創出できないと研修が進められないため、管理職研修はしたいと思っていてもなかなか実現しないケースも見受けられます。
5-3-1.【解決策】研修の重要性を認識し意図的に時間を創出する
管理職の育成は短時間で成果が出るものではなく、長期的な取り組みが必要です。
後延ばしにすればするほど課題が蓄積されていき、管理職のスキルが著しく低下したと感じる頃には巻き返すために相当の時間を要します。そのため、管理職は重要度の高い取り組みだと認識し、意図的に時間を創出することが欠かせません。
- 管理職の業務量を減らす
- 毎月研修の日を設ける
- 外部の研修会社と協力しながら研修しなければならない状態を作る
など、研修ができる状態を作ることが大切です。管理職研修が始まれば、意外にも業務と研修の両立ができるようになります。まずは、管理職研修を実施する一歩を踏み出すことが大切です。
5-4.研修の学びを実務での行動に繋げることが難しい
経営の基本や企業のビジョンを学習し理解はしたものの、実務での具体的な行動に繋がらないといった課題を抱えることがあります。
- 部下には習得した知識やビジョンを伝えるだけに留まっている
- テストやレポートにより知識が習得できていることが分かるものの知識の活用が出来ていない
- 短期間で詰め込む研修を設計したため、知識はあるものの行動できない
など、習得した知識を活用して行動するまでに至らないケースも見受けられます。
5-4-1.【解決策】アウトプットできる研修を行う
習得した知識を使えるようにするには、下記の4つのサイクルを回す必要があります。
知識を習得した状態でストップすると行動や考え方の改善まで到達しないので、知識をアウトプットする機会が必要です。アウトプットの方法は学んでいる内容により大きく異なりますが、一例として下記のような方法を検討できます。
- ロールプレイングをする
- インプットした知識を踏まえて、実際にディスカッションをする
- 受講者同士でグループワークをして、業務への活用方法を考える
例えば、知識をインプットした後にグループワークを実施して業務への活用方法を考えると、具体的な行動が理解できるようになります。管理職研修では実際に行動できるところまで念頭に置いたカリキュラムを設計できるといいでしょう。
中小企業の管理職研修を行う手順
中小企業の管理職研修は、下記の7つのステップで進めます。
段階 | 手順 | 概要 |
---|---|---|
研修前 | ①自社の戦略を理解する | 自社を取り巻く環境(外部環境)や、自社の戦略の方向性(内部環境)を明確にする |
②自社の管理職の現状を理解する | ・自社の管理職のスキルや強みなどの現状を明確にする ・現状が分からない場合はスキルチェックやアセスメントテストを実施する | |
③管理職のあるべき人物像を定義する | ・自社の管理職像としてふさわしい「あるべき人物像」を定義する ・行動・スキルや知識・マインドの3層構造で要件定義をする | |
④あるべき人物像と現状を比較して課題を明確にする | 管理職のあるべき人物像と現在の管理職を比較して、不足している行動やスキル・マインドを明確にする | |
⑤研修のコンセプトやカリキュラムを設計する | ・④で明確になった課題を解決できるような研修を検討する ・このときに全ての課題を1度の研修で解消しようとせず、場合によっては中長期の時間軸で研修のコンセプト(対象範囲やテーマ)を決めてカリキュラムを設計する | |
研修中 | ⑥研修を実施する | ・管理職を対象に研修を実施する ・研修受講を管理職に一任せず、周囲がサポートを行い管理職が前向きに取り組みやすい環境を作る |
研修後 | ⑦効果測定を実施する | ・研修を実施したらアンケートや効果測定をして、研修の成果を可視化する ・再度アセスメントテスト・スキルチェックを実施したりアンケートを取得したりする |
人材育成の進め方のステップは下記の記事で詳しく解説していますので、参考にしてみてください。
当社コラム:実践的な人材育成の進め方 7つのステップと成功のポイントを解説
管理職研修は研修前の準備と研修中、研修後の3段階に分かれますが、研修の良し悪しを左右するのは研修前の研修体系の構築です。自社の現状を正しく分析し課題を特定できないと、的を得たコンセプトを策定できません。
例えば、自社の管理職には人材育成の意識・スキルが低いという潜在的な課題があるにも関わらず、それらを把握しないままカリキュラムを設計すると、不足しているスキルを補うことができません。
