自社の管理職(部長・課長)に必要な
11個のスキルと習得方法

タイトルイメージ

「自社の管理職に必要なスキルを明確にしてスキル不足を解消したい」
「業種や企業によって、管理職に必要なスキルは異なる?」

企業の組織運営や部下育成に携わり、企業の成長に関わる重要な役割を担う管理職。

自社の管理職のスキル不足を感じているものの「どのようなスキルが必要なのか」「どのように育成すればよいのか」を、明確にできず悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

例えば、部長層・課長層それぞれに必須となるスキルは下記のとおりです。

管理職のスキル

しかし、必ずしも上記さえ身につけていればいいわけではありません。

あなたの企業の戦略や組織風土、業種などにより、管理職に求められるスキルは異なる可能性があるからです。

そのため上述の必須スキルを押さえつつ、下記のステップに沿って自社の管理職に必要なスキルを明確化し、不足しているスキルを補うことが非常に大切です。

3つのステップ

そこで本記事では、管理職に必須のスキルと、自社の管理職にとって必要なスキルを見付けて習得する方法をご紹介します。
特に、必須のスキルは具体的な例を踏まえてまとめているので必見です。

この記事を読むとわかること
  • 部長に必須なスキルが分かる
  • 課長に必須のスキルが分かる
  • すべての管理職に共通して必須のスキルが分かる
  • 自社の管理職にとって必要なスキルを見付けるステップが分かる
  • 自社の管理職にとって必要なスキルを習得させる方法が分かる

この記事を最後までお読みいただければ、自社の管理職に必要なスキルが分かり、課題に応じたスキル習得を検討できます。

自社の成長に欠かせない管理職の活躍のために、ぜひ参考にしてみてください。

執筆者
越野 綾

学習院大学法学部法学科卒業、グロービス経営大学院修士課程(MBA)修了。大学卒業後、凸版印刷に入社。法人営業として大手化粧品メーカー・飲料メーカーを担当し、商品プロモーション施策の企画~制作・製造、BPO業務のプロデュースに携わる。
グロービス入社後、様々な業界企業の戦略実現・組織開発に資する研修体系構築支援、研修プログラムの企画~実施を担う法人営業を経て、現在はBtoBマーケティングチームに所属。webコンテンツの企画~実装、WEBサイトのストーリー・導線設計を担う。

CHAPTER
01

部長層に必須の4つのスキル

部長層に必須の4つのスキル

まずは、管理職の中でも部長層に求められるスキルをご紹介します。

部長は一般的に5~10名の課長を束ねます。
課長の下には5~10名の部下がいるので、間接的に50~100名程度の部下を抱えることになります。

50~100名程度の部下全員に直接思いや意見を伝えることは、誰でも不可能に近いでしょう。
そのため、間接的に組織をマネジメントする役割が求められます。

間接的な働きかけが必要

間接的に組織をマネジメントするには、以下のようなスキルが必須です。

※左右にスクロールします
部長層に必須の4つのスキル
高い視座 経営陣など上層部の立場で物事を捉え社内全体を俯瞰する
最新の経営知をキャッチアップして具体化するスキル 最新の経営知をいち早く学び、部門のビジョンや戦略に落とし込む
組織文化を形成するスキル 組織にとって模範となる発言・行動を率先垂範する
多様な意見や環境変化に対応する「知性」 自らの判断軸を持ちながらも、様々な意見や環境の変化に対して柔軟に対応する

1-1.高い視座

間接的にマネジメントをするには、広い視野・高い視座で企業全体を俯瞰するスキルが必要です。
高い視座とは一般社員や課長とは異なり、経営陣など上層部の立場で物事を捉えることを指します。

視座を高めるには、下記「7S」の要素を理解して、責任を全うする姿勢が求められます。

※左右にスクロールします
「7S」の要素 概要
【ハードのS】
経営陣による意識により比較的簡単に変えられる
Strategy
(戦略)
・目標を達成するための経営戦略・人事戦略の策定
Structure
(組織構造)
・部門構成、部署間のつながり
・責任や権限の範囲の策定など
System
(経営システム)
・評価制度
・業務を遂行するためのプロセスなど
【ソフトのS】
人の意識やスキルレベルに左右されるので簡単に変化しにくい
Shared value
(共通の価値観・理念)
・企業理念
・良し悪しの判断基準など
Style
(経営スタイル・組織文化)
・行動規範
・組織の文化や風土など
Staff
(人材)
・組織に必要な人材像の定義
・適切な人材配置など
Skill
(組織スキル)
・企業が求める人材スキル
・目標達成のために必要なスキル

※7S:全体構造を整理し理解するために役立つ米マッキンゼー・アンド・カンパニーが提唱しているフレームワーク

「7S」を見ると分かるように、部長の責任範囲はかなり広くなります。
何に目配りをするべきか判断し、経営陣の目線で考えたことを、自らの言葉で情報を発信していくことが必要でしょう。

例えば、戦略や人材に関する課題を考える時には経営陣の目線に立ち、企業としてはどのような戦略をとるべきか・戦略実現のために必要な人材像はどうあるべきかを理解します。

そのうえで制度や体制の見直しが必要であれば、企業が良い方向に向かうように主体性を持ち提案します。

このように、直接的に部下に指示をするのはなく企業の制度や風土を深く理解したうえで、間接的に企業を良い方向に導く力が部長には求められます。

スキルチェック
  • 高い視座(経営陣の立場に立つ)に立ち、企業全体を俯瞰する
  • 自社に必要な戦略や制度を主体性を持ち考え提案する
  • 自社に必要な戦略や制度を自分の言葉で発信して、周囲からの納得感を得る

1-2.最新の経営知をキャッチアップして具体化するスキル

昨今は、企業を取り巻く環境や市場が刻々と変化しています。
従来の経営方針や経営戦略を継続しているだけでは、競合他社との差別化・企業価値の向上が難しくなっています。

そこで、最新の経営知をいち早く学び、企業のビジョンや戦略に落とし込むスキルも求められています。

例えば、最近話題のキーワードとして「DX」や「ESG経営」が挙げられます。

部長は各キーワードの定義を理解しているのはもちろんのこと「企業にとってどのような価値があるのか」「取り組む必要はあるのか」を判断するための知識が必要です。

※左右にスクロールします
話題のキーワード 概要 組織に実装するための例
DX デジタル技術を活用してビジネスモデルや風土の変革を行い、競争上の優位性を確立する ・テクノロジーを活用することで「市場の状況を踏まえて自社は何をするべきか?」「この業務は本来どうあるべきか?」と課題を設定する
ESG経営 「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(ガバナンス)」に考慮した経営 ・非財務データと財務データの相関性を分析し、ESGの取り組みが何年後にいくらの企業価値になるのかを具体的に示す

