株式会社大創産業
トップダウンから脱却し、自律自考のできる次世代リーダー集団の育成
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社長交代を機に「2030年までに事業規模をさらに拡大させる」という大きな目標を掲げ、管理職層への理念浸透と経営スキル向上の取り組みを行っている株式会社大創産業様。「だんぜん!ブートキャンプ」(以下、ブートキャンプ)と名付けられた本研修について、お話を伺いました。(部署・役職はインタビュー当時)
【株式会社大創産業様】
写真右:人事・総務本部 人事部 部長 大川 伸広様
【グロービス担当コンサルタント】
写真左:小林 美沙
- 導入前の課題
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- 事業規模拡大という目標のために、意識変革が必要だった
- 目標達成のための課題解決を組織で前進させることへの手ごたえをつかむこと
- 研修内容
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- 6回の講座の中で他社事例をもとに経営を考えるサイクルを繰り返した
- 「クリティカル・シンキング」の講座で仮説を立てること、検証することの重要性を学んだ
- 成果・効果
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- 社内の共通言語ができたことで、議論がしやすくなった
- 理念を通して業務を捉える意識が芽生え、組織共通の判断軸ができてきた
背景と課題
壮大な経営目標が掲げられたものの、何をすればよいのかが見えていなかった
当社は創業以来、先代社長の強いリーダーシップのおかげで、今の事業規模にまで成長してきました。転機は2018年。先代社長の交代をきっかけに、その後の経営を第二創業期と位置づけ、2030年までに事業規模を2倍にするという目標が掲げられました。
今の事業規模を2倍にするには、さすがに現社長ひとりの力では難しい。これからは社員全員でがんばらねば、という意識変革が必要です。しかし当時の我々には、壮大な経営目標が掲げられたものの、どのように2倍にするのか、見えていませんでした。
皆が心のどこかで「経営は自分とは関係ないもの」と思っていたのかもしれません。今まで経営について学んだことがありませんでしたし、無理もないことです。
そのような折、社長発案で、グロービスと幹部研修を実施することになりました。人事部長に就任したばかりだった私も、参加したことを覚えています。
幹部研修では、たとえば書籍を読みながら経営とは何か、リーダーの役割とは何かを言語化する。このような営みを通じて、経営理念を戦略につなげる考え方を学びました。入社20年以上にして初めて、「自分が何のために働いているのか」を考える機会をもらえたこともあり、衝撃的な場でした。
これらの学びを他の管理職にも経験してもらい、皆で戦略を作り上げ実行していける会社にしたいと、強く思ったのです。
研修ゴールは「経営目標の腹落ち」と「課題解決の手ごたえをつかむこと」
ブートキャンプのゴールは、「2030年までに事業規模を2倍にする」という目標の腹落ちと、目標達成のための課題解決を組織で前進させることへの手ごたえをつかむこと、と定めました。
選抜人数は50人。部長職に加え、課長職も対象としました。2030年になれば、今の課長職から幹部クラスが生まれます。経営目標の10年後を見据えて、研修の対象層を決めました。
検討プロセスと実施内容
研修を受ける機会が少なかったが、研修で個人のスキルが上がると、モチベーションも上げられるのだと実感できた
受講者の皆さんに、研修の場を受け入れてもらえるだろうか、という不安はありました。なにせOJT中心でやってきた会社ですので、今まで社内で研修を受ける機会が少なかったのです。
ブートキャンプ受講者からは研修前に「どんなことをやるんですか?」とも聞かれました。警戒されたわけではなく、想像がつかなかったのでしょう。
質問をしてくれた社員には、ズバッと「2030年に事業規模を2倍にするための研修だ」「経営のことをみんなで考えよう」とだけ答えました。受講者も私も不安を抱えていたように思います。
