新任管理職研修とは? 2つの目的とカリキュラム例・実施ステップ
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「新任管理職研修とはどのような研修? 何の目的で取り組むの?」
「新任管理職研修は実施したほうがいい? 実施のメリットや実施方法が知りたい」
新任管理職の就任前後に実施する「新任管理職研修」。
聞いたことがあるものの「目的や実施するメリットが分からない」「どのような研修をするべきなのか迷う」という方も多いでしょう。
新任管理職研修とは、新任管理職が管理職として期待される役割を理解し、組織運営に必要な知識や、期待役割を果たすために必要なスキル・マインドを身につけるための研修です。
新任管理職に欠かせない管理職としての心構えや自社の管理職に必要なスキルは、日常業務の中で自然と身に付くものではありません。
そのため、管理職になるタイミングで管理職に必要なスキルやマインドを習得し、一般職から管理職への役割移行を促すことが必要です。
新任管理職研修には、いち早く自社の管理職として活躍できるようになるなどのメリットがあります。
新任管理職に少しでも早くスキルを身につけて欲しい場合や、自社の管理職に物足りなさを感じている場合に、特におすすめの研修です。
そこでこの記事では、新任管理職研修の目的や実施するメリット、実施するステップなど新任管理職研修を実施するうえで知っておきたいポイントをまとめて解説していきます。
特に、新任管理職研修の目的や研修内容例は分かりやすくまとめているので、何を目的とした研修なのか、どんな内容なのかをすぐに理解できます。
この記事を読むとわかること
- 新任管理職研修の概要や目的が分かる
- 新任管理職研修の研修内容例が分かる
- 新任管理職研修を実施するメリットとデメリットが分かる
- 新任管理職研修が向いている企業が分かる
- 新任管理職研修を実施する手順が分かる
- 新任管理職研修の落とし穴と対策が分かる
- 新任管理職研修を実施する際の成功のポイントが分かる
この記事を最後まで読んでいただければ、新任管理職研修とはどのような研修なのか理解でき、自社で実施できるようになります。
これから活躍する管理職を育てる第一歩として、ぜひ参考にしてみてください。
1.新任管理職研修とは
新任管理職研修 | |
---|---|
概要 | 新任管理職が管理職の役割を認識して必要な知識やスキルを身につける研修 |
目的 | ・組織運営に必要な一般的な知識の習得 ・企業が管理職に期待する役割を果たすためのスキル・知識の習得 |
対象者 | 管理職に就任する社員・管理職に就任して日が浅い社員 |
ポイント | ・管理職と一般職は求められる役割が異なるため管理職に就任する前後にスキルを身につける必要がある ・カリキュラムは自社の戦略や課題に応じて異なる |
新任管理職研修とは、管理職に就任する社員・就任して日が浅い社員を対象に実施する研修です。
研修内容は企業の戦略や課題によって大きく異なりますが、例として、下記のように管理職に必要な基礎知識や自社の管理職に期待する役割を果たすためのスキルの習得が挙げられます。
【新任管理職研修で学ぶ内容の例】
・管理職としての役割認識をする(一般職と管理職との違いを理解する)
・自社の管理職の規則やルールを理解する(仕事内容や社内規定など)
・部下をマネジメントするスキルを身につける(コミュニケーション力やリーダーシップ力など)
・組織運営に必要な基礎知識を身につける(労務管理や人事評価など)
・管理職としてのマインドを身につける(管理職の考え方や視座など)
管理職と一般職では、求められる役割や業務内容が大きく変わります。
しかし、日常業務の中では「管理職にはどのような役割があるのか」「管理職にはどのような知識が必要なのか」理解する機会がありません。
そのため、管理職に就任してもどうしたらいいのか分からないと役割移行に不安を感じる社員が多いのも事実です。
そこで、新任管理職向けに研修を実施して、管理職の役割や自社の管理職に必要な基礎知識を学びます。
新任管理職は研修を通じて管理職の役割や基礎知識を身につけられるので不安を払拭でき、管理職として自信を持てるようになるのです。
このように、新任管理職研修は一般職から管理職へと意識を変えて、少しでも早く自社の管理職として活躍するために必要な研修です。
【新任管理職の対象者は企業により異なる】
新任管理職研修の対象者は、企業により異なります。
新任の課長と部長をまとめて「新任管理職研修」とすることもあれば、課長と部長を分けて「新任課長研修」「新任部長研修」として実施することも可能です。
対象者の人数やコスト、対象者の課題を踏まえたうえで、一定の基準を設けて実施するといいでしょう。
1-1.管理職研修との違い
新任管理職研修を検討するときに「管理職研修との違い」が気になる方もいるかと思います。
新任管理職研修と管理職研修の主な違いは「対象者」と「目的」です。
項目 | 新任管理職研修 | 管理職研修 |
---|---|---|
対象者 | ・管理職に就任する社員 ・管理職に就任して日が浅い社員 | 管理職全員 ※企業により課長層・部長層など分けることがある |
主な目的 | 一般職から管理職への役割移行と、管理職の基礎知識を身につけることが中心 | 自社の管理職に求められる知識やスキルの習得が中心 ・方針(ビジョン・戦略)の理解 ・部下育成 ・エンゲージメントの向上 ・メンバーのキャリア・学習支援など |
新任管理職研修は管理職に就任する前後の社員が対象ですが、管理職研修は管理職全員が対象です。
また、新任管理職研修は管理職に就任するための役割認識や管理職に必要な基礎知識を身につけることが中心ですが、管理職研修では自社の管理職の課題解決や求められるスキルの習得が中心です。
