「集合研修(OFF-JT)では人材育成が出来ない」と言われます
- ojt/off-jt
- 中堅社員育成
- 若手社員育成
-
槙本 裕介
グロービス講師
【お悩み】
上層部から「集合研修(Off-JT)で人材育成が出来ない。OJTで人を育てるべきだ」と言われてしまい、研修の企画がなかなか通りません。しかし、実態はOJTと称して現場に任せきり。どうすればいいのでしょうか。(素材メーカー研修企画担当者)
【お答え】
Off-JTでもOJTでも「意図した」人材育成になっているかどうかが大事です。
はじめに
グロービスで組織開発・人材育成のコンサルタントをしている槙本(まきもと)です。これまで150社以上のお客さまと議論してきましたが、「集合研修(Off-JT)で人は育つのか?」という話をよく聞きます。
特に、企業の上層部の方がそのような意見を強く持っていると、人材育成担当者は悩みます。実際には、OJTとOff-JT、どちらが大事なのでしょうか? 本コラムを通じて考えていきましょう。
なお本コラムでの言葉の定義は、以下のように考えてください。
・OJT:上司や先輩の指導のもとで、職場で働きながら行われる訓練
・Off-JT:仕事から離れて行う訓練(教室などで行われる集合研修が典型例)
意図なきOJTの弊害
先日も、あるエンジニアリング企業の人材育成課長から以下の話を聞きました。
「当社の企業文化として、OJTで教育しているので研修は不要だ、というスタンスがある。しかし、実際に現場でヒアリングしてみると、トレーニングといえるような取り組みは行っておらず、仕事を任せ、やり方をつど教える程度。教え方も自己流で、効果的かどうかは不明。環境の進化にも対応できていない。」
このように、「OJTをやっている」というのは「仕事をやっていれば大事なことは自然に覚えていくものだ」という考え方が前提にあり、結果としてトレーニングにもなっているはずだ、と言っているのにすぎない場合が少なくありません。
こういった問題意識を持っていたこの課長は、徹底して現場でヒアリングを行い、実態を把握。今後のビジネス環境を踏まえたうえで、領域ごとにあるべき技術者の人材像とスキルセットを定義しました。そして、それまでの育成体系をゼロベースで見直して、あるべき像に合わせて新たな体系を作り上げ、一気に組織展開を図りました。
意図なきOJTは、属人的な判断のみが優先される状況となり、むしろ害になることもあります。特に広い層に対して意図した人材育成を行おうとすれば、型として形式知化し、Off-JTで習得させることが有効です。
OJTとOff-JTを組み合わせる
その一方で、Off-JTだけで人が育つのかというと、それはNoと言わざるをえません。職場で実業務に取り組みながらトレーニングすることでしか身につけられない能力や経験も当然ながらあります。また、Off-JTで学んだことは、その後職場で実践し続けなければ定着しないということに、議論の余地はないでしょう。
結局のところ、OJTにしろOff-JTにしろ、最終的に育成対象者にどのような行動をとってほしいのか、そのためにどのような知識・スキルを身につけ、マインドセットの変化を起こしてほしいのか、というゴールを、まずは徹底的に考えることが重要です。そのうえで、ゴール到達のためにOff-JTとOJTの両面から総合的にアプローチすることが効果的です。
例えば、あるメーカーでは営業改革のプロジェクトの一環として、計画立案の方法に関する研修や、改革をけん引することを期待される中核メンバーへのスキル強化研修を実施。一方職場では、学んだ方法で営業計画を立案し週次で上司がフォローする、というように、Off-JTをOJTにうまくつなげる仕組みを作り、組織全体として仕事のやり方を変えていくことで、成果を上げています。
「研修」ではなく「組織改革プロジェクト」で提案してみましょう
最後に、「研修」がどうしても受け入れられないという上層部を説得するときには、「研修」と呼ぶのではなく、例えばこの企業のように「組織改革プロジェクト」という名称で企画してみてはいかがでしょうか。
大事なのは、やはりゴールを共有しそこに到達するための最適な手段を選ぶことです。そして手段には、その目的をより強く意識できる名称を用いたほうが効果的な場合があります。
(参考:『人事管理入門』(今野浩一郎、佐藤博樹著、日本経済新聞出版社))
※文中の所属・役職名は原稿作成当時のものです。
こちらの記事もおすすめ
リスキリング研修とは?カリキュラム例と3つの方法・実施するステップ
テレワーク下でマネージャーに求められる3つのスキルと育成方法
人材育成担当者が知っておきたいSDGsの基礎
人材育成施策の企画前に押さえたい、4つのフレームワーク
自己啓発制度(選択型研修)を活用した個人のキャリア開発のポイント
「内向き社員」を変える越境学習のススメ
事例紹介
日経225の88%の企業へ研修サービスを提供
企業内研修有益度
評価 2024年3月「テーラーメイド型プログラム」を除く平均値
導入企業数
3,300
社/年受講者数
43.8
万名/年スカイマーク株式会社
スカイマークらしい人財育成体系をゼロから構築! 航空業界におけるチャレンジャー企業として成長を続ける
日本生命保険相互会社
「自ら学び、社会から学び、学び続ける」風土改革への取り組み
三菱重工業株式会社
受講者から役員を輩出。ジョブアサイン連動型タレントマネジメントで「未来を起動する」次世代リーダーを早期育成
伊藤忠商事株式会社
世界各国で活躍する社員の自律的なキャリア形成をするために必要となる、経営スキルを磨く場を提供
株式会社大創産業
トップダウンから脱却し、自律自考のできる次世代リーダー集団の育成
株式会社コロワイド
非連続の時代を生き抜くために管理職がビジネススキルを磨き、経営視点をもつリーダーになる
SAPジャパン株式会社
カスタマーサクセスを追求するマネージャーの育成を通じて、日本企業のグローバル化を支援する
レバレジーズ株式会社
360度サーベイで75%の受講者がスコアアップを実現!自らの課題を意識した学びで、受講後の行動が変化
富士通株式会社
DXカンパニーへの転換を加速させた、役員合宿の取り組みと効用
セミナー・イベント
無料の受講体験や育成・研修に関するイベントをセミナーで実施しています
セミナー開催予定
コラム
グロービスが培った人材育成の知見を、課題解決のヒントにお役立てください