ところが研修が始まってみると、会社の理念に共感し、熱意を持って経営を考えようとする受講者ばかりでした。私の懸念は杞憂だったようです。
他には、ケースを使った学習にも不安がありました。グロービス経営大学院で使われているケースを使う、と聞くと、なんだか難しそうな印象を持ったことを覚えています。
受講者は今まで基礎的な経営スキルを学んでいなかったこともあり、課題や議論がきちんとできるだろうか、良い学びを得てくれるだろうか、と。
こちらの不安も、杞憂でした。受講者各自の努力や、小林さん(グロービス担当コンサルタント)のきめ細やかなカスタマイズ対応もあり、想像以上に良い学びの場となりました。
今まで、このような場を提供していなかっただけだったんですよね。私の研修への考え方が大きく変わりました。 研修は社員に負荷をかけることになるので、あまりやらないほうがいいと思っていたのですが、実は全く逆でした。
私の想像以上に皆さん学ぶことに前向きですし、研修で個人のスキルが上がると、モチベーションも上げられるのだと実感しています。
「GLOBIS 学び放題」も全社導入後、皆が3時間以上学習しています。みんなやらないのではないかと心配していたのですが、良い意味で裏切られました(笑)。
経営理念の深い理解と、経営理念と経営戦略の融合が必要だった
ゴールの達成に向けて、経営理念の深い理解と、経営理念と経営戦略の融合が必要でした。社長交代の際に、社是・企業理念を策定したのですが、思うように社員には浸透していなかったのです。
企業理念と経営戦略をつなげることの重要性は、幹部研修の際に学びました。この学びを幹部だけでなく、全社に対して波及させようとなったのです。
またメンバー50人の選抜には、多くの時間をかけました。将来の経営を担うだろう人材を、ポテンシャルによって選抜することは、思っていたより大変でしたね。
部署長の推薦がありながら、入れてあげられなかったメンバーもいますので、学びの場は継続的に用意しようと思っています。
成果と今後の展望
縦(役職間)と横(部門間)を超えたつながりができ、共通言語ができたことで、議論がしやすくなった
ブートキャンプの半分を終えた現在、共通言語の価値を感じています。共通の課題を共通の言語で議論できることで、会社全体のモチベーションが上がっているのです。ブートキャンプで縦(役職間)と横(部門間)を超えたつながりもできたので、縦横の議論がしやすくなりました。
ブートキャンプ受講者の発案で、1on1をはじめとした現場での理念浸透も始まりました。きっかけは、社長が部長層との1on1を始めたことです。
私たちも「社長が真っ先にやっているのに、やらないわけにはいかない」と思って行動し始めました。理念を通して仕事をするスタイルに、部長層が変わってきたのです。
当時の懸念点は、若手社員に理念の話をしたら嫌がられるのでは、ということ。しかし、意外にも若手ほど理念に共感してくれています。
もちろん理念だけでメシは食えませんが、理念を通して業務を捉える意識が芽生えてきました。組織共通の判断軸ができつつあります。
思考の共通言語も浸透し始めました。ブートキャンプに入る前に「クリティカル・シンキング」のセッションを入れた結果、部長から事あるごとに「仮説を立てる」「検証する」という言葉が出て、部下がそれを聞いて、そのまた部下も……という良い連鎖ができています。
またブートキャンプでは、「自律自考の多数精鋭集団になる」というコンセプトを掲げています。自ら率先して考える集団になる、ということです。
ブートキャンプの課題に取り組む受講者の様子を見ると、まさに今、自律自考の真っ最中ですね。皆、苦しそうですが楽しそうです。
自律自考するには経験だけではなく、理念への共感やスキルが必要です。受講者1人ひとりが「知識がないとだめなんだ」と痛感しているようです。
自律自考の達成には、小林さんのご協力も不可欠です。小林さんは、受講者や社内の状態を気にかけながら、プログラムが走っている最中でも柔軟にチューニングしてくれます。まさに”伴走”ですよね。
私自身、人事部長になってまだ1年なので、分からないことだらけです。でも、小林さんが壁打ちしてくれて、言語化しているうちに理解が進み、ブートキャンプの改善にも着手できています。
