コラム
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女性管理職が少ない理由は?増やすメリットや企業がとるべき対策を解説

会議で主体的に発言し、チームをリードする女性管理職の姿

日本では、管理職に占める女性の割合は依然として低い水準にとどまっています。この背景には、個人の意欲や能力の問題よりもむしろ、管理職像に対する固定観念や育成機会の偏り、制度運用や組織風土といった企業側の構造的な課題があります。

「女性管理職を増やしたいが、候補となる社員が昇進をためらってしまう」
「どのような育成ステップを描けば良いのか正解が見えない」
と悩む人材育成担当者の方も多いのではないでしょうか。
また、女性管理職または候補者自身も
「管理職になると家庭との両立ができないのでは」
「自分にリーダーが務まるのだろうか」
という不安を抱えながら、日々の業務に向き合っているのが実情です。

本記事では、女性管理職が少ない理由や女性管理職が企業にもたらすメリット、女性管理職を育成するために企業が取り組むべき具体策を解説します。

女性管理職の課題を単発の施策で解決するのではなく、「自社の課題に応じた育成や制度設計で打破する視点」を得たい人事・人材開発担当者様はぜひ参考にしてみてください。

1.日本での女性管理職の割合は?

日本における女性管理職の割合は、役職が上がるにつれて段階的に低下していきます。厚生労働省の「令和6年度 雇用均等基本調査」によると、
・部長相当職に占める女性の割合は8.7%
・課長相当職は12.3%
・係長相当職でも21.1%
にとどまっています。実際の数値からは、管理職層の中でも上位ポストであるほど女性の登用が進んでいない状況と言えそうです。

また、内閣府のデータでは、管理的職業従事者全体に占める女性の割合は13.2%です。諸外国ではおおむね30%以上で、40%を超える国も見られる一方、日本は相対的にも低い水準にあります。

女性の管理的職業従事者
日本13.2
フランス34.2%
スウェーデン40.2%
ノルウェー34.5%
アメリカ41.1%
イギリス36.8%
ドイツ29.4%
オーストラリア37.8%
シンガポール38.9%
韓国15.7%
フィリピン50.5%
マレーシア23.3%

参考:厚生労働省「令和6年度雇用均等基本調査 企業調査(結果概要)」
参考:内閣府男女共同参画局「1-18図 諸外国の就業者及び管理的職業従事者に占める女性の割合」

こうした現状を受け男女共同参画の分野では、2020年までに指導的地位に占める女性の割合を30%程度まで引き上げる「202030目標」が掲げられていました。しかし、目標期限を過ぎた現在も達成にはいたっていません。数値目標と実態との間に依然として大きな隔たりがあることは、個別の対応だけでは解消しにくい構造的な要因が存在することを示唆しています。

現在は、こうした偏りを是正するための枠組みとして、ポジティブ・アクションの推進や関係機関への働きかけが行われています。女性管理職の割合は単なる統計値ではなく、組織運営や意思決定のあり方を映し出す指標の一つです。まずは現状を正確に把握することが、検討のための前提となります。

人材育成担当者にとって重要なのは、単に「比率」という結果を見るだけでなく、自社の「どのポスト」で、あるいは「どのキャリアステージ」で女性のパイプラインが途切れているのかを特定することです。例えば、係長から課長への昇進で大きく数字が下がるのであれば、そこには「役割変化への不安」や「育児と管理職業務の両立の壁」が潜んでいる可能性があります。このボトルネックを正確に捉えることが、実効性のある育成計画を立てるための第一歩です。

2.女性管理職が少ない理由は?

日本で女性管理職が増えにくい背景には、個人の意欲や能力だけでは説明できない複数の要因があります。管理職に対する固定的なイメージ、成長機会の偏り、組織風土や制度と実態のずれなどが重なり、昇進のハードルが高まっていることも少なくありません。ここでは、組織構造として共通しやすい理由を整理します。

<女性管理職が少ない理由>

2-1.管理職像の固定観念が障壁になっている

「管理職は激務で自己犠牲が求められる役割」という旧来のイメージが根強く、女性管理職候補が昇進を前向きに捉えることを困難にしています。「自分は管理職に向いていない」「負担が大きすぎるのではないか」といった思い込みが、昇進への心理的な抵抗につながるのです。