※管理職研修で養うスキルについてご関心のある方は、以下のコラムもご参照ください。
▶関連コラム:自社の管理職(部長・課長)に必要な11個のスキルと習得方法
2. 新任管理職研修の2つの目的・研修内容例
新任管理職研修の必要性を理解するために、ここでは新任管理職研修の2つの目的をご紹介します。
具体的な研修内容の例も踏まえてまとめているので、新任管理職研修の内容をイメージするためにも参考にしてみてください。
新任管理職研修の目的 | 概要 |
---|---|
組織を円滑に運営するための知識を習得する | 組織運営に必要な基礎知識の習得 ・社内規定 ・労務管理 ・人事評価など |
管理職に期待する役割を果たすためのスキル・マインドを習得する | 企業が求める管理職像になるためのスキル・マインドの習得 ・リーダーシップ力 ・論理思考力 ・コミュニケーション力など |
2-1.組織を円滑に運営するための知識を習得する
1つ目は、組織を円滑に運営するための知識を習得するためです。
管理職になると一般職とは異なり一定の決裁権が与えられて、部署や組織を運営する側に立ちます。
立場が変わると、求められる知識も変わります。
そこで、新任管理職研修を通じて、組織運営に必要な基礎知識を習得することが求められます。
【組織を円滑に運営するための基礎知識(例)】
・社内規定(企業独自のルール)に関する知識
・労務管理(勤怠管理や就業規則など)に関する知識
・人事評価(評価方法や基準など)に関する知識
・メンタルヘルスケア(対策方法や取り組み方など)に関する知識 など
管理職には労務や人事、メンタルヘルスなど組織運営に関わる業務の基礎知識が求められます。
例えば、労務管理が分からないと、部下の残業時間が多いときの対処法などが分かりません。
また、人事評価を理解できていないと、部下をどのような視点で評価すればいいのか分からず、不公平感のある評価になる可能性があります。
とは言え、労務管理や人事評価など組織運営に関する知識は一般業務内では学ばないため、管理職に就任するタイミングで研修を実施して身につける必要があるのです。
【組織を円滑に運営する知識はリスク回避になる】
組織を円滑に運営する知識をできるだけ早く身につけておくと、起こりうるリスクを未然に防げます。
例えば、部下のメンタルヘルスケアができる視点を持っていれば、部下の異変にいち早く気付き迅速な対応ができます。
一方で、メンタルヘルスケアの知識がないと部下の異変に気付きにくく、対応が遅れてしまう可能性があるでしょう。
組織運営側として適切な知識を身につけることは、リスクマネジメントの一環にもなります。
2-2.管理職に期待する役割を果たすためのスキル・マインドを習得する
2つ目は、管理職に期待する役割を果たすためのスキル・マインドを習得するためです。
「組織を円滑に運営する知識」が全管理職に必要な基礎知識であるのに対して、「管理職に期待する役割を果たすためのスキル・マインド」は、企業が求める管理職像を果たすためのものです。
つまり、企業により管理職に求める役割は異なるため、習得すべきスキルやマインドは各社で異なるのです。
一例として、管理職に期待する役割を「成果創出」と「部下育成」と置く場合は、下記のようなスキル・マインドの習得を検討するとよいでしょう。
習得するべきスキル・マインド | 具体的な研修内容 |
---|---|
目標設定・計画策定力 全体最適の視点で、組織が目指すべき方向・具体的戦略を描く | ・事業環境、事業構造を理解する・組織が目指すべき方向を設定する ・目標達成に向けた具体的戦略を描き、組織に説明 ・浸透させる |
意思決定力 ここぞという局面で冷静な判断をし、責任を果たす | ・ここぞという局面で矢面に立ち、自らが意思決定するというマインドを身に着ける ・意思決定するときの判断軸を養う |
リーダーシップ 目標に向かって牽引する力や指導力をつける | ・リーダーシップの理論を体系的に学ぶ ・対象者が目指すべきリーダー像を明確にする ・部下との対話演習などを行う ・納得・共感を生む伝え方を学ぶ ・グループでの実践演習で傾聴や対話スキルを身につける |
コミュニケーション力 部下や上層部と円滑にコミュニケーションを取り、相手を動かすことができる | ・事例から、先人たちの意思決定までの思考プロセスを学び、自身に置き換えて考える ・相手を的確に理解する重要性を学ぶ |
成果を創出するには、目標設定・計画策定力や意思決定力、多角的な視点から考える論理思考力(クリティカルシンキングの力)などが必要です。
また、部下を育成するには、チームを牽引するためのリーダーシップやコミュニケーション力なども求められるでしょう。
このように、自社が求める管理職像に必要なスキルを身につけることも、新任管理職研修の目的の1つです。
3. 新任管理職研修を実施する
3つのメリット
新任管理職研修の概要が理解できたところで、ここからは新任管理職研修を実施するメリットをご紹介します。
企業が新任管理職研修を実施すると、早い段階で役割変化を認識できるなどのメリットがあります。是非参考にしてみてください。
3-1.管理職の役割を理解し適切にふるまえる
新任管理職研修は、管理職に就任する前後の段階で管理職の役割を理解でき適切な振る舞いができるところが最大のメリットです。
「1.新任管理職研修とは」でも触れましたが、管理職と一般社員では求められる役割が大きく異なります。
一般社員 | ・プレーヤーとして成果を出す ・上司や管理職の指示に従って業務を遂行する |
管理職 | ・組織運営や部下育成に携わる ・一定の権限を持ち組織内で意思決定を行い、結果責任を負う |
とは言え、管理職に就任したからといって、すぐに自身の役割を認識して行動を変えられる新任管理職は少ないものです。
- 管理職に就任したものの何から始めればいいのか分からない
- 管理職にはどのようなスキルが求められるのかよく分からない
