オンライン時代の リーダーと組織開発のあり方(後半)-求められるは、流れを読み自身を変化させる力

2021.02.24

オンライン時代のリーダーと組織開発のあり方(前半)では、リーダーの役割はP(Performance)軸・M(Maintenance)軸を高めることの重要性と、一方でどちらかに偏重する罠・課題について触れてきました。

後半の本編では、この課題の乗り越え方を考えていきます。

バランスをとる第一歩は、自身の傾向を知ること

課題を乗り越えるためには、「“P軸・M軸双方を高めること”を、両立させること」です。当たり前のことですが、これが簡単には出来ません。私自身がコーチを務めてきたリーダー達の声や自身のチームマネジメント経験からも、「分かってはいるものの、難しい」と実感します。

難しさの要因は様々にありますが、要は各自の「癖・習慣」の影響が大きいからだと考えています。

「癖・習慣」は、各自の成功体験や、自身がお世話になった諸先輩(過去のリーダーの)方のアドバイスに影響を受けることが多いというリサーチ結果もあり、それらの「癖・習慣」が、利き手利き足となり、P軸・M軸どちらかを使いがちになってしまうのでしょう。

そのため、まずは自身の傾向を知ることが大切です。その上でバランスを取りつつ、高度にP/M軸ともに両立していくためのポイントを、①「プロセス(流れ)で働きかける」、②「感じ取る」、③「手放す」ことの3つに整理しました。

ではまず、①から見ていきましょう。

「プロセス(流れ)で働きかける」

前半記事で紹介した通り、組織コンディション(M軸)重視の行動と組織のミッション(P軸)重視の行動は、どちらか一方向では完結しません。
時にM軸→P軸、また逆にP軸→M軸という流れになり、その流れは決して止まるものではありません。“流れであり、止まるものではない”、という認識が重要なのです。

この考え方に対しては、「リーダーとして重要な”一貫性”が欠けているのでは?」と感じる方も多いかもしれません。しかし、M軸→P軸、P軸→M軸と、“状況を見て行動を変化させること”が、先の見えない今の時代だからこそ求められるリーダーの一貫した役割・行動ではないでしょうか。

外部の多くのビジネスパーソンと接する中でも、「どちらかに拘り行動を変えられないリーダー」は、近年特に早期に組織マネジメントの立場から離れざるを得ない傾向にあるように感じています。

目標達成の基盤は、信頼関係にあり

では、この流れはどちらからスタートをすることが望ましいでしょうか。もちろん各企業で状況は違いますが、これまで多くの組織開発・人材育成をお手伝いする経験より、M軸重視からのスタートをお勧めします。

なぜなら、M軸を重視した結果として得られる「リーダーとメンバーとの相互信頼」は、高い目標をやり抜くための基盤になるからです。この基盤がないと、“いざ”P軸に振っても、すぐに人が離れ成果の出ない持続性のない組織になってしまいます。


そのため、リーダーとメンバーが、気兼ねなく対話出来る信頼関係をベースとして構築しておくことが大切だと感じています。

さらに、M軸重視からスタートをするのには、もう1つの狙いがあります。それは、チームメンバーが相互にケアをするための意識を持ち、行動することを促進するためです。人は自身にされたことを相手にもする返報性の法則があります。まずはM軸重視の行動をリーダーが取ることで、メンバーがリーダーに、またメンバー同士を気遣う行動を取ることが、P軸に移る基盤となっていきます。


その中で、「リーダーとしての一定の信頼」や、「メンバー同士がケアしあう関係」が得られたら、P軸重視の行動に移行していきます。M軸に留まり続けている限り、強い組織には決してなりません。

P軸重視のリーダー行動は、以下が王道です。

・個々の能力・自立性に合わせつつ、
・期待役割の伝達とフォロー(フィードバック)をし、
・成果創出をサポートする

その結果、(究極はリーダーのサポートがなくとも)自立的に高い目標を持ち、内発的動機にもとづき行動する人材を育てることにつながります。

一方、一度構築した信頼関係は、永続的ではありません。チャレンジングすぎる目標設定や、頻繁なフィードバックは、メンバーは自身のことだけで余裕がなくなり、結果、メンバー同士のコミュニケーションやケアしあう行動、リーダーとの信頼関係が減少してしまいます。そのため状況を見てP軸からM軸に戻すことが改めて大切になります。

では、P軸⇔M軸を行き来するタイミングは、具体的にどう判断すればよいでしょうか。実際にこの見極めがとても難しいのですが、ヒントとなる考え方が「感じ取る」ことです。

