株式会社ブリヂストン
信念・使命を醸成し、自らの力で事を成し遂げるリーダーの育成へ
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組織をリードして自らの力で事を成し遂げられるリーダーの育成を目的に、部長層を対象とした選抜型研修を5年間実施している株式会社ブリヂストン様。その取り組みについて、お話を伺いました。(部署・役職はインタビュー当時)
【株式会社ブリヂストン様】
写真右:執行役員人事・労務担当 (Gモノづくり教育センター長兼G経営企画部長) 人事・労務本部長 江渕 泰久様
【グロービス担当コンサルタント】
写真左:宮田 匠悟
- 導入前の課題
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- 世界のタイヤ業界の変化が激しい中、新しいリーダーの育成が必要だった
- 自分の意志を持ち、自分の言葉で語れるような「顔が見えるリーダー」を経営層から求められていた
- 研修内容
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- 学びが日々の実務に結び付けやすくなるように、研修前にもディスカッションを行った
- インターバル期間の仕掛けにもこだわり、インターバル期間に受講者の熱量を増幅させている
- 成果・効果
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- 単なる業務連絡や業務指示ではなく、その人自身の考えにもとづくコミュニケーションが増え、それぞれの部門をリードしている
- 受講者から「(チームが不安定な環境下にあっても)本研修のおかげで自信をもって方向を語ることができた」 と成果を語ってもらっている
背景と課題
組織の変革期において「顔が見えるリーダー」の育成が必要だった
当時、経営層から「顔が見えるリーダー」が少ないという指摘がありました。顔が見えるリーダーというのは、自らのビジョンで組織をリードし、事を成し遂げられるリーダーのことです。
実はこの選抜研修を実施する前にも、エグゼクティブクラスの研修は行っていました。しかし、その研修で望むようなリーダーが輩出できているのかという疑問の声が上がったのです。
タイヤ業界は非常にシンプルな業界です。長らくタイヤの形も材質も大きく変わらなかったため、従来のオペレーションを、いかに正確に高い品質で回すかが重要視されていました。ですが世界のタイヤ業界を取り巻く環境の変化は、より激しくなっています。弊社も従来の考え方から脱却し、逆の発想をもって勝負しなければなりません。このような組織の変革期において、新しいリーダーの育成が必要だと考えるようになりました。顔が見えるリーダーの育成には、より適した研修を行うべきではないかと原点に立ち返る必要がありました。
「顔が見えるリーダー」とは、自分の言葉で語れるリーダーの育成
受講者の目標像は、顔が見えるリーダーです。たとえば「上司の問いに対して上司が望む答えを準備するのではなく、上司が思い及ばない(その人なりの)見解を話せるリーダー」「自分の意志を持ち、組織を大きく動かす原動力としてのリーダー」をイメージしていました。
自分の意志を持ち、自分の言葉で語れるリーダーの育成には、困難な環境や修羅場に相対しても揺らがない「自身の軸」をもつことが不可欠です。すなわち、マインドセットに軸足を置いた育成が必要でした。
検討プロセスと実施内容
マインドセットに軸足をおいた研修が受講者に響くか不安だった
弊社の社内研修の多くは、スキルや知識の習得にフォーカスしていました。そのためマインドセットに軸足をおいた研修が、顔の見えないリーダーにどこまで響くかは懸念点でした。また私も、リーダーには信念や熱量が大事、といった抽象的なイメージはもっていたものの、マインドセットの研修に詳しかったわけではありません。その状態で、さまざまな研修機関から情報を集めはじめたのです。そのうちの1社が、グロービスでした。
当時の認識は、グロービス=MBA。学術的でスマートなイメージがあり、信念や熱量からは遠いかな、と思っていました。
その印象が変わったのは、グロービスが主催していたリーダーシップ関連の体験セッションへの参加です。私の考えていたイメージにフィットしていました。たとえば信念や使命といった抽象的な単語を、具体的なストーリーを通じてイメージできる。たとえば抽象的な問いを深く考え、解を導き出し、自分の言葉で発信できるまで腹に落とし込める。まさにこれだと。
