伊藤忠商事株式会社

世界各国で活躍する社員の自律的なキャリア形成をするために必要となる、経営スキルを磨く場を提供

業種
  • 商社
サービス
  • スクール型研修
研修対象
  • 一般社員層
言語
  • 日本語
伊藤忠商事株式会社

若手・中堅社員が自律的にキャリアを形成していくために、体系的な経営スキルを習得する育成施策(以下、本研修)を行っている伊藤忠商事株式会社様。その取り組みについて、お話を伺いました。(部署・役職はインタビュー当時)

【伊藤忠商事株式会社様】
写真右:伊藤忠人事総務サービス株式会社 グローバル人材開発部 部長 林 哲生様

【グロービス担当者】
写真左:近藤 健人

導入前の課題
  • 主体的にキャリアを形成したいという価値観を強く持つ若手・中堅社員が明らかに増えた
  • こうした新たな価値観を尊重し、人材育成の観点から支援する必要が出てきた

研修内容
  • 社員が経営スキルを磨くことで、働きがいや成長実感をもって仕事に取り組み、自律的にキャリアを歩めることをゴールとした
  • このゴールの実現には、自分に必要な分野を必要なタイミングで学べるグロービス・マネジメント・スクールの導入が最適と判断し、導入した

成果・効果
  • 2022年10月期は、約100名がGMSで学んだ
  • 自律的に学ぶ環境を整えられた点において、一歩前進できた

背景と課題

主体的にキャリアを形成したいという価値観を持つ若手・中堅社員が増え、人材育成の観点から支援が求められるように

林さん:
伊藤忠商事では近年、若手・中堅社員が望む働き方やキャリア観がその上の世代とは変わってきています。仕事を通して自己実現し、チャンスを活かして主体的にキャリアを形成したいという価値観をより強く持つ社員が明らかに増えています。伊藤忠グループの人材育成を担う我々としては、こうした新たな価値観を尊重し、支援していかなければならないとの課題感がありました。

伊藤忠商事は、かねてから社員のキャリア形成を重視してきた会社です。キャリアカウンセリング室を設け、社員がキャリアカウンセラーの資格を有する社員によるキャリア相談を受けられる環境づくりを20年ほど続けています。また、すべての社員が上司との面談で、年に一回、キャリアの方向性をすり合わせる機会も設けています。

これらの取り組みの前提には、ビジネスの領域が多岐にわたる商社においては会社が配属を決めたら、多くの社員はその分野で定年まで勤務し続けるという考え方がありました。入社8年目までを教育期間と位置付け、グループ会社や海外拠点も含め3つほどの部署で経験を積んでもらっています。これは先輩の背中を見て育つOJT中心の育成であるため、配属されたカンパニーによって、身に付くスキルが少しずつ異なるのが現状です。

ところが、近年実施したエンゲージメントサーベイにおいて、世代によるキャリア観の差異が明らかになっています。若手世代ほど、当社以外も含めてキャリアの選択肢を幅広く捉えているのです。この結果から、伊藤忠商事で歩めるキャリアをより多様化するとともに、もっと人を活かす環境づくりが必要だと感じるようになりました。

この課題意識から、各営業部門において、部門長が若手社員へ育成ビジョンや先輩社員の活躍を伝える「キャリアミーティング」を行い、社内に多様なキャリアパスがあることを理解してもらう取り組みを始めました。加えて、手挙げ制で異動希望を募り、他のビジネスにチャレンジできる機会も増やしています。

他のカンパニーへ異動すると、特定部門だけで培ったスキルではどうしても不足が生じます。せっかくチャレンジをしても、体系的なビジネススキルがなければ活躍しきれないケースが出てくるでしょう。伊藤忠商事で自律的なキャリアを形成してもらうためには、他の人事施策と連動させたうえで、体系的な経営スキル習得の場をつくることが必要でした。

自律的なキャリア形成には、自律的な学びが不可欠。グロービス・マネジメント・スクールの導入が最適だと判断

林さん:
社員が経営スキルを磨くことで、働きがいや成長実感をもって仕事に取り組み、自律的にキャリアを歩めることをゴールとしました。業務目標にコミットメントするという仕事への厳しさは保ちつつ、充実感をもって仕事に向き合える意味での働きがいを醸成したいと考えています。

伊藤忠商事では「ひとりの商人、無数の使命」という企業行動指針を掲げています。この企業行動指針は、社員一人ひとりが個の力を発揮して、自らの商いにおける行動を自発的に考え、お客様が求めるものをご提供する姿勢を表したものです。 これからの時代における企業行動指針の体現としては、一人ひとりが自分の意思に応じた成長を遂げ、「ひとりの商人」として活躍してもらう状態をつくりたいと考えています。

このゴールを実現するためには、全員が自分のキャリアプランに応じて、経営スキルを体系立てて習得できるグロービス・マネジメント・スクール(GMS)の導入が最適だろうとの判断に至りました。GMSには経営にまつわる14科目があり、3か月ごとに開講されていくので、自分に必要な分野を必要なタイミングで学べます。自律的なキャリア形成には、自律的に学ぶことが必要だろうと考え、希望者がGMSへ通学することとしました。

また、GMSの講師陣は実務経験が豊富な方々ですので、学びと実務とを紐付けやすい内容だろうとの期待もありました。学んで、現場で試して、また学ぶというサイクルが回せるのはよい点ですね。

そして、受講スケジュールをフレキシブルに選べることも、導入の大きな要因でした。当社の社員は出張が多いですし、世界各地に駐在員もいるため、定期的に通学するのが難しい状況にあります。GMSであれば、クラスの日に出張が入った際は振替受講制度を使えますし、海外駐在員はオンラインクラスを選べるので、業務への支障なく学びやすいと思いました。