また、管理職として求められる役割や評価の基準が十分に共有されていない場合、責任や業務量の増加といった側面ばかりが強調されやすくなります。その結果、成果を発揮して組織を動かす醍醐味よりも、失敗時のリスクやプライベートの喪失ばかりが意識され、昇進を「自分には関係のない、避けるべき選択肢」として遠ざけてしまうことにつながります。

2-2.経験・成長機会の偏りが生じやすい

管理職に必要な挑戦的な業務や意思決定に関わる経験が、女性社員に十分に行き渡っていない傾向も見られます。業務アサインの過程で、女性本人の意向を確認しないまま判断が行われ、結果として重要な経験が割り当てられにくくなる構造が存在しているのです。

例えば、「育児との両立は大変だろう」といった善意の配慮により、本人の希望とは無関係に機会が見送られるケースもあります。こうした判断の積み重ねが、将来リーダーとして活躍するために必要な経験の差を生んでしまいます。その結果、いざ昇進の話が出たときに、本人の中に「まだ準備が足りない」「経験がないから難しい」という不安を抱かせる要因となるのです。可能性を広げるためには、本人の意向を尊重し、挑戦的な役割を任せることが大切です。

2-3.ロールモデル不足でキャリアが描きにくい

身近に女性管理職が少ない職場では、ロールモデル不足ゆえに管理職になった自分の姿を具体的にイメージしにくい、というのも理由の一つです。管理職像が限られたタイプに固定されている場合、自身の価値観や強みと重ならず、昇進を目指すことに違和感を覚えることがあるでしょう。

また、一部の「24時間戦えるスーパーウーマン」的な成功事例だけが強調されている場合も注意が必要です。女性社員が「あの人のようには自分を犠牲にできない」「特別な人しか管理職になれない」と感じてしまい、かえって理想と現実の距離が開いてしまうケースがあります。自分らしく周囲を巻き込む多様なリーダーのあり方が示されていないことが、挑戦への意欲を削ぐ要因となります。

2-4.組織風土・人事制度が旧来型である

人事制度や評価基準が従来の管理職像や働き方を前提に設計されている場合、昨今導入が進んでいる多様な働き方とうまく噛み合わないことがあります。また、制度として柔軟な働き方を認めていても、運用実態が伴わなければ、育成や昇進と結びつかず形骸化してしまうでしょう。

具体的には、制度上は時短勤務が可能でも、評価基準が「労働時間の長さ」や「緊急対応への即応性」に置かれたままであれば、成果を出していても昇進対象から外れるといった実態が生じます。このように「制度はあるが、利用するとキャリアに不利になる」という空気が職場に残っている場合、昇進後の持続的な働き方を現実的にイメージできなくなり、登用は一向に進みません。

2-5.家庭・育児との両立負担が女性に偏りやすい

家庭や育児、さらには高齢化社会に伴う介護の負担が女性に偏りやすい日本の社会構造も、女性が管理職への挑戦をためらう要因のひとつです。厚生労働省の「令和6年度 雇用均等基本調査」によると、育児休業取得率が女性は86.6%であるのに対し、男性は40.5%にとどまっています。

さらに介護については、育児以上に「いつまで続くか分からない」「急な対応が求められる」という不確実性が高く、責任ある立場に就くことへの強い心理的ブレーキとなります。なぜなら仕事の責任が増える一方で、家庭でも予期せぬ事態が続く状態では、「周囲に迷惑をかけてしまう」という心理的負担が増大するからです。こうした不安を取り除くためには、チーム全体で業務を共有し、お互いに支え合える体制を整えることが欠かせません。

参考:厚生労働省:「令和6年度 雇用均等基本調査」結果

3.企業が女性管理職を増やすメリット

企業が女性管理職を増やす意義は、単に多様性を確保することにとどまりません。意思決定の精度や組織文化のあり方、採用力、企業としての信頼性など、経営のさまざまな側面にプラスの影響を及ぼします。

また、女性管理職の登用は、社会的要請への対応であると同時に、変化の大きい環境下で競争力を維持・強化するための経営判断としても位置づけられます。ここでは、企業経営の観点から、女性管理職を増やすメリットを整理します。

<企業が女性管理職を増やすメリット>

3-1.多様な視点による意思決定の質向上

女性管理職が増えることで、意思決定の場に多様な価値観や経験がもち込まれやすくなります。これまで参加者が特定の属性やキャリアをもつ人材に偏りがちだった議論の場に異なる視点が加わることで、判断の前提条件や選択肢が広がり、意思決定の精度そのものが高まりやすくなります。

