withコロナ時代の「求められる人材像」「必要となる能力・スキル」~顧客インタビュー~

2020.12.16

グロービス法人部門では先般、顧客企業に向けて、「witコロナの『求められる人材像』や『必要となる能力・スキル』について」インタビュー調査を実施しました。目的は、世間で言われるような業績への影響、リモートワークへの転換などの変化が、具体的に企業にどんな影響を及ぼしているのかを一歩踏み込んで明らかにすること。

インタビューから浮かび上がってきたのは、各企業とも組織内コミュニケーション、トップやミドルのリーダーシップのあり方などをいまだ模索中であり、非常時のマネジメントをうまく敷くことが、コロナ禍での変化対応には欠かせないということでした。そして、今回のコロナ禍は、2008年秋のリーマンショックで「非常時のマネジメントを執った経験があるか」によって、危機意識の度合いと洞察力が異なるかも知れないということも見えてきました。インタビューを取りまとめたグロービス法人部門のコンサルタント2名(ディレクター新村正樹、マネージャー大導寺慎吾)による対談形式でお届けします。

インタビュー項目

インタビュー項目

withコロナの現状:「大きく変わった」と「現状とあまり変わらない」という企業に二分された

大導寺:
社内の雰囲気が変わったか?というと、「大きく変わった」という企業と、「現状とあまり変わらない」という企業に二分されたという印象です。

新村:
事業へのインパクトが大きいかどうかということと、社員の間に危機感が形成されていることは別の問題ということですね。

大導寺:
2008年秋のリーマンショックを体験しているか否かによって、危機意識の度合いとこれから起こることへの洞察力が異なるかも知れません。これは「当時すでに社会人であったか」ではなく、「非常時のマネジメントを執った経験があるか」という問題でしょう。

新村:
リーマンショックの経験しているか否かですが、単に経験をしていれば良い訳ではありません。大事なのは経験から何を学んだかです。

リーマンショックを経て、企業としても、固定費を減らし、筋肉質な体質になっていたはずです。従来と収益構造を変えたり、ポートフォリオの入れ替えもしていたでしょう。また、変化に対応すべく、ビジネスモデルの変革に取り組んだり、組織として新たなスキルの獲得や、ケイパビリティの向上に取り組んでいたところもある。それらを、コロナ禍以前から確実に取り組んでいたところは、今回それほど影響を受けず、かつ、これを機に変革をさらに進めているのではないでしょうか。(産業的にコロナ禍の影響をもろに受ける業種は除いてですが。)

リーダーも一緒で、前回の危機から何が大事なのかをしっかり学んでいたかによって、対応力に差が生じたのではないでしょうか。3月~5月ぐらいは方向性も見通せない状況で、まずは限られた情報で意思決定をしていくことが求められた。非常時においては、独自に情報をしっかり取得していくこと。そして、そこから間違