その後、宮田さん(グロービス担当コンサルタント)や講師の方との打ち合わせを通じて、「信念(土台)→目標(志)→使命」の関係も明確に言語化していただけました。このような背景で、グロービスに依頼しようと決断したのです。
学びが血肉となるように、気づきや疑問を事業活動と結び付けたディスカッションをした
研修の主催側である我々が、研修に深く関わることが大切だと思っています。講師の方のコメントが、そのまま「我々が伝えたいことである」という意図を届けることで、受講者の受け止めは大きく変わります。講師の方に話してもらうのは、単なるセオリーでなく我々のコミットメントです。その意味から私自身は研修にフルアテンドし、都度議論に加わっています。
プログラムにある読書会では、講師の方による講義の前に、私自身のファシリテーションによるディスカッションを行います。受講者は課題図書を読んで意見する訳ですが、そこでは彼らの気づきや疑問と当社事業活動を結び付けて更問いをします。「その意見を踏まえれば、先日出された当社中期方針をあなたはどう解釈しますか?」「あなたの組織の現状から、著者のこの論点をどう思いますか?」などなど。それによって後の講義がグッと自分事に近づく訳です。研修にありがちな、「日々の実務と学びの距離」は当初から懸念していました。学びを日々の活動に手繰り寄せることで、それらを受講者の血肉にしてもらうのが狙いです。
気を付けていることは、受講者が置きにいく(無難な)答えを出したり、わかった振りをしたりしたときの対応です。受講者が簡単に「わかりました」と言っている時は、講師に問い直していただくようにお願いしています。もちろん私から声掛けをすることもあります。研修で課されたテーマの答えが、その人自身の内から出ているリアルな言葉なのか。どれだけ深く思考したうえでアウトプットしているのか。このこだわりが研修の成否に大きく影響すると思っています。
この研修が受講者を、会社を、変えられるか真剣勝負をしている
研修で本当に人を、会社を変えられるか。この研修が、ブリヂストンのビジネスに足跡を残せるか。受講者に真剣勝負をしてもらうために、私も同じくらい高いテンションで臨んでいます。そのような思いを、宮田さんと講師の方が受け止めてくれたからこそ、本研修は受講者に響き、盛り上がりを見せながら長く続いているのではないでしょうか。
研修はライブです。受講者の欲しい情報を関心が高まっているタイムリーな状態で提供しなければなりません。だから、難しい。宮田さんからは、常にその場で出る話題にミートした考えや情報を提供してもらっています。研修会場に多くの参考図書をお持ちいただいたこともあり、受講者に大きな刺激をタイムリーに与え続けてくれます。
グロービスの皆さんには弊社のことを深く理解していただいています。受講者のバックグラウンドや、今置かれている環境などをリアルタイムで共有すると、それを踏まえたうえでの質問を投げ込んでくださるため、受講者により深く響く。好循環はこうして生まれているのだと思っています。
インターバル期間の仕掛けにもこだわることで、研修の成果が大きく変わる
インターバル期間の仕掛けにもこだわっています。インターバル期間に受講者の熱量を増幅させることで、研修の結果が大きく変わることに気づいたからです。
たとえば課題。自身についての内省と言語化を行い、皆で共有し合っています。疑問点や思考の深まりを皆で共有して他問自答を繰り返し、それにアクションをして振り返る。この課題のおかげでインターバル中も高い熱量を維持できますし、インターバル前後の学びをスムーズに連結させられるのです。
研修の主催側からの投げかけも、インターバル中には重要です。その意味では、グロービスから受講者への投げかけは、内容・タイミングともに感心させられます。受講者の状態をしっかり把握なさっているのでしょうね。一人ひとりに寄り添ったコメントは見事ですし、思考が浅かったり無難な答えを出したりした受講者には、更問いが投げられます。研修で顔を合わせるのは7日間ですが、実際には3か月間みっちりフォローいただけています。
成果と今後の展望
単なる業務連絡や業務指示ではなく、自分自身の考えにもとづくコミュニケーションが増え、各部門をリードしている