そして、自社にとって必要な取り組みだと判断した場合には、部長以下の組織でどのような取り組みをするのか具体的な計画に落とし込んでいくことが大切です。

例えば、DXの場合は自社を取り巻く市場環境を踏まえ、自社がどのような取り組みをするべきか提案します。

「店舗販売からEC事業者による宅配にシフトする」「顧客の決裁履歴・アクセスログのデータを活用し、需給予測をする」など課長以下が具体的に行動できる範囲まで落とし込み、組織に必要な新しい考え方・戦略を実装していく行動力が必要です。

部長は「従順に組織の命題を実現する」のではなく「組織を良い方向に導く」役割があります。
だからこそ現状維持ではなく、常に新しい知識を習得して組織に落とし込んでいくスキルが欠かせません。

スキルチェック
  • 時代の動向やニーズに応じて、常に新しい知識を学び続ける
  • 習得した新しい知識を深く理解して組織のビジョンや戦略に落とし込む
  • 課長以下が迷わず取り組めるよう、具体的な計画を立案する

1-3.組織文化を形成するスキル

部長には、良き規範や文化をつくるスキルが求められます。
部長の行動や習慣は課長・メンバーの行動や習慣をつくり、やがて組織全体の規範や文化を形成します。

つまり、組織の規範や文化の起点は部長になるので、部長には公的な存在・立場である自覚が求められます。

間接的な働きかけが必要

例えば、言動1つとっても部長の与える影響は非常に大きいです。

部下からの提案に対し、傾聴やコーチングなどはするものの実際に組織での問題解決に動かない部長がいた場合、配下の課長やメンバーは「この組織では問題解決・課題解決のために組織ぐるみで動くことは難しそうだな」と感じるでしょう。

問題解決のための挑戦をするメンバーが減っていくと、やがて組織全体が挑戦を避ける風土が構築されます。
最終的には、優秀な人材の流出や利益の減少に繋がる可能性もあるでしょう。

このように、部長の行動や発言が与える影響は計り知れないため「自身の言動がどうあるべきか」「組織の成長のためにはどのようなスタンスを取るべきか」考えて行動しなければなりません。

スキルチェック
  • 影響範囲の広さを自覚しながら自分の言動を意識できる
  • 公的な存在・立場であることを自覚して、どのような行動を取るべきか考える
  • 組織の成長のためにどのようなスタンスを取るべきか判断できる

1-4.多様な意見や環境変化に対応する「知性」

自分を律して組織文化を形成するには、「知性」のアップデートが求められます。
※知性:物事を知り、考えたり判断したりする能力のこと

立場が上がると多方面の意見を聞く必要があるため、どうしても矛盾やもどかしさを感じる場面が増えるでしょう。

その時に高次の知性を持ち、自分の立場を考えながら冷静に対処できるスキルが欠かせません。
知性は下記の3段階で成長すると考えられており、部長は「ステップ3:自己変容型知性」への獲得が必要でしょう。

※左右にスクロールします
ステップ 概要
ステップ1:環境順応型知性 チームワークを重んじる(帰属意識が高い)傾向はあるものの自分の考えや知識を確立出来ない
例:指示を待ち行動する
ステップ2:自己主導型知性 周囲の環境を客観的に見て内的な判断基準を確立できる。自分なりの判断基準に従い周囲の期待に応えようと行動できる
例:主体性を持ち業務ができるものの柔軟な対応ができない
ステップ3:自己変容型知性 自分の価値・判断基準を確立しながら周りの意見や環境の変化に柔軟に対応できる
例:多様な意見を取り入れながら必要に応じて自分の考えや戦略を修正できる

自己変容型知性を獲得できていると、様々な意見や環境の変化があっても判断基準を持ちつつ柔軟な対応ができます。

部長は過去の価値観や固まった考え方から脱却できないと、企業を良い方向に導く判断ができません。
部長として活躍するには、考え抜く力や判断力をもう1段階高めることも大切です。

スキルチェック
  • ただ単に判断力や考え方を身に付けるのではなく1段階上の「自己変容型知性」を身に付ける
  • 周囲の意見や考えに流されるのではなく自分の判断基準を明確に持つ
  • 自分と異なる意見を排除するのではなく受け入れながら柔軟に対応できる

部長の役割や部長育成の難所は下記の記事でまとめているので、参考にしてみてください。

CHAPTER
02

課長層に必須の3つのスキル

課長層に必須の3つのスキル

部長層に必須のスキルが理解できたところで、続いて課長層に必須のスキルを見てみましょう。
課長は10名人未満の部下を抱えて、現場を直接統括する役割を担います。

部長とは異なり直接部下と関わる立場なので、必要なスキルが変わります。
課長には一般的にはどのようなスキルが求められるのか、参考にしてみてください。

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課長層に必須の3つのスキル
部下を育成するスキル 部下の能力を最大限に発揮できるように仕事のサポートやスケジュール管理、課題発見などをする
企業のビジョンや方針を部下に浸透させ、成果を創出するスキル 企業のビジョンや方針を部下に浸透させて実行し、部や課の成果を創出する
プレイヤーと管理職との二律背反を克服するスキル プレイヤーとして成果を出しつつも経営陣の意図を理解したうえで、企業がより良くなるためにはどうしたらいいのか考え行動する

2-1.部下を育成するスキル

課長は部下に直接指導ができるポジションなので、下記のような部下を育成するスキルが問われます。

※左右にスクロールします
必要なスキル 具体例
課題を見つけるスキル 部下のスキルを能力・やる気・経験・適性に分けて「課題がどこにあるのか」「どのようなサポートが必要なのか」明確にする
管理するスキル 部下の目標達成やスケジュール管理をするスキル
評価するスキル 部下の業務内容を適切に把握・評価してフィードバックするスキル
仕事をサポートするスキル 部下に仕事を教える・部下のスキルに応じた仕事を任せるなど、部下の能力を最大限に発揮できるようサポートするスキル
コミュニケーションスキル 部下と円滑にコミュニケーションを取るスキル

特に重要なのは、部下の適性・課題を把握して仕事を適切にサポートするスキルです。

課長が部下の育成をする時に部下の背景や現状を理解しないで「これをして欲しい」「成果を上げて欲しい」などと一方的に伝えても、思ったように進まないでしょう。

部下のスキルややる気、経験を理解したうえでどのような課題があるのか、課題を解決するためにどのようなサポートができるのか判断するスキルが必要です。

課長は企業の人材活用や人材戦略を行動に移す核となります。
部下の育成は重要な役割なので、役割を遂行できるスキルを身に付ける必要があるでしょう。

スキルチェック
  • 部下の業務内容や業績について、適切に把握・評価しフィードバックできる
  • 一方的な指示ではなく、部下の現状・興味・課題を踏まえた適切なコミュニケーションが取れる
  • 部下の目標やスケジュール管理ができ、やる気と能力を最大限に高められる

