株式会社クボタ

「クボタらしい戦略人事」を自ら描く。問い続ける文化で未来の競争力を育む

業種
  • 機械/プラント
サービス
  • 集合研修
研修対象
  • 一般社員層
言語
  • 日本語
株式会社クボタ
導入前の課題
  • 経営の転換期を迎え、新たな戦略の実現に向けた「事業に資する人事」への転換が必要だった
  • 戦略人事の必要性を認識しつつも、クボタにおける戦略人事の定義や取るべき行動の言語化ができていなかった

研修内容
  • 経営環境をふまえて人事戦略を描けるよう視座を上げること、および戦略人事としての自覚を持つことをゴールとした
  • 受講者は公募制で集め、意欲と自主性を持った人事パーソンが参加した
  • 研修後の行動変容に繋がるよう、セッションの場で学ぶだけでなく、事業部へのヒアリングや、上司に対する提案を研修の一環として実施した

成果・効果
  • 受講者から、経営から現場までの「縦」の繋がり、人事機能同士の「横」の繋がりを考えることを意識できるようになったという声が挙がった
  • 人事パーソンが自ら率先して行動し、変えていく気概が高まった
  • 部門や拠点を越えた人事パーソン同士の関係性を構築できた
  • 最終発表会の視聴希望者が110名以上集まり、戦略人事の取り組みに対する人事部門全体の関心の高さがうかがえた
  • 2期以降の企画も始まり、継続的な戦略人事育成の取り組みに繋がっている

経営環境が大きく変わる中、「事業に資する」人事へ変革するために、戦略人事の育成を行っている株式会社クボタ様。その取り組みについてお話を伺いました。(部署・役職はインタビュー当時)

【株式会社クボタ様】
写真中左:人事部 人財開発室 人財開発課 山中 駿様
写真左:人事部 人財開発室 人財開発課 田中 佑一様
写真中央:人事部 人財開発室 人財開発課 西村 爽香様

【グロービス担当者】
写真右:大矢 雄亮
写真中右:ピエ 七海

背景と課題

経営の転換期を迎え、「事業に資する人事」への進化が求められていた

山中さん:
当社は経営の転換期を迎えており、環境変化に柔軟に対応するとともに、新たな戦略を実行できる組織づくりや人財育成が喫緊の課題となっています。事業部単位で迅速な意思決定ができる組織になるために、我々人事部門にも大きな変化が求められています。

これまでの人事の役割は、いわゆる管理業務が中心でした。もちろんその重要性は今後も変わりませんが、激しく変化するこれからの事業環境においては、全社戦略や事業戦略の実現に向け、事業部のパートナーとして人事戦略を描くことも必要です。人事に携わる全社員が「事業に資する人事」という自覚を持ち、能動的に行動を起こさなければなりません。

こうした課題意識に基づいて、我々3名から上司に提案し、戦略人事を育成する取り組みがスタートすることになりました。これまで具体的な打ち手には着手できていなかったものの、上司や人事部長も「人事が変わっていかなければならない」という課題感を抱いており、我々の提案に賛同してもらえたことはありがたかったです。「人的資本経営」というテーマが全社で重要視されていたことも追い風となり、本研修の実現に至りました。

山中さんイメージ

戦略人事の定義が曖昧な状態から、企画がスタート

田中さん:
本研修の企画にあたり、最初に向き合ったのが「クボタにとっての戦略人事とは何か」という問いでした。HRBP、戦略人事という言葉が世の中で聞かれるようになり、社内でも話題に挙がることはあったものの、当社における戦略人事の定義や位置付けは曖昧なままだったのです。

山中さん:
社外に目を向けると、戦略人事の役割については様々な定義があります。ただ、どの表現もクボタに当てはめると腹落ちしませんでしたし、我々企画者だけで決めてしまうのも危険だと思っていました。「事業に資する人事」であることに異論はないのですが、それは具体的に何をすることなのか。コーポレートにおける戦略人事と、事業部の戦略人事、そして工場の現場が担う戦略人事では、少しずつ違うものになるだろうという仮説もありました。

グロービスには、この抽象度の高い相談を持ちかけるところから議論が始まりました。「クボタにとっての戦略人事とは」という曖昧な問いをスタート地点として、ゼロから研修を設計することになりましたが、我々の考えや思いに共感いただいたことがありがたかったです。経営視点で人財育成を考えるアプローチはグロービスならではですし、我々の漠然とした課題感の本質を一緒に探し求める姿勢を心強く感じました。「良い会社とは、人事から各事業部に働きかけができる会社である」という大矢さん(グロービス担当コンサルタント)の言葉にも深く共感し、本研修のパートナーとしてご一緒することに決めました。