というのが新任管理職の本音でしょう。
そこで新任管理職研修を実施して、管理職に求められる役割をいち早く伝えることが重要なのです。
例えば、社員とは異なり組織全体を俯瞰する高い視座が必要だと認識できれば「一般社員と管理職は違う」「このままではいけない」と思うきっかけになるでしょう。
一般社員から管理職に変わったときに、役割が変化したと教えてくれる場は日常業務では少ないものです。
だからこそ新任管理職研修を実施して早い段階で役割変化に気付き、行動を変えていくことが大切です。
【新任管理職研修は新任管理職に求める役割・スキルを定義する機会になる】
新任管理職研修は、企業にとって新任管理職に求める役割やスキルを定義する機会にもなります。 新任管理職研修を企画する過程で、求める役割やスキルを明確にしなければならないためです。 「自社らしい新任管理職が定まっていない」「新任管理職に求める役割が不明確で指導しにくい」という場合でも、新任管理職研修をすることが定義するきっかけとなり、人材育成しやすい状況を作れます。
3-2.自社の管理職としていち早く活躍できる
新任管理職研修を実施すると、自社の管理職としていち早く活躍できます。
管理職に必要なスキルは、短期間で身につくものではありません。
特に管理職としての視座や思考力、リーダーシップ力を身につけ自社の管理職らしい活躍をするには、一定の時間を要するでしょう。
そのため、少しでも早く管理職に必要な知識やスキル、行動を身につけたほうが、管理職として活躍できる期間が長くなります。
また、管理職研修に就任する前やしたばかりの時期は「本当に管理職として活躍できるのか」「管理職になるのはプレッシャーだ」など、不安や抵抗感をおぼえる管理職もいます。
新任管理職研修においては、同じ立場の社員と意見交換しながら切磋琢磨できるので、不安やプレッシャーを解消できる機会にもなるでしょう。
このように、新任管理職研修は、管理職に就任したばかりの不安を取り除きながら、いち早く自社の管理職として活躍するために重要な研修だといえます。
3-3.組織全体の底上げにつながる
新任管理職研修は、結果的に組織全体の底上げに繋がります。管理職には、組織の行動や習慣を作る役割があるからです。
例えば、部長の行動や習慣は課長、そして組織のメンバーへと伝わっていき、最終的に組織全体の風土や習慣となっていきます。
「管理職が変わると組織が変わる」と言われますが、まさに管理職の行動や言動が組織全体のレベルや価値観を形作っていくのです。
そこで、新任管理職研修を実施して、新任管理職がいち早く自社の管理職に相応しい視座や行動ができるようになれば、組織全体が模範となる習慣や行動をベースに動けるようになります。
結果として、組織全体の底上げにつながり自社の戦略を達成しやすくなるでしょう。
4. 新任管理職研修を実施する
デメリット・注意点
新任管理職研修のメリットと併せて、知っておきたいのがデメリットです。
新任管理職研修のデメリットとして下記の2点が考えられます。
デメリット | 解消するヒント |
---|---|
コストがかかる | 自社で実施している研修全体のコストを鑑み、調整をする |
管理職研修と差別化しにくい | 「7.新任管理職研修のカリキュラムは企業により異なる!自社に合う研修を企画する5つのステップ」を参考に、新任管理職の課題と自社の戦略に合う研修をする |
新任管理職研修は、管理職研修と差別化しにくいという声があります。
確かに、新任管理職研修も管理職研修の括りではありますが、新任管理職と管理職は対象者や保有スキル、課題が異なります。
新任管理職に求めるスキル・行動を明確にする手順については、このあとの「7.新任管理職研修のカリキュラムは企業により異なる!自社に合う研修を企画する5つのステップ」で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。新任管理職に求めるスキルや行動を明確にできれば、管理職研修と差別化ができるでしょう。
また、新任管理職研修には、どうしてもコストがかかります。
企業が実施している研修全体のコストを見ながら、優先度を加味して調整すると検討しやすくなるでしょう。
5. 新任管理職研修が
向いているケース
ここまで、新任管理職研修の具体的な内容やメリット、デメリットを紹介してきました。
新任管理職研修とはどのような研修なのか、イメージが持てたかと思います。
新任管理職研修は基本的にどのような企業も実施するべきですが、その中でも特に向いている企業は下記のケースです。
新任管理職研修が向いている企業 | |
---|---|
新任管理職に少しでも早く活躍してほしい場合 | ・半年後には一人前の管理職を目指すなど、できるだけ早く管理職として活躍して欲しい |
自社らしい管理職を育成したい場合 | ・管理職の基礎的なスキルだけでなく、自社の管理職として必要なスキルを身につけて欲しい |
対象者 | ・現在の管理職に物足りなさや課題を感じている ・現在の管理職の育成方法では自社の目指す管理職のレベルに到達するのが難しいと感じている |
新任管理職に少しでも早く活躍して欲しい場合は、新任管理職研修を実施していち早く役割を認識して、必要なスキルを身につけることがおすすめです。
自社らしい管理職を育成したい場合も、新任管理職研修から始めるといいでしょう。
管理職の業務に慣れながら少しずつ自社の管理職らしくなっていけば問題ないという考え方もありますが、変化の激しい時代においては想定外の出来事も数多く発生し、期待通りの成長スピードに至らない原因にもなります。
また、現在の管理職に課題や物足りなさを感じる場合にも、新任管理職研修を実施することで課題を払拭できる可能性があります。
このように「自社の管理職に課題がある」「いち早く管理職として活躍して欲しい」という場合には、新任管理職研修を実施してみてください。