自己実現のために必要なスキルを自ら身に付け、望むキャリアを実現していく。若手・中堅社員がこの一連の経験を経ることで、エンゲージメント向上にも繋がるだろうと考えました。

検討プロセスと実施内容

受講者・受講者の上司・全社へ本研修の思いや狙いを丁寧にコミュニケーションした

林さん:
学んだことが実務に活かされず、勉強のための勉強にならないようにしたいと思っていました。そのため、受講希望者に学ぶ目的意識をもってもらうために、学びをどう業務に繋げていくのかのエッセイを書いてもらっています。さらに受講後は、これからの行動計画を上司と話し合う場も設けています。

また、全社へ本研修だけをアナウンスしても会社の思いは伝わらないだろうと考え、メッセージを伝える動画を制作しました。会社が認識している課題感やそれに対する打ち手をストーリーで話し、理解してもらう工夫をしています。

さらには、若手・中堅社員の学びには、対象層の上司の理解が欠かせません。上司となるマネジメント層へも、エンゲージメントサーベイの結果から導かれた課題点をオープンに伝え、GMS導入の意図やマネジメント層への期待役割を説明する場も設けました。

マネジメント層は、OJT中心で育成されてキャリアを積み重ねてきた世代です。部下育成にあたっては、こうした価値観からの意識変容が必要ですので、昨年秋には部下のキャリアマネジメントに関する研修も公募で実施しました。これまでキャリア研修は本人向けのものしか実施していなかったのですが、部下がいくらキャリア意識を高めても、上司と合意していなければ本人が望む業務付与が難しくなると考えました。部下のキャリアマネジメント研修の参加募集をしたところ、我々の予想より受講を希望する上司が多く、上司自身も部下のキャリアをどう考えればよいのか悩んでいることが感じられましたね。

こうして、さまざまな取り組みを同時並行で進めてきて感じているのは、研修など単発の施策だけを行うのではなく、複数の施策をストーリーとして伝え、実施することの重要性です。

成果と今後の展望

スタートしてまだ半年。自律的に学ぶ環境を整えられた点において、一歩前進できた

林さん:
本研修を会社が設けたことに対して、社員はポジティブに受け止めてくれています。メッセージ動画を発信した際、何人かの若手社員が「GMSで学べるのは、とてもありがたいです」とわざわざ伝えにきてくれたほどです。

彼ら・彼女らの上司から、GMSの応募時期についての問い合わせも来ています。業務付与のタイミングをふまえて、部下にどのような学びを推奨しようか考えているのだと思います。上司の皆さんが本研修を早くも前向きに捉えていることに、私自身が驚いているところです。

受講希望者も初回の公募から想定以上に集まり、2022年10月期は約100名がGMSで学びました。皆、こういう場を待ち望んでいたんだと感じましたね。ただ、スタートしてまだ半年ほどですので、具体的な成果が出てくるのはこれからだと思います。自律的に学ぶ環境を整えられた点においては、一歩前進できたと捉えています。

グロービスには、本研修の企画段階から親身に相談に乗っていただきました。我々のニーズを細やかに汲み取っていただき、ご提案を通して自分たちの課題に気付かされることもありましたね。「ビジネススクールで社員を学ばせたい」という話を最初に持ちかけ、近藤さん(グロービス担当者)とのディスカッションを通して、その背景にある課題感を明確にしていただいたように思います。また、GMSの科目を個別に社員に示すだけでなく、経営のヒト・モノ・カネを連動させたプログラムとして見せる案もご提示いただいたおかげで、我々の視点が広がりました。

本研修がスタートしてから、改善点に気づくこともありました。そのような時にも、近藤さんにはすぐに返答をいただいたり、一緒に考えてくださったりして、我々の不安をいつも最小限にしてくれましたね。密に相談させていただいたので、外部企業の方であるという感覚も薄れていったほどです。大変感謝しています。

誰もが「ひとりの商人、無数の使命」を体現する人材に成長してほしい

林さん:
本研修をはじめとする取り組みを継続して、社員一人ひとりが自律的に学ぶ意欲をこれからも尊重し、支援していきたいと思います。伊藤忠商事において多様なキャリアパスを実現するためには、GMSで体系的な経営スキルを磨く一方で、それぞれのカンパニーで求められる専門性も必要になってきます。GMSでスキルを横に広げ、専門分野で縦に掘り下げていく。社員のスキル開発においては、この両方を意識したいと考えています。

経験や意思に応じた学びの機会提供、チャレンジングな業務付与、そしてキャリアカウンセリング支援などの取り組みを、一貫性をもって提供し続けることで、誰もが「ひとりの商人、無数の使命」を体現する人材に成長してほしいと期待しています。

グロービス担当者の声

近藤:
さまざまな事業を手がけている伊藤忠商事様において、カンパニー横断で活かせるスキルは、GMSでご提供しているような経営のヒト・モノ・カネ・思考にまつわる分野なのだろうと考えます。この点において、当社が伊藤忠商事の皆さまのキャリア形成に大きく貢献できていると捉えています。

また、自律的なキャリア形成には、自分自身への健全な危機意識も必要です。他流試合形式であるGMSの場で、業種や職種、年代も違う方々と一緒に学ぶことで、新たな気づきや危機感が芽生えやすいと思うのです。

伊藤忠商事様は、カンパニーが多岐にわたるだけに、ビジネスにおいてあらゆる環境変化の影響を受けると考えています。だからこそ、これからも柔軟に、世の中の潮流をふまえた育成のご支援をしていきたいと思います。

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