日立アカデミー株式会社

タイム&ロケーションフリーで平等な学習機会を提供するため、時代に先駆けて研修をオンライン化

業種
  • 電子/電気機器
サービス
  • 企業内研修
研修対象
  • 課長層
言語
  • 日本語
日立アカデミー株式会社

時間や場所の制約を受けずに学べる環境を作るべく、2018年より日立グループにおける研修のオンライン化に取り組んでいる日立アカデミー様。その取り組みについて、お話を伺いました。(部署・役職はインタビュー当時)

(写真左から)
・弊社担当者 伊東 直輝
・ラーニングセンタ BSスタンダード研修グループ 主任L&Dプランナ 花松 甲貴様

導入前の課題
  • 社員が働く地域はバラバラで、集合研修のために東京に来られない場合が多かった
  • 時間や場所の制約を受けずに学べる「タイム&ロケーションフリーラーニング」を充実させたかった

研修内容
  • グロービス経営大学院のカリキュラムを参考に、6科目を日立の『オンラインMBA』として展開
  • グロービスと相談しながら、オンライン研修の良さを啓蒙していった

成果・効果
  • 日立の『オンラインMBA』を選ぶ受講者が少しずつ増え、マネージャー層からの参加も見られるようになってきた

背景と課題

社員の働く地域がバラバラで、集合研修のために東京に来られない場合も多かった

日立の『オンラインMBA』を立ち上げたときの課題は、集合研修に参加しにくい社員へも学ぶ機会を提供することでした。日立グループの社員が働く地域はバラバラで、集合研修のために東京に来られない場合も多くあるからです。

日立には「トータルリワード」というキーワードがあります。働く報酬は金銭的報酬だけではなく、働きやすさ、安全、健康、成長や学ぶ機会も含まれるという考え方です。働きやすさにおいては、時間や場所の制約を受けずにいきいきと働く「タイム&ロケーションフリーワーキング」を目指しています。学ぶ機会においても、「タイム&ロケーションフリーラーニング」を充実させたいと考えました。画においても、前例がなくとも、現場の意見をどんどん取り入れながら進めました。

BSスタンダード研修グループ 主任L&Dプランナ 花松甲貴様

マネージャーになってからマネジメント教育をやっても遅いのだと気付き、日立の『オンラインMBA』を企画

日立の『オンラインMBA』のゴールは、管理職の一歩手前にあたるアシスタントマネージャー層がマネージャーになるまでに、経営知識やスキルを保有していることです。アシスタントマネージャーの時点で戦略や実行シナリオを描くことを求めているわけではありません。お客様や部下と会話をする際に、日立の『オンラインMBA』で得た知識を使えることがひとつのゴールと考えています。

この課題を持ったきっかけは、私が以前担当していたマネージャー以上の研修です。マネージャー以上のトレーニングでは、自ら成長戦略を描く力を養うために、アウトプットをしながら鍛える内容を提供していました。しかしながら経営知識が不足しているマネージャーも散見され、アウトプットで鍛えようとしても効果的なトレーニングにならなかったのです。

この経験から、マネージャーになってからマネジメント教育をやっても遅いのだと気付き、日立の『オンラインMBA』を企画しました。

日立の『オンラインMBA』のラインナップ

検討プロセスと実施内容

グロービスと相談しながら、日立の『オンラインMBA』の良さを周知。社員のメンタリティも少しずつ変わってきた

導入当初の心配ごとは、多くの社員が「研修は教室で、face to faceでやるものだ」と思っていたことです。日立の『オンラインMBA』があるにもかかわらず、大阪や名古屋、北海道の人までもが東京での集合研修に来てしまうことも・・・。遠方からの参加者に、なぜオンラインではなく集合研修を選んだのかを聞いてみると、「勉強した感があるから」とのことでした。

オンライン上でディスカッションをして学ぶ日立の『オンラインMBA』と、eラーニングの区別がついていない人も多くいました。公募で受講者を集めるにあたり、このマインドセットを変えていかないと日立の『オンラインMBA』が根付かないと考えています。

BSスタンダード研修グループ 主任L&Dプランナ 花松甲貴様

グロービスの皆さんに相談しながら、日立の『オンラインMBA』の浸透にはあの手この手の対応策を行っています。たとえばオンライン研修の紹介動画やグロービス経営大学院のオンラインMBAに個人で通われている受講者の声を、日立グループ内に周知しました。

これらの広報活動を続けるうちに、社員のメンタリティも少しずつ変わってきたと感じています。

「タイム&ロケーションフリーラーニング」の実現に、あくまでこだわった

時間や場所の制約を受けずに、学ぶ機会を平等に提供する「タイム&ロケーションフリーラーニング」の実現です。そのためにも日立の『オンラインMBA』の啓蒙活動は重要です。

日立の『オンラインMBA』開催当初、学びたいのに学べなかった地方拠点の受講者からは「今お客様先に駐在しているから、ぜひこの研修を受けたいんです!」と、直接メールをもらったこともありました。こういう方々をさらに増やしたいのです。

数年続けてきて、受講者のポジティブな声が蓄積されてきたので、その口コミも社内に発信しています。

グロービスの提供するオンライン研修風景(一例)

