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2024年11月20日(水)無料
【人材育成ご担当者さま向け】
グロービス受講体験セミナー~クリティカル・シンキング編~ スピーカー:奥 康訓
若手の経営候補者層にグローバルリーダーへ成長する基礎を築いてもらうため、世界中の拠点を対象とした選抜型次世代リーダー育成研修(Global Leadership Program-Discovery:GLP-D 言語:英語)をスタートさせた本田技研工業株式会社様。その取り組みについて、同社の人事部タレントマネジメント課 グローバル人材育成統括Jitender Teckchandani様(以下、Jituさん)と、Honda Motor EuropeのHead of HR Planning and Development 菅野香奈子様と、人事部タレントマネジメント課 チーフ 市原佑季子様からお話を伺いました。(部署・役職はインタビュー当時)
※本記事のインタビューはオンライン会議システムを通じて行いました。
菅野さん:
20年先の弊社をけん引する若手に対して、学習と成長の機会をどのように提供できるか。そこが経営層からの期待であり、我々にとっての課題であったと捉えています。
市原さん:
シニア層に対するリーダー研修は以前より実施していたのですが、若手の経営候補者層に対する選抜研修の機会を提供できていなかったのです。一方で、真のリーダー育成には長い期間が必要なので、早期にチャンス・機会を提供する場を整備する必要がありました。
菅野さん:
若手層に対して学習機会の整備が必要ではないか、という構想は以前からありました。構想が加速したきっかけは、コロナです。コロナの影響で1年間、対面の研修を凍結せざるを得なくなったのですが、この期間をチャンスと捉え、新しい研修設計に充てる期間にしました。グローバル規模でオンライン研修を開催することも初めての取り組みでしたので、大きなチャレンジであったことは間違いありません。
市原さん:
多くの気づきを得ることでグローバルリーダーになるための土壌作りができる、そのような研修にしたいと考えていました。具体的には、リーダーとして自分の強み・弱みを認識し理解する、経営者としての知識の土台を会得する、世界中の次世代経営者候補とのグループワークやディスカッションを通じて経験値を上げる、などです。次の成長ステージへ進んでもらうためのステップとして、本研修を活用してもらうことが理想でした。
菅野さん:
特に考える力を、若手層に磨いてほしいと考えていました。VUCAの時代には、知識やスキルは簡単に陳腐化します。何が正解・不正解か分からない世界において、常に高いアンテナを張り、広い視野で物事を見据え、自身で考え学び続ける力を身に付けてほしい。そのような期待を持って、研修の企画設計を開始しました。
研修のゴールを見据えるにあたり、研修の名称にも強くこだわりました。GLP-D(グローバル リーダーシップ プログラム ディスカバリー)という名称で、特にディスカバリー(発見)という単語が、本研修を象徴しています。
プログラムを通して受講者に発見してもらいたいものは様々ありました。これからの世界(未来)、現在の社会とお客様、弊社、それからリーダーとしての自分自身など、ディスカバリーに尽きる、という思いと期待を込め、GLP-Dという名称をつけたのです。プログラム設計の時から中島さん(グロービス担当コンサルタント)とは「ディスカバリーですよね」と、合言葉のように話しながら進めていました。
Jituさん:
私はGLP-Dの実行段階からチームに参画していますが、1年経った今、まさにプログラム名が指し示す通り、受講者にとって多くの「ディスカバリー」をもたらした機会だったと実感しています。
例えば、プログラム期間中はアセスメントツールをはじめ、さまざまなメソッドが使われました。時にはプログラムディレクター(講師)や受講者同士が厳しいことを言う場面もありましたが、それが却って役に立ちました。受講者はより自分自身の強みや成長課題を発見することができたと感じています。
本当にディスカバリーの名を体現したプログラムになりました。
菅野さん:
懸念点は2つありました。オンライン環境下での受講者のモチベーションの維持と、インプットとアウトプットのバランスです。
オンラインでグローバルの研修を実施することは我々も初めての試みだったため、受講者のモチベーションを維持できるか不安に感じていました。ですが、グロービスの綿密な準備と当日運営、エネルギッシュな講師陣にも助けられ、乗り越えることができたと感じています。