2-2.企業のビジョンや方針を部下に浸透させ、成果を創出するスキル

課長は現場を統括する管理職として、部長などの上層部とメンバーとの橋渡し役を担います。
そのため、企業のビジョンや方針を部下に浸透させて、認識を揃えるスキルが求められます。

この時に重要なのが「双方向のコミュニケーションスキル」と「自分の言葉で語るスキル」 です。

※左右にスクロールします
双方向のコミュニケーションスキル ・どちらか一方の意見に偏るのではなく双方の意見を正しく理解する
・内部環境だけでなく外部環境にも目を向けてビジョンや戦略などの背景も理解する
自分の言葉で語るスキル ・部長や上層部の発言をそのまま共有するのではなく部下が理解しやすいように自分の言葉で語る
・部下の意見を踏まえたうえで、共感・承諾の得られる伝え方に工夫する

「双方向のコミュニケーションスキル」は、部長以上の上層部と部下の双方の意見を正しく理解できるスキルです。

失敗例で多いのは、部長などの上層部の意見のみに耳を傾けて、部下の思いや意見が不在となっているケースです。

繰り返しになりますが課長は橋渡し役を担うため、上層部の意見に偏るのは部下の不満の原因になるでしょう。
双方の意見を正しく理解したうえで、どのように意見を伝えるべきか検討することが欠かせません。

「自分の言葉で語るスキル」は、部下に共感・承諾を得られる情報伝達ができるスキルです。
部長や上層部の言葉をそのまま伝達する状態では、上層部の思いや考えが十分に伝わらない可能性があります。

外部要因や競合他社の変化なども踏まえたうえで「なぜ上層部がこのように語るのか」「なぜ今このような取り組みが必要なのか」伝えることが重要です。

スキルチェック
  • 上層部と部下の双方の意見を的確に捉えられるコミュニケーションスキルがある
  • 上層部の意見をそのまま伝達するのではなく、自分の言葉で語るスキルがある
  • 内部要因だけでなく外部要因や競合他社などの様々な要因を踏まえて意見を整理できる

2-3.プレイヤーと管理職との二律背反を克服するスキル

課長には、プレイヤーとして成果を創出しつつも管理職の視座を持つことも求められます。

昨今の課長はプレイヤーと課長を兼務することが多いです。
この時にプレイヤーの視点でしか思考・行動ができないと視座が低くなり、組織の成長や企業戦略に繋がりません。この二律背反を克服しなければ、管理職としての成長は為し得ません。

※左右にスクロールします
必要なスキル 具体例
プレイヤーの視座 ・自分の業務を主体性を持ち遂行する
・企業に貢献できるように業績を上げる
課長に必要な視座 ・経営陣の意図を理解したうえで企業がよりよくなるためにはどうしたらいいのか考え行動する
・経営陣の意図を理解したうえで部下や他部署とどのように業務を進行するべきか検討できる

例えば、経営陣から企業戦略に沿った成果を求められたとしましょう。
プレイヤーの視座のままでは、チームや自身の業績を上げるという、狭い視野でしか考えることができません。

課長に必要な一段階高い視座を持てると、下記のように経営陣の考えや企業の方針、戦略を踏まえた思考、行動ができます。

  • ・経営陣の発言にはこのような意図があると思うから意図を踏まえて戦略を考えよう
  • ・自分が経営陣であれば、部下にどのように指示をするのか考えよう

課長がプレイヤー意識が抜けないまま管理職としての役割を果たすのは難しいため、経営知識や経験不足を補いながら視座を高めていく必要があるでしょう。

スキルチェック
  • プレイヤーの視座から脱却して経営陣や部長の意図を汲みながら思考・行動ができる
  • 経営陣の発言や企業戦略を理解してどのような行動が必要なのか想像できる
  • プレイヤーと管理職の2つの視座の切り替えができる
CHAPTER
03

すべての管理職に共通して
必須の4つのスキル

すべての管理職に共通して必須の4つのスキル

ここまで課長と部長に必須のスキルを確認してきましたが、実は階層問わず全ての管理職に下記の4つのスキルが必須です。

このスキルが不足していると管理職の基礎が築けていないことになるため、どのようなスキルなのか確認しておきましょう。

すべての管理職に共通して必須の4つのスキル
※左右にスクロールします
すべての管理職に共通して必要な4つのスキル
人を巻き込む力 周囲に分かりやすく説明し、良好な関係のなかで鼓舞しながら巻き込んでいく
考える力 問題の本質と原因を理解して解決策を導き出す
経営の定石 「ヒト・モノ・カネ」の経営資源に関する知識・理論
「必ず成し遂げる」と心に決め、前向きに行動する

【4つの要素はすべて揃ってこそ効果を発揮する】

これから紹介する4つの要素は密接に関連しており、全ての要素を満たすことで効果を発揮します。

①「経営の定石」と「考える力」によって、最適な戦略を選択する
②「人を巻き込む力」によって、戦略の実行を高め、成果を最大化する
③「志」により実現したい大きな絵姿を描く

どれか1つのスキルがあればいいわけではなく全てのスキルを高める必要があるので、ぜひ4つの要素をしっかりとチェックしてみてください。

3-1.人を巻き込む力(リーダーシップ)

人を巻き込む力とは、周囲に分かりやすく説明し、良好な関係のなかで鼓舞しながら巻き込んでいくスキルのことです。

管理職がネガティブ思考で、何を聞いても「自分で考えて」と放任する場合、メンバーのやる気や能力を高められません。メンバーの足並みも揃わず、成果を出し続けることは難しいでしょう。

そこで管理職には、周囲の人を巻き込み誰もが安心して力を発揮できる下記のようなリーダーシップが求められます。

※左右にスクロールします
必要なスキル 具体例
意味のある目標・ビジョンを共有する力 メンバーが行動を起こすには「明確な理由」が必要なので、なぜこの業務をしなければならないのか自分の言葉で語る
周囲を理解する力 自分の意見を一方的に押し付けるのではなく、相手を理解したうえで期待する役割や現状の課題を伝える
周囲に信頼される力 日頃から周囲のサポートをする・困りごとに対して親身に対応するなど、信頼される行動をとる
決断力 明確な判断基準を持ち、いざという時に「どうしたらいいのか」迷うことなく決断できる
業務遂行力 部下や自分の業務を途中で投げ出すことなく最後までや抜く責任感とスキルがある

例えば、管理職は周囲から信頼されていなければ、足並みを揃えて同じ目標に向かい奮闘できる環境が作れません。
また、自分自身の明確な判断軸を持っていないと、いざという時矢面に立ち、責任ある判断・行動が取れないでしょう。

