習慣的に学習することの重要性や楽しさを、次期リーダー候補の皆さんに提供できた
導入事例:NTN株式会社

習慣的に学習することの重要性や楽しさを、次期リーダー候補の皆さんに提供できた

まとめ
業種
  • 精密/医療機器
研修の対象層
  • 部長層
  • 課長層
ご利用サービス
  • 企業内研修
研修の言語
  • 日本語

国内外の拠点をリードする人材育成のため、管理職層を対象とした選抜研修を実施しているNTN株式会社様。その取り組みについて、同社のグローバル人材育成部 企画推進グループ 主査の藤井祐一様とグローバル人材育成部 企画推進グループ担当課長の入江洋行様からお話を伺いました。(部署・役職はインタビュー当時)

 

背景と課題 研修前に抱えていた課題感

藤井さん:
当初の課題は、拠点のマネジメントができる人材の育成でした。当社は生産拠点・販売拠点・研究開発拠点などビジネスエリアを広げ続けています。拠点の所在地も国内だけではなく、アジア・ヨーロッパ・アメリカと広範囲にグローバル展開してきました。その結果、各拠点を統括するリーダーが不足し、マネジメントの面でさまざまな苦労や困難に直面してしまったのです。

グローバル人材育成部 企画推進グループ 主査 藤井祐一様

 

拠点を増やすということはマーケット拡大のチャンスでもあり、当社を飛躍させる機会でもあります。各拠点のマネジメントがうまくいかないという理由で、飛躍の機会を逸してしまうことは避けねばなりません。このようなタイミングで当社役員から「本格的な教育が必要」という声が上がり、研修プロジェクトをスタートさせ、2016年、拠点の社長・リーダーとなる人材を育成するための「経営学校初級編」を立ち上げました。7~8ヵ月を通して、マネジメントの基本を学ぶための研修です。

立ち上げ当初はすべてのカリキュラムを内製で進めていました。管理職に求められるスキル・マインドは、各社のビジネスモデル・社風・経営戦略などによって異なると思います。当社も、当社特有の価値観・考え方・必要なスキルを身に付けてもらいたいと考え、内製ベースの研修からスタートしたのです。

研修を始めてから見えた課題感と改善

藤井さん:
「経営学校初級編」を2期、3期と続けていく中で、外部リソースを活用しなければできないこともあると考え始めました。たとえばマネジメントのベースとなる考え方や伝え方。考え方や伝え方の癖は仕事を通じて身についてしまうため、同じ会社の社員は同じ癖を持ってしまいがちです。そのため同じ会社の社員同士で指摘し合うことは難しく、外部から指摘してもらう必要がありました。

そこで「経営学校初級編」のカリキュラムの一部として、「クリティカル・シンキング」の講座をグロービスにお願いしたのです。

クリティカル・シンキング プログラム概要(経営学校初級編の初回と2回目に組み込み)

クリティカル・シンキング プログラム概要(経営学校初級編の初回と2回目に組み込み)

 

入江さん:
具体的に社内で挙がっていた声は、会議で発言が長い管理職が多いと(笑)。言いたいことだけを話してしまい、本当に伝えるべきことを伝えきれていない人が多かったのです。結果、意思決定に時間がかかってしまう。クリティカル・シンキングの言葉を借りれば「イシューは何か」「キーメッセージは何か」を整理できていないからですよね。

この課題の背景には、当社の製品がベアリングや精密機器といった基幹部品であり、BtoBかつ取引先が限定されていたこともあるかと。どうしても外部との接点や取引先が限定され、言葉を尽くさずとも以心伝心のコミュニケーションが成立しがちです。

一方で話すことが多いというのは、自分の思いをしっかり持てていることの裏返しでもあります。その思いを体系立てて説明・交渉し、社内展開できるようになれば、課題が強みに反転し、当社はもっと良くなると考えたのです。

 

藤井さん:
今後も本研修は改善を続けていきますが、目指すゴールは、各拠点の社長を務めるためのスキルをバランスよく身につけてもらうこと。その思いは、今も変わっていません。

グローバル人材育成部 企画推進グループ 主査 藤井祐一様

グローバル人材育成部 企画推進グループ 主査 藤井祐一様

 

