東洋製罐グループホールディングス株式会社
智と軸を磨き、グループ会社の垣根を越えられる次世代リーダーの育成
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東洋製罐グループの将来を担う中核人材を育成するために、2003年から選抜型次世代リーダー育成研修を続けている東洋製罐グループ様。その取り組みについて、お話を伺いました。(部署・役職はインタビュー当時)
【東洋製罐グループホールディングス様】
写真中左:人材開発室長 野間 靖郎様
写真左:人材開発室 マネージャー 岩﨑 裕也様
写真右:人材開発室 橋本 祥子様
【グロービス担当コンサルタント】
写真中右:青木 茂嘉
- 導入前の課題
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- 市場のシュリンクもあり、バブル崩壊の1994年をピークに売上が少しずつ落ちていた
- 2013年に東洋製罐グループがホールディングス体制に移行することもあり、グループ間連携が重要になっていた
- 研修内容
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- 同じグループの社員であることを認識してもらうため、研修冒頭に経営トップや経営陣との対話を実施
- 圧倒的な当事者意識を持ってもらうために、マネジメント・スクールへの派遣を併用
- 成果・効果
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- 「所属企業や職種が違う人たちと一緒に働くことが当たり前」という価値観が浸透してきた
背景と課題
市場のシュリンクもあり、売上高が減少。将来の経営を担う人材育成が必要だった
野間さん:
2003年ごろの当社の問題意識として、売上高の減少がありました。市場のシュリンクもあり、バブル崩壊の1994年をピークに売上が少しずつ落ちていたのです。市場環境が大きく変化しているのに前例踏襲型で事業を続けていては、会社の成長が止まってしまいます。将来の経営を担う人材育成が必要だという危機意識から、次世代リーダーを育成するための選抜型研修「Toyo Seikan Business College(以降TSBC)」がスタートしました。
その後、2009年ごろにグループ間連携が課題として挙がってきました。2013年に東洋製罐グループがホールディングス体制に移行することもあり、準備が必要だったわけです。その一環として、グループ内で共通した教育体系を構築したり、選抜研修で会社の壁を越えた交流をしたりといった取り組みが始まりました。
こうした背景から、TSBCをグループ全体の選抜研修「Toyo Seikan Group Business College(以降TSGBC)」へブラッシュアップさせました。2019年度で8期目を迎える、社内でも注目度の高い研修です。
グループ全体の将来を担う人材の育成と、会社の壁を超えた交流を促すことが、本研修の目的
野間さん:
本研修の目的は2点あります。
1つ目は、会社単体ではなくグループ全体の将来を担っていく人材「中核人材」の育成です。中核人材とは、具体的には智と軸を持った人材を指します。智は、変化に柔軟に対応してビジネスを推進する力。軸は、リーダーシップを発揮して組織を動かし、成果を出す力です。
2つ目は、会社の壁を越えて社員の交流を促すことです。もともと当社グループは、容器別(缶、ペットボトル、ビン、紙容器など)に会社が分かれているためか、お互いにライバルとして競い合ってきました。またホールディングス体制になる前までは、親会社の東洋製罐の存在感が大きく、目には見えない上下関係のようなものがありました。ホールディングス体制になった後も個社意識が強く、この雰囲気を取り払って事業会社として対等・並列だという価値観を浸透させたかったのです。
検討プロセス・実施内容
受講者たちに「私たちは同じグループの社員である」ことを確認してもらいたい
野間さん:
当初懸念していたのは、グループ会社間の関係性です。先ほども申した通り、TSGBCが始まった当初は個社意識が強く、グループ連携のあり方がわからない、という雰囲気が残っていました。
岩﨑さん:
