三菱電機株式会社

時代の変化に合わせた会社の舵取りができる次世代経営リーダーの育成

業種
  • 電子/電気機器
サービス
  • 企業内研修
  • eラーニング
研修対象
  • 部長層
言語
  • 日本語
三菱電機株式会社

経営スキルと事業の専門知識を併せ持つ次世代経営リーダーを育成すべく、選抜部長層研修(以下、本研修)を2019年度より実施している三菱電機株式会社様。その取り組みについて、お話を伺いました。(部署・役職はインタビュー当時)

【三菱電機株式会社様】
写真中央:上席執行役員 人事部長 阿部 恵成様
写真右:人事部 人材開発センター 人材開発企画グループ マネージャ 新庄 剛様
写真中右:人事部 人材開発センター 人材開発企画グループ 川田 陽子様

【グロービス担当コンサルタント】
写真中左:亀井 康晴
写真左:金 英蘭

導入前の課題
  • 時代の移り変わりが激しくなり、事業への精通だけでなく、プロの経営視点を持つ人材を育成する必要性が高まっていた
  • 部長層が、会社や自身のビジョンを考える機会がなかった

研修内容
  • 経営視点の獲得と、会社や自身のビジョンを自分の言葉で語れるようになることをゴールとした
  • 研修の最終アウトプットとして、1人ひとりが未来に向けた経営ビジョンや自身の使命感を発表する「ビジョンスピーチ」を実施した

成果・効果
  • 研修参加時から役職が上がった受講者が多く、ビジョンを自分の言葉で語る姿が随所で見られるようになった
  • 研修を続ける中で、将来の経営層のプール人材がやや足りないことが浮き彫りに。全社経営を俯瞰できる幹部候補者層のサクセッションプランを確立し、さらなる早期育成に取り組むための検討をスタートした

背景と課題

時代の移り変わりが激しくなり、プロの経営視点を持つ人材を育成する必要性が高まっていた

新庄さん:
会社全体の舵を取る経営層の育成をきちんとやっていきたいとの課題感がありました。当社にはエンジニアや営業職などあらゆる職種で優秀な人材がおりますが、現状の経営体制は各専門分野で結果を残した者が事業をリードする形になっています。当社の主な事業がインフラ事業であることも影響し、歴代の社長の大半はインフラ事業に精通している技術職のプロパーでした。

ところが時代の移り変わりが激しくなり、今後の経営の方向性を考えるためには、事業に精通しているだけでなく、プロの経営視点を持った人材である必要性が高まってきました。こうして、次世代経営リーダーの育成に着手することになったのです。

次世代経営リーダーの育成対象は、40代中盤〜50代前半の部長層からの選抜人材としました。専門分野の知識や経験は豊富ですので、経営的な視点を身に着けて組織を牽引する力を養って欲しいと考えたのです。また、部長層が会社や自身のビジョンを考える機会もなかったので、この育成施策を通して機会を作りたいとも考えていました。こうした考えが、本研修の構想の土台となっています。

川田さん:
研修を実施するにあたり、この分野の経験が豊富な外部のパートナー様にお声がけしました。その中でも、当社の現状に寄り添った提案をしていただき、カスタマイズの力も秀でていたグロービスを選ばせていただきました。同じ内容を学ぶにしても、当社の受講者が深く理解できるよう導いていただけるかがポイントだと考えたためです。その点において、大変信頼できるパートナーだと思いました。

戦略や自身のビジョンを自らの言葉で語り、ステークホルダーへ説明できる状態を目指した

新庄さん:
選抜部長層が企業理念を咀嚼して捉え、戦略や自身のビジョンを自らの言葉で語れるようになることがゴールでした。会社の方針を自らの言葉に置き換え、自身の考えも交えてメンバーに伝え、組織をまとめる力をつけてほしいと考えていたのです。

これからの時代においては、社会課題を解決する視点で企業理念を咀嚼して戦略を描き、その意義を自らの言葉でステークホルダーへ説明できるリーダーが必要です。ですので、本研修の最終アウトプットとして、1人ひとりが未来に向けた経営ビジョンや自身の使命感を発表する「ビジョンスピーチ」を行うこととしました。

川田さん:
ビジョンスピーチを通して、4か月間の研修を通して学んだことやアウトプットしたこと、講師からのフィードバックをもとに、自分の考えをブラッシュアップしていく経験をしてほしいと思っていました。ビジョンスピーチは、本研修において大変重要な取り組みと捉えています。

検討プロセスと実施内容

本当の意味で企業理念を理解するとはどういうことなのかが分かったとの感想が多く出た

阿部さん:
これから経営層になることを期待される方たちが、選ばれた重みをしっかり感じ、受講者同士で切磋琢磨する場を実現できるかが気がかりでした。そして本研修が終了して数年経っても、この経験を自分の糧にできそうだと実感してもらいたいという思いもありましたね。