次の章では、新任管理職研修の具体的な方法をご紹介します。
6. 新任管理職研修の2つの方法
新任管理職研修を実施する主な方法には「内部研修」と「外部委託」があります。
ここでは、新任管理職研修を企画するときに知っておきたい内部研修と外部委託のメリットとデメリット、向いているケースをご紹介します。
項目 | 内部研修 | 外部委託 |
---|---|---|
概要 | 自社内で企画・運営する研修 | 外部の委託会社を利用する研修 |
代表的な研修方法 | ・OJT ・企業内研修(企業内で企画・運営) | ・企業内研修(委託先が企画・運営・もしくは講師派遣) ・外部ビジネススクールへの通学 |
メリット | ・自社の考えやビジョンを反映しやすい・実務で活用する専門的なスキルを直接教えられる ・コストを抑えられる ・スケジュールのコントロールがしやすい | ・プロの視点でプログラム設計や実施ができる ・自社にないスキルや知識を学べる ・社内の負担が少ない |
デメリット | ・自社にノウハウがない分野は対応しにくい ・社内の負担が大きい | ・コストがかかる ・開催場所やスケジュールのコントロールがしにくい |
知識・ノウハウ | ||
コスト | ||
負担 |
それでは、ひとつずつ見ていきましょう。
6-1.内部研修
内部研修 自社で企画・運営する研修 | |
---|---|
メリット | ・自社の考えやビジョンを反映しやすい ・自社の管理職や上層部から直接学べる ・コストを抑えられる ・スケジュールのコントロールがしやすい |
デメリット | ・自社にノウハウがない分野は対応しにくい ・社内の負担が大きい |
向いているケース | ・社内のルールや企業理念などを学ぶ場合 ・自社らしい管理職の行動や立ち振る舞いを学ぶ場合 |
内部研修とは、自社で企画・運営する研修です。
・自社の管理職から心構えや方針などを教えてもらう
・自社の管理職から労務管理や人事評価の手順を直接教えてもらう
など、自社の管理職から新任管理職に対し、新しい知識やスキルを教える研修が該当します。
内部研修は自社の考えやビジョンを反映しやすく、一般的な知識では補えない部分を教えられる点が大きなメリットです。
例えば、クリティカルシンキングや経営戦略等は知見のある専門家から学ぶ方が体系的な知見を得やすいですが、自社のビジョンや管理職の心構え、社内ルールなどは、社内の管理職の方が詳しいはずです。
自社らしい管理職に必要な、社内ならではの知識やスキルを習得できるのは、内部研修の強みと言えます。
一方で、内部研修は自社で企画・運営をするので、担当部署の負担が大きくなります。
また、自社にノウハウのない分野に対応することが難しいため、社内研修で実現できるカリキュラムには限界があるところはデメリットだと言えるでしょう。
【内部研修が向いているケース】
内部研修は、自社のルールや規則を学ぶ場合や自社の管理職から直接業務を学ぶ場合に向いています。
・社内のルールや企業理念などを学ぶ場合
・自社らしい管理職の行動や立ち振る舞いを学ぶ場合
例えば、管理職の1日の業務内容を教えたい場合や、自社の管理職に求める役割、ルールなどの共有を目的とする場合は、内部研修を検討すると良いでしょう。
6-2.外部委託
外部委託 外部の委託会社を利用する研修 | |
---|---|
メリット | ・プロの視点でプログラム設計や実施ができる ・自社にないスキルや知識を学べる ・社内の負担が少ない |
デメリット | ・コストがかかる ・開催場所やスケジュールのコントロールがしにくい |
向いているケース | ・新任管理職に必要な基礎知識を体系的に学ぶ場合 ・成果を重視して企画から運営までをプロに任せたい場合 |
外部委託とは、外部の委託会社を利用して実施する研修です。
・外部のビジネススクールに通い、組織運営に必要な経営知識を体系的に学ぶ
・外部講師から管理職に必要な専門的なスキルを学ぶ
・委託会社に依頼して自社に合うカリキュラム設計、運営してもらう
など、外部の講師から新任管理職に必要な知識を学ぶ方法が該当します。
外部委託の最大のメリットは、社内では教えることが難しい知識やスキルを学べることです。
「2.新任管理職研修の2つの目的・研修内容例」でも触れたように、管理職になると日常業務では学ばない組織運営の知識や、論理思考力(クリティカルシンキング)が必要となります。
このような専門性が高い分野は、社内の人材が体系的に教えることは難しいでしょう。
そこで、外部委託すれば専門的な知識のある講師から、正しい知識を分かりやすく教えてもらえます。
管理職に必要な知識を効率よく習得でき、行動変容にも繋げやすいでしょう。
一方で、外部委託はコストがかかる点がデメリットです。
他の研修とバランスを取りながら、研修に投資できる費用内で検討できると良いでしょう。
【外部委託が向いているケース】
外部委託は、自社にない知識やスキルを身につけたい場合に向いています。
・組織運営に必要な経営知識を、体系的に習得したい場合
・論理思考力(クリティカルシンキング)やリーダーシップなど専門的なスキルを学びたい場合
・新任管理職研修の企画から運営までを任せたい場合
外部委託は先ほども触れたように、社内にない知識やスキルを身につけたいときに向いています。
また社内での負担を減らすために、企画から運営までを委託会社に任せたい場合にも検討すると良いでしょう。
このように、社内研修と外部委託は、それぞれにメリット・デメリットがあります。
どちらか1つに絞る必要はなく、新任管理職の課題や研修内容に応じて使い分けることが大切です。
※外部委託研修について更に詳しく知りたい方は、以下のコラムもご覧ください。
▶関連コラム:人材育成に使える外部研修とは?内部研修との違いやメリットを解説
7. 新任管理職研修のカリキュラムは企業により異なる!