チームの状態を「感じ取る」

これは、どちらかの行動を重視しすぎる結果として、「大切なことを失うかもしれない」と“感じ取る”ことを意味しています。

具体的には、以下のように自身に問いかけ、その傾向・状況を「感じ取る」ことです。

●M軸重視に行き過ぎたとき:「このままの状態では、人が成長しないな」、「組織が弱くなるな」
●P軸重視に行き過ぎたとき:「このままの状態では、自分から信頼が失われていくな」、「メンバー間でケアしあう余裕がなくなるな」

まずはリーダー自身の感受性で「そうなりそうだ」と感じたら、逆に振って様子見ることが重要です。

リーダー個人の感覚だけで振るのは少々不安という場合は、客観的なアドバイザーを持っておくことや、チーム内で対話し進言をもらえるようにしておくことも大切だと感じます。

例えば、P軸に行き過ぎていないかの指標としては、エンゲージメントサーベイやリーダー個人に対する360度サーベイなどの数値が参考になると思います。またM軸に行き過ぎて組織が弱くなっていないかどうかは、リーダーが普段接している顧客の声や、顧客満足度アンケートなどを参考にするとよいと思います。

状態に合わせて、自身のスタイルを「手放す」

ここまでは、柔軟にあり方を変えるリーダーであることが大切であるとお伝えしてきましたが、逆にやってはいけないことは、“躊躇すること/変えないこと”であると実感します。

私自身の経験からも、行動(M軸⇔P軸)を転換させる必要と感じ取っているのに変えないことは、周囲から見れば、“結局リーダーが自分本位で動いている”とみられ、信頼は失われてしまいます。

だからこそ、自分の今までのスタイルに固執しないこと=自身のスタイルを「手放す」ことが重要になります。これまで見てきたリーダーも、良いリーダーは(組織から求められる良い方向に向けて)自身の行動を変えることができるという特徴がありました。

さらに、「リーダーが何でもコントロールしようとすることを手放すこと」も重要です。M軸・P軸を高める行動において、リーダー自身が働きかけると捉えがちです。しかし、この2つを行き来していくと、自ずと組織の自立性と関係性は高まっていきます。逆にそれらが高まってくる中で避けるべきは、常にリーダー一人が働きかけることです。なぜなら、リーダー一人が働きかけ続けると、メンバーの自主性を奪ってしまうからです。

メンバーの自立性の高まりを見極め、(M軸・P軸どちらを高める行動においても)働きかけをメンバーに任せ、自身は見守ることが、さらに組織の底力を高めるために重要な行動になってくるのではないでしょうか。

すると、従来リーダーが取り組んできたことがメンバーでできるようになってきたら、リーダー自身はこれまで手をかけられなかった中長期的課題やさらなる挑戦的な課題に手をかけることができるようになります。

本質的なリーダーシップが、強い組織を創る!

ここまで、リーダーの役割、そしてP軸・M軸を行き来しながらチーム力を高め続けるためのヒントをお伝えしてきましたが、いずれも状況を感じ取ることが重要になります。

オンライン環境下では、メンバーと物理的距離が遠くなることで、「意図しなければ」状況や感情を感じとりにくくなっています。一方で、オンラインでのコミュニケーションツールも充実する中、「意図さえすれば」オフラインの環境下よりもはるかに状況は把握しやすくなっていることも事実です。

オンラインツールを使って定期的・意図的なコミュニケーションを取ることはもちろんですが、近年発達しているサーベイツールも活用し、状況を感じ取り、適切な行動へ転換させることに取り組むことも効果的です。

一見矛盾するリーダーの2つの役割(P軸・M軸)を両立させるのは、非常に難しいことです。その上環境変化も合間り複雑さは増していますが、「流行りのワード」に流されることなく、本質的なリーダーシップを取ること(時にリーダーシップを変化させること)で、強い組織(チーム)作りを、引き続き実践していきましょう。

【編集後記】
オンライン環境下において組織開発は益々複雑さを増していますが、リーダーが担う役割の大きな柱は、従来とは変わりません。その中でも、環境変化に応じてオンラインシステムや組織診断サーベイなどを正しく取り入れ効果的運用していくことで、より強い組織づくりへの可能性を感じます。今までのスタイルに固執せず、自身、そして組織を変化させる力の重要性を考えさせられました。(編集担当:塩谷佳未)
執筆者プロフィール
池田 章人 | Akito Ikeda
池田 章人

大学卒業後、外資系人材サービス会社にて金融機関を中心とする法人向け採用戦略コンサルティング、およびキャリアカウンセラーとして1000名以上のキャリア支援に携わった後、グロービスに入社。
グロービスではスクール部門を経て、現在は法人部門・製造業チームのマネージャーとして、化学・金属・機械・製薬・食品など幅広い企業に対する、人材開発・組織開発のコンサルティングに従事。
人材マネジメント・組織行動研究グループにも所属し、研究やコンテンツ開発、講師を務める。

グロービス経営大学院経営学修士(MBA)修了。


※文中の所属・役職名は原稿作成当時のものです。