新庄さん:
本研修は当社では今までになかったタイプの研修でしたので、4か月間という限られた時間で、全員がきちんとゴールに到達できるかも懸念点でした。

ところが我々の心配とは裏腹に、これまでの受講者からの感想を聞くと、本当の意味で企業理念を理解するとはどういうことなのかが分かったとの感想が多く挙がりました。理解していたつもりでも、自分の言葉で語る経験をすると、理解できていない部分に気づくようです。本研修の達成度を定量的に測ることは難しいものの、受講者の気づきや感想からは、一定の成果は出ているものと捉えています。受講者の満足度が高いので、他のメンバーも参加させたいとの話も出ているほどです。

難関のビジョンスピーチは、講師陣やコンサルタントからのアドバイスを得ながら乗り越えた

川田さん:
ビジョンスピーチの内容を練ることが一番の難関だと考えていました。うまく考えがまとまらない時など、毎回の研修で講師陣やコンサルタントの方々にこまめにチューニングいただきながら進めることで乗り越えられたと感じています。

研修プログラム概要(※本プログラム構成は2021年度の実施実績であり、2022年度は内容が変更されています。)

本研修も数年に渡って実施していただいているので、グロービスにも知見が貯まり「今年度の受講者を見て、こういう点がやや弱いのでこうチューニングした方が良いと考える」といった具体的なアドバイスを多くいただけるようになっています。また運営も安定しており、安心して研修を進められますね。

最終発表の前に設けたプレ発表の場でも、講師陣から受講者一人ひとりに寄り添った的確なフィードバックをいただけて、受講者も多くの気づきを得られました。一連の経験を通して「自分を変えなければいけない」と良い意味で方向転換ができたようです。終了後の満足度も一様に高く、本研修が鍛練の場として作用していることが分かります。

グロービスの皆さんには当社が置かれている状況や組織文化をご理解いただいたうえで、いつも悩みに寄り添っていただき、高い企画力と柔軟な対応力で支えていただきました。本研修を常により良く改善しようとする姿勢がありがたかったです。

実践につなげるには、研修の場で日頃の悩みをぶつけて話し合うことも必要

新庄さん:
私も同感です。研修では、学んだことをいかに実践に活かすかが重要です。実践につなげるには、研修の場で日頃の悩みをぶつけて話し合うことも必要だと考えています。本研修は、まさにこの点が含まれた内容になっているのです。これは、グロービスに当社を深く理解いただいているからこそ実現されているとも思いますね。

グロービスは我々コーポレート部門、そして各事業部門にもアプローチされて情報を持っているので、他部門の動きを踏まえてアドバイスをもらうこともあります。我々が求めていることにタイムリーに対応いただけていることに感謝しています。

成果と今後の展望

受講者の多くが昇格し、ビジョンを自分の言葉で語る姿が随所で見られるようになった

川田さん:
本研修は2019年に開始し、今年で4年目に入りました。研修参加時から役職が上がった受講者も多く、2019年度、2020年度の受講者はその約7割が昇格しています。事業所長や製作所長といった事業所の責任者に就いたメンバーも出てきました。

こうした役職の変化だけでなく、受講者全体としても意識や態度変容が見られています。事業部内や他の研修において、今後のビジョンを自分の言葉で語る機会が増えているようです。

新庄さん:
当社は今、トップが従業員に対してメッセージを出すことを重視しており、社長や執行役が各事業所を回って従業員と直接対話する機会も積極的に設けています。その流れで事業所長が所員と対話する機会も多く、そのような場で自分の言葉で語っている過去受講者の姿を見かけると、本研修の効果を実感します。

将来の経営リーダー育成の必要性を実感。規模を拡大しながら育成の取り組みを続けたい

本研修を続ける中で、これまでの参加人数ペースでは将来の経営層のプール人材がやや足りないことが見えてきました。また、出ている成果を踏まえると、全員が執行役に就かなかったとしても、経営の視点を持って事業を支えていく人材は1人でも多くいてほしいという思いに至り、今年度は参加者の人数をこれまでの2倍にしました。来年度以降も、こうして経営リーダーを育成する取り組みを継続していきたいと思います。

改革の先頭に立つ管理者層のリーダーシップを、体系的に強化することが必要

阿部さん:
「人への投資」が経営の重要な方針の一つとなっている今、当社も人財戦略の転換期にあります。従来のルールやプラクティスも必要であればアジャイルに改廃を進めていくことになりますが、我々はこうした動きがとれる組織ケイパビリティを涵養していかなければなりません。そのためにはその改革の先頭に立つ管理者層のリーダーシップ強化が必要です。これまでの育成を振り返ると、リーダーシップではなくマネジメント教育にやや偏っていたように思います。リーダーシップ教育に注力すべく、今はまずコーチングの施策を行っています。