人材育成以外の悩みごとも相談すると、小林さんは当社全体を良くしようと惜しみなくアドバイスをくださるのです。本当に感謝しています。
PDCAを回す意識が仕事の意義を見出すことにつながり、若手の離職率低下に効果があった
社内の大きな変化は、若手社員の離職率。今までは若手の離職率が高いのが悩みでしたが、去年と今年、新入社員が1人も辞めていません。店舗配属前に研修を行い、スキルやマインドを培った状態で店舗へ勤務することで、レジ打ちや品出しといった業務にも意味を見出せているのだと思います。
もちろん、レジ打ちや品出しは大切な業務です。しかし現場でPDCAを回す意識を持たねば、単純作業になってしまう。結果、「私、この会社にいても何も得られないな」と仕事の意義を感じられなくなってしまうでしょう。
去年から教育体系を見直し、若手が経営理念や論理思考を学んでいます。現場の仕事では仮説検証が大事だと研修で話をすると、社員の目の色がとたんに変わります。仕事の意味合いを感じられるのだと思います。
社員が自分たちのキャリアを考える機会も作りました。個人の目標と会社の目標をつなげることが、双方の成長につながるという考えに、会社全体が変わってきています。
今後の取り組み
国内4万人のスタッフにも理念を浸透していきたい
今後は社員600人だけでなく、国内3,000の店舗にいる4万人のスタッフにも理念を浸透していきたいと考えています。
当社は、店舗スタッフの力が大きい会社です。人数比を考えると、圧倒的多数の店舗スタッフの皆さんに共感してもらえないと、会社は大きく動きません。
最終的には、海外の店舗スタッフまで理念を浸透させたいですね。当社の理念には「世界中の人々に」というキーワードがあるので、海外スタッフも共感してくれると思います。
海外展開という意味では、まず海外駐在メンバーもブートキャンプに参加してもらっています。今までは日本は日本、海外は海外という垣根がありましたが、垣根を越えて理念を共有し、共に経営を考えています。
また今年から、TQC(Total Quality Control)活動が始まりました。ブートキャンプ受講者が立ち上げた、PDCAの基礎となる活動です。
当社はトップダウンの会社だったので、仮説検証をしてPDCAを回すことは、実は一番苦手なことです。それでもこの1年で、少しずつ風向きは変わってきました。仮説思考という基礎に社員の意識が向いてきたのは大きな変化です。
TQC活動では、店舗の坪売りを最大化するというテーマで、現場で仮説を立てて改善する動きが出てきました。先日の発表会では、社長が珍しく絶賛していましたね。「社長も褒めるんだ」と驚いてしまいました(笑)。
一連の取り組みを進める中で、これまで甘えがあったとも気づかされました。本当に今まで、先代社長のリーダーシップのおかげで順調に成長してきたのだとつくづく思います。第二創業期であるこれから、全員で「自律・自考」しながら経営していくことがとても楽しみです。
担当コンサルタントの声
小林:
本プロジェクトは、大創産業様の経営課題に真正面から向き合う取り組みです。組織風土を含めた大きな変革ですから、社内や受講者の状況を踏まえつつ、伴走しながら慎重に進めてきた点が特徴的です。
たとえば「今の組織の状態はどうですか」「皆さんのモチベーション、下がってないですか」「いま社内でどんなメッセージが流れていますか」など、大川様との認識合わせを入念に行ってきました。本プロジェクトの成功要因の1つは、「知の重要性」の腹落ちだと考えています。自分達には知らないことが多い、もっと勉強しないといけない、勉強して成長すれば可能性が拓ける、と感じていただけたことが、良い成果を生み出したのかなと思います。
大創産業の皆さまには、とても前向きな姿勢で学習に取り組んでいただけており、学習の習慣・リズムができています。結果、「第二の創業を自分達が盛り立てていきたい」というリーダー陣の熱意が生まれ、組織のムードも前向きになっているのでしょう。ブートキャンプを通じて、大創産業様に変化の兆しが起きていることをお聴きし、大変嬉しく思います。今後も人事部の皆さまと議論を重ね、壮大な目標にまい進する大創産業様の取り組みを、引き続きサポートしていければと考えています。
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