次世代リーダー育成・選抜研修お役立ちコラム
選抜研修の選抜基準と人選の3ポイント

2019.04.18

次世代リーダー育成や経営者育成を目的とする選抜研修。選抜研修を成功に導く上で選抜基準と人選が重要です。人事担当者は、「目的に見合う選抜基準」「適切な人選」「本人の意思確認」の3つのポイントを押さえ、自社の状況に見合った調整を行いましょう。

選抜基準と人選は、選抜研修の成功を左右する

グロービス名古屋校を拠点として組織開発・人材育成のコンサルタントをしている伊藤です。

担当している中部圏では自動車関連を中心に製造業の企業が多く、テクノロジーの進化や環境の変化に適応し、変革を導く経営者や次世代リーダーの育成が重要な課題のひとつになっています。そのため、名古屋校では新たな選抜研修の立ち上げを数多く支援させていただいています。

(関連サービス:次世代リーダー育成

中でも、選抜基準の設定や人選においては、何か一つの正解があるわけではなく、各社の状況に見合った調整が必要となります。その調整のポイントとは「目的に見合う選抜基準」「適切な人選」「本人の意思確認」の3つです。

人選の失敗事例

以下、実際に私が関わった企業「A社」の選抜研修の事例をご紹介しましょう。A社では、次世代リーダー育成を目的として課長層から選抜した人材に研修を実施しました。選抜の公平性を優先し、人事評価の高い社員の中から上位十数名を人選し、研修がスタートしました。

導入のセッションにて、研修の目的と狙いを確認した上で、将来の経営者候補としての心構えの議論を始めた時です。「そもそも、自分は経営者になりたいと思っていません」「この忙しい状況で、なぜ自分がここに呼ばれているのかわからない」といった声が上がり、場の空気が一瞬で変わってしまいました。

このタイミングで選抜の基準、人選が適切でなかったと気づいても、軌道修正が非常に困難になります。このような状況に陥らないようにするために、「目的に見合う選抜基準」「適切な人選」「本人の意思確認」の調整が重要なのです。以下では、それぞれのポイントを解説していきます。

 

ポイント1:選抜研修の目的に見合う選抜基準か?

選抜基準としては、実務能力や実績の評価・日頃のプロセス評価・周囲からの360度評価など、すなわち現状に対する評価だけでなく、意欲や基礎能力など、将来のポテンシャルの要素を盛り込む視点が必要です。

A社の場合、ビジネスは成長期にありましたが、将来的にテクノロジーの進化に伴い組織の変革をリードする人材を育成する必要がありました。しかし、現状の人事評価の基準は主に実務能力重視となっており、人事評価だけを選抜基準にすると必然的に既存事業における実務遂行能力の高いメンバーが集まってしまいます。

しかしながら、選抜研修の目的に照らすと、自社の経営に対する当事者意識や既存のやり方に固執せず、失敗を恐れずに新たなことにチャレンジする行動力をポテンシャルとして有している人材を集める必要がありました。

そのため、選抜基準にしていた人事評価そのものの見直しも並行して実施しました。業績目標に対する実績評価以外に、結果を出すプロセスにおいてどのようなチャレンジ、行動をしているのか、部下とのコミュニケーションや育成に対する評価などの定性面も取り入れるようになりました。

このように、選抜研修で育成したい人材要件と選抜基準にしている現状の人事評価等とを見比べ、研修の目的に見合った内容や項目になっているかを確認し、調整を加えていくことが必要です。

 

ポイント2:適切な方法で人選しているか?