研修後の受講者たちが、それぞれの部門で自分の意思を発信しはじめているという実感はあります。たとえば対話集会、1on1、方針説明会などの開催が当たり前になってきています
単なる業務連絡や業務指示ではなく、自分の意思を発信し、どの方向に向かうのか。その人自身の考えにもとづくコミュニケーションが増え、それぞれの部門をリードしている状況は、とても頼もしいですね。
受講者の声からも成長の兆しが見えます。彼らが口にしていたのは、「(チームが不安定な環境下にあっても、)本研修を受けたおかげで自信をもって方向を語ることができた」。
安定していた時代から変化の激しい時代への移り変わりは、さまざまな業界で危惧されていることです。弊社も大きな転換点を迎えており、本研修の受講者のおよそ1/3は、受講後に肩書が変わっています。このような環境下で成長の声が聞けたことは、大きな成果だと考えています。
また本研修は、2019年で第5期。社内での認知や影響力も増してきています。同じ受講期の受講者同士で同窓会が活発に開かれていることもありがたいですね。
本研修の受講者達は同じ釜の飯を食べた同士という一体感を抱いています。特別な高揚感と言ってもいいでしょうか。研修を終えた後も、あらためてお互いの考え方を共有し合うことで、新しく得るものがあると皆が感じているのです。私も同窓会に参加すると、高校の同窓生のように胸襟を開いた本音のコミュニケーションができます。
宮田さんも講師の方も同窓会に参加して、当時の研修を思い出す鋭い言葉を投げかけてくれます。研修終了後も受講者に大きな刺激を与えてくださって、本当にありがたいですね。
リーダーとして、あるいは人として成長するには、マインドとスキルの両面をバランスよく伸ばす育成体系を提供したい
本研修に参加した受講者が軸となって、会社によい変化を起こしてほしいです。たとえば受講者同士のネットワークを強化させることで、会社の行動規範を変えるような取り組みをイメージしています。
本研修を同時期に受けた同期のつながり(横のつながり)は自律的に生まれているので、次は事務局側から働きかけて、1期~5期のネットワーク(縦のつながり)を強化したいな、と。この縦横のつながりは、本研修を通じて共通言語ができたネットワークです。共通言語を通じて、考えるべきことをスムーズに議論できる集団になれると思っています。最終的にはそんなネットワークが、未受講者も含めて会社全体に波及していくことを想像しています。
また、グロービスからの視点や発想をもとに、他の研修も組み直していきたいですね。リーダーとして、あるいは人として成長するには、マインドとスキルの両面をバランスよく伸ばす必要があります。それが達成できる育成体系を、弊社の従業員に提供したい。このような難しい相談に最も乗っていただけるのが、グロービスなのかな、と。これからも宮田さんの情報力・提案力と弊社へのコミットに期待しています。
担当コンサルタントの声
宮田:
私は本研修の第1期から関与させていただいています。本研修で大切にしていることは、江渕様の熱意をどれだけ後押しできるか、です。
本研修はリーダーの自覚・役割について内省し続ける研修です。人の内面にフォーカスする研修は、どうしても学びのゴールが抽象的になりやすく、研修設計の難易度も上がります。このような研修だからこそ、事務局サイドの熱意・熱量が重要です。江渕様が目指したいこと・やりたいことを起点に、我々が設計し、講師が応える。この三位一体で受講者の皆さまに向き合っているからこそ、皆さまに響く研修になっているのだと思います。
読書会のファシリテーターをされているのは、象徴的なエピソードです。執行役員の本気の言葉・本気の行動を目の当たりにして、奮起されない受講者はいないでしょう。
江渕様が次にやりたいことは何だろう、江渕様の熱量・期待にどこまで応えられるだろう、どうしたら江渕様や受講者の皆さまの熱量を上げられるだろうと、楽しみながら伴走しています。正直にいうと、私も講師も江渕様のファンになってしまったのですね(笑)。
江渕様からはありがたいことに、「阿吽の関係」という言葉をいただきます。江渕様と深くコミュニケーションしながら、阿吽の関係になれるまで本研修に関与できていることは、私としても嬉しい限りです。今後も熱意をもって、江渕様と講師ともに、株式会社ブリヂストン様のリーダー育成に挑戦し続けたいと思っています。
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