グロービスでは中小企業の管理職研修を行ううえで欠かせない研修体系構築の支援を行っています。「あるべき人材像」を定義したうえで、現状との差分を埋める施策としてコンセプト設計から伴走し、皆様の会社の課題解決を全力でサポートいたします。
グロービスの中小企業の 管理職研修の具体的な支援事例
ここでは、グロービスが携わった中小企業の管理職研修の具体的な事例をご紹介します。どのような研修カリキュラムを検討できるのか参考になると思いますので、是非チェックしてみてください。
7-1.部長を対象とした管理職研修
【研修実施企業の情報】
業界:製造業
従業員数:350名
対象層:部長
この企業ではビジネスの転換期を迎え、これまでの延長線上では前提に捉われないイノベーションを創出することは難しいと考えていました。そこで、少数精鋭の選抜研修として、次期幹部候補育成に踏み切りました。スクール型研修への参加を軸に、関係者全員が約1年間の研修にコミットいただきました。
- アウトプットの機会の創出
- プロジェクトへの参画
など、個人特性にあわせた育成手法を設計し、着実に行動へとつながる研修にこだわりました。
必要な心構えやスキルを段階的に育成することで、経営課題の捉え方・組織の中での役割定義などに大きな変化が見られました。研修を実務へとつなげた好事例だと言えるでしょう。
7-2.人材育成プログラムの作成
【研修実施企業の情報】
業界:ITインフラ
従業員数:200名
対象層:部長以下全社員
この企業ではグループの方針転換により、人材要件を見直し全社的に研修体系を整備することになりました。下記のように、管理職である部長から新入社員まで一貫した研修体系を構築しました。
ポイントは、導入初年度から全階層が受講するのではなく、現場の要である課長層から研修をスタートしたことです。その結果、課長からメンバーに対して研修への動機付けができました。
また、全員が「クリティカル・シンキング」を受講することで共通言語が醸成され、社内会議の生産性が高まったとのことです。研修を検討するときは各階層で何を学ぶか線引きをして、段階的にスキルを習得することもできます。
あらかじめ研修の全体像を設計し、スムーズに管理職研修を実施できるようにした好事例です。
▶グロービスの研修サービス資料:ダウンロードはこちら
中小企業の管理職研修を 成功に導くポイント
最後に、中小企業の管理職研修を成功に導くポイントをご紹介します。
ちょっとしたコツを意識するだけで成功に近づけるので、ぜひ参考にしてみてください。
8-1.長期的な視点で取り組む
管理職研修は、1日や2日取り組んだところで成果が出るものではありません。5-4.理想的な行動がなかなかできない」でも触れたように、知識を習得し行動できるようになるにはインプットだけでなく、アウトプットの機会が必要です。
短期間の研修ではインプットはできてもアウトプットまでは到達できず、管理職の行動変容が起きないと悩むケースがあります。とくに忙しい中小企業の管理職は「研修に使う日数を増やせない」などの理由で、詰め込み式で研修をしてしまう傾向があります。
管理職の行動変容につながる管理職研修をするには一定期間がかかることを理解し、長期的な視点で取り組むようにしましょう。時間の創出が難しい場合は1ヶ月に1~2日の研修を継続して行い、知識の習得だけでなく知識が使えるところまで取り組むことが大切です。
8-2.研修内容は定期的に見直す
中小企業の管理職研修の内容は、定期的に見直すようにしましょう。管理職研修を進めるとあらかじめ策定したプログラムと現状に差が生じる可能性があります。
例えば、管理職のリーダーシップ力を身につけるカリキュラムを実施していたとします。当初はリーダーシップ力の不足が大きな課題だと思っていたものの、研修を進めると課題設定力や、外部・内部環境の分析力も不足していることが分かりました。
この場合には、リーダーシップ力を身につけた後の研修内容を見直し、課題を解消できるように工夫する必要があります。このように、管理職研修を進めることで見えてくる現状や課題があります。その都度方向を修正しながら、成果を最大化できるプログラムを実施することが大切です。
8-3.研修で学んだことを生かせるようにフォローアップ体制を整える
管理職研修で学んだことを実務で生かすには、フォローアップ体制を整えることが大切です。フォローアップ時には下記の3つの壁があるので、あらかじめ認識し対策を取ることが大切です。
フォローアップ体制を整えるときの壁 | |
---|---|
①振り返りができない | 目標設定が曖昧だと研修の成果の振り返りができない →個人の目標を行動レベルで設定し、振り返りができるようにする |
②実践したが上手くいかない | 実践したものの上手くいかないと感じてしまうと継続して取り組めない →研修後1ヶ月後を目安に、フォローをして不安や疑問を払拭する |