成果と今後の展望

日立の『オンラインMBA』を選ぶ受講者は増えている。マネージャー層からの参加者も見られるようになった

地道な啓蒙活動の甲斐があり、日立の『オンラインMBA』を選ぶ受講者が少しずつ増えてきました。そして最近はマネージャー層からの参加者も見受けられるようになりました。

マネージャー層へも学習機会を提供することは重要だと考えています。これまで日立グループには、マネージャー層向けの公募研修がありませんでした。今後、60歳や65歳で職業人生が終わる時代ではなくなります。50歳、60歳、70歳になっても学ぼうと思う方々へ、日立の『オンラインMBA』が一つの受け皿となり各人の成長を支える存在になりたいと考えています。すでにマネージャーになった人が自分の武器に磨きをかける意味で参加を促進していきたいですね。

今年10月以降、ビジネスマネジメント系の集合研修はほぼ100%オンラインに切り替わります。受講者が電車やバスで移動して研修所に来て、決まった時間に先生がいて、みんなで同じ椅子に座って、ホワイトボードがあって、教科書を開く世界がほぼなくなりつつあります。

BSスタンダード研修グループ 主任L&Dプランナ 花松甲貴様

今後はジョブ型の人事制度へ対応し、教育も、日立の雇用の在り方にフィットさせていきたい

ジョブ型の人事制度への対応です。教育も、日立の雇用の在り方にフィットさせることが必要だと考えています。

ジョブ型は、そのジョブに見合った人をアサインすることです。マネージャーになってからマネージャーに必要な知識を得るための教育をすることは、ジョブ型にはなじみません。経営の基礎知識を身に付けたアシスタントマネージャーの中から「このマネージャーのジョブにマッチする人をどう充てるか」と考えることが妥当です。

日立では、2024年にはジョブ型マネジメントの風景が見えている状態にする予定です。そのために我々が提供すべきプログラムも、ジョブ型と足並みをそろえる必要があります。つまり我々のプログラムは、ジョブディスクリプションで定義されている職務に到達可能な人財育成を目的とし、そのために必要なことを学べなければなりません。

BSスタンダード研修グループ 主任L&Dプランナ 花松甲貴様

そして、オンライン研修そのものを進化させることにも取り組んでいきたいです。コロナ禍で在宅勤務が推奨されていることもあり、オンラインで学ぶことが「ニューノーマル」、つまり常態になってきています。

集合研修を単純にオンラインに置き換えたものを「オンライン1.0」とするならば、日立の『オンラインMBA』は「オンライン2.0」です。基礎知識をセルフラーニングで取り組み、事前課題を提出した上で、リアルタイムでのオンラインディスカッションに入ってもらう。受講後には振り返りをしてもらう。これがオンライン2.0だと考えています。このような学び方は、グロービスが日本では一番先を走っていると思っています。グロービスの学び方を参考にしながら、他の集合研修のリデザインもしています。

中長期的な展望としては、オンラインの世界でどこまで実現できるのかへのチャレンジをしていきたいです。オンライン学習は五感でいうと視覚と聴覚を使っています。それ以外の触覚、嗅覚、味覚もオンラインでどこまで実現できるのか。多様なテクノロジーを今後使うことになるでしょう。

ただし「リアル」は残ると考えています。「やっぱり集合研修っていいよね」という意味ではありません。研修は基本的にオンラインに置き換わった結果、最後わずかに「絶対リアルでなければ駄目だ」と残るものがあると思うのです。「同じ釜の飯を食う」とは古い言葉ですが、日立の経営トップと膝を突き合わせて対話をするセッションのような場は、なくてはならないものだと思っています。

日立の『オンラインMBA』のようなジョブ型に適応するための経営知識を身に付ける場と、リアルでなければいけない場づくりとは分けて考えるべきだと思っています。オンライン研修そのものを進化させつつ、一部だけ残る貴重なリアルの世界をいかに深い学びと感動を持って演出していくかも重要です。教育担当とは、演出家のような芸術センスが問われますね。

※本記事中の、日立の『オンラインMBA』は日立グループ独自の研修体系を指し、グロービス経営大学院の提供するオンラインMBAとは関係ありません

グロービス担当者の声

伊東 直輝

日立の『オンラインMBA』立ち上げは2018年。その時から、日立アカデミー様とグロービスは協働で、オンライン学習の日立グループ内への浸透に取り組んできました。私は2019年から本件に携わっており、花松様と共に日立の『オンラインMBA』の普及と進化に取り組んでいます。

オンラインでディスカッションしながら学ぶことへの目新しさがあった時期から数年に渡り、紹介動画や口コミの広報といった地道な活動をご一緒させていただき、その成果として日立の『オンラインMBA』を受講される方が増えていったことを大変嬉しく思っています。

研修をすべてオンライン化することを目指している日立アカデミー様において、日立の『オンラインMBA』は最先端の取り組みであるという言葉を花松様からいただいています。ジョブ型人事制度への適応を進めるにあたっては、「自律的・自発的学習」もテーマになると考えています。日立の新たな姿の実現に向けたサポートを今後もさせていただきたいと思っています。今後ともよろしくお願い致します。

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