企業の事業は個人の力のみで完遂することは出来ないため、メンバーや社内外の関係者と協力しなければなりません。その時に、適切かつ効果的に人を巻き込みながら事業を進められれば、想像以上の成果に繋がるでしょう。

3-2.考える力(判断力・問題解決力)

考える力とは、複雑な問題の本質と原因を把握して最善の解決策を導き出すスキルです。

管理職が目標設定をする時に、メンバーの意見のみを聞いても最善の選択ができません。
過去の実績や市場の動向、事業戦略、求められる成果などを踏まえて、総合的に判断することが大切です。

特に昨今はビジネスモデルが複雑化して、過去の成功パターンが通用しなくなってきています。
だからこそ管理職が論理的思考や本質的を見抜く力を身に付け、問題解決力を高めておくことが必要なのです。

考える力を分解すると、下記のようになります。

※左右にスクロールします
必要なスキル 概要
経営を取り巻く現状を正しく認識する力 経験や勘に頼らず多角的な視点で現状を正しく認識して、問題解決を図る
問題を発見する力 人材育成や企業戦略設計の際、従来通りを正とせず、常に課題を見出し改善する
発見した課題を解決するためのアイディアやプロセスを考案する力 人材育成の課題を解決するための施策を様々な角度から検証して、最適な解決策を導き出す
相手の意見や考えを正確に理解する力 「きっとこう考えている」など無意識のうちに決めつけてしまう思考の癖に気付き、公平に相手の意見や考えを聞いて理解しようと努める
自分の意見や考えを正確に理解してもらう力 自分が何を考えているのか言語化でき、相手に合わせた表現で適切に伝えられる

例えば「相手の意見や考えを正確に理解する」は、誰にでも出来ると感じる方もいるでしょう。
しかし実は、人は無意識のうちに偏った考え方や思い込みをしていることが多々あります。

過去の経験や憶測、見聞きした情報などから「きっと部下はこう考えているに違いない」と決めつけてコミュニケーションを取ると、認識の齟齬(そご)や信頼関係の悪化を招くことがあるでしょう。

そこで、自分の考え方の癖に気付いて軌道修正し、公平に意見を理解できるようにすることが「考える力」に該当します。

また、自分の経験や勘から結果を導き出すのではなく、多角的な情報や批判的な意見、事実を踏まえて最適な結果を導く「論理的思考」も求められます。

3-3.経営の定石(経営資源に関する知識)

「経営の定石」とは、経営に関する問題を解決するのに必要な知識・フレームワーク(理論)のことです。 本来、定石とは、先人の経営者たちが長い歴史の中で成功するパターンから共通項を見出し、「こうすればうまく行く」という最善の型をまとめて伝承されてきたものを指します。

経営における最善の手順や方法を知っていれば必ず正しい判断ができるとは限りませんが、経営資源に関する知識を理解したうえで課題を考えるほうが、成功確率は上がるはずです。
例えば、既存のビジネスの成長が鈍化し、新規事業への取り組みが急務となった、などの課題に直面したとしましょう。

その際、考えるためのフレームワークを知らないと、つい自分の経験や勘に頼った判断をしてしまいがちです。重要なポイントを見落としたまま検討を進めた結果、成果が出せないばかりか取り返しのつかない失敗を犯すという事態になりかねません。
経営資源に関する知識は、管理職の役割である「成果創出」と「人材育成」を遂行するうえで欠かせないスキルとなるのです。

経営資源に関する知識は「ヒト・モノ・カネ」の3つの要素で成立しています。
どれも企業に欠かせない経営資源なので、全ての知識やスキルを身につけることが重要です。

すべての管理職に共通して必須の4つのスキル
※左右にスクロールします
ヒト 人材マネジメント:戦略の実行を効果的に行うために、組織目標へ向け組織構成員を効果的に動かす「仕組み」を活用するスキル
組織行動学:組織目標を実現することを目的として、個人が人や組織に影響を与える「個人の取り組み」に必要なスキル
モノ 経営戦略:組織が目標を達成するために必要な戦略・方針を立てるスキル
マーケティング:顧客満足を軸に『売れる仕組み』を考えるスキル
カネ アカウンティング:企業活動の成績を示す財務諸表から企業の現状や戦略を読み解くスキル
ファイナンス:企業が将来生み出す価値を見極めるために分析し、投資の意思決定をするスキル

「ヒト」は、企業の持続的な成長に繋がる人材育成・組織管理スキルです。
企業の貴重な資産である「ヒト」が育たなければ、持続的に成長して利益を創出することが難しいでしょう。

そのため、管理職には従業員の力を伸ばす人材育成スキルやリーダーシップ力、目標設定力などが求められます。

また、人材育成だけでなく、人材の適切な配置や組織管理などの知識も身に付ける必要があるでしょう。

「モノ」は、企業が目標達成をするための戦略や方針を立てるスキルです。
戦略立案に必要なフレームワーク(SWOT・5F・3Cなど)や知識を身に付け、組織を成長できる方向に導きます。

そして「カネ」は、企業の財政情報や経営状態を把握し、投資の意思決定をするためのスキルです。
企業会計原則や投資など財務に関する幅広い知識を習得しなければなりません。

管理職は経験や勘に頼らず、正しい数値を基に現状を理解し意思決定をする必要があるからです。

このように、管理職は組織が常に最善の選択ができるように、経営資源に関する知識を深めることが求められます。

3-4.志(自責思考)

管理職には、高い志と強い当事者意識を持って前向きに仕事に取り組む姿勢が必要です。

経営学者の野田一夫氏は、志とは「人生をかけて成し遂げることを事前に意思決定すること」だと述べています。

つまり「企業の業績がよくなったらいいな」「人材育成が成功したらいいな」などの願望ではなく、「必ず自分が実現する」と誓い行動してこそ「志がある」と言えるのです。

志を醸成するには下記の5つのサイクルを繰り返し、大志へと育てるスキルが欠かせません。

志の醸成のサイクル
※左右にスクロールします
スキルを育てるステップ 概要
ステップ1:自問自答して明確な意志を持つ 「自分はどうしたいのか」「自分はどうなりたいのか」自分の考えや価値観と向き合い意志を持つ
ステップ2:意志を実現する目標を設定する 「チームの業績を上げる」などフルコミットする目標を設定する
ステップ3:達成に向けて取り組む 目標を達成するために「必ず実現する」という志を持ち取り組む
ステップ4:取り組みが終焉を迎える 周囲を巻き込みながら最後までやり切る
ステップ5:客観視する 目標達成率を客観視して志を持ち取り組めたのか振り返る

