事業成長のスピード感に資する人事機能をゼロから構築するHRBPの育成
導入事例:パナソニックエナジー株式会社

事業成長のスピード感に資する人事機能をゼロから構築するHRBPの育成

まとめ
業種
  • 電子/電気機器
研修の対象層
  • 部長層
  • 課長層
ご利用サービス
  • 企業内研修
  • eラーニング
研修の言語
  • 日本語
課題
  • 事業成長のスピードに応えるため、人事体制を新たに構築する必要があった
  • 人事戦略を立案する経験が不足していた
研修内容
  • HRBPに求められる経営視点やHRの論点について理解を深めた
  • 半年間かけて組織課題レポートを作成し、経営トップに答申した
成果
  • 受講者は経営戦略と人事戦略の関係性を学び、現場での実行力が向上した
  • 各人事担当の役割分担も明確になり、スピード感をもって人事業務を遂行できる体制が整えられた

パナソニックグループ内の新会社において、事業戦略の実現に向けた人事戦略を立て、実行するミッションを担うHRBPの育成(以下、本研修)を実施したパナソニックエナジー株式会社様。その取り組みについて、同社の人事・総務センター 人事戦略部 人事企画課 課長 両角隆太郎様と、人事戦略部 労政企画課 主務 阿部慎史様からお話を伺いました。(部署・役職はインタビュー当時)

背景と課題 急拡大中の市場ニーズに応えるための人事体制を構築する必要があった

両角さん:
当社は、パナソニックグループにおける事業体制の変革において、エナジー事業を担う組織として2021年10月に立ち上がり、2022年4月に設立されたばかりの会社です。この新会社発足にあたり、急拡大中の市場ニーズに応えるための人事体制を構築する必要がありました。

この事業体制変革は「専鋭化」をキーワードとし、それぞれの事業に思い切った権限移譲をして、お客様にきちんと向き合う方針がとられました。我々の業界は世界中で事業環境が激変しており、今、競争力をつけなければグローバルで勝てる見込みは立たなくなります。

今回の事業体制の変革によって各事業会社が人事制度の決定権をもつことになったが、知見不足であった

人事面では、これまでのパナソニックグループはグループ共通の人事制度に則り、各事業部門が運用を担当する体制をとっていました。ところが今回の事業体制の変革によって、各事業会社が人事制度の決定権をもつことになったのです。そのため、我々はグループ内の各社から異動してきたメンバーや、キャリア採用のメンバーによって人事部門を組成し、ゼロから人事方針や活動内容を検討する役割を担うことになりました。しかしながら、これまで制度の運用をメインで担ってきた我々には、人事戦略を立案し、制度を策定できるだけの知見が圧倒的に足りなかったのです。

新たな人事体制の構築にはスピードも求められており、時間の余裕がなかった

そして、エナジー事業は急激に成長している市場であり、当社もスピード感をもって事業を拡大させていくことが期待されています。人事部門としては、事業戦略に沿った人事戦略を素早く構築し、実行していかなければなりません。今までのスピード感で、あらゆる人事業務を2021年10月の組織立ち上げ以降に対応していては、とても事業成長のスピードには追いつけず、自社の成長機会を逃してしまうと考えていました。

新たな人事体制の構築においては役割認識もスピード感も変革が求められており、これはまさにHRBPとしての責務を果たすものになると考えました。そこで2021年4月にHRBPの育成プロジェクトを立ち上げ、グロービスに育成プログラムの相談を持ちかけたのです。2021年10月の組織発足、翌年4月の新会社設立を見据えると、時間の余裕はまったくありませんでした。

人事・総務センター 人事戦略部 人事企画課 課長 両角隆太郎様

人事・総務センター 人事戦略部 人事企画課 課長 両角隆太郎様

本研修のゴールは、会社の戦略に応じた人事戦略や制度、各種施策を考えるスキルと実行力をもつこと

両角さん:
新会社の人事部門として、会社の戦略に応じた人事戦略や制度、各種施策を考えるための知見をもち、実行力をもつことがゴールでした。

このゴールをふまえ、本研修への参加者は、HRBPとしての役割が期待される本社部門や各事業部における人事の部課長層、および施策を実行するメンバー約25名としました。このメンバーを選出したのは、本研修のゴールを達成することに加え、お互いの信頼関係を構築して共通の目線をもつことも期待したためです。