考える力の習得にあたっては、基本的な知識を持ったうえで物事を深く思考する訓練をしなければなりません。イノベーティブなアイディアも、理論や知識の裏付けがなければ成果に繋がらないでしょう。そのためにはインプットの時間が必要ですが、多くの場合インプット研修は面白みに欠け、受講者のモチベーションが下がってしまうことがあります。
議論ベースのアウトプット型研修と、基礎知識を取り入れるインプット型研修のバランスをどのようにとるか、難しい点だと認識していました。
この点については、グロービスのコンテンツの質の高さに助けられましたね。さまざまなテーマのセッションに加えて、GLOBIS Unlimited(英語でビジネスナレッジを学べる動画学習サービス)を事前に視聴し、その知識を持ってセッションに臨んで議論をするという設計により、インプットとアウトプットをバランス良く整備して研修を進めることができました。
Jituさん:
GLOBIS Unlimitedがあることで、プログラムに関連した学びにとどまらず、自分が興味を持ったコンテンツを学習した受講者がいました。このプログラム内での学びに限定せず、もっと受講者に成長してほしい、というグロービスの想いがあったからこそだと思います。
またグロービスは、常に受講者全員が英語でのプログラムについていけるようにしてくれました。GLP-Dはすべて英語で行われたのですが、受講者全員が英語を得意にしているわけではありません。英語が得意でなくても理解しやすいスライドを準備してくださり、ディスカッション時はプログラムディレクターだけでなく、コンサルタントの皆さんも受講者の状況に目を配り、常に全員を巻き込むように配慮してくださっていました。
菅野さん:
綿密にパートナー選定を行い、グロービスにお願いできたのが功を奏したのかもしれませんね。我々は4つの軸で、パートナー選定を行いました。
まず1つ目は、グローバルにビジネス展開していること。弊社がグローバル企業である以上、日本スタンダードではなく世界スタンダードの一般教養とビジネスリテラシーの学習を求めていました。
2つ目は、プログラムディレクターの人柄と力量。プログラム全体の質はプログラムディレクターに依るところが大きいため、魅力的であることが重要です。
3つ目は、プログラムの規模拡大に対応できる組織・資源を持っていること。初年度はトライアルとしてミニマムな規模で開催しましたが、対象層は世界中にいます。継続性の観点から、今後の規模拡大に対応できるパートナーであることが必須でした。
4つ目は、担当コンサルタントの力量と我々への共感度です。カスタム設計ができる企画力はもちろん、我々のニーズや目指している姿を理解し共感してくれる組織・担当者であることが、こだわりの1つでした。新しいものを作り上げる際には、ビジネスパートナーとゴールを共有できなければ成し遂げられません。その意味では中島さんとアイステさん(グロービス担当コンサルタント)は我々の目指すものを理解し、共感してくださっていました。
Jituさん:
私がアジア太平洋地域で人事を担当していた頃、地域からもパートナー選定のプロセスでフィードバックする機会を与えてもらいました。これまでなかったことであり、パートナー選定における大変良いプロセスだったと思います。本社が自分たちの視点だけでなく、地域も巻き込んだ大きな視点を大切にして選定したことがとても嬉しかったです。
菅野さん:
グロービスにお願いすることが決まってからも、高い企画力に支えていただきました。我々のもやっとしたアイディアやニーズをきちんとヒアリングし、言語化・体系化した資料を持ってきてくださるのですね。分からないまま進むことは無く、チームとして1つの研修を作り上げることができたと感じています。
市原さん:
確かに、一緒に作り上げているという感覚は常にありました。例えば、クラスAの講義の翌日にはミーティングを行い、クラスBの同じセッションに向けてどう改善できるかを議論し、反映する。短期間でPDCAを繰り返していました。改善し続けるために、常に伴走いただけたことが本当にありがたかったです。
Jituさん:
中島さんとアイステさんは、我々の意見を常にポジティブに受け止めてくれました。私たちは研修の専門家ではありませんが、何かアイディアを出しても、まず否定されることはありませんでしたし、寧ろ「わかりました。一度考えてみます」という態度で接してくれました。
我々は妥協せず常に核心を追い求めますが、中島さんとアイステさんは「なぜ、どうしてこうしたいのか」を私たちに問いかけ、さらにグロービスのメンバー同士でも議論していました。常に粘り強くポジティブに接してくれたと感じています。
Jituさん:
このプログラムで受講者は新しいことを学び、さまざまな分野に触れ、目を見張るような経験を積むことができました。プログラムを通じて多くのディスカバリーを提供できたことで、研修の目的を達成できました。
またプログラムの中ではアセスメントツールを用いた一人ひとりの強み分析も行いました。これにより、受講者は自分自身について、自分の強みは何か、またそれを日々の活動の中でどう活かすことができるか、をより意識するようになったのではないでしょうか。これは受講者の視点から見ても、非常に有意義だったと思います。
プログラムディレクターのファシリテーションも、受講者に大きな影響を与えていました。例えば私たちコーディネーターが受講者のプレゼンテーションを見ていると、「ああ、素晴らしいプレゼンだな」と思うのですが、プログラムディレクターは「なぜ、そう考えるのか?」「要するに何を言いたいのか?」「なぜ、それが重要なのか?」など、受講者の思考を促し続ける質問を投げ続け、適切なアドバイスもしてくださいました。受講者が現状にとどまらず、成長やディスカバリーを続けていくための重要な要素だったと思います。
受講者からもポジティブなフィードバックをもらっています。「今まで参加したプログラムの中で一番良かった」という方もいました。もちろん改善点はありますが、否定的な意見はありません。そういう意味でも、良い成果があったと思います。
菅野さん:
Jituが申し上げたように、受講者からは「とにかく素晴らしい研修だった」というフィードバックをもらっています。
一方で研修の成果は受講者満足度だけではなく、彼らがどのように行動変容するかでも測る必要があります。学ぼうという姿勢や学びを楽しめるマインドがプログラムを通して醸成されており、この点は成果として挙げられると思います。
また受講者の変化ではないのですが、GLP-Dの評判が欧州地域の人事にも伝わったようで、「GLP-Dの詳細を教えてほしい」という連絡をもらっています。ディスカバリーが、徐々に弊社にも浸透しつつあるようです。
菅野さん:
想定以上に若手層にやる気・エネルギーが満ち溢れていること、今後のHondaをけん引するリーダーとしての素養を彼らの中に見いだせたことが、我々にとっては大きな手応えです。
Jituさん:
1年目ということもあり、実施期間中にもいくつかの修正や変更がありました。グロービスの積極的なサポートもあり、このプログラムをただ実行するだけでなく、より良いプログラムにするために継続的に改善することができました。
またプログラムを終えて、2年目に向けてどうすればより良いプログラムに進化できるのか、グロービスと一緒に振り返りを行いました。そこで合意した改善点を次の年に取り入れていきます。
プログラムを総括すると、見直すべき点もありますが、悪い評価は出てきていませんし、プログラム実施後の全体的な印象はとてもポジティブです。実際に、2年目にはプログラム規模を2倍にすることを経営陣に提案し、承認を得られました。このプログラムは有意義なので、より多くの人が参加できるようにしたい、という我々の想いを経営陣は理解してくれました。
菅野さん:
観点が変わりますが、リモートでここまで受講者の意識や行動変容を促す場を設計できるのだという自信にもつながりましたね。
コロナ以前の研修設計では、対面で体験して身に付けてもらう必要がある、という不文律がありました。ですが工夫をこらせば、リモートの研修でも大きな成果を出すことができる。今後は対面とリモートのハイブリット研修が主流になっていくだろう中で、リモートの研修に自信を持てたことは成果です。
Jituさん:
私たちが今重視しているのは、適切な人材に適切な機会を適切なタイミングで提供することです。GLP-Dをはじめとするさまざまな活動は、この適材適所の考え方に沿って行われています。
コロナは非常に厳しい状況をもたらしましたが、このような環境変化はこれからも起こります。急激な変化に伴う難しい課題に対処していくために、迅速に人材を育成する必要があるのです。
同時に、より多様な人材を活かすことも目標に掲げています。女性や外国人の管理職も増やしたいと考えています。そのためには3つの観点があります。まず誰が適任かを見定め、その人材にはどんな強みや課題があるのか、さらに成長していくためにどのような機会が必要なのかを見極めます。そして最後に、その人材にどのように活躍してもらうのかを判断します。
この困難な状況下で人材を見極め、育成するために、GLP-Dは大きな役割を果たしました。このプログラムによって、世界中にどのようなタレントがいるのか、強みは何か、その強みをどう仕事に活かし、成長に繋げることができるのか、を考えることができました。これも組織強化の観点から、我々が新たに得られたものでしたね。