管理職が志を持つうえで特に大切なのは、自分の使命や目標を明確にして周囲を巻き込むスキルです。

管理職が企業成長のために目標を立てる時に、自分事として捉え、自分の使命として強い意志を持って取り組むことが重要です。

その姿を見ていれば自ずと周囲も感化されるので、周囲を巻き込みながら目標達成を目指せるでしょう。

【管理職のスキルは「カッツ・モデル」も参考にできる】

管理職に必要なスキルは、ハーバード大学のロバート・カッツ教授が提唱した「カッツ・モデル」を用いることが多いです。

カッツ・モデルでは管理職に求められるスキルを「テクニカルスキル」「ヒューマンスキル」「コンセプチュアルスキル」の3つに分けています。

  • ・テクニカルスキル:業務遂行に必要なスキル
  • ・ヒューマンスキル:良好な人間関係を築き維持できるスキル
  • ・コンセプチュアルスキル:物事の本質を見極め最良の判断をするスキル

管理職に必要なスキルを検討する時に、参考にしてみると良いでしょう。

CHAPTER
04

管理職に必要なスキルは
企業ごとに変わる

ここまで、管理職に必須の具体的なスキルを解説してきました。

3.管理職に共通して必須な4つのスキル」はどのような企業でも必須のスキルではありますが、その他のスキルは管理職に求める役割や理想の管理職像により異なります。

人材要件を定義をする時には、求める役割・行動・スキルと紐づけて考える必要があるからです。

下記の人材要件定義に使われるフレームワーク「氷山モデル」を見ると、管理職に求める役割・行動のベースにスキルや知識、マインドがあることが分かります。

管理職のスキルのみを切り離して考えてしまうと、自社の管理職に求める役割や行動と結びつかず、思ったような成果を出せないでしょう。

例えば、自社の課長には、上層部と現場を繋ぐハブの役割を担って欲しいと考えているとしましょう。
そのためには、上層部の意図を正確に捉え、現場の部下にも分かりやすく伝えるコミュニケーション力が求められます。

人材要件定義をしているのにも関わらず戦略を立案するスキルや経営スキルばかりを優先して身に付けても、自社の求める課長になるまで時間を要します。

この例からも分かるように、求める役割や行動とスキルを紐づけないと、企業の風土や考え方に合う管理職が生まれません。

【自社の人材要件定義に沿って必要スキルを身につけないとどうなる?】

  • ・自社の風土や考え方に合う管理職が誕生しない
  • ・自社の管理職として活躍するにはスキルが不足している
  • ・自社の管理職として活躍するまでに時間がかかる

管理職に求める必須スキルは、どの管理職も持ち合わせている必要がありますが、その他のスキルは企業が管理職に求める役割や行動に応じて柔軟に変えていきましょう。

次の章では、「自社の管理職に求めるスキル」を明確にするステップをご紹介します。

「管理職には自社独自のスキルが重要なのは理解できたけれど必要なスキルが分からない」という場合は、ぜひ参考にしてみてください。

CHAPTER
05

自社の管理職に求めるスキルを
明確にする3つのステップ

ここからは、自社の管理職に求めるスキルを明確にするステップをご紹介します。
管理職に必要なスキルは、スキルのみに焦点をあてて考えても見えてきません。

どのようなプロセスを踏んでスキルを明確にすればいいのか参考にしてみてください。

5-1.自社の管理職に期待する役割を明確にする

まずは、自社の管理職に期待する役割を明確にします。

管理職の役割のみを考えても漠然とした答えしか見えて来ないので、企業を取り巻く外部環境と内部環境を踏まえて「自社の目指す組織像」から考えると良いでしょう。

※左右にスクロールします
外部環境 企業を取り巻く環境のこと
例:経済状況・法令や政治動向・テクノロジーの変化・流行など
内部環境 企業内の環境のこと
例:経営資源・企業戦略・組織風土など

例えば、変化の大きい市場で自社の生き残りを実現するには「(既存の主力事業が安定的に維持されてきたが)新規事業の立案・推進ができる組織」に変えていく必要性を感じたとします。

この組織像を軸に「部長にはどのような役割を求めるのか」「課長にはどのような役割を求めるのか」明確にしていくと、期待する役割を明確にしやすいです。

新規事業の立案・推進を行う組織には「常に市場・競合の変化を認識しつつ、全社視点での課題と自部門がすべきことを考え、組織の上下へ発信する部長」が必要だと考えた場合、部長にはまず「全社戦略を理解・分析する」スキルが求められそうです。

このように、管理職に求める役割のみを考えるのではなく、外部環境や内部環境、組織に求めることなどを踏まえたうえで「自社の管理職には何を求めるのか」を明確にしましょう。

補足ポイント

変化の激しい時代の中では「まず戦略を立てて必要な人材要件を明確化する」ことが難しいケースもあります。

例えば、組織や人材の能力不足という課題が明らかな場合は、戦略ばかりを練っていても机上の空論で終わってしまう可能性があるでしょう。

このような状況では、最初に組織に必要な能力や管理職に求める役割を決めてスキルアップを目指すことを優先するのも一案です。

5-2.自社の管理職に求める行動を決める

続いて、自社の管理職に求める具体的な行動を決めます。
管理職に求める役割を実践するには、管理職の具体的な行動を具体的に描くことが必要です。

いくら役割が決まっていても、何をすればいいのか分からないとなかなか行動に移せません。
自社の管理職にはどのような行動を求めるのか、下記のようにできるだけ具体的に決めておきましょう。

※左右にスクロールします
求める役割 具体的な行動
部長 自部門のビジョンを描き次の戦略を構想する ・環境変化を踏まえてビジョンを描く
・組織を変革する事業戦略を立てる
・経営者の視点を踏まえて組織を牽引する
課長 戦略を達成する仕組みを組織で機能させる ・組織・部門戦略の意図をくみ取り部下に落とし込む
・部下と円滑なコミュニケーションを取り成長を促す

