人材育成お悩み相談室
問題解決の型を研修で教えても、仕事の質が向上しません

執筆:大崎 司

2018.10.18

グロービスの組織開発・人材育成コンサルタントが、人材育成担当者の方からよくいただくお悩みにお答えします。

【お悩み】社内には、問題解決の手法や方針管理の定型シートなどの「型」が整備されていますが、みんな機械的に欄を埋めるだけ。いくら研修や職場実習を行っても、表層的な理解に留まり、より質の高い仕事に結び付きません。

 【お答え】「型」=様式という認識を変えましょう。そして、なぜその型を使うと良いのかという意味(Why)を腹落ちさせることが重要です。

 

グロービス名古屋校を基点に組織開発・人材育成のコンサルタントをしている大崎司です。担当エリアの中部圏では製造業の会社が多く、トヨタ生産方式をはじめとする、優れた「型」が開発され、業務の効率化や品質向上に活用されてきました。その一方で、そうした型が正しく理解されない、形骸化しているという悩みもよく伺います。

グロービスの問題解決研修

 

◆「型」=様式と認識していると問題解決力は高まらない

例えば、ある企業では、新入社員、3年目の社員、中堅社員を対象に研修を行い、最終日の発表会で、研修で学んだ問題解決の型を使って提言することになっていました。まじめに取り組んでもらうために、発表内容は昇格評価の一部になっているのですが、職場に戻ると、こうした型が日常業務に正しく用いられることは、まずありません。上司が型についてコメントするのは、昇格や決裁に有利な書き方についてのみ。研修や職場発表会、決裁など限られた場面で使う様式とみなされているのです。このため、型に沿った資料を形式的に作成できても、本人の問題解決力は高まりません。

ここから、さらなる問題が生じます。こうした人がそのまま昇進・昇格すると、部下の問題解決を正しく支援・指導することができないのです。結果として、組織全体の問題解決力も落ちていきます。

では、どうしたらこの負の連鎖を断ち切ることができるのでしょうか。

私がお薦めしたいのは、なぜその型を使うのかという意味を腹落ちさせるとともに、自分なりに消化させるステップを入れることです。

 

なぜその型を使うのか(Why)を考える

しっかりした型があると、それはどのような内容か(What)、どのように使うのか(How)ばかりを教えがちです。それだけでは、知識として理解できても、自分のものになっていません。会社が置かれた現状や日々の仕事の中で、なぜその型を利用するとよいのかという“Why”を問い、自らの頭で考え、腹落ちさせることが重要です。

関連コラム:研修をしても、仕事での実践が三日坊主で終わりそうです

たとえば、自動車関連分野は今、コネクティビティ、電動化、自動運転、シェアリングなど新しい概念が登場し、100年に1度の変革期と言われます。こうした大きな環境変化に対応しようと、各部署がそれぞれ対策を考え、関係部署にも協力してもらおうと掛け合うのですが、調整にめちゃくちゃ時間がかかる。個々の対策は良くても、合わせると全体最適にならない、といったことがよく起こります。

ここで役立つのが、問題解決の型です。これは、あるべき姿の特定、問題の設定、対策の立案という手順で考えるためのものですが、実は各部署や個々人が対策を考えたときにも一通り使っていたはずです。しかしもっと有効なのは、関係部署の人たちで集まって、一緒にあるべき姿、現状の問題や真因を議論し共有するための枠組みにすること。そうすれば、後は各部署で対策を考えたとしても、大きなブレはなく、調整もスムーズにできます。

このように応用できるのは、問題解決の型を「ある局面で機械的に使う手順」ではなく、「衆知を集めた組織の共通言語」だと理解しているからです。自動車関連業界では専門性が多岐にわたり、細分化されていますが、だからこそ、部署を超えて効率的に協働をしていくために型が必要になるのです。

 

◆利用上の注意点を自分なりに考える

なぜその型を使うのか(Why)の次に、どのような内容か(What)とどのように使うのか(How)の理解に進みます。ここで大事なのが、その型に沿った行動をする際に、陥りがちな問題は何か、どうすればそれを克服できるのかを、自分なりに考えてみることです。

しっかりとした型がある企業ほど、陥りやすいポイントや指導方法について豊富なテキストが揃っていることが多々あります。しかし、人間は面白いもので、他の人からタダで与えられたものに、あまりありがたみを感じません。どれほどわかりやすく、素晴らしいテキストであっても、ついつい机の中にしまい込んでしまうのです。

一方、自分の頭で考えたものは、記憶に残り、気をつけよう、使ってみようというマインドが高まります。したがって、テキストほど完璧ではないにしろ、自分で大事なポイントを考え、チェックリストを作ってみることがお薦めです。

Whyを腹落ちさせ、その後、メンバーが自らの頭でWhatとHowを考え、さらにチェックリストを作るよう促すことで、型の本質を理解し、正しく実践でき、継続的な活用にもつながります。そして日々のルーティンワークを、応用の効くクリエイティブ・ルーティンワークに変え、組織としての問題解決力、マネジメントの精度やスピードが向上していくよう、ぜひWhyから考えさせてみてください。

 

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執筆者プロフィール
大崎 司 | Tsukasa Osaki
大崎 司

電通国際情報サービスにてITの企画営業に携わった後、電通イーマーケティングワン(現 電通デジタル)、電通コンサルティング、2社のコンサルティングファームの立ち上げに関わる。
電通コンサルティングでは、関西オフィス責任者も務め、通信、エネルギー、ヘルスケア、経産省クールジャパン採択プロジェクトなど、広範なクライアントに対し、中期経営計画、成長戦略、新規事業戦略などのコンサルティングを実施。
現在は、グロービス法人部門にて、大手自動車会社をはじめ、中部圏の様々な業種・業界のクライアントに対して、人材育成面でのコンサルティングを行いつつ、経営・マーケティング戦略領域のコンテンツ開発にも携わっている。


※文中の所属・役職名は原稿作成当時のものです。

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