「自ら学び、社会から学び、学び続ける」風土改革への取り組み
導入事例:日本生命保険相互会社

「自ら学び、社会から学び、学び続ける」風土改革への取り組み

まとめ
業種
  • 金融
研修の対象層
  • 課長層
  • 一般社員層
ご利用サービス
  • スクール型研修
  • eラーニング
  • アセスメント・テスト
研修の言語
  • 日本語

創業134年の歴史を持つ組織において、「自ら学ぶ風土」の醸成にチャレンジする日本生命保険相互会社様。課長補佐層を対象とした「経営スキル習得プログラム」(以下、本プログラム)の取り組みについて、同社の人材開発部 部長 高木寛和様、調査役 渡邉伸明様、課長補佐 金田斐子様にお話を伺いました。(部署・役職はインタビュー当時)

※本記事の集合写真は密閉空間を避け撮影し、インタビュー写真はソーシャルディスタンスを取り撮影しております。

背景と課題 研修前に抱えていた課題感

高木さん:
世の中の潮流を踏まえ、当社は「自ら学ぶ、社外からも学ぶ」風土を醸成していく必要がありました。昨今はビジネスパーソンにも専門性が求められるようになってきましたし、リスキリング(働き方の変化や技術進展により新たに必要となった知識やスキルを習得すること)の必要性も高まっています。

その一方で、これまでの研修は評価のためにアセスメントをする要素が強く、業務遂行能力やプレゼンテーション力といった能力を確認するものでした。我々が目指したい組織風土を見据えると、会社が与えたものに取り組んでもらい、一律の社内基準で評価するだけでは、従業員1人ひとりが専門性を磨いたり、自分でキャリアを切り拓いたりすることはできないのではないかと考えていました。

そこで、昨年度から研修内容を大胆に変更することにし、個々人が自分の強みや弱みを理解した上で、学ぶ内容も自ら選択するスタイルの研修を検討し始めました。

人材開発部 部長 高木寛和様

人材開発部 部長 高木寛和様

渡邉さん:
当社はストックビジネスという特性もあり、過去から積み重ねてきたことを改善し、強化していくことで成長してきた会社です。従業員は与えられた任務を全うする意識が強いですし、キャリアも同様に会社が考えるものだと捉えているかもしれません。

「経営スキル習得プログラム」の対象者である課長補佐層は、自分のチームを持ち、部下をマネジメントしながら現場をリードする重要な役割を担います。人材開発部としても、登用後に活躍してもらうための学習機会をしっかり提供していきたいとの思いがありました。

研修前に考えていたゴール(受講者の目標像)

高木さん:
最終的なゴールは、自主的に学ぶ風土醸成です。従業員には、キャリアの早い段階で小さくまとまらないでほしいという思いを持っています。評価を気にするだけではなく、自分で学び、社外にも目を向けて、自分で自分のキャリアを開発していってほしいのです。風土改革という大きなチャレンジですね。

 

渡邉さん:
目指すゴールを踏まえ、本プログラムの内容は、GMAP(グロービスのアセスメント・テスト)で自らの強みと弱みを認識したうえで、GLOBIS 学び放題(グロービスの動画学習サービス)で各自学んでもらう構成にしました。もっと学びたい希望があれば、eラーニングが追加されるGLOBIS 学び放題プラスを選ぶこともできます。

受講後には学んだ内容をレポートにまとめてもらい、受講者同士で共有する発表会の場を設けました。さらに、最後にスキルの腕試しをしたい人には学習後にGMAPを再受験する機会も用意しました。

プログラム概要

プログラム概要

GLOBIS 学び放題には我々が求めていた自主的に学べる仕組みがあり、世の中の幅広い分野を学ぶコンテンツも充実しています。加えて魅力的だったのは、GMAPです。人材育成は定量的に効果を測定するのが難しい領域ですが、GMAPは知識やスキルが明確にスコア化されます。

スコアの高低が全てではないですが、自分の現状を把握してから学習をスタートできるのは、本プログラムの目的にも合致していると感じました。

醍醐さん(グロービス担当者)にも、我々の考えを深く理解したうえでご提案いただきました。目的のすり合わせ、研修の設計、プログラム開始後まで一貫して親身に伴走いただいたと思っています。本当にありがたかったですね。