人選方法としては、人事部からの指名・上長からの推薦・公募(論文や面接など)など複数の方法があります。

人選方法により選抜される人材の特徴が異なる人選方法により選抜される人材の特徴が異なる

人選方法により選抜される人材の特徴が異なる

経産省が2017年度に公開した「経営人材育成」に関する調査結果報告書では、経営人材育成の候補者のリストアップの方法として、トップ3は、「上司・部門長の推薦が77.6%、人事による総合的判断が55.2%、過去の人事評価の優秀者が41.8%」という結果が出ています。

人事の判断・過去の人事評価に頼る人選は、納得が得られやすい反面、ポイント1で見たような限界もあります。A社では、初年度に人事部からの指名で人選に失敗した反省を踏まえ、次年度は、上長からの推薦も実施し、人事部とすり合わせを行った上で、候補者を絞り込みました。

上長に推薦を依頼する際にも、恣意的な人選にならないように、選抜の研修の目的と育成したい人材要件を伝え、上長との意識合わせをしっかりと行うことが重要です。また目先の実務が忙しく、短期的に現場を確実に回すことを優先する上長が「現場のエース」を研修に出し渋り、本来、候補者としてリストアップしたい人材が推薦されないといった状況が起きがちです。選抜研修の目的と育成したい人材について丁寧なコミュニケーションを心がける必要があります。

手間はかかりますが、上司層を選抜プロセスに巻き込むと、選抜研修の意義や意味を伝え、受講者の成長を支援する巻き込みが進むという副次的効果も期待でいます。

 

ポイント3:本人の意思確認がなされているか?

上記のように選抜基準を見直し、適切と目される人選をして候補者のリストアップをしても、受講者自身のやる気、想いが十分でなければ、折角の学びの機会も活かされません。研修にやらされ感で参加する人がいると、受講者本人にとってだけでなく、選抜研修の「場づくり」にもマイナスに影響してしまいます。

そのため、上長や人事部から候補者本人へ直接コミュニケーションを取り、選抜研修の目的や意味合い、本人への期待などを伝えた上で、選抜研修への参加意思・意欲を確認する機会を設けることも大切です。

方法としては上長との面談以外にも人事部との面接や論文・レポートにて本人の意思やコミットメントの高さを確認するやり方があります。

A社では、人事部から候補者の上長に対し、選抜研修の目的や意味合いをしっかりと伝えた上で、上長と候補者との1on1の場を設け、本人への期待、選抜研修を通じて獲得して欲しいスキルやマインドを伝え、最終的に本人のやる気・意欲の確認を実施しました。

意思確認のプロセスにおいて、上長からの期待を告げられた上で、選抜研修への参加を断る候補者は少ないのが現状だと思いますが、本人とのコミュニケーションの場を作り、最終的には自分の意思で参加することを決心したというプロセスをしっかりと設けることが重要です。

A社はこのように3つのポイントを踏まえて人選方法を見直したことで、2期目で実施した選抜研修は、非常に意欲の高い受講者が集まり、将来の経営者を志し、熱い議論を交わす選抜研修の場になりました。

 

まとめ:選抜基準と人選は、トライ&エラーで見直すことが重要

選抜者の人選においては、選抜研修を通じて求める人材要件と既存の人事評価の要素とのギャップ、推薦で候補者を選択する際の上長の評価スキルのばらつきなどの難所もあります。また、若手・中堅層、管理職層など、どの層の人に選抜研修を実施するかで、評価基準の重み付けや評価基準に用いる判断材料の有無も異なります。

そのため、唯一絶対の選抜方法があるわけではないですが、上記の3つのポイントをご参考にして頂きながら、トライ&エラーを繰り返し、自社にあった選抜基準や人選方法を見直しながら、より良い選抜研修の場を創っていってください。

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執筆者プロフィール
伊藤 貴章 | Itoh Takaaki
伊藤 貴章

名古屋大学経済学部卒業。

グロービス経営大学院(MBA)修了。大手システム会社にて、小売・流通業向けの店舗系システムの法人営業に従事したのち、コンサルティング会社に入社。中堅中小企業向けの経営診断、中期経営計画の策定支援、金融機関を通じたビジネスマッチング、新規フランチャイズ事業の加盟店開発、フランチャイズ加盟企業へのスーパーバイジングなどに携わる。

グロービス入社後は、グロービス名古屋校のスクール部門にて、新規学生の募集、クラス運営や受講生相談窓口などを担当。現在は、企業向け人材育成・組織開発部門にて、法人営業として幅広い業界への人材育成の支援業務を担当している。


※文中の所属・役職名は原稿作成当時のものです。


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