自社に合う新任管理職研修を企画する5つのステップ
新任管理職研修の実施方法が分かったところで、次はどのようなカリキュラムを実施するべきか悩むところです。
結論から言うと、新任管理職研修で実施すべきカリキュラムは企業ごとに異なるため、決まったカリキュラムというものはありません。
なぜなら、新任管理職研修は組織や人材の課題を解決するための手段だからです。
組織や人材の課題が変われば、実施するべきカリキュラムも必然的に変わります。
そのため、自社の戦略や課題に沿ったカリキュラムを実施することが重要なのです。
ここでは、自社に合う新任管理職研修を企画するためのステップを解説していくので、ぜひ参考にしてみてください。
7-1.自社を取り巻く環境の変化と、それに伴う自社戦略の変化を理解する
新任管理職研修を検討するときには、自社を取り巻く環境の変化と、それに伴う自社戦略の変化を理解するところから始めましょう。
外部環境や自社戦略の変化を理解できていないと「どのような人材を育成するべきか」という根本的な部分が研修内容とずれてしまうためです。
自社を取り巻く外部環境や自社戦略の変化を理解するときには、下記の3つの項目を確認しましょう。
確認したい項目 | 概要 |
---|---|
1)外部環境の変化 | 自社では制御できない自社を取り巻く環境変化を理解する 例:法律の改正・景気変動・顧客ニーズの変化・テクノロジーの発展、競合他社の動向など |
2)自社の経営戦略 | 自社の経営戦略を深く理解する 例:自社の強みと弱み・今後のビジョン・課題など |
3)組織戦略・組織構造 | 戦略を実行するための、自社の組織の在り方や組織課題を理解する 例:リーダーシップ力のある管理職が不足している |
外部環境の変化とは、競合他社の動向や顧客ニーズの変化などを指します。
変化の激しい時代に自社が成長し続けるには「顧客はどんな課題を抱えているのか?」「新たな技術をどのように役立てていくべきか?」など、社会のニーズを踏まえた事業活動を行うことが不可欠です。
自社の経営戦略とは、外部環境の変化と自社の強み・弱みを鑑み、今後自社がどうあるべきか、どのような事業活動を営んでいくかという指針になります。自社の強みや市場での戦い方が分かると、戦略を実行するためにどのような組織が必要なのかイメージしやすくなります。
このように、新任管理職研修を企画するときには外部環境の変化や企業の戦略を理解するところから始めましょう。
7-2.自社の新任管理職のあるべき姿を明確にする
自社の戦略や、戦略実行のために望ましい組織の在り方を理解できたら、次は自社の新任管理職のあるべき姿を明確にします。
あるべき姿を具体化するときには「行動」「知識・スキル」「マインド」の3層構造で考えることをお勧めしています。
このときに役に立つのが、あるべき姿を可視化するためのフレームワーク「氷山モデル」です。
氷山モデルでは、行動を起こすには、可視化できない知識やスキル、マインドを含めて捉えることが重要だと説いています。
新任管理職のあるべき姿を考えるときには、行動だけでなく、行動を起こすために必要な知識やスキル、マインドを含めて定義していきましょう。
氷山モデルの3項目 | チェック項目 |
---|---|
行動 | 新任管理職の期待役割を果たすためにどのような「行動」が必要か |
知識・スキル | 新任管理職が理想的な行動をするためにどのような「知識・スキル」が必要か |
マインド | 新任管理職が理想的な行動をするためにどのような「マインド」が必要か |
例えば、新任管理職に、管理職としての役割認識と組織運営への理解を求めているとしましょう。
そのときの理想的な行動や知識、スキル、マインドを具体的に定義していくと以下のようになります。
役割認識と組織運営への理解を期待役割にしている例 | |
---|---|
行動 | ・プレーヤーの行動や考え方から抜け出し、高い視座で組織の全体最適を考慮できる ・部下育成や労務管理なども管理職の仕事だと理解し、積極的に取り組める |
知識・スキル | ・リーダーシップ力 ・論理思考力(クリティカルシンキング) ・組織運営に関する知識 ・労務管理や人事評価に関する知識など |
マインド | ・経験がないことでも自律的に考えようとする姿勢 ・部下の成長を心から願い、尊重できる姿勢など |
あるべき姿を明確にするときのポイントは、できる限り具体的に定義することです。
例えば、必要な知識やスキルを定義するときに「部下育成」でとどまるのではなく、部下育成に必要なコミュニケーション力、リーダーシップ力など具体的な知識やスキルに落とし込めるといいでしょう。
7-3.あるべき姿と新任管理職のギャップを把握する
続いて、あるべき姿と新任管理職のギャップを把握します。
このギャップこそが、新任管理職研修の内容や目的を決める出発点になります。
あるべき姿と新任管理職のギャップを分析するには、新任管理職の現状を正しく理解することが重要です。
下記のように様々な視点で情報収集をして、新任管理職の現状を理解しましょう。
【新任管理職の現状を収集する方法】
・現場にヒアリングをする
・1on1などで新任管理職に課題や現状を聞く
・アセスメントや360度評価を実施する
・人事評価を参考にする
新任管理職の現状が理解できたら下記のようにあるべき姿と比較して、どのようなギャップがあるのか分析しましょう。
新任管理職の現状とあるべき姿のギャップ | |
---|---|
あるべき姿 | ・プレーヤーとしての行動や考え方から抜け出し、主体的に行動できる ・自チーム・自部署の方向性を、自社のビジネスモデル(顧客/顧客への提供価値/経営資源・プロセス)から逆算して描くことが出来る ・自社が目指したい姿を外部パートナーにも説明し、理解を得たうえで協働できる |
現状 | ・担当業務の繁忙ゆえに、管理職とプレイヤーとの違いについて考える機会はなく、その必要性にも気付いていない ・自社のビジネスモデル(顧客/顧客への提供価値/経営資源・プロセス)を構造的に理解していない ・自社が目指したい姿を外部パートナーに説明出来ず、現場での運用は外部パートナー任せとなっている |