人材開発部 調査役 渡邉伸明様

人材開発部 調査役 渡邉伸明様

研修企画にあたりこだわった点

渡邉さん:
受講者には研修の目的をしっかり理解し、意識しながら学習してもらいたかったので、メッセージの伝え方を工夫して、繰り返し発信しました。

まず、開講あいさつは動画を視聴してもらう形にしました。高木から「文章で読むより、動画のほうが理解しやすいのではないか」とアイデアをもらい、私が研修目的と内容を伝える動画を制作し、「何を目的にして、何を学ぶのかから考えてほしい」とメッセージを伝えました。

また、学ぶ内容は必須コースを最低限設けたのみで、その他は自分で決めてもらう形にしました。GMAPの結果を参考に、得意領域を伸ばしても、苦手領域を補強しても、どちらでも構いません。

自分がなりたいリーダー像があったり、組織開発に興味があったりすれば人・組織の分野を学びますし、あるいは世の中のビジネスを知りたいのであれば実践知のカテゴリーで学ぶことになります。自分は何に関心があるのかから考えることで、学びたいという気持ちが多く芽生えてほしいとの思いを持っていました。

 

高木さん:
なお、我々人材開発部全メンバーの共通ビジョンとして「自ら学び、社会から学び、学び続ける」を掲げております。このスローガンのもと、様々な研修や職務に取り組んでおります。

(左)高木様、(中)渡邉様、(右)金田様

(左)高木様、(中)渡邉様、(右)金田様

検討プロセスと実施内容 研修プログラム導入にあたり、感じていた心配ごと・懸念点

渡邉さん:
これまでの研修から目的も内容もがらりと変え、全てが初めての取り組みでしたので、正直なところ不安しかありませんでした。

リモートでの研修であり、総合職やエリア総合職などいろいろな職制のメンバー、さらにはグループ会社も含めた多様なメンバーが受講しますので、最終的にどんな様子になるのだろうと思っていました。

人材開発部 調査役 渡邉伸明様

人材開発部 調査役 渡邉伸明様

ところが蓋を開けてみると、GLOBIS 学び放題には早々に全員がログインし、自主的に学び始めた様子が伺えました。さらには、人材開発部が指定した必須コース以外も視聴した受講者が多くいました。

対象者の半数近くがGLOBIS 学び放題プラスを希望し、動画視聴時間を含め、我々の想像を超えるほど積極的に取り組んだ人もいました。

高木さん:
課せられたことへ真面目に取り組む姿勢は、当社の文化だと思います。今後はそのエネルギーを自分のために学ぶ文化へ変えていくことが大切なことだと思います。自分が学びたいものを見つけ、自ら学ぶのだと、これからも繰り返し伝える必要があると考えています。

人材開発部 部長 高木寛和様

人材開発部 部長 高木寛和様

成果と今後の展望 研修後の受講者の変化

渡邉さん:
発表会の場で、受講者の成長を感じられました。レポートや発表会は、せっかく学ぶならアウトプットの場があった方がいいだろうと考えて設けたものでしたが、想像以上に良い場になったのです。

発表会は6人1組のグループを作り、1人あたり発表10分、質問5分の持ち時間でレポートの内容と感想を発表し合う場としました。学習したテーマが同じだった人をグルーピングしたのが、功を奏しました。同じ内容を学んでも気づきを得ることは十人十色で、レポートの内容も多様だったのです。受講者は仲間の発表を聞いて学びの視点が広がったようで、とても勉強になったとの声を多くもらいました。

また、これまでの研修でのグループワークはディスカッションをするものでしたが、今回はリフレクション(内省)の意味合いがあったので、発表会そのものが新鮮にも感じたようです。

 

高木さん:
発表会は開催してよかったと思っています。学びをアウトプットする場があり、学んだ内容や感想を情報交換する有益さを我々も感じたところです。

そして、GMAPはやはりいいですね。先ほどの渡邉の話にもあったように、人材育成は効果を明確には示しにくいものですが、GMAPは定量的に現状把握できることに加え、世の中との比較もできるテストですので、一つの物差しにもなりえました。