このような研修に継続的に取り組んでいきたいと考えています。他の多くの取り組みと相まって、私たちの目指す「適材適所」をグローバル・ベースで実現することができる。それが、Hondaを強くしていくのです。
菅野さん:
私からは2つ。まず1つ目は、考える力を育成する場の強化・拡大です。「さぁ、考えて議論してください」と言われても、急に考えられるようにはなりませんよね。卒業生たちには継続して考える力・議論する力を伸ばしてもらいつつ、より多くの層にGLP-Dのような場を提供していきたいですね。
2つ目は今回の研修を機に、社内のネットワークの構築に取り組みたいと考えています。GLP-Dを通じて、世界中のどこにどのようなタレントがいるのか、見えるようになりました。その人たちをどうコネクトするか、です。
GLP-Dの受講者と、よりシニア層の研修の受講者・卒業生とのコネクトは、今年のGLP-Dの中で取り組みました。ネットワーク構築の継続・拡大はもちろん、弊社の経営層が若いリーダー層を知るきっかけとなる場の提供も試みたいですね。人材育成や研修の仕組みの中に、リーダー層のコネクションを仕組みとして組み込んでいくということが、より求められていると感じています。
市原さん:
GLP-Dの改善という観点からは、受講者一人ひとりへのアプローチ・フィードバックをより重視していきたいですね。2022年度以降研修規模が大きくなるのでより困難になるとは思っていますが、中島さん、アイステさんとも議論させていただき、より良いプログラムへ改善していきたいと考えています。
GLP-Dの立ち上げは、正直、簡単ではありませんでした。ご存知のとおり、自動車業界は100年に一度の構造的転換点にあります。その中で、ホンダ様の新しい成長を創るリーダー人材をどのように創っていくべきか。菅野さん、Jituさん、市原さんの責任感と真剣さは凄まじいものがありました。決して妥協せず、細部に拘る。一方で、常に“Discovery”の大目的に立ち返り、プログラムの進行をチェックし、必要があれば大胆な修正も厭わない。当然、世界中から集まった受講者は優秀で、本気です。その中で、我々はパートナーとして選ばれた責任を果たさねばなりません。グロービスの価値は何か? 私自身の価値は何なのか? これらの問いに向き合い続け、試行錯誤を重ねた1年間だったと思います。
結果として、受講者一人ひとりに“ディスカバリー”をもたらすことができ、本当に嬉しく思います。同時に、グロービス、そして私自身にも多くの“ディスカバリー”がありました。ダイバーシティ×オンライン環境でのプログラム設計、当日の運営、受講者の変化を追い続ける視点、システム運用やツールの選定など、ホンダ様に限らず、多くの企業のグローバルリーダー育成をサポートしていくためのノウハウを高めることができました。同時に、まだまだやるべきことがあることも。つまり、グロービスや私自身の新たな成長の方向性や課題も見えてきました。チャレンジと成長機会を与えていただいたことに、心から感謝しています。
10年後、20年後、受講者の皆様がどう行動し、ホンダ様にどのような変化を生み出しているのか?そして、社会にどのような価値を創出しているのか? 世界はどう変わっているのか? これらを想像するとワクワク感が止まりません。そして、このワクワク感を現実のものにするためにも、GLP-Dを進化させ続けたいと思います。
GLP-Dのパートナーに選ばれたことは、身の引き締まる思いです。ホンダ様の従来の選抜経営者育成の枠組みに、若手を対象とするプログラムを立ち上げたことは新しいイニシアティブであり、そのプロセスからは多くの発見がありました。私たちはホンダ様の高いクオリティを常に追い求める姿勢に大いに刺激を受け、そしてプログラムを伴走させていただいたことを光栄に思っています。
グロービスは多くの企業の経営リーダー育成に携わっていますが、限られた人ではなく、多くの従業員の学習と成長にコミットしています。つまり、私たちのプログラムの狙いは、すでにビジネススキルを備え、グローバルの実務で成果を出している人材の更なる成長にとどまりません。一人も欠けることなく、多くの従業員の成長機会を創り出すことに拘っています。これはGLP-Dのような、世界中からリーダー人材が集い、ダイバーシティな環境の中での難しい挑戦が受講者一人ひとりに求められるプログラムでは、とても大切な拘りだと思っています。ホンダ様の将来のリーダー人材がラベルを貼られずに、全員で切磋琢磨し、学び、成長していく。このような変化を目の当たりにすると、プログラムが終了した後も、それぞれの持ち場で一人ひとりが成長し続け、そして周囲をインスパイアしていく姿が目に浮かびます。ホンダ様の明るい未来に、大いに確信を持っています。