ギャップ | ・管理職としての役割認識とその必要性に気づいていない ・根本的なビジネスモデルに対する理解が薄い ・自社が目指したい姿をステークホルダーに説明できない |
この例では新任管理職にプレーヤーからの脱却や自社のビジネスモデルの理解・目指す方向性の理解を求めているものの、まず役割認識や自社ビジョン・ビジネスモデルの理解が必要であることが分かりました。
このように、管理職としてのあるべき姿=研修の内容ではなく、現状の新任管理職とあるべき姿とのギャップから新任管理職研修で扱うべき内容を決めていきましょう。
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【無料お役立ち資料】人材育成・組織開発プログラムを企画する3ステップ
7-4.課題に優先順位をつけて研修で取り組む内容を決める
ここまで来たら、新任管理職研修で取り組む課題と内容を決めていきます。
大切なのは、新任管理職研修の実施=新任管理職研修のあるべき姿の達成、ではないことです。
新任管理職が抱える現状の課題を、たった一度の研修で解消することは難しいです。
そのため、課題に優先順位をつけて取り組み、研修を重ねながらあるべき姿に近づけていくことが重要になります。
新任管理職の課題の優先順位を決めるときには、下記の視点で絞り込むといいでしょう。
【新任管理職の課題の優先順位の決め方例】
・自社の経営戦略を実現するために早急に解決すべき課題かどうか
・経営への影響度合いが大きい課題かどうか
・これまでに育成機会のあった課題かどうか
・業務内で知識が身につく課題かどうか
優先順位は、自社の経営戦略と紐づけて検討することも重要です。
例えば、自社の経営戦略を実現するために新任管理職のリーダーシップ力が強く求められている場合は「リーダーシップ力の強化」が優先順位の高い課題になります。
その際は、リーダーシップを強化できるカリキュラムを中心に研修を企画するといいでしょう。
7-5.研修のプログラムを決める
新任管理職研修で取り組む内容が明確になったら、研修の目的やゴール、方法など詳しいプログラムを決めていきます。
新任管理職研修を検討するときに決めておきたいことは、下記のとおりです。
決めたい項目 | 概要 |
---|---|
目的 | 今回の新任管理職研修の目的を明確にする 例:管理職としての役割認識を持つ |
ゴール | 今回の新任管理職研修のゴールを決める 例:役割認識ができて、具体的な行動目標が明確になっている |
方法 | 外部委託か内部研修か等、方法を決める 例:自社の規則については内部研修で行い、リーダーとしての役割認識や行動プロセスの理解・内省は外部委託する、等 |
日数 | 新任管理職研修の日数を決める 例:5日間で実施する |
場所 | 新任管理職研修を実施する場所を決める 例:社内の会議室や外部施設など |
通達方法 | 新任管理職に通達する方法を決める 例:昇進・昇格試験時に予告する、就任時に知らせる、等 |
この中で特に大切なのは、新任管理職の目的とゴールです。
今回の新任管理職研修で学ぶ内容との関連性を考えながら、対象者に分かりやすく伝えられるように言語化しておきましょう。
また、新任管理職研修の日数や方法などは、取り組む内容により大きく異なります。 「6.新任管理職研修の2つの方法」を参考に、新任管理職研修の内容に合う方法で実施しましょう。
このように、新任管理職研修は自社の戦略や新任管理職の課題と紐づけながら、取り組む内容を決めることが重要です。
「新任管理職研修をどのように実施したらいいのか分からない」「取り組むべきカリキュラムに悩んでしまう」という場合は、ぜひグロービスにご相談ください。
8. 新任管理職研修の落とし穴と対策
新任管理職研修を実施するときには、事前に把握しておきたい落とし穴があります。
落とし穴を把握して対策を知っておけば、大きな失敗を避けられます。
ここでは、新任管理職研修の落とし穴と具体的な対策方法を解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
新任管理職研修の落とし穴 | 具体的な対策 |
---|---|
流行のカリキュラムを採用している | 自社の管理職にとって必要なスキルか見極める |
毎年同じカリキュラムを実施している | カリキュラムは定期的に見直し、適宜更新する |
他の研修との差別化ができていない | 教育体系図を作成して可視化する |
8-1.流行のカリキュラムを採用している
新任管理職研修では、流行のカリキュラムを採用して失敗するパターンがあります。
昨今のトレンドとなっているカリキュラムは下記のとおりです。
【新任管理職研修のトレンドワード】
・コーチング研修
・コンプライアンス研修
・1on1研修
・エンゲージメント研修
確かにどの研修も管理職として活躍するために必要な要素ではありますが、自社の新任管理職に今必要な要素なのか明確になっていないケースが多いです。
その結果、新任管理職研修を実施しても思ったような成果が得られず、失敗に終わることがあります。
8-1-1.対策:自社の管理職にとって必要なスキルか見極める
「7.新任管理職研修のカリキュラムは企業により異なる!自社に合う研修を企画する5つのステップ」で触れたように、新任管理職研修のカリキュラムは自社の戦略や課題に応じて設定することが重要です。
そのため、いくら社会的に注目度の高いカリキュラムであっても「自社の戦略や課題に該当するのか」「優先順位の高いカリキュラムなのか」を、立ち止まって考えましょう。
実際に新任管理職研修を企画するときに「最近指令型のマネジメントではなく、対話型マネジメントが注目されていますね。うちにもぜひ対話型マネジメントを取り入れたい」と1on1の対話力、フィードバック力を鍛えたいといったご相談も寄せられています。
「自社でやっていないから」「流行しているから」との理由で研修カリキュラムを決めると、学んだスキルを活かせず形骸化する可能性があります。
また、忙しい時間を割いて研修をしたのにも関わらず成果が出ていないと、上層部から指摘を受ける事態にもなりかねません。