今後は、従業員1人ひとりが目指す姿に向かってステップアップするために、GMAPを使って定点観測できたら理想的だと思っています。

今後の取り組み

渡邉さん:
本プログラムについては、学習期間中のフォローをもう少し手厚くしたいと考えています。具体的には、受講している仲間同士で学び方の相談ができたり、学んで有益だった内容の共有をしたりする仕組みです。初年度の受講者から「この学び方、進め方でいいのだろうか」との不安があったという感想をもらい、次回以降の改善点となりました。

 

金田さん:
課長補佐層へGMAPを導入したことを踏まえ、私が担当している入社5年目までの初期育成においても、段階的にビジネス知識を得られる研修を充実させていきたいと考えています。

また、特に自己研鑽を頑張っている若手を対象に、公募で派遣しているグロービス・マネジメント・スクールへの参加人数がここ1〜2年増えていますので、この流れも続けていきたいですね。社外の方と一緒に学ぶ経験は、とても刺激になると思います。これから活躍する世代が自主的に学び、どう成長していくのか楽しみです。

人材開発部 課長補佐 金田斐子様

人材開発部 課長補佐 金田斐子様

育成体系全体の観点では、各階層が登用後に求められるスキル習得を支援していきたいと考えています。当社でダイバーシティ&インクルージョンを推進する輝き推進室が主導するイクボス必修ゼミ、部長層には社外の視点を養う部長登用後研修など、新たな取り組みが続々と始まっています。従業員エンゲージメントを高めるための管理職への支援も必要性が高まっているところです。

また、公募制のプログラムも拡充していきたいですね。すでに課長以上の役職に就いている層や、リスキリングが必要なシニア層にも公募制でGLOBIS 学び放題、あるいは他の学習機会を提供できないかと検討中です。

当社では一定年齢を迎えた従業員にキャリアの棚卸をする機会を設けているので、そこから今後の会社人生を見据えた学びの場をつくっていきたいと考えています。

 

高木さん:
我々は創業134年の歴史がある会社です。1回の研修で何かが変わるわけではありません。あらゆる階層の従業員が自ら学び続けることで、日々のOJTで学んだ意識が漏れ出て、最終的に会社の力が上がるのだと思います。今はまだ、その第一歩を踏み出したに過ぎません。醍醐さんにも、一過性の研修に終わらせないための取り組みについて、今後もいろいろなアドバイスをいただきたいと思います。

本当の意味でのゴール到達までには、相当な時間がかかるだろうと我々も覚悟しています。皆が自分のために前向きに学ぼうという姿勢に変わった時、本当の意味で風土醸成ができたといえるのでしょう。長く、粘り強く続けていかないといけませんね。

グロービス担当者の声

醍醐 諒
醍醐 諒

自主的に学ぶ風土の醸成は日本生命保険様に限らず、多くの企業様で取り組まれているかと思います。しかし、「なぜ学ぶ必要があるのか、なんのために学ぶのか」という目的が正しく社員に伝わっておらず、せっかく用意された動画学習サービスや他流試合等のプログラムがほとんど活用されないというケースは少なくありません。

 

そのような中、本施策が初年度としては非常に大きな成功を収めた理由は2つあると考えています。

 

1つ目は渡邉さんが研修実施前にオリジナルの動画を作成し、受講目的をしっかりと受講生に伝えていただいたことです。動機付けを行うことにより、会社からやらされている施策ではなく、自分のための施策として前向きに受講を開始された方も多いのではないでしょうか。また、実施前だけでなく、研修実施中も定期的に「何を目的にして、何を学ぶのか」と繰り返しメッセージを伝えていただいたことにより、一人ひとりが学ぶ目的を見失わず、半年にわたる研修を息切れすることなく完走することができました。

 

2つ目はGMAPをご受験いただき、定量的に自身の強み・弱みを認識した後に、GLOBIS学び放題で能力開発を行う仕組みをご採用いただいたことです。数字で明確に自身の知識・スキルレベルが示されるので、想定していたよりも低いスコアを取ってしまった受講者は健全な危機意識を持ち、能力開発に励んでいただいたと考えております。

 

 「自ら学ぶ、社外からも学ぶ」風土醸成には施策の実行・検証・改善を繰り替えしていく必要があります。より良い施策とするためにも、引き続き全力でサポートさせていただきたいと思います。