他社への警戒心や、自分の会社のことをメインで考えたいと思ってしまうのは仕方がないことかもしれません。TSGBCを通じて、受講者たちに「私たちは同じグループの社員である」ことを確認してもらいたいと考えていました。
その一環として、研修冒頭には経営トップや経営陣との対話をカリキュラム内に入れています。弊社の役員は実はフレンドリーなのですが、実際に会わないとわからないですよね。経営対話を通して各会社の役員の人柄に触れることで、会社間での余計な警戒心や心のバリアを取れると考えています。
野間さん:
TSGBCを重ねるごとに、グループ間の壁や溝、会社間の上下関係が感じられなくなってきたと思います。もちろん、ホールディングス体制になってから年数が経ったという背景もあるかもしれません。しかしTSGBCによって、胸襟を開いて話し合える関係性が構築されていることも大きいと感じています。
圧倒的な当事者意識を持ってもらうために、マネジメント・スクールへの派遣を併用
野間さん:
本研修で大切なことは、圧倒的な当事者意識を持ってもらうことだと考えています。自分たちがやらなければ誰がやるのだ、という意識を高めることで、学びの質も高まりますし、研修と実務をつなげる原動力にもなるのです。当事者意識を高めるためにどういった内容が必要か。1年を通じた研修カリキュラムで何を学び、何を考えてもらうのかー事務局は毎年検討を重ねています。
改善の一例としては、TSGBCの3期からグロービス・マネジメント・スクールへの派遣を併用しています。他流試合を通じてハードな経験を積み、視野を広げたうえでTSGBCに臨んでもらおうという意図です。また、受講者のモチベーション・マインドにとってもポジティブな影響を与えています。他社の意欲の高い方々と意見を交わして刺激を受け、その刺激を社内に持ち込み、TSGBCに高い意欲をもって望む、という好循環が起こせています。
野間さん:
他には、最終発表のレベルを上げるための工夫も力を入れています。長く続いている研修なので、過去の延長からの発想ではテーマが重複してしまうこともあります。しかし受講者には中核人材として、今、当社に必要なテーマについて考えてもらいたい。
最近では、青木さん(グロービス担当コンサルタント)とも相談して、経営陣との対話のコマを年5回に増やしました。狙いは、自社の目指すべき姿と経営課題を考える起点としてもらうことです。したがって、経営対話で話してもらう内容にもこだわっています。たとえばホールディングスは事業会社に比べて、何をしているか外部からわかりづらいですよね。そこで、ホールディングスの取り組みを経営対話の中に取り入れつつ、東洋製罐グループ全体の方向性を話し合う場にしています。
経営対話で登壇する役員は、その多くがTSBCもしくはTSGBCの卒業生です。ホールディングス社長の大塚はTSBC 1期の受講者ですし、私もTSGBC 2期を受講しました。本研修の負荷を体験した上で対話をしているので、よい一体感が醸成されています。TSBCとTSGBC合わせて約260名の卒業生ネットワークは、グループにとって大きな財産になっています。
成果と今後の展望
「所属企業や職種が違う人たちと一緒に働くことが当たり前」という価値観が浸透してきた
岩﨑さん:
研修を受ける前の受講者たちは、「自分が働くフィールドは個社の中だけ」という意識を持っていることが多いように思います。しかし毎月少なくとも1回集まり、それぞれの会社の社員と交流を重ねる中で、「所属企業や職種が違う人たちと一緒に働くことが当たり前」という価値観が浸透していきます。
たとえば急に他社への出向辞令が出たとしましょう。TSGBCの受講者は、異なる環境下であってもスムーズに自身のポテンシャルを発揮できるはずです。グループ間連携を重視している当社において、本研修の効果はとても大きいと感じます。
野間さん:
本研修では各社の社員が混在する形でチームを組成しています。お互いに敬意を払いながらディスカッションしたり、チームの垣根を超えてアドバイスし合ったりしている光景を見ると、東洋製罐グループの一体感は、確実に醸成されていると思いますね。
岩﨑さん:
また本研修の特長として、研修の雰囲気が非常に明るいということが挙げられます。青木さんの絶妙な雰囲気作りが大きいですね。時には受講者の立場で優しく寄り添い、時には講師と受講者の間に伴走者として入り、時には講師の代わりに指導してくださる。結果として、受講者同士の心の垣根が取り払われています。