また、異なる視点が交わることで、これまで見落とされがちだったリスクや課題に気づきやすくなる点も重要です。問題発見の早期化や、複数の選択肢を比較したうえでの判断が行いやすくなり、結果として意思決定の偏りを防ぎやすくなります。

グローバルな観点から見ても「ジェンダー多様性」と「企業業績」の関連性が指摘されており、経営レベルで多様性を確保することは単なる価値観の問題ではなく、企業の競争力を支える要素として位置づけられています。実際に、マッキンゼー・アンド・カンパニーの調査(『Diversity wins: How inclusion matters』(2020年)等)では、経営陣のジェンダー多様性が高い企業ほど、収益性が高い傾向にあるという結果も示されています。これは、多様な意見を前提とする意思決定プロセスが定着することで、同質的な判断に陥りにくくなり、環境変化への対応力も高まりやすくなるためです。

3-2.顧客ニーズの理解向上と新市場開拓

女性管理職が意思決定に関わることで、顧客ニーズの解像度がより高まります。特定の属性や前提に偏らず、多様な視点から顧客や市場を見つめ直すことが可能になるため、事業判断の妥当性が高まりやすくなるでしょう。

特に、顧客の価値観や行動が多様化している現代においては、一面的な顧客像に基づく判断では限界があります。異なる視点が加わることで、顧客体験の設計や価値提案のあり方を多角的に検討できるようになり、商品企画やマーケティングにとどまらない幅広い領域において意思決定の質が向上します。

多様な前提を踏まえた意思決定が可能になることで、これまで見過ごされていたニーズや課題に気づきやすくなることは大きなメリットです。結果として、既存市場の深掘りに加えて、新たな市場や顧客層への展開といった成長機会を捉えやすくなると考えられます。

3-3.採用力の向上と優秀人材の確保

女性活躍が進んでいる企業は、求職者から「多様な人材が活躍できる環境が整っている組織」として認識されやすくなります。働き方やキャリア形成の選択肢が豊富に用意されていると受け止められることで、採用活動においても前向きな評価を得やすくなり、応募者の母集団の質・量の両面で他社に対して優位に立ちやすくなります。人材獲得競争が激化する中では、こうした点は明確な差別化要因です。

近年の採用市場では、企業のDEI(Diversity, Equity & Inclusion)*に対する姿勢が応募先を選ぶ際の判断材料として意識されることが増えています。特に若い世代を中心に、自分自身の考え方と企業文化や価値観との一致を重視する傾向が見られ、女性管理職の登用状況は、企業の姿勢を外部に示す分かりやすい指標の一つとされています。

女性管理職の登用が進む企業は「安心して長期的に働ける組織」としての信頼を得やすくなり、ブランド価値が高まることで優秀な人材を惹きつけられるようになるでしょう。

*DEIとは、多様な人材(Diversity)を一律に扱うのではなく、それぞれの状況に応じて公正に支援し(Equity)、組織の一員として能力を発揮できる状態(Inclusion)を実現する考え方のことです。

※関連コラム:企業成長に不可欠な「DEI」推進のメリットと好事例・取り組む内容

3-4.心理的安全性の醸成と組織文化の改善

多様な人材が管理職に登用されることで、リーダーのあり方が一様ではなくなり、「管理職はこうあるべき」という暗黙の同調圧力が弱まっていきます。その結果、異なる意見や価値観が受け入れられやすくなり、発言や提案に対する心理的なハードルが下がります。

心理的安全性が高まった環境では、メンバーが本音やアイデアを発信しやすくなるでしょう。意見の違いや仮説段階の提案が否定されにくくなることで、課題の早期発見や試行錯誤の回数が増え、結果としてチーム全体の生産性や成果につながりやすくなります。

また、管理職の多様化そのものが、「意見を出しても良い」「違いは尊重される」というメッセージを組織全体に示す役割を果たします。こうした変化の積み重ねが、短期的な成果だけでなく、長期的な組織文化の改善にも寄与していきます。

※関連コラム:心理的安全性の高い職場に必要な4つの要素と高める4ステップ

3-5.法制度・ESGへの対応と企業価値の向上

女性管理職比率は、近年、法制度やESG評価の観点からも重要な指標として注目されています。特に上場企業を中心に、ダイバーシティに関する取り組みが評価項目として扱われる場面が増えている流れで、女性管理職比率は企業の姿勢を示す代表的な指標の一つになっています。