検討プロセスと実施内容 研修プログラム導入にあたり、感じていた心配ごと・懸念点

藤井さん:
グロービスにお願いするという観点では、懸念点はありませんでした。グロービスの通学プログラムを継続利用していたこともあり、平林さん(グロービス担当者)や前担当者の方と「経営学校初級編」について相談ベースで意見交換をしていたからです。グロービスからは、「目指すゴールに対して、どの順序でどのようなスキルを身に着けるべきか」など、さまざまなアドバイスをいただけて大変ありがたかったですね。

そのアドバイスを通じて、「経営学校初級編」にはクリティカル・シンキングが必要だと考えたのです。

 

入江さん:
導入にあたり、グロービスの体験セミナーに参加しました。体験セミナーではクリティカル・シンキングの学びを、講師のファシリテーションのもとで経験できます。受講しながら、当社の従業員はイシューや枠組みを踏まえたコミュニケーションを取れているだろうか、と考えましたね。具体的に何をどのように学べるか経験しておくことで、「経営学校初級編」に組み込んだ結果をリアルにイメージできました。

(左)グローバル人材育成部 企画推進グループ担当課長 入江洋行様(右)グローバル人材育成部 企画推進グループ 主査 藤井祐一様

(左)グローバル人材育成部 企画推進グループ担当課長 入江洋行様
(右)グローバル人材育成部 企画推進グループ 主査 藤井祐一様

 

事前に感じていた懸念点としては、ケースメソッドが当社に合うか、です。自社のビジネスモデルとは異なるケースに対して、受講者がどのように受け止めて取り組むか、気がかりでしたね。

ですが、講師のファシリ―テーションスキルが高いことは体験セミナーで分かっていましたので、進行そのものには不安はありませんでした。また自社特有の思考の癖に気づくには、あえて自社と異なるケースを用いることが有用だと、平林さんからアドバイスをもらいました。結果、やってみようと。

実際は杞憂でしたね。最初は遠慮がちだった受講者も徐々に発言や質問が増えていき、前のめりで参加する姿勢が見られました。

巧みなファシリテーションはもちろん、講師自身が豊富な経験をお持ちという点も功を奏しました。講師の前職の経験を踏まえながら「私の会社はこうでした。NTNさんだとどうですか?」と、自分ごとに落とし込むための問いを投げかけてくれたのです。自身とケースのかい離を感じた受講者は、少なかったのではないでしょうか。

グローバル人材育成部 企画推進グループ担当課長 入江洋行様

グローバル人材育成部 企画推進グループ担当課長 入江洋行様

研修で得られた気づき

藤井さん:
最も驚いたのは、「同質化」ですね。受講者からのアウトプットが驚くほど似通っていたのです。当初から仮説として持っていた、当社の思考の癖が表出した瞬間でした。講師も驚かれていましたね。

社内メンバーが同じ価値観を共有できていることは、考え方によってはポジティブです。進むべき方針が決まった後は、皆が同じ目的に向かってまい進できる。しかし、当社が中期計画として掲げるテーマ「変革」に対して、同質性はネガティブな形で作用してしまうかもしれません。なので講師には、クリティカル・シンキング研修の2日目から意識してご指摘いただくようお願いしました。

グローバル人材育成部 企画推進グループ 主査 藤井祐一様

グローバル人材育成部 企画推進グループ 主査 藤井祐一様

 

成果と今後の展望 研修後の受講者の変化

入江さん:
変化は、インターバル明けの研修2日目で実感しました。クリティカル・シンキングを仕事の中で実践している人が多かったのです。受講者の部下からも、「コミュニケーションの仕方が変わった」という声を聞いています。やはり、実践こそ重要なのだと感じました。

若年層には他社のロジカル・シンキングの研修を入れているのですが、業務内での活用状況を完全には把握できていません。なので、研修の途中にも関わらず、学びの実践を確認できたことに驚きました。

実践という観点からは、「研修フォローアップサービス」(グロービスの提供する復習用プログラム)の導入も良かったのかもしれません。

研修フォローアップサービスは、受講者のメールアドレスに1日1通、全10回の復習課題のメールが送られるというサービスです。私も内容を確認したところ、ただテキストを読むだけではないのですよね。各課題に対して自身の答えを記述しないと先に進めませんでした。研修で学んだことを定着させるためのサービスだと強く感じましたね。

研修フォローアップサービスの概要

研修フォローアップサービスの概要

 