上記の例では、部長に「自部門のビジョンを描き次の戦略を構想する」役割を求めています。

この役割を実現するために「組織を変革する事業戦略を立てる」「経営者の視点を踏まえて組織を牽引する」など具体的な行動を設定しています。

このように、求める役割を行動に落とし込み、管理職が実践するイメージを持てるようにしましょう。

補足ポイント

管理職に求める行動を決める時には、実践可能な範囲で行動に落とし込むことが必要です。

「理想的な行動ではあるものの現段階では難しいだろう」など行動難易度が高い場合、必然的に行動するために必要なスキルも高くなります。

その結果、管理職がなかなかスキルを身に付けることができず企業の成長ペースが落ちる可能性があります。

管理職に求める役割や行動、スキルは企業の現状に応じて変更できるため、まずは現段階~近い将来に実践可能な行動を目安に設定すると良いでしょう。

5-3.自社の管理職の役割・行動を果たすために必要なスキル・マインドを決める

自社の管理職に求める役割と行動が明確になったところで、実現するために必要なスキルを決めます。

下記のように、管理職に求める役割と行動を念頭に置いて「どのようなスキルが必要なのか」「どのようなマインドが足りていないのか」検討しましょう。

※左右にスクロールします
求める役割 具体的な行動 求めるスキル・マインド
部長 自部門のビジョンを描き次の戦略を構想する ・環境変化を踏まえてビジョンを描く
・組織を変革する事業戦略を立てる
・経営者の視点を踏まえて組織を牽引する
・経営陣らしい高い視座からの判断、高度な意思決定力
・経営全般に関する体系的理解と中長期的な戦略の立案力
課長 戦略を達成する仕組みを組織で機能させる ・組織・部門戦略の意図をくみ取り部下に落とし込む
・部下と円滑なコミュニケーションを取り成長を促す
・戦略と現場の双方を理解して実行計画を考える力
・メンバーを巻き込み成果を出す牽引力

繰り返しになりますが管理職に求めるスキル・マインドを切り離して考えるのではなく、求める役割と行動に基づいて考えましょう。

簡単な例で言うと、管理職に部下育成の役割を求めているとしましょう。
部下を育成するには、部下を理解するためのコミュニケーションをとったり、成果を出すための方針・行動について擦り合わせたしたりする行動が求められます。

この行動を実現するためには、部下との対話スキルや、全社方針に沿った部門方針を分かりやすく伝えるスキルなどが必要です。
このように、段階を踏んで丁寧に考えることで、自社の管理職ならではのスキルが把握できます。

補足ポイント

自社の管理職に必要なスキル・マインドが把握できたら、現在の管理職に足りないスキル・マインドを明確にしましょう。

管理職に必要なスキルは一般社員よりもレベルが高く、専門的な知識を要する領域も多いです。
そのため、必ずしも管理職に必要なスキルが既に備わっているとは限りません。

管理職に足りないスキルを明確にして、スキル不足を解消する施策を実施することで自社に必要なスキルを持ち合わせた管理職に成長できるでしょう。

CHAPTER
06

管理職に必要なスキルを
身に付ける2つの方法

自社の管理職に必要なスキルが把握できたところで、不足しているスキルをどのように身に付けたらいいのか気になる方も多いでしょう。

管理職が自発的に学習する方法もありますが、企業がサポートできる主な方法には「OJT」と「OFF-JT」があります。

自社に合う方法を選択して効率良くスキルを身に付けるためにも、どのような方法なのか確認しておきましょう

※左右にスクロールします
スキルを身に付ける方法 概要
OJT
(On-The-Job Training)
スキルを身に付けるべき社員と、現管理職とが一緒に業務を行い、具体的な業務内容や心構えを学ぶこと
OFF-JT
(Off-the-Job Training)
スクール型研修や企業内研修など、通常の業務や職場から離れて行う人材育成全般のこと

管理職の学び直しの具体的な実践例は下記の記事で解説しているので、参考にしてみてください。

当社コラム:管理職が変われば組織が変わる~学び直しの実践例~

6-1.OJT:業務内でスキルを身に付ける

※左右にスクロールします
OJT(On-The-Job Training)
概要 スキルを身に付ける社員と、現管理職とが一緒に業務を行い、具体的な業務内容や心構えを学ぶこと
メリット ・現管理職から直接指導を受けられるため、自社ならではの業務や風土、心構えを理解しやすい
・スキルを身に付ける社員のペースに応じて学ぶことが出来る
デメリット ・現管理職自身が指導・育成された経験がない場合、適切な指導法についてのノウハウがない
・現管理職が忙しく、育成に割く時間がない
向いているケース ・風土や心構えなど、自社の管理職ならではのマインドを身に付ける場合
・自社の管理職の具体的な業務を学ぶ場合

OJT(On-The-Job Training)とはスキルを身に付けるべき社員と現管理職とが一緒に業務を行い、具体的な業務内容や心構えを学ぶ方法です。

下記のように具体的な業務や心構え、他社員との接し方など、管理職の具体的な業務内容や行動を学べます。

【OJTの一例】

・現管理職の近くで業務や立ち振る舞いを学び、一緒に実践する
・現管理職から直接心構えや部下への接し方などの話を聞いて実践する

OJTの最大のメリットは、現場で活躍している管理職から直接指導を受けられるところです。
どの企業も「自社の管理職らしさ」があり、この部分は教材や一般教養ではなかなか理解できません。

自社の管理職から学ぶことで自社の風土や特色を踏まえたうえで取るべき行動や部下との接し方などが身につきます。

OJTは社内の人材を中心に実施するため、スケジュールやペース配分の調整がしやすいところも魅力だと言えるでしょう。

一方で、管理職育成のノウハウを持っている人材は意外と少ないものです。

現在企業で活躍している人材も「管理職に育てられた経験」を持っておらず、どのような指導をしたらよいのか手探りの状態かと思います。

そのため、現管理職の指導内容や指導スキルには差があり、必ずしも大きな成果に繋がらないところがデメリットだと言えるでしょう。

また、企業の管理職の多くは非常に多忙で、次の管理職育成にかける時間を持ち合わせていません。
社内の人材のみで管理職のスキルアップをしたいと思っていても、時間や労力を割けない側面もあるでしょう。

6-2.OFF-JT:業務から離れてスキルを身に付ける

※左右にスクロールします
OFF-JT(Off-the-Job Training)
概要 スクール型研修や企業内研修など、通常の業務や職場から離れて行う人材育成全般のこと
メリット ・身に付けるべきスキルに精通した講師から学べる
・企業内にノウハウがない領域についても学ぶことが出来る・企業内の負担(人的リソース・工数)を軽減できる
デメリット ・コストがかかる
・実際のアウトプットまで確認できないケースがある
向いているケース ・自社の負担を軽減しながら管理職に必要なスキルを身に付けたい場合
・自社にノウハウのないスキルを学びたい場合
・体系的な知識を身に付けたい場合

OFF-JT(Off-the-Job Training)とは、スクール型研修や企業内研修など通常の業務や職場から離れて行う人材育成全般のことです。

主な手法は下記の3つで、企業の業務から離れて研修やセミナーを実施したり、ビジネススクールに通ったりすることが該当します。

※左右にスクロールします
OFF-JTの代表的な手法
企業内研修 身に付けたいスキルに応じて外部講師の講義やグループワークなどを行う
スクール型研修 外部のビジネススクールを活用し、他社の受講者と共に経営スキルを体系的に学ぶ
(通学・オンラインの2パターンがある)
eラーニング パソコンやスマートフォンを使いインターネット経由で動画・スライドを見て必要なスキルを身に付ける