こうした動向を踏まえると、女性管理職の登用は単なる人事施策に留まらず、企業経営を考えるうえでの重要な前提の一つとして位置づけられます。投資家や取引先、求職者といったステークホルダーは、数値そのものだけでなく、その背景にある組織の意思決定や持続性を見ています。女性管理職の登用を進めることは、企業への信頼を高め、長期的な企業価値の向上や持続的成長を支える基盤となります。

参考:日本取引所グループ「上場会社の取組み支援」

4.女性管理職の課題に対して企業が取るべき対策

女性管理職を増やすには個人の意思や努力だけに委ねるのではなく、
・評価・昇進の仕組み
・家庭と仕事の両立支援制度の運用
・人材育成
・マネジメント層の意識改革
といった、組織側の設計を見直すことが欠かせません。
これらが整っていない場合昇進を避ける選択が生まれやすくなり、女性管理職の登用が進まないだけでなく、せっかく登用しても定着や活躍につながりにくくなります。

ここでは、女性管理職の登用と定着を安定的に進めるために、企業として取り組むべき主な対策を整理します。

<女性管理職の課題に対して企業が取るべき対策>

4-1.公平な評価・昇進プロセスの整備

女性管理職を安定的に増やすには、成果や役割に基づいた評価・昇進プロセスを明確に設計することが欠かせません。評価基準が曖昧な場合、判断が個々の経験や価値観に委ねられやすくなり、無意識の先入観が入り込む余地が生じます。これを避けるため、職務内容や期待される役割を言語化し、それに基づいて評価する枠組みを整えることが重要です。

こうした評価制度の整備は、DEIの考え方を実務に落とし込むうえでも重要な前提となります。性別や雇用形態といった属性ではなく、担っている役割や成果に基づいて評価される仕組みがあってこそ、多様な人材が能力を発揮しやすい企業と言えます。評価者研修やモニタリングを通じて、運用のばらつきを抑えることも欠かせません。

また、男女雇用機会均等法では、採用・配置・昇進・教育訓練における性差別の禁止が明確に示されています。法令に沿ったガイドラインを踏まえ、主観的な評価を排除することで、昇進に対する納得感が高まり、管理職への挑戦を前向きに検討しやすい環境が整っていきます。

4-2.両立支援制度の拡充と運用

育児休業や短時間勤務、柔軟な勤務形態といった家庭と仕事の両立支援制度は、多様な人材が管理職を目指し続けられる環境の基盤となります。

ただし、制度を整備すること自体が目的化し、実際の女性管理職や管理職候補が「利用すると昇進や評価に不利になるのではないか」という不安を抱いたままでは、両立支援制度は形骸化してしまいます。だからこそ企業には、制度を利用しても不利が生じないことを明示し、本人が安心して活用できる運用を行うことが求められます。

現場で起きやすい心理的・構造的障壁人事・人材育成担当者が打つべき具体策管理職への働きかけ(意識変革のポイント)
「制度を使うと、重要な仕事から外されるのでは?」というキャリアへの不安  昇進・評価基準を「時間」から「成果・役割」へ明確にシフトし、明文化する「配慮」を「機会の剥奪」にしない。本人の意向を直接確認するコミュニケーションを徹底させる
「時短で管理職なんて、周囲に迷惑をかける」という申し訳なさ・心理的負い目チーム全体の業務の可視化とシェアを推進。特定の個人に依存しない体制を構築する「長時間労働=責任感」という古い評価軸を捨て、時間あたりの生産性を評価する文化をつくる
「結局、育児・介護は女性がやるもの」という職場や家庭内の固定観念男性の育休や介護休業取得を促進し、全社的な当たり前をつくる両立支援を「女性専用の福利厚生」ではなく、「組織のレジリエンス(適応力)強化」と再定義する

両立支援制度は、特定の社員への配慮ではなく、組織が変化に対応し続けるためのマネジメント設計の一部です。そのため、マネジメント層が制度の趣旨や運用ルールを理解し、現場で説明できる状態にあるかどうかが、制度定着の成否を左右します。

また、育児・介護休業法では、育児休業の取得や短時間勤務制度の整備が義務化されており、制度利用を理由とした不利益な取り扱いは禁止されています。また、制度があっても利用しづらい雰囲気や牽制的な言動があれば、ハラスメント防止措置義務違反に問われる可能性があります。

両立支援制度を実効性のあるものにするには、制度の有無だけでなく、現場でどのように運用されているかを継続的に確認することが欠かせません。現場では、制度そのものよりも「使われ方」や「受け止められ方」が課題になるケースが多く見られます。