今後はさらに、そもそもの部下育成のあり方、従業員のエンゲージメントを高める施策、メンバー1人ひとりのキャリア開発への向き合い方など、体系的にリーダーシップを強化する必要があると考えています。今まではロールモデルを見つけて、その人を目指すよう促してきた傾向がありましたが、今は正解がない時代ですから、それだけではいけないのだろうと思うのです。これからは特に、職位が上がるほど人としての器が求められます。若手社員にとって魅力的なリーダーの姿のアップデートが必要です。

全社経営を俯瞰できる幹部候補者層のサクセッションプランを確立し、早期育成に取り組みたい

また、全社の経営をリードできる幹部候補者層のサクセッションプランも確立しようとしているところです。今までは各事業本部でその事業本部自らの経営幹部候補を育成するところに閉じてしまっていた傾向があり、全社を束ねる経営者、つまり全社経営を俯瞰できる幅広い経験・知見有する人材を輩出するのは難しい体制になっていました。

また、全社の経営を担うポジションに就く時にはかなり上の年齢になっていたのも事実です。これからは早期抜擢を奨励し、優秀な人材を事業本部だけで抱え込まない仕組みが重要です。ジョブアサインメントもサクセッションプランに基づいて全社的な観点から行っていきたいと考えています。

新庄さん:
阿部が申した通り、次世代経営リーダー育成に関しては、さらなる早期育成が今後のテーマのひとつです。今は選抜部長層が対象ですが、変化の激しい時代を踏まえると、これからは課長層、もしくはその前の段階から経営視点を養う育成をしていく必要があると考えています。質も量もまだ改善の余地がある状況です。

育成体系全体では、階層別にどのような育成をしていくかの整理が必要になってきました。今は年次ごとに必要な育成テーマと施策を設けているのですが、年次ではなく個々人の経験やスキルレベルに合わせる方が良いのかもしれません。その中でまずは、MS(一般従業員から、より経営に貢献する役割に変更する資格)層の育成を、グロービスと一緒に検討しているところです。

日本本社と海外拠点を融合させた、三菱電機グループ全体での育成構想も出てきている

阿部さん:
より大きな視点としては、日本本社と海外拠点の経営リーダー育成を融合させ、三菱電機グループ全体で経営リーダーを育成する構想も出てきたところです。主要海外拠点の拠点長候補の選抜研修も、グロービスに企画して実施いただきました。こちらも、これまでの受講者が拠点長になったり、日本本社側とのビジネスで重要な役割を担っていたりと成果が出始めています。グロービスには、今後もさまざまな知見を期待したいですね。

新庄さん:
亀井さんと金さん(両者ともグロービス担当コンサルタント)には、いつも当社の相談に対して、期待の3倍くらいの答えをいただけていると感じています。当社を深く理解していただき、一般論ではなく具体的な内容に落とし込んだご提案があり、大変ありがたい存在です。今後もよろしくお願いいたします。

担当コンサルタントの声

金:
本プロジェクトは、三菱電機様全社における次期経営者候補を育成する目的として、次期経営リーダーとしての経営知識、スキルのアップデートのみならず、変革の時代におけるリーダーとしての信念、使命感とも向き合っていきます。

本プロジェクトでは、将来環境に関する洞察から始め、最終的にはそのような将来の社会、ビジネス環境において、参加者お一人ひとりがどのような経営テーマに対して、どのようにチャレンジして行きたいか、を言語化し、経営陣を含め、仲間の前で発表、コミットメントいただきました。

プロジェクト初期ごろは、行き先が不透明な環境下での経営判断や、リーダーとして方向性を示すことの難しさを感じられましたが、講師、受講者同士、そしてご自身との対話を重ねていくことにより、正解がない中でも、リーダーとしての想いが徐々に形になっていく姿が、とても印象的でした。

三菱電機様とは、人事部のみならず、各事業部の育成担当者さまとも日ごろからさまざまな議論をさせていただいており、抱えていらっしゃる事業、組織課題や育成テーマへの理解を深めています。今後も引き続き、三菱電機グループが変革に挑戦し続けるための組織創り、人材育成に向けて、人事部、各事業部のみなさまにしっかり伴走していきます。

亀井:
これまで三菱電機様から伺ってきたお悩み事を振り返ると、本質的な課題の要因は個人にあるわけではなく、ビジネスモデルや組織など構造要因にあることが多いと感じています。

そのため、我々としては目先の課題解決に留まらず、構造要因や変革する上での難しさをしっかり捉えて、それを解決するための施策をご提案することが重要だと考えてきました。プログラムを行って終わりではなく、組織が変わるところまで伴走させていただき、三菱電機様の変革に向けたお手伝いができれば光栄です。

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