入江さん:
業務に加えて研修フォローアップサービスまで完遂するのは苦労したと思います。ですが結果として、受講者は最後までやり抜き、クリティカル・シンキングの2日目に臨んでくれました。1日目と会場の雰囲気や受講者の顔つきはまったく違っていて、「あの課題があったからこそ、2日目の学びも深まった」という反応もありました。「今回は何を学べるのか」と前のめりな受講者も、1日目に比べると多かったですね。

 

(左)グローバル人材育成部 企画推進グループ担当課長 入江洋行様(右)グローバル人材育成部 企画推進グループ 主査 藤井祐一様

(左)グローバル人材育成部 企画推進グループ担当課長 入江洋行様
(右)グローバル人材育成部 企画推進グループ 主査 藤井祐一様

 

藤井さん:
当初、研修負荷の高さに懸念を示す人もいました。ですが、最後は皆さん喜んで取り組んでいましたね。貪欲に学ぼうという姿勢と学習を喜べるマインドのある人こそ、リーダーになってほしいと強く感じました。その意味では、習慣的に学習することの重要性や楽しさを、次期リーダー候補の皆さんに提供できたと思っています。

今後の取り組み

入江さん:
受講者の意見や我々の目指すゴールを見据えながら、今後も「経営学校初級編」の改善を続けていきたいと考えています。たとえば昨年は1日だったクリティカル・シンキング研修を、2019年度から2日間に増やしました。昨年のアンケート結果がとても良かったからです(笑)。

まずはクリティカル・シンキングを丁寧に学ぶ。そのうえで次のステップとして、たとえばマーケティングなどの科目を準備できればよいのかなと。クリティカル・シンキングの次も見据えつつ、適切にステップアップするための内容・タイミングなどを、平林さんと相談しながら考えています。

 

藤井さん:
若い世代に、クリティカル・シンキング研修を受ける機会を提供したいですね。

現在の受講者は、新拠点ですぐにリーダーとなることを期待されている方々です。なので、研修後すぐに海外に行ってしまう方も少なくありません。本研修で学んだことを今の仕事で実践し、武器として使いこなせるようになるだけの時間を、若い世代の社員には提供したいと考えています。

また、クリティカル・シンキング研修を続けていくことで、社内全体に考え方の基盤を構築したいとも考えています。今受講しているメンバーが、若い世代に学びを伝播し、会社としても社員としても大きく成長する。このような良いサイクルを、「経営学校初級編」からスタートできたら、これほどうれしいことは無いですね。

グロービス担当者の声

平林 徳裕
平林 徳裕

私が本プロジェクトで最初に感じたことは、「本研修の受講を通じて受講者の皆さまには大きく成長していただける」という期待感でした。グローバル企業であるNTN様の選抜研修なので、集まる方は当然優秀な方ばかりです。この方々がクリティカル・シンキングを学んでマネジメントや経営戦略立案に活かせば、どれだけNTN様の企業成長に貢献できるのだろうとワクワクしたことを覚えています。

 

クリティカル・シンキングはしばしば、ロジカル・シンキングと対比されますが、その本質は異なります。クリティカル・シンキングは直訳すると、「批判的な思考」となり、批判の対象は「自分」です。言い換えると「健全な批判精神をもって、自分の考え方・常識・前提条件を客観視する思考法」となります。たとえば他者と共有している前提条件から疑い、何をいつまでにどのように伝えるべきかを組み立てる。このようなコミュニケーション能力は、マネジメントに限らず全てのビジネスパーソンに必須の能力でしょう。

 

新しい学びを得られた皆さまが、これから実務に取り組む中でどのような変革を起こしていくのか、とても楽しみです。

 

また本研修が高評価なのは、事務局のお二人が持つ教育への強い思いがあってこそ、です。私ができることは、お二人の思いを後押ししつつ、受講者の皆さまに実のある研修を提供すること。その結果、「経営学校初級編」の評判が高くなり、教育の重要性が浸透し、NTN様の企業成長につながるのであれば何よりです。

 

今後もお二人とは、密なディスカッションを続けさせていただきたいと考えています。なぜなら時代によって求められるリーダー像は変わるため、研修内容もブラッシュアップさせる必要があるからです。たとえば藤井様にお話しいただいた若手層への研修であれば、若手とベテランの興味・関心・現在持っているスキルの違いや、リーダーになるまでの時間軸を考慮した研修設計が必要かもしれません。

 

お二人との対話を通じて、NTN様に必要な次世代リーダー像の探求を、引き続きサポートできればと思っています。

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