③周囲の協力がない | 管理職自身は変わろうと思っても周囲の協力がなく変われない →周囲とビジョンを共有して協力してもらう工夫をする |
フォローアップ体制を整えるときの壁
①振り返りができない | 目標設定が曖昧だと研修の成果の振り返りができない →個人の目標を行動レベルで設定し、振り返りができるようにする |
②実践したが上手くいかない | 実践したものの上手くいかないと感じてしまうと継続して取り組めない →研修後1ヶ月後を目安に、フォローをして不安や疑問を払拭する |
③周囲の協力がない | 管理職自身は変わろうと思っても周囲の協力がなく変われない →周囲とビジョンを共有して協力してもらう工夫をする |
例えば、研修で学んだことを実践したものの、思ったように実践できなかったとつまずくことがあります。このままにしていると行動変容が進まないため、研修1ヶ月後を目安にフォローを実施します。そこで、不安なことや上手にできなかったことを共有し解決策を共に考えることで、壁を乗り越えられるようになります。
中小企業の管理職研修は実施後のフォローアップが重要なので、研修の実施で満足せず、その後の管理職の行動変容もサポートしましょう。
中小企業の管理職研修は グロービスにお任せください
グロービスは、豊富な経験やノウハウを活用し中小企業の管理職研修をサポートしています。ご好評いただいている大きな理由として、次の3つがあります。
①実践を意識したサービスのクオリティ
グロービスが提供する「グロービス・エグゼクティブ・スクール」「グロービス・マネジメント・スクール」は、実際の企業事例を題材に受講者同士のディスカッション中心にクラスを運営しています。プログラム終了後に受講者アンケートを行い、5段階評価で4以上の講師だけが登壇するシステムとなっており、高い品質の学びを提供しています。
②最適な学習方法やテーマを選べる多様なバリエーション
グロービスでは幅広い課題に対応できるように、豊富なコンテンツをご用意しています。個人学習に最適なものから、企業内外のビジネスパーソンと一緒に学ぶものまで多様な学習方法から選択できます。
③育成担当者の負担を軽減する仕組み
中小企業さまの状況を伺ったうえで、研修体系や具体的な研修プログラムをご案内しています。また、グロービスでは育成担当者様の負担を軽減する仕組みを整えているので、効率的な研修運営が可能です。
グロービスでは中小企業の管理職研修の企画から運営までをサポートし、経営課題解決を全力でお手伝いします。中小企業の管理職研修を検討中の方は、是非お気軽にお問い合わせください。
まとめ
いかがでしたか。中小企業における管理職研修の必要性や具体的な方法が理解でき、管理職研修の企画・実施を進められるのではないでしょうか。
最後に、この記事の内容を振り返ってみましょう。
〇中小企業の管理職研修は、管理職としての知識やスキルを身につける研修のこと。
中小企業こそ管理職研修が必要な理由は下記の3つです。
- 管理職の成長が企業の成果創出に直結しやすいから
- 管理職が人材育成を出来るようになるから
- 管理職の役割認識には研修が効果的だから
〇中小企業の管理職研修は自社の課題に応じた研修を設計することが大切。
管理職研修の主な方法は次の2つです。
- OJT:職務現場で業務を通して学ぶ
- OFF-JT:通常の業務や職場から離れて行う育成全般(外部のビジネススクールやeラーニングなど)
〇中小企業の管理職研修が抱えやすい課題は下記のとおりです。
- 管理職としての自覚を促す必要がある
- 管理職を育成する風土がない
- 人材育成をする時間がない
- 研修の学びを、実務での行動に繋げることが難しい
〇中小企業の管理職研修の手順は下記のとおりです。
- 自社の戦略を理解する
- 自社の管理職の現状を理解する
- 管理職のあるべき人物像を定義する
- あるべき人物像と現状を比較して課題を明確にする
- 研修のコンセプトやカリキュラムを設計する
- 研修を実施する
- 効果測定を実施する
〇中小企業の管理職研修を成功に導くポイントは次の3つです。
- 長期的な視点で取り組む
- 研修内容は定期的に見直す
- 研修で学んだことが生かせるようにフォローアップ体制を整える
中小企業が成長し続けるためには、企業の顔である管理職のスキル向上が欠かせません。
グロービスでは、中小企業の管理職研修の設計から運営まで支援させていただきます。中小企業の管理職研修を検討されている場合やお悩みを抱えている場合には、是非お気軽にお問い合わせください。
※文中の所属・役職名は原稿作成当時のものです。