OFF-JTのメリットは、自社にノウハウがない・教えられる講師役がいない場合でも、習得したいスキルを学べるところです。

例えば、経営学であれば経営学に詳しい講師を招いてセミナーを実施し、新しい学びを得ることができます。

一方で、OFF-JTは通常の業務や職場から離れて行う人材育成なので、どうしてもコストがかかります。
スクール型研修の場合はスクールに通学する費用が、企業内研修は講師を招く費用や会場代などが発生します。

自社の管理職の課題を踏まえて、どのようなスキル習得にコスト投資をするべきか、優先順位を付けながら検討することが大切でしょう。

【OJTで獲得できるスキルには限界がある! OFF-JTの活用が欠かせない】

管理職がスキルを身に付ける方法として「OJT」と「OFF-JT」を紹介してきましたが、自社の管理職から直接学ぶ「OJT」にはどうしても限界があります。

OJTでは下記のような課題があるので、自社の管理職に必要なスキルをプロから学べるOFF-JTの活用が有効だと言えるでしょう。

・全ての管理職が管理職のスキルを教えるエキスパートではない

・管理職自身が身に付けている経験・スキルに左右される

特に管理職に求められるスキルは多岐に渡るため、OJTもうまく活用しながら、必要なスキルを体系的に身に付けていくことが重要です。

CHAPTER
07

年間約384,400名を育成!
グロービスの管理職研修事例

ここまで管理職に必須のスキルや自社の人材要件定義に合うスキルの見つけ方などを解説してきました。
管理職の役割を果たすためには、必要なスキルの習得が欠かせません。

とは言え「自社の管理職の課題に合うスキルの習得が難しい」「自社の管理職のスキルが伸びない」などスキル獲得に悩んでいる方は多いのではないでしょうか。

管理職のスキル習得にお悩みの場合は、ぜひ私たちグロービスにお任せください。

グロービスでは年間約384,400名もの企業人材育成をお手伝いしており、確かな実績とノウハウがあります。

実績をベースに開発される研修やサービスは品質が高く、その証として「クオリティ・ギャランティー(品質保証)制度」を設けています(提供された研修やサービスにご満足いただけない場合には、研修委託報酬の一部あるいは全額をお返しする制度)。

ここでは、実際にグロービスが携わった管理職のスキル向上を目的とした研修の事例をご紹介します。
管理職のどのような課題を解決できるのか参考になると思うので、ぜひチェックしてみてください。

7-1.【株式会社ふくおかフィナンシャルグループ様:企業内研修】新任課長が期待役割を果たすためのスキルとマインドを習得

※左右にスクロールします
課題 マネジメント業務に加えプレイングマネージャーの役割も求められるようになり、スピーディーに判断し積極的に行動するスキルが必要不可欠になった
研修内容 「考える技術を磨く」「自ら率先して動き成果を出す役割を担っていると認識してもらう」を目標に課長対象の研修を実施
成果 ・受講者の99%が有益な研修だったと評価している
・スキルだけでなくマインド面で腑に落ちた
・論理思考力を習得する機会を持ったことで会社からの期待も伝わった

金融サービスを提供している株式会社ふくおかフィナンシャルグループ様は、現場を統率する課長職のスキルに課題がありました。

課長にはマネジメント業務に加えプレイングマネージャーの役割も求められるようになり、スピーディーに判断し積極的に行動するスキルが必要不可欠になったのです。

そこで、課長の育成施策を検討している時に、グロービスでの受講経験がある行員から「クリティカル・シンキング」のプログラムを勧められました。

「クリティカル・シンキング」のプログラムは新任課長に求めるスキルとマッチしていると感じてくださり、研修のご依頼を受けました。

研修では下記の2つの目標を設けて取り組みました。

1)考える技術を磨く:効率的な業務運営や適切かつスピーディーな判断につなげるために、論理思考の基盤と考え方を学ぶ

2)自ら率先して動き成果を出す役割を担っていると認識してもらう:スキルのみならずマインドの醸成も行う

業務経験やキャリアの異なる受講者が、研修の必要性をどこまで理解し真摯に取り組んでくれるのか不安があったそうですが、研修後のアンケートでは99%が有益な研修だったと評価してくださいました。

アンケート結果からはスキルだけでなくマインド面で腑に落ちたことが伝わってきて、「論理思考力を活用することで、業務やコミュニケーションが円滑に進む」との声もあったそうです。

研修を実施し、課長の成長により組織が活性化する第一歩になったと感じていただけました。
この事例は下記でも詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。

インタビュー記事を読む
▶導入事例:ふくおかフィナンシャルグループ様
新任課長が期待役割を果たすためのスキルとマインドを身につけ、グループ全体での組織活性化を目指す

▶ふくおかフィナンシャルグループ様にご利用いただいているサービス(インタビュー当時):
・企業内研修 クリティカル・シンキング
・グロービス・マネジメント・スクール
・テーラーメイド型研修
・GLOBIS 学び放題(動画学習サービス)

7-2.【株式会社コロワイド様:eラーニング】非連続の時代を生き抜くための管理職育成

※左右にスクロールします
課題 戦略や組織統括など、ビジネスマネージャーとしてのスキルが不足している
研修内容 「管理職が世の中で起きている変化を認識し、自社がどのように変化すべきか考える視点を確立する」ことをゴールに設定して課長職以上を対象に「GLOBIS学び放題」を導入(公募制)
成果 ・管理職の約半数が「GLOBIS 学び放題」の受講を希望
・導入から2年近くが経過し、受講者のレポートの質がどんどん向上している
・他部門の理解を深めて全社視点を持てるようになった

フードサービスを提供している「株式会社コロワイド」様は、管理職の育成に課題を抱えていました。

飲食業界では実績を挙げた社員が管理職に昇進するケースが多くあります。

現場では調理やオペレーション、接客のスキルを磨けるものの、戦略や組織統括などビジネスマネージャーとしてのスキルは不足している側面があります。

現場の経験則でキャリアを築くのが慣例となっている業界特有の構造にも課題を感じており、飲食業の人材育成のあるべき姿を模索していたそうです。

そこで管理職が経営視点を持つための育成施策を検討していたところ、私たちグロービスにお声がけいただきました。

今回のスキルアップでは「管理職が世の中で起きている変化を認識し、自社がどのように変化すべきか考える視点を確立する」をゴールに設定しました。

株式会社コロワイド様は全国の社員がシフト制で勤務しているため、企業内研修を実施する負荷が大きい側面がありました。

そのため、どの社員にも均等に学習機会を提供できるよういつでもどこでも学べる動画サービス「GLOBIS 学び放題」を採用していただきました。 「GLOBIS 学び放題」の受講者は公募制にして、自発的に学ぶ社員が増えることも視野に入れました。

