人材育成お悩み相談室
社員の「考える力」が弱いのです…仕事における考える力をつける(鍛える)には?

執筆:綿貫 昇子

2018.04.20

グロービスの組織開発・人材育成コンサルタントが、育成担当者の方からよくいただくお悩みにお答えします。

【お悩み】

うちの社員はMECEやロジックツリーなどを学び、論理的に考えるためのツールの存在は知っているのですが、答えのない状況や経験のない状況になると、パソコンがフリーズするかのごとく思考停止に陥ってしまいます。仕事上の考える力をつけさせる(鍛える)には、どうすればいいのでしょうか。

【お答え】

育成企画を立てる前に、わが社に求められている“考えるべきこと”とは何か、【あるべき行動】を整理してみましょう。「プロセス分解」のアプローチがお勧めです。

グロービスの法人事業部で組織開発・人材育成のお手伝いをしている綿貫です。これまでに100社を超えるお手伝いをさせて頂きましたが、お客様からたびたび「うちの社員は“考える力”が弱いが、どうやって育成していけばよいか?」というご相談を頂きます。
よくよくお話をお伺いすると、論理的に考えるためのツールはすでに習得済み。しかし実践ではうまく使えていない。こうなると人事としては「ロジックツリーや問題解決をもっと学ばなくては」という発想になりがちです。

このようなときに私がよく用いるのは、「例えばどんな状況ですか?」という質問です。どのような場面で何を考えていないことが問題なのかを、聞く側にも情景が浮かぶような生々しさで具体化することが重要です。具体化することで逆に「自社が “考えるべきこと”とは何か」が具体的に分かるからです。

いわゆる【あるべき行動】を整理しましょうという話です。「な~んだ、そんなことは知ってるよ」と思われた方も話はここからです。逆に、「何だか難しそうだな」と思われた方は心配ご無用。「プロセス分解」というアプローチを使えば、汎用性が高く、それでいて企画可能な程度に、「あるべき行動」を具体化することができます。2つの事例で、そのプロセスをご紹介しましょう。

●例1:「うちの社員は、視野が狭くて、仕事に対して考えることを知らないんですよ…」

大手金融業のA社は効率性が求められる事業特性から、分業による細分化や定型フォーム化が進められてきました。その一方で、社員は目の前の定型フォームを埋める作業をこなすばかりで、ビジネス状況が変化して定型フォームが不要な場面でも、その必要性を疑いもせずに業務を進めてしまう傾向があり、本質的な改善活動が生まれてきません。

A社に求められている“考えるべきこと”とは何でしょうか。順を追って、プロセスに分解してみましょう。
まず、その事業に対して、自分が所属する組織と担当する仕事(業務)がどのような役割を果たすかを理解する必要があります(①役割理解)。次に、自分の組織と業務の役割に照らして、現状の業務フロー全体にはどのような問題があるかを考えます(②問題の特定)。そのうえで、業務フローを変更/修正して組み立て直すなどの、解決策を具体化し実行します(③解決策の立案、実行)。
A社に必要なのは、この一連のプロセスで考えることです。「プロセスを俯瞰する観点」や「因果関係を正しく見極める力」であり、ロジックツリーやMECEといった考え方を磨くだけでは足りないことが分かりますよね。とすると、「論理思考力」に加えてマーケティングや経営戦略などビジネスそのものの流れを学ぶことが必要かもしれません。そのような経験を何回も積ませることで仕事における考える力を鍛えることができます。

●例2:「とにかくHOW思考で、考えることをしないんです…」

B社は大手広告業で、圧倒的な行動量とスピードで市場シェアを獲得してきました。その成功体験が今なお組織に根強く残っています。しかし、以前のように市場の伸びが見込めず、競合他社も力をつけてきた中では、長年培ってきた強みでは成果が出せなくなってきました。営業職に限らず、社員はみんな高い目標と強い達成意欲を持ち、走りながら考えるという姿勢で一生懸命に取り組んでいますが、問題やその原因を捉えないまま、既知の打ち手に頼る傾向があります。

B社に求められている“考えるべきこと”とは何でしょうか。プロセスに分解しながら考えていきたいと思いますが、A社さんのときよりももう少し複雑です。競争環境が厳しくなっているということですから、そもそも一個人の課題ではない可能性があるのです。戦略の課題なのか、実行の問題なのか、その場合、組織のトップ・ミドル・プレイヤーのどの層が課題なのか、あるいはその間の連携にあるのか…。個人の仕事のあるべき行動プロセスというより、複数の関係者に分ける観点から分析が必要です。それなしに、一足飛びには「営業担当者の問題解決力」が課題であると決めつけても、それこそ「既知の打ち手ありき」に陥ってしまいます。この場合は、考える力を鍛えるというよりも、原因の根本を特定すべきです。

このようにあるべき行動をプロセスに分解して落とし込むことで、本当の課題は何なのか、解決した結果何を実現したいのかが、人事部様にも明確になります。また企画の再現性を向上させるとともに、育成すべき箇所の優先順位が付けやすくなるというメリットがあります。企画のはじめに、ブレーンストーミングがてら、こうした視点も取り入れて頂ければ幸いです。

 

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執筆者プロフィール
綿貫 昇子 | Shoko Watanuki
綿貫 昇子

株式会社リンクアンドモチベーションに入社、投資家向けコンサルティング事業にて大手上場企業を担当。グロービス入社後は、法人企業向け事業に従事。化学、機械、自動車、消費財、金融、IT、広告等幅広い業界を担当し、中期経営計画や戦略実現の支援を目的とした人材育成体系の構築支援、研修プログラムの企画・設計・実施を行う。その他、クリティカル・シンキング、ビジネス・プレゼンテーション等、思考系領域のコンテンツ開発に携わる。

筑波大学大学院スポーツ科学専攻修了、グロービス経営大学院経営研究科修了(MBA)
米国CTI認定 プロフェッショナル・コーアクティブ・コーチ 応用コース修了


※文中の所属・役職名は原稿作成当時のものです。

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