経営視点やHRの論点について理解を深め、グループごとに組織課題レポートを作り上げ、経営トップに答申した

阿部さん:
プログラムの内容は、HRBPに求められる経営視点やHRの論点について理解を深めながら、グループごとに組織課題レポートを作り上げ、経営トップに答申するものでした。レポートについては、半年間をかけてフィードバックをいただきながら何度も練り直し、最終アウトプットを仕上げました。

プログラム概要

プログラム概要

本研修の実施期間は、2021年10月から2022年3月でした。まさに事業会社としてのスタートを切る2022年4月の直前です。その貴重な時間を投資してハードな内容のプログラムを実施するほど、本研修は重要な位置づけにありました。

人事・総務センター 人事戦略部 労政企画課 主務 阿部慎史様

人事・総務センター 人事戦略部 労政企画課 主務 阿部慎史様

検討プロセスと実施内容 事業会社のスピード感ある成長を人事が妨げてはいけないという焦りがあった

両角さん:
エナジー事業は市場が急成長中であり、パナソニックグループ内でも当社への期待が集まる中、スピード感をもって成長することを人事が妨げてはいけないという焦りがありました。

本研修も含め、当社の組織体制や運営の在り方などについて、経営企画や経理部門とともに、社長の只信とは約1年間、毎日ミーティングで議論し続けました。その中で人事体制を整えることや人事機能は大変重要であり、只信はメンバーには相応の実力をつけてほしいと大きな期待を寄せていたのです。そのため、本研修は大きなコストをかける一大プロジェクトとなり、トップの期待を肌身で感じていました。池田さんと西嶋さん(ともにグロービス担当コンサルタント)にも、早い段階から只信に会っていただき、議論を重ねていましたね。

組織発足から社長もコンサルも含めて徹底的な議論をしたことで新しい挑戦を実現できた

今、振り返ってみると、只信が掲げる当社のミッションを、私のみならず外部のコンサルタントも含めて深く理解できたからこそ、何を目指して人事制度を策定するのかがクリアになり、その後の施策検討にも活かせています。各人事担当の役割分担も明確になり、スピード感をもって人事業務を遂行できる体制が整えられました。

パナソニックグループに何十年も在籍しているメンバーが多い中で、こうして新しいことに踏み出すのは難しい側面もありますが、組織発足の段階からトップを含めて徹底的に議論したことが実を結んでいるように思います。ここまでの議論は苦労の連続でしたが、その苦労が今、当社の経営にとってプラスに作用しています。

人事・総務センター 人事戦略部 人事企画課 課長 両角隆太郎様

人事・総務センター 人事戦略部 人事企画課 課長 両角隆太郎様

成果と今後の展望 人事部門は内向きな思考になりがちだが、人事部門も外部環境を知り、柔軟性をもつことが求められていると実感した

両角さん:
私自身は、本研修の企画者であり、受講者としても参加しました。事業戦略と人事戦略を紐づけて考え、経営トップに答申するにあたり、講師をはじめグロービスの皆さんからいただいた厳しくも温かいフィードバックのおかげで、レベルアップができたと感じています。これから各種施策を実行に移すにあたっての自信がつきました。

本研修の前半では、ケースメソッドを通しての経営への理解を深め、経営戦略と人事戦略の関係性について学びました。改めて学ぶ機会があると、今までいかに経験則でやってきたかを感じましたね。他の受講者からも、こうした内容は意外と学ぶ機会がなかったとの感想があがり、企画者としては一定の成果があったと感じています。

人事部門は従業員や内部の制度などを扱うので、どうしても内向きな思考になりがちです。さらにパナソニックグループは歴史も長いため、新しい取り組みをする際には、培われた価値観が時に邪魔をすることもあります。本研修を通して、こうした価値観をいったん取り払って考えるとともに、世の中の潮流を捉える視野も培わせていただきました。ビジネスの場面では他社との協業が当たり前になってきているのと同じように、人事部門も外部環境を知り、柔軟性をもつことが求められていると実感しました。

事業戦略に合致した人事戦略を立案し、施策に落とし込むことが、競争力強化の源泉になる

阿部さん:
私も、両角とともに受講者として本研修に参加し、2年目を迎えた今年度の研修ではPJリーダーとして参加しています。本研修は、これまで人事制度の運用が主な仕事だった我々にとって、新会社の人事部門として何が大切であり、なぜ施策をやるのかの”why”を徹底的に考えるという、大きな意識の転換点になりました。

講師からは率直かつ厳しいフィードバックを毎回いただき、自分の視座の低さを痛感し続けました。「経営の立場で、あなたは何をしたいのですか?」というシンプルな質問に答えられない自分にハッとさせられたのです。社内で仕事をし続けていると、これほど厳しく問われることは滅多にありませんから、深く印象に残っています。