運用を開始すると管理職の約半数が「GLOBIS 学び放題」の受講を希望してくれました。 そのうち3分の2は他社を含む全受講者の平均視聴時間を上回る視聴時間で学習をしていて、学びたい意欲が高いことが分かりました。

「GLOBIS 学び放題」の導入から2年近くが経過し、受講者のレポートの質が半年ごとにどんどん向上していると感じているそうです。

最初の頃は感想が中心でしたが、最近では専門スキルに関する記載や、新たな分野の学びの記載内容が見られるようになりました。

また、幅広い領域のスキルを身に付けたことで本部長、部長クラスが他部門の理解を深めて全社視点を持てるようになりました。 部署間の協力や会議、会話の質の変化なども見受けられます。

現在は課長職以上を対象に「GLOBIS 学び放題」を導入していますが、今後は対象を広げて若手社員などにも学びの機会を提供したいと考えているとのことです。

この事例は下記でも詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。

インタビュー記事を読む
▶導入事例:株式会社コロワイド様
非連続の時代を生き抜くために管理職がビジネススキルを磨き、経営視点をもつリーダーになる

▶コロワイド様にご利用いただいているサービス(インタビュー当時):
・GLOBIS 学び放題
・グロービス・エグゼクティブ・スクール(GES)


ここで紹介した事例のように、グロービスでは企業の管理職の課題に応じた実践性の高い研修・サービスを提供しています。

業種や課題に応じて学びやすい方法を選択できるように、下記のように複数の方法をご用意しています。

企業内研修:自社に合った研修設計を希望される企業様に

企業内研修では人材育成担当者様との議論を通じて、最適な企業内研修プログラムを提供します。
「定型」「テーラーメイド型」のプログラムをリアル・オンライン問わず受講できます。

・定型型:人・組織に関する共通性の高い課題を解決するために、体系化されたプログラムを組み合わせて提供
・テーラーメイド型:人・組織に関する個社ごとの課題に対し、テーラーメイドで設計したプログラムを提供

「自社の管理職の課題に応じた研修がしたい」「自社の管理職に必要なスキルを踏まえて研修を設計したい」という場合におすすめです。

スクール型研修:社内では得られない緊張と刺激の中で、幅広い視野とスキルを身に付けたい企業様に

スクール型研修は、異業種オープンスクールです。「リアル」「オンライン」双方でご提供しています。
社内では得られない緊張と刺激が視野を広げ、固定化した考え方を解きほぐしながら、管理職のスキルアップや成長に繋がります。
1社1名様からご派遣いただけるだけでなく、企業内研修と組み合わせた長期の研修プログラムとしても活用が可能です。

「管理職に必要なスキルを体系的に学びたい」「業務で実践できる高いスキルを身につけたい」という場合におすすめです。

eラーニング:管理職が自発的に学べる機会を提供したい企業様に

グロービスでは定額制動画学習サービス「GLOBIS 学び放題」を提供しています。
導入実績は3,300社以上、ビジネス動画10,000本以上を活用して必要なスキルを効率よく学べます。

管理職のスキルアップ機会の創出や、企業内研修と組み合わせた長期の研修プログラムとして活用できます。

また、「GLOBIS学び放題」の他にも必要なスキル・受講者に応じて「GLOBISUnlimited」や「eMBA2.0」も選択可能です。

「管理職に必要なスキルを自発的に身に付けて欲しい」「時代のニーズに応じた新しいスキルを習得する機会を設けたい」という場合におすすめです。

グロービスでは管理職に必要なスキル・スキルの習得環境に応じ、様々な方法で質の高い学びの機会を提供しています。

管理職のスキル習得に課題を感じている場合は、まずはお気軽にご相談ください。

CHAPTER
08

まとめ

今回は、管理職に必須のスキルについて詳しくご紹介しました。
自社の管理職に必要なスキルを見つけるステップも明確になり、どのようにスキルアップをするべきか検討が進められるのではないでしょうか。

最後にこの記事の内容を簡単に振り返ってみましょう。

〇部長層に必須のスキルは次の4つ

1)高い視座:経営陣など上層部の立場で物事を捉え社内全体を俯瞰する
2)最新の経営知識をキャッチアップして具体化するスキル:最新の経営知識をいち早く学び、部門のビジョンや戦略に落とし込む
3)組織文化を形成するスキル:部長の立場を理解して組織にとって模範となる発言・行動を率先垂範する
4)多様な意見や環境変化に対応する知性:自らの判断軸を持ちながらも、様々な意見や環境の変化に対して、柔軟に対応する

〇課長層に必須のスキルは次の3つ

1)部下を育成するスキル:部下の能力を最大限に発揮できるように仕事のサポートやスケジュール管理、課題発見などをする
2)企業のビジョンや方針を部下に浸透させるスキル:企業のビジョンや方針を部下に浸透させて、足並みを揃える
3)プレイヤーと管理職の双方の視座を持つスキル:プレイヤーのみの視座から脱却して経営陣の意図を理解したうえで、企業がより良くなるためにはどうしたらいいのか考え行動する

〇すべての管理職に共通して必須のスキルは次の4つ

1)人を巻き込む力:周囲と良好な関係を築きながらモチベーションを高めてリーダーシップを発揮する
2)考える力:問題の本質と原因を理解して解決策を見出す
3)経営の定石:「ヒト・モノ・カネ」の経営資源に関する知識・理論
4)志:「必ず成し遂げる」と心に決め、前向きに行動する

〇自社の管理職に必要なスキルを見つけるステップは下記のとおり

ステップ1:管理職に期待する役割を明確にする
ステップ2:管理職に求める行動を決める
ステップ3:管理職の役割・行動を果たすために必要なスキル・マインドを決める

〇管理職に必要なスキルを身に付ける主な方法は次の2つ

※左右にスクロールします
スキルを身に付ける方法 概要
OJT
On-The-Job Training
スキルを身に付けるべき社員と、現管理職とが一緒に業務を行い、具体的な業務内容や心構えを学ぶこと
OFF-JT
Off-the-Job Training
スクール型研修や企業内研修など、通常の業務や職場から離れて行う人材育成全般のこと

管理職に必要なスキルは専門性が高いうえに、通常業務だけでは身に付けられないことが多いです。
まずは自社の管理職に必要なスキルを明確にして、スキルを身に付けるための施策を検討すると良いでしょう。

私たちグロービスは企業の管理職の課題に応じた実践性の高い研修・サービスを提供しています。
管理職のスキル向上やスキルアップにお悩みの場合は、ぜひお気軽にお問い合わせください。