橋本さん:
私は本研修の途中(第3回)からジョインしました。受講者がいきいきと参加している姿がとても印象的だったことを覚えています。「講師からも他の受講者からも学ぼう」「自分からも有益な情報を発信していこう」という関係性が、第3回の時点でたしかに感じ取れました。
それを後押ししてくださっているのが、ずっと伴走してくださる青木さんなのだと思っています。たとえば研修の後に青木さんがお勧めの本をご紹介してくださるなど、学ぶ雰囲気を醸成してくれています。
野間さん:
青木さんに限らず、歴代のグロービス担当コンサルタントの方々は、東洋製罐グループのことを研究し、心から当社のことを考えてくれます。毎回的確なアドバイスをいただけるため、これだけ長く続いていながら研修内容はマンネリ化しません。そのまま弊社に入社してもらいたいと思うぐらい熱くグループの未来を語っていただけるので、パートナーとしてとても頼もしいですね。
また当社では、中核人材マネジメントに注力しています。優秀な人材を「見つけて、育てて、配置する」、いわゆる人材の見える化ですね。その一環として、青木さんからは研修後、受講者の特徴や傾向をまとめたレポートを作成・提出いただいています。人材の可視化情報を蓄積することで、受講者のネクストキャリアのポジティブな検討材料として活用したいと考えています。
東洋製罐グループの中で自分のキャリアをどのように描けるのか、研修を通じて伝えていきたい
野間さん:
当社の人事システムは大きく変わろうとしています。2021年の新卒採用(大卒)から、ホールディングス籍で一括採用して各社に配置していくグループ採用に切り替わる予定です。そうすると、採用・育成・配置といったヒューマン・リソース・マネジメントにおいて、グループ間で一気通貫の仕組みを構築する必要があります。従業員のキャリアも、多様な道が開けるでしょう。東洋製罐グループの中で自分のキャリアをどのように描けるのか、研修を通じて伝えていきたいです。
また、ダイバーシティの導入も必要だと考えています。たとえば女性メンバーや海外赴任経験があるメンバー、若手層を増やして、多様な価値観の醸成や、多様なキャリアを考える場にしたいですね。
TSGBCに対する当社の経営層の関心は、年を重ねるごとに高まっています。発表会を聴講する役員が年々増えていることからも、関心の高さが伺えます。受講者からは「順番が回ってくるのを待っていました」というモチベーションの高い声も聞かれました。社内の期待に応えられるよう、引き続きグロービスや青木さんと議論を重ね、よりよい研修に磨き上げていきたいですね。
担当コンサルタントの声
青木:
私が本プロジェクトで感じていることは、事務局の皆さまへの「感謝」です。TSGBCは次世代リーダー育成のための研修として、東洋製罐グループホールディングス社長の大塚様をはじめ、多数の役員の方々を輩出してきた実績のあるプログラムです。そのようなプログラムに関与し、事務局の皆さまと議論・共創できていることは、大変ありがたいことです。
私が意識していることは、受講者一人ひとりの状態像(考えや意識の変化など)を把握するために、密にコミュニケーションすること。その中で、学びやエネルギーをいただくことが多いです。印象に残ったエピソードでいうと、たとえばこういったことがありました。ある受講者が、懇親会の場でポロっと涙を流したのです。「どうしたのですか?」と聞くと、「自分はもっとできるはずだと思っていた」「悔しいです」と。全力で研修に挑む圧倒的な当事者意識と、成長のタイミングに立ち会えたことで、私自身も強いエネルギーをもらいました。今後もこのように東洋製罐グループホールディングス様の未来の経営を担う、次世代リーダーの成長を後押ししていきたいです。
今後はグループでの採用をスタートすることもあり、一気通貫の育成体系についてプランニングが進んでいくかと思います。グロービスは研修・育成だけでなく、組織・風土づくりや人材マネジメントについても豊富な知見・事例を揃えていますので、議論・情報提供などできる限りサポートする所存です。
事務局の皆さまとの議論を通じて、東洋製罐様のご期待以上のものを提供し続けていきたいですね。
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