4-3.女性リーダー育成プログラムの導入

女性管理職を安定的に増やすためには、単発の研修に留まらず、自社の育成課題に合った女性リーダー育成プログラムを体系的に設計することが不可欠です。個別の研修プログラムを単に組み合わせるのではなく、以下の3つの柱で、受講者が段階的に「自信」を深められる設計にすることが成功のカギとなります。

①マインドセット:心理的障壁の払拭と「志」の醸成
まずは、女性管理職候補の「自分には管理職は無理だろう」という思い込みを解きほぐすことが重要です。ロールモデルとの対話や自身の価値観の棚卸しを通じ、「完璧なリーダーでなくて良い」とリーダー像を刷新し「自分なりの強みを活かしたリーダー像」を言語化してもらいます。これにより、昇進を「負担」ではなく「自己実現のチャンス」と捉え直すきっかけをつくります。

②スキル・経験:実践的な武器の付与と成功体験
次に、経営視点や戦略思考、論理思考(クリティカル・シンキング)など、管理職として意思決定を支える「マネジメントの原理原則」を学びます。知識を習得するだけでなく、タフなアサインメント(難易度の高い業務経験)とセットにすることで、「自分の判断で成果が出せた」という確かな手応えを積み重ねていきます。

③女性管理職同士のつながり:孤立を防ぐネットワーク構築
最後に忘れてはならないのは、社内外の女性リーダー同士のコミュニティ形成を支援することです。悩みを共有し、高め合える「横のつながり」や、キャリアを後押ししてくれるスポンサーとの接点をつくることで、昇進後も孤立せず、継続的に活躍できるセーフティネットを整備します。

このように、育成の全体像を描いたうえで取り組むことで、一過性の研修で終わらず、実際の登用や定着につながりやすくなります。

4-4.既存管理職層の無意識バイアスの解消

評価や配置、昇進に関しては、性別に対する無意識の先入観を解消しましょう。既存管理職の中に発生しうる「無意識のバイアス」は、本人に悪意がなくても「育児中だから負担が大きいだろう」といった善意の配慮として現れ、結果的に特定の人材から成長や挑戦の機会を奪ってしまう要因になり得るからです。

このようなバイアスを避けるためには、「既存の管理職層」を対象とした研修プログラムや対話の機会を通じて、自身の判断の前提や思考の癖を点検させる取り組みが重要です。組織の課題に応じて管理職の意識改革を進めることで、女性管理職の登用を阻む見えにくい壁を取り除いていくことが可能になります。

無意識バイアスへの対応では、単なる注意喚起に留まらず、
・管理職としてどのような役割を担うのか
・どのような基準で人材を評価・登用するのか
という判断軸を整理することも求められます。判断基準を共有することで、個々の感覚に依存しない運用が可能になり、登用判断と育成施策の一貫性も高まります。また、人事担当者と管理職が連携し、ジェンダー平等を意識した行動を継続的に選択できる体制を整えることも、バイアスの影響を抑える基盤となるでしょう。

4-5.女性管理職へ昇格前後のフォローの実施

女性管理職の定着を図るうえでは、昇格前後のフォロー体制を整えることが欠かせません。従来のメンター制度に加え、近年は、昇進を後押しする「スポンサーシップ」の導入が注目されています。メンターとスポンサーの違いは下記です。
・メンター
主に女性管理職(候補)の相談役として機能する
・スポンサー
意思決定の場での推薦や機会提供を通じて、昇格や役割拡張を具体的に支援する存在
スポンサーの支援があることで、昇格に伴う心理的な負担や不安を軽減しやすくなります。

また、着任後の孤立を防ぐ視点も重要です。新たな役割を任された直後は、周囲が配慮するあまり距離を取り、結果として支援が手薄になるケースも見られます。そこで、定期的な対話の機会や横のネットワークづくりを通じて管理職としての悩みや課題を共有できる環境を整えることで、早期のつまずきを防ぐことにつながります。

昇格前後を一つの通過点として捉え継続的な支援を行うことで、女性管理職が役割に適応し、力を発揮し続けやすくなります。こうしたフォロー体制は個人への配慮に留まらず、管理職層の定着と組織全体の成果を支える基盤として中長期的に機能していくでしょう。