新任管理職研修を企画するときには流行のカリキュラムをただ取り入れるのではなく、自社の戦略や課題に応じたカリキュラムを実践することが重要です。
8-2.毎年同じカリキュラムを実施している
企業によっては下記のような理由から、毎年同じカリキュラムの新任管理職研修を実施していることがあります。
・どの企業も新任管理職研修の内容は変わらない
・毎年新任管理職に求めるスキルや行動は変わらない
しかし、対象となる新任管理職が変われば、課題となるスキルや身につけるべきスキルが変わります。
その結果「新任管理職研修の成果が薄くなってきている」「当初のような行動変容が起きていない」など、新任管理職研修の成果を実感しにくくなる可能性があります。
8-2-1.対策:カリキュラムは定期的に見直し、適宜更新する
新任管理職研修のカリキュラムは一度作成したら終わりではなく、下記の2つの理由から定期的に見直し、適宜更新する必要があります。
1)新任管理職研修の対象者によって、課題や身につけるべきスキルが変わる 2)外部環境が変われば会社の経営戦略が変わり、組織や新任管理職に求められることも変わる
例えば、昨年の新任管理職はリーダーシップ力が不足していたけれど、今年の新任管理職は思考力の弱さのほうが課題であるなど、対象者により優先して取り組むべき課題は変わります。
また、変化の激しい時代では外部環境や経営戦略が刻々と変化していくので、その年により求められる新任管理職の姿が変わることも考えられるでしょう。
その中で、新任管理職研修のアップデートされていなければ現状と乖離があり、思うような成果を出せません。
新任管理職研修のカリキュラムは毎年見直し、現状に応じて更新し続けるようにしましょう。
8-3.他の研修との差別化ができていない
既に複数の研修を実施している場合、新任管理職研修で扱うべきカリキュラムが分からず、他の研修と差別化できていないケースがあります。
例えば、新任管理職研修の内容と課長研修の内容が重複してしまうと、受講者のモチベーション低下やスキルアップ機会の損失につながってしまうことがあるでしょう。
その結果、多くの研修に取り組んでいるものの思ったような成果が出ない課題に直面することがあります。
8-3-1.対策:教育体系図を作成して可視化する
複数の研修があり、どの研修で何をテーマにするのか曖昧な場合は、下記のような教育体系図を作成するといいでしょう。
▼教育体系図の一例(※青色部分はグロービスで提供している育成プログラム)
どのタイミングでどのようなテーマの研修をするのか分かっていれば、研修内容の重複を避けられます。
例えばリーダーシップ力を扱うにしても、全体像が分かっていれば、段階的に必要な知識を身につけられるように工夫することも可能です。
▶関連コラム:マネジメント研修を企画する際に考えるべきこと
9. 新任管理職研修を成功させるための3つのポイント
新任管理職研修のステップや注意するべきポイントが理解できたところで、最後に新任管理職研修を成功させるための3つのポイントをご紹介します。
新任管理職研修を成功させるにはどのような点に着目すればいいのかチェックしておきましょう。
9-1.ゴールを明確にして成果を測定する
1つ目は、新任管理職研修のゴールを明確にして成果を測定することです。
「7.自社に合う研修を企画する5つのステップ」に沿って研修のゴールは設定できたものの、研修後に到達できているかが分からないと次の施策が検討できません。
下記のような方法で新任管理職研修の成果を可視化するといいでしょう。
【新任管理職研修の成果を可視化する方法】
・研修前後にアセスメントを実施して比較する
・ゴールの到達度合いを確認するアンケートやテストを実施する
例えば、新任管理職研修の前後にアセスメントを実施すると、成果を比較しやすくなります。
また、ゴールの到達度合いを軸に、研修参加者に感想を聞いてみるのもいいでしょう。
一定の成果が出ていれば次はもう1段階進んだ研修を検討できますし、課題がある場合は来期の新任管理職研修に活かせます。
どのような研修でも、成果の可視化と改善を繰り返して精度を高めていくことが重要です。 研修をしたままで終わらせず、成果を測定して改善するところまでをワンセットとして取り組めるといいでしょう。
▶お役立ち資料をダウンロードする:研修効果の最大化に向けて
9-2.研修での学びが定着するようフォローする
2つ目は、研修で学んだことが定着するようフォローすることです。
新任管理職研修で学ぶ内容は管理職としての基礎となる大切なことばかりですが、誰でも研修から時間が経つと忘れてしまうものです。
研修の内容を記憶として定着させて業務で活用できる知識にするには、振り返りの学びが欠かせません。
カナダのウォータールー大学による、効率よく学習するための研究(※)では、下記のペースで復習をすると記憶の定着を促せることが示されています。
・学習後1日以内に10分間復習する
・学習後1週間以内に5分間復習する
・学習後1か月以内に2~4分間の復習する
つまり、短時間であっても継続して研修の振り返りができれば、研修内容が定着しやすくなるのです。
そのため、新任管理職研修では対象者が定期的に復習できるように、工夫をしてみるといいでしょう。
【新任管理職研修後の復習の例】
・定期的に小テストや問題集を実施する
・定期的に上司や研修対象者同士で研修を振り返る機会を設ける
※参考:Curve of Forgetting、University of Waterloo、2024年5月に内容確認
9-3.研修内容を行動に落とし込めるようにする
3つ目は、研修内容を理解するだけで終わらせず、行動に落とし込めるようにすることです。
新任管理職研修では役割変化の理解まではできるものの、行動変容には至らないという失敗が多いです。
管理職になり自分がするべきことは分かっても行動に至らなければ、組織に変化をもたらすことはできません。
新任管理職研修での学びを行動につなげるためにも、下記の2つを取り入れてみましょう。
取り入れるべき項目 | 概要 |
---|---|
