【JFEエンジニアリング】多様な社員にマッチした「選べる」研修
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グロービス コーポレート エデュケーション
M&Aの増加、雇用の流動化などを背景に、職務経験や受けてきた教育が異なる多様な社員に、いかに効果的な研修を企画するかという課題を持つ人事担当者が増えている。多くの企業において、教育のパーソナライズや最適化が喫緊の課題となっているのだ。
そこで今回は、研修の一部を選択式に刷新して、多様な従業員にマッチした「選べる」研修にしたJFEエンジニアリング株式会社人事部の宗宮賢治さんと村田雄介さんに、変更に至った経緯やオンライン研修の可能性について伺った。
※文中の役職等は取材当時のものです
個人の成長に寄与する研修を模索
JFEエンジニアリングは2002年にまったく文化の異なる川崎製鉄と日本鋼管2社が合併し、2003年にエンジニアリング事業を継承する形で発足した会社です。さらに2009年に工事や設計のサポートなど機能会社を集約、2013年には執務職(一般職)をなくして、全社員を総合職にシフトしました。加えて、ここ5年で500人近いキャリア採用を実施。新卒入社も加えると、本体で働く人の2割が新しい血という状況だったのです。
このように異なる企業文化、バックグラウンド、価値観を持つ人たちが集まったダイバーシティあふれる環境で、画一的な研修を行うことに限界を感じていました。特に、新しい副課長職(入社10年目くらいの層)は構造変化の影響を大きく受けており、仕事に対する姿勢や目標感にかなり個人差がありました。というのも、本社業務に携わって経営教育を受けてきた人もいれば、事務職で異なる研修を受けてきた人、あるいは、工事を効率的に進めるための現場のピープルマネジメントを重視してきた人が混在し、年齢層も30代~50代と幅があったのです。
これまで副課長層には、周りの人を巻き込んでイニシアチブをとれるようなリーダーシップ研修を行ってきましたが、それでは職場に持ち返れるものが少ない、内容が物足りないなどと感じる人が出てきます。そこで思い切って、個々人が必要だと思うスキルを自ら選んで受講するスタイルに変えることにしました。モノづくりから、お客様の話を聞いて要望に応えるソリューションの提案へと業務内容が変わり、より自発的な行動を求められるようになっています。その点でも、手を挙げてもらうスタイルが適していると思ったのです。
主体的に選択できる研修スタイルへ
新しい研修は、90名を対象に6カ月かけて実施しました。最初は、100種類以上のオンライン講座が視聴できる「GLOBIS 学び放題(以下、学び放題)」で知識を習得してもらう。次に、オンラインでディスカッションする。最後に、集合研修に参加してもらう、という3ステップで進めていきました。
オンライン研修は初めてでしたが、人事部内はキャリア採用を含めた新体制になっており、課題に対して良いと思うことは積極的に変えていこうという雰囲気がありました。幸い、弊社では数年前に固定電話をやめて、総合職全員に1人1台iPhoneを支給していたので、ハード面での障壁もありませんでした。また、会社を挙げて業務効率化に向けてIT系システムの活用を促進してきたので、オンライン研修に対する心理的な抵抗感も少なかったようです。最初のうちは、参加者から使い方の問い合わせが多かったものの、1度試してコツをつかむと、すぐに使ってもらえるようになりました。
「学び放題」は、5講座を必須受講とし、あとは任意で、ファシリテーションなどリーダーシップの基礎を学ぶコースと定量分析を用いたリーダーシップ論のコースの2つから選択してもらいました。人事部として一番不安だったのは、本当に、手を挙げて受講する人がいるかということです。そこでガイダンスを入念に行い、経営層の期待感を伝え、変更した理由を一生懸命に説明しました。その結果、想定通りの人数が選択してくれました。
個の力を伸ばすオンライン研修の可能性
オンライン研修では、いわゆるフレームワークの解説だけでなく、パネルディスカッションで最新技術やトレンドを伝えるコンテンツも視聴できたので、担当業務の以外の一般的な知見が身に付けられること、技術系の人でも経営の基礎が学べることなどが、受講者に好評でした。通勤途中にiPhoneで受講した人も多く、時間を有効活用してもらえました。また、地方に長期出張中の人や海外赴任している人もオンライン・ディスカッションに参加できたところは画期的でした。
人事部側は会社として伸ばしてほしいスキルの研修を提供しようとしますが、個々人が学びたいこととは、少しずつギャップも生じます。今回、受講者に自ら選んで受講してもらったことで、我々が想定していなかった各人の興味や指向性が見えてきました。視座の高い人をさらに引き上げる材料にもなりそうです。幅広いコンテンツを用意すれば、1歩踏み出すだけで馴染みのなかった知見に簡単に触れることができ、ニーズや知識レベルの違いにも対応可能です。結果として、持ち返りが増え、やる気も出てきます。こうしたやり方は副課長層だけでなく、入社5年目の層にも広げると、意識づけや自己啓発 のきっかけに活用できるのではないかと思っています。
事業や職場環境が変わっていく中で、研修スタイルも多様化しなければ、受講者のニーズや成長に結びつきません。特に、人員構成や期待役割にばらつきがあり、拠点数が多いといった企業では、個人が選択して多様なコンテンツを学べるオンライン研修は有効です。さまざまな使い方ができるので、プログラム構成や運用方法を改善し、自社により適した研修を作り込んでいきたいと思っています。
担当コンサルタントから
VUCAの時代と言われる変化の激しい時代における人事部は、会社が想定している方向性が正解であると確信が持ちにくい状況にあるとも言えます。加えて、社員の多様性の高まりもあって、階層別研修はすべての人に同じ内容を受けさせるべきものではなくなってきているのかもしれません。
JFEエンジニアリング様は、このような状況の中で、階層別の研修であっても幾つか選択肢を提示し、自分で選ばせる研修ができないかと試行錯誤されていました。その手段としてオンライン研修および動画学習サービスの導入に踏み切られました。
また、デジタルを活用した学ぶ仕組みの副次的な効果として、受講生の学習行動履歴がデータとして蓄積されることが挙げられます。学習データ自体は、直ぐに何らかの判断を下すための情報にはなりにくいかもしれませんが、個人の関心や習熟度合いを示すデータが残ることは、今後のタレントマネジメントにおいてはメリットとなります。
グロービスでは、多様な学習方法を組合わせて、受講する方々に多くの選択肢を提示するソリューションを一緒に考えながら、ご提供させていただきました。
一つの事例ではありますが、同じような悩みを持たれる方々への示唆となれば幸甚です。
※文中の所属・役職名は原稿作成当時のものです。
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