 5.女性管理職研修の成功事例

女性管理職の育成においては、制度や方針を整えるだけでなく、実際にどのような育成施策が成果につながっているのかを具体的に知ることが重要です。

ここでは女性管理職候補の育成から、管理職・幹部層としての成長までを支援してきた企業の取り組みを紹介します。各社の事例を通じて、育成設計のポイントや学びを実務に結びつける工夫を見ていきましょう。

5-1.相鉄ホールディングス株式会社様

相鉄ホールディングス株式会社様

相鉄ホールディングス株式会社様には、女性管理職候補の育成を目的として、女性リーダー育成プログラム(WLP)をご活用いただいています。受講者は、経営やマネジメントを体系的に学ぶ機会が少ない中で、顧客や社内関係者との議論に踏み込めないことや、身近にロールモデルとなる女性管理職が少ないことに課題を感じていました。

プログラムではリーダーシップや経営の考え方を学ぶと同時に、他社・他業界の参加者との対話を通じて、自身の価値観やキャリアを見つめ直す機会を提供。特に「リーダーは全てを一人で抱え込む必要はない」という気づきが、自分なりのリーダー像を描くきっかけとなりました。

その結果部下への仕事の任せ方や関わり方に変化が生まれ、メンバーの主体性を引き出すマネジメントへと転換。完璧を求める姿勢からチームで成果を出す意識へと変化している点が、受講後の具体的な実践として確認されています。

インタビュー全文:「リーダーとはこうあるべき」という思い込みから脱却し、自分らしいリーダー像を目指して変化の激しい時代を歩む

5-2.株式会社みずほ銀行様

株式会社みずほ銀行様

株式会社みずほ銀行様では、人事部主導で女性リーダー育成プログラム(WLP)を導入し、グループ横断で女性管理職候補の育成に取り組まれています。受講者の中には、キャリアの幅が広い一方で「自分はどのようなリーダーになれるのか」という不安を抱えているケースもありました。

プログラムでは講師の実体験に基づくクラスに加え、少人数でのディスカッションや異業種の受講者との交流を通じて、多様なリーダー像に触れる設計を採用しています。オンライン形式であっても対話を重視することで、実践に結びつく学びが得られる構成としています。

受講後は後輩への業務委譲やコミュニケーションの取り方に変化が見られ、社内外合わせて240名規模のプロジェクトにおいても、関係者を巻き込みながらチームで成果を出すマネジメントを実践するなどの実務への接続が進んでいます。

インタビュー全文:ユニークな経歴をもつ自分ならではのリーダー像を発見。強みを生かし、社内外のメンバー240名が参加するプロジェクトで「女性リーダー育成プログラム」の学びを実践

5-3.日東電工株式会社様(Nitto)

日東電工株式会社様(Nitto)

日東電工株式会社様では、女性管理職が幹部・経営層としての役割を担う段階において、より高い視座と意思決定力を養うため、エグゼクティブ・マネジメント・プログラム(EMP)をご活用いただいています。

本事例となっているのは、グループ会社の代表取締役や海外拠点でマネジメントを担ってきた女性リーダーです。管理職としての経験を積む一方で、経営者として求められる判断領域の広さや、確信をもった意思決定に課題を感じていました。

EMPの受講を通じて、経営スキルに加え、経営者としての「思い」や社会全体の視点で物事を捉える重要性を学習。結果として、中長期の時間軸で意思決定を行い、仕事の意義や会社の方向性を言葉でメンバーに伝えるマネジメントへと変化しています。

インタビュー全文:経営者としての「思い」を日々の問題解決や社会課題に紐づけて メンバーに語れるように。 EMPで学んだリーダーシップを生かし、海外拠点のマネジメントにも向き合う

 6.まとめ

女性管理職を増やすためには個人の意欲や努力に委ねるのではなく、制度設計や運用、育成、マネジメントを一体で整えることが重要です。例えば、評価・昇進プロセスの基準を明確にし、判断のばらつきや無意識の先入観が入り込まない仕組みを構築する必要があります。また、家庭と仕事の両立支援制度についても、単に整備するだけでなく、不利益が生じない運用や利用しやすい職場環境づくりが欠かせません。

さらに、女性リーダー育成は単発の研修で終わらせず、「マインド・スキル・環境」の3軸で体系的にプログラムを設計し、昇格前後のフォローまで含めて定着につなげる視点が求められます。こうした取り組みを積み重ねることで、多様な人材が力を発揮しやすくなり、人的資本を活かした組織づくりと企業の持続的な成長につながっていきます。

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