田中さん:
グロービスの立場としては、戦略人事の定義が曖昧な状態から議論を始めるのは、手間がかかることだったと思います。それでも、大矢さん、ピエさん(グロービス担当コンサルタント)が真摯に向き合い続けてくれたおかげで、我々の知見がどんどん深まったように感じています。この議論のプロセスがあったからこそ、「自分たちは、こういうことがやりたかったんだ」という気づきが多く得られました。

田中さんイメージ

検討プロセスと実施内容

「自社にとっての戦略人事とは何か」を問い続ける文化醸成を目指して

西村さん:
本研修の大きなゴールは、「視座を上げる」ことです。経営や事業の方向性を理解したうえで、将来に向けて必要な人事戦略や施策を提言できるようになること。そして、戦略人事としての自覚と、現場で実践していく意思を持つことを目的としました。

戦略人事育成の研修カリキュラムとして上級・中級・初級の3段階を設け、本研修はそのうち上級プログラムの位置付けです。メインの対象者は、これからクボタ人事部門が変革していく上で重要となる人事担当者です。彼ら・彼女らが近い将来リーダーになるにあたり、この機会に戦略的思考を磨いてもらいたいと考えました。

西村さんイメージ

田中さん:
先ほど、当社における戦略人事の定義が曖昧であったという話をしましたが、最終的に、本研修の実施にあたって明確な定義を決めて提示することはしませんでした。クボタにおける戦略人事の定義そのものを、研修の中で受講者自身に考えてもらうことにしたのです。本研修を通して、「戦略人事の役割とは何か」「自身の立場においてどのような行動をすべきか」を問い続ける文化の醸成を目指しました。

その理由は、変化が激しい時代においては、戦略人事の役割を定義した瞬間から、その定義の陳腐化が始まるからです。今年決めた役割が、来年の事業環境においても求められるとは限りません。また、事業が多岐にわたる当社では、コーポレート人事、事業人事、工場人事など、部門や拠点によって求められる活動内容が異なるため、クボタの戦略人事を一言で表す難しさもありました。そこで、戦略人事の定義をあえて曖昧にした状態で、必要な知識や心構えを学ぶだけでなく、定義そのものについても考える研修を行うことにしたのです。

公募制にし、意欲と主体性のある受講者を集めた

山中さん:
受講者は、公募制で集めました。指名制にすると、どうしても受講者が受け身になってしまい、やらされ感が出てしまうと思ったからです。抽象度の高いテーマに向き合うプログラムであるため、本人の意欲と主体性がないと効果が得られないと考え、本人が上司と話し合ったうえで応募してもらう形式が最適だと判断しました。

田中さん:
公募制でよくある懸念に「受講者が集まらないのではないか」というものがありますが、その心配はしていませんでした。これまでの研修などの様子を見ていても、当社の人事パーソンは「学びの機会を活用して、人事として活躍したい」という思いがあることを感じていたからです。

西村さん:
受講者の上司にあたる管理職層もメンバーの教育を重視しており、本研修の内容を我々に質問してくれることもありました。本研修への参加を部下と話し合うにあたり、上司自身も詳しく内容を理解しておきたかったようです。

募集の結果、受講を希望した社員は16名でした。「人事が変わらなければならない」という会社からのメッセージを受け止めたうえで、実際にどう変わるべきかのヒントを掴みたいという、前向きな意欲を持ったメンバーが多く集まりました。

山中さん:
本研修では、受講者の行動変容を促すため、インプットだけでなくアウトプットも行い、それを実務に繋げる点にこだわりました。グロービスからのアドバイスもあり、セッションで学ぶだけでなく、事業部にヒアリングしたり、上司に提案したりするなど、実践的な活動を組み込んだのです。

2026年度人事人材育成研修(上級)イメージ

こうしたプロセスを組み込んだからこそアウトプットの質が上がりましたし、今後の行動変容や現場でのリーダーシップに繋がることも期待されます。戦略人事としての一歩を踏み出すチャレンジ精神を育むことができました。

成果と今後の展望

経営から現場までの「縦」、人事機能同士の「横」の繋がりを意識するように

山中さん:
本研修を終えて間もないので、具体的な成果が出てくるのはこれからです。ただ、受講者のレポートでは、経営から各事業の現場まで、「縦」のストーリーを意識して人事施策を描くことを意識できるようになった、という意見が多く見受けられました。

さらに「横」の繋がりも意識するようになっています。「横」には二つの意味があります。一つは、採用、人財育成、評価、配置といった人事機能の連動性を意識すること。もう一つは、組織としての横の繋がりです。本社、事業部、工場など、拠点や役割を越えて俯瞰的に物事を考え、お互いに助け合う関係性ができました。