そして今まで、「人事制度はなかなか変わらない、変えられない」という無意識の前提があったことにも気づかされました。事業戦略に合致した人事戦略を立案し、現場がしっかり実行できるような施策に落とし込むことは、競争力強化の源泉になるのだと実感しました。

さらには、物事の解釈が、人事と経営陣や現場とでは乖離する場合も多々あることを体験しました。答申の場で「この施策は、なぜ経営の競争力強化につながるのか?」という質問への答えに窮してしまったこともあり、人事戦略を立てる際には、経営や従業員にもたらす効果は必ず押さえるべきだという点は、今後の教訓になりました。

人事・総務センター 人事戦略部 労政企画課 主務 阿部慎史様

人事・総務センター 人事戦略部 労政企画課 主務 阿部慎史様

両角さん:
新たにできた組織ですので、本社部門と各事業部の人事が関係性を構築する点でも、期待通りの効果がありました。半年間の濃密なディスカッションを通して、お互いを理解し合えたように思います。そして、自分達の役割や、今後の行動をどう変えていくべきなのかについての心構えも、共通認識としてもつことができました。

そして池田さん、西嶋さんのスピーディーな提案や行動にも感謝しています。会社発足までの時間が短い中で、当社のミッションや人事部門の役割を深く理解していただき、苦労もともにしながら本研修を進められました。

実践を繰り返しながら、人事が経営の役に立つという成長実感をメンバーがもてる状態を目指したい

両角さん:
これまでに練り上げた人事戦略や、評価・報酬などの人事制度は、多様な働き方との連動など、検討不足の点がいくつか残っていました。そのため、引き続きグロービスにお力添えいただきながら検討を進めたいと思い、追加でセッションを行いました。我々も人事戦略の考え方が見えていない状態からのスタートでしたが、ようやくコンセプトが固まった段階まできたと感慨深く思っています。

これからは、各施策を実行するフェーズに入ります。実践を繰り返しながら、人事が経営の役に立つという成長実感をメンバーがもてる状態を目指したいです。

また、この1年の間に、私自身はグロービス主催のCLO会議(各企業のCLOを対象としたカンファレンス)でHRBP強化のセッションに登壇し、他社の人事の皆さまとディスカッションする機会をいただきました。本研修をきっかけに経験や視野の広がりを感じています。

日本という国は今、歴史の転換期にいると思うのです。過去は世界において日本の優位性があった事業も衰退しつつある状況において、人事部門は社内に籠らずに世の中と繋がり、経営に貢献するための人事戦略を立案することが求められていますね。究極のところ、人事は全員がHRBPの役割を担うべきだと考えています。

グロービス担当コンサルタントの声

池田 絵美
池田 絵美

本研修は、新会社における事業戦略を実現するための人・組織づくりが目的です。すべてゼロから作り上げるので、自由度がある一方、難しい取り組みでもあります。これまで人事制度や施策の運用をメインで担われてきた方々が、人事戦略や制度そのものを作るという大きなチャレンジでした。

 

本研修の序盤では、受講者の皆さまは高揚感と不安感が入り混じっているようにお見受けしました。ところが、毎回の試行錯誤を経て、答申内容が形作られていくにつれ、前向きなエネルギーに変わっていかれる姿を目の当たりにし、私たちが逆にエネルギーをいただきました。。只信社長をはじめ、両角様や阿部様のパナソニックエナジーという会社に賭ける情熱をご一緒させていただいていることに感謝しています。


西嶋 聡
西嶋 聡

両角様よりHRBP育成のお話を最初に伺ってから、さほど時間が経たないうちに只信社長とも面談をさせていただき、今の問題意識や、目指したい人事のあり方について、経営者・事務局・講師・コンサルタントの間でスピーディーにすり合わせできたことが、本研修の成果につながったと思います。

 

パナソニックエナジー様は、今までにないスピード感と規模で成長されようとしている組織です。受講者の皆さまは、その成長を実現するための新たな人事施策をこれまでにないスピード感で打ち出していくことが期待されており、これまでとは求められる役割のギャップが大きくある中で、本研修がスタートしました。

 

研修終了後は、戦略やヒト・組織に対する理解が更に深まっただけでなく、自分達で制度を作れる自由度に対するポジティブな気持ちが醸成されていたり、これから会社を一緒に成長させていく仲間ができたと感じていただいたりして、受講者の皆さま自身が、自分達の可能性を広げられた機会になったのではないかと思います。