行動ベースでやるべきことを理解する | 新任管理職に求める役割を行動ベースで明確にする |
アクションプランを作成する | 新任管理職がいつまでにどのような行動をしなければならないのかアクションプランを作成して実践する |
新任管理職に求める役割は、内容を教えるだけでなく行動ベースで明確にすることをお勧めします。
例えば、部下育成のためにできるだけ仕事を任せるという役割があったとしましょう。
これだけでは、部下に仕事を任せるにはどうすればいいのだろうと悩んでしまいます。
そこで、部下に仕事を任せるにはいくつか段階があり、第一段階としてまずは難易度の低い仕事を渡し、期日までに取り組めるようサポートするなど具体的な方法を示します。
こうすることで、新任管理職が自身の役割を果たすために何をすればいいのか明確になるでしょう。
また、新任管理職の役割が多い場合は「何から取り組めばいいのかわからず行動できない」といったケースもあり得ます。
このような場合はいつまでにどのような行動をするのかアクションプランを作成して、できることが着実に増えていくようサポートすることが大切です。
10. 【事例あり】新任管理職研修はグロービスにお任せください
ここまで読んでいただいた皆様は、新任管理職研修の必要性や企画方法、取り組み方について理解が深まってきたことと思います。
新任管理職研修は、それまでの一般職から管理職に役割移行し、管理職に必要な基礎知識を身につけるために欠かせない研修です。
とは言え、自社の新任管理職に合う研修をするには、自社の戦略や課題を把握して企画をするスキルが必要です。
一方で、「新任管理職の課題から適切なカリキュラムが見つけられない」「新任管理職研修は必要だけれど時間と労力をかけられない」という悩みもあるでしょう。
新任管理職研修なら、多様なプログラムをご用意している私たち「グロービス」にお任せください。
グロービスは累計6,700社(2023年時点)に、教育サービスを提供した実績があります。
下記のように、企業さまの課題やゴールに応じて研修の企画、運営をすることも可能です。
99%の受講者が有益だったと評価! 新任課長研修の事例
株式会社ふくおかフィナンシャルグループ様では、環境変化の激しい金融業界において各行員の業務が多様化している認識がありました。
特に現場を統率する課長職にはマネジメント業務に加え、自ら成果を出すプレイングマネージャーとしての役割を求められるようになったそうです。
課長にはスピーディーに判断し積極的に行動するスキルが必要になり、新任課長の育成施策をグロービスにご依頼いただきました。
新任課長研修は下記の2つをゴールに、スキルのみならずマインドの醸成も取り入れながら研修を実施しました。
・考える技術を磨く
・自ら率先して動き成果を出す役割を認識する
研修後は99%の受講者から有益な研修だったと評価していただけました。
受講者が論理思考力の重要性を認識し「論理思考力を活用することで、業務やコミュニケーションが円滑に進む」などの声もあったそうです。
今後は研修などの育成施策もさらに拡充し、より多くの行員に学ぶ機会を提供したいと考えているとのことです。
▶株式会社ふくおかフィナンシャルグループ様の事例は下記でも解説しているので、ぜひ参考にしてください。新任課長が期待役割を果たすためのスキルとマインドを身につけ、グループ全体での組織活性化を目指す
▶ふくおかフィナンシャルグループ様にご利用いただいているサービス(インタビュー当時)
・企業内研修 クリティカル・シンキング
・グロービス・マネジメント・スクール
・テーラーメイド型研修
・GLOBIS 学び放題(動画学習サービス)
また、グロービスの新任管理職研修は、研修プロジェクトを一気通貫でサポートできる体制を整えています。
企業の人事・育成ご担当者様の負担を軽減しながら、質の高い学びを実現できます。
グロービスの新任管理職研修の強み
・経営戦略や経営課題に沿った研修プログラムの提案ができる
・豊富な研修プログラムを用意している
・研修プログラムの品質保証制度がある
「新任管理職研修の企画に悩んでいる」「新任管理職研修で成果が出ない」など、新任管理職研修に課題がある場合は、お気軽にお問い合わせください。
11. まとめ
今回は、新任管理職研修の概要や実施するメリット、実施手順など、新任管理職研修に取り組むうえで知っておきたい情報をまとめて解説しました。
最後にこの記事の内容を簡単に振り返ってみましょう。
〇新任管理職研修は、新任管理職が管理職として期待される役割を理解し、必要な知識やスキルを身につける研修のこと
〇新任管理職研修の目的は次の2つ
1)組織を円滑に運営するための知識を習得する
2)管理職に期待する役割を果たすためのスキル・マインドを習得する
〇新任管理職研修を実施する3つのメリットは下記のとおり
1)管理職の役割を理解し適切にふるまえる
2)自社の管理職としていち早く活躍できる
3)組織全体の底上げにつながる
〇新任管理職研修を実施するデメリット・注意点は下記の2つ
1)研修にコストがかかる
2)管理職研修と差別化しにくい
〇新任管理職研修は基本的にはどのような企業でも実施するべきだが、特に向いているのは下記のケース
1)新任管理職に少しでも早く活躍してほしい場合
2)自社らしい管理職を育成したい場合
3)管理職に課題を感じる場合
〇新任管理職研修を企画するステップは下記のとおり
1)外部環境の変化や自社の戦略を理解する
2)自社の新任管理職のあるべき姿を明確にする
3)あるべき姿と新任管理職のギャップを把握する
4)課題に優先順位をつけて研修で取り組む内容を決める
5)研修のプログラムを決める
〇新任管理職研修を成功させるための3つのポイント
1)ゴールを明確にして成果を測定する
2)研修での学びが定着するようフォローする
3)研修内容を行動に落とし込めるようにする
私たちグロービスは、企業の新任管理職の課題に応じた実践性の高い研修・サービスを提供しています。
新任管理職のスキル向上にお悩みの際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
※文中の所属・役職名は原稿作成当時のものです。