山中さんイメージ

西村さん:
「これまでは、日々の業務連絡以外で拠点や部門間の定期的な交流はほとんどなかったが、本研修を通じて他拠点と仕事をしやすくなった」という声も挙がっており、企画者として嬉しく思っています。

発表会の視聴希望者が110名以上。人事部門全体での関心の高さがうかがえた

田中さん:
本研修は、受講者以外のメンバーからも注目が集まりました。最終発表会をオンライン配信したところ、110名を超える視聴申し込みがあったのです。受講者は16名なので、本人の上司や同僚だけではこれほどの人数にはなりません。つまり、人事部門全体が本研修に関心を持ち、仲間が何を考えているのかに関心を持っている証拠だと思います。拠点を越えて皆で議論する場をもつことにより、少しずつ人事部門全体の共通言語が形成されつつあると感じています。来年以降もこの取り組みを続けることで、「戦略人事とは何か」を問い続ける文化が根付くことを期待したいです。

田中さんイメージ

山中さん:
人事部門全体の関心度の高さは、我々の想定以上のものがありました。クボタが過渡期を迎え、事業環境が変わり続ける中、人事としても変わらなければならないという危機感をそれぞれの立場で抱いていたのでしょう。これまで、人事に特化した学びの機会があまりなかったことも、多くの注目を集めた要因だと思います。

本研修の最終アウトプットを今後どう実践していくかは、受講者本人の自主性に任せています。受講者からは、研修での提案だけで終わらせないようにしたいという声が挙がっていますし、来年以降も本研修を行い、同じ意識を持った人事パーソンが増えると、実務での成果に繋がりやすくなるはずです。我々としては、受講者が継続的に実践できる環境を整えていきたいと考えています。

各事業部に戦略人事が配置されるよう、育成を継続したい

山中さん:
今後も「事業に資する人事」の実現に向け、人事パーソンの育成体系を構築していきたいと考えています。その中で、本研修は2期、3期と継続する予定です。既に第2期の準備を進めており、研修終了から半年後に実践の振り返りを行うフォローアップ研修も企画しています。

目下のマイルストーンとしては、会社が掲げる2030年までの長期ビジョン達成に向け、戦略人事を担える人財を増やしていくこと。当社では2026年度よりHRBPが配置される予定です。一定規模のプロフェッショナル集団になり、事業体制の中に戦略人事を配置できれば、組織全体の変化が加速すると考えています。

グロービスには、我々の課題だけでなく、その背景にある人事制度や組織文化まで深く理解していただいています。今後も客観的な視点でのアドバイスや質問をいただきながら、我々が思考を整理できるようサポートをお願いしたいと考えています。

世の中を見渡せば、戦略人事について様々な定義がなされています。ひとつの明確な答えがないテーマだからこそ、世間一般の定義を安易に取り入れるのではなく、これからも「クボタにとっての戦略人事」とは何かを問い続けるスタンスでありたいと思っています。常に戦略人事として必要な考え方や姿勢を追求する文化醸成が、事業環境の変化に柔軟に対応できる、「事業に資する人事」の育成に繋がると信じています。

集合写真

グロービス担当コンサルタントの声

グロービス担当コンサルタント 大矢さん

大矢:
本研修の講師・ファシリテーターとして、「クボタの戦略人事とは何か?」「組織の何を解決するために、どのような施策を打ち出すべきか?」といったことを皆さんと議論していくにあたり、私たちなりの結論を示しすぎないことは意識していました。我々から先に考えを出しすぎてしまうと、受講者の皆さんが自ら考える機会を奪ってしまい、再現性ある学びに繋がらない。とはいえ、ある程度の道筋を示すことによって皆さんの思考に広がりや深まりが生まれる。このバランスを取りながら皆さんと対話することを常に念頭に置きながら関わらせていただきました。真摯に取り組まれている皆さんの素晴らしさや更なる可能性を信じることが全ての起点です。今後も引き続き、人や組織の能力開発に携わる者として、まずは私自身が自己研鑽をし続けたいと思っています。

グロービス担当コンサルタント ピエさん

ピエ:
本研修を含め、クボタ様では事業や階層を越えたさまざまな人材育成を支援させていただいています。私が大切にしているのは、共通する組織文化を理解しながら、各階層や職種、それぞれの立場にある方々が自分らしく成長していけるようにすることです。大規模な組織における多様な事業や職種を横断的に見渡せる立場だからこそ、点と点を線で結び、組織全体の変革へと繋げていくことができる。それが第三者である我々の役割であり、貢献できる点であるとも思っています。これからもこの視点を大切に、クボタ様の人材育成や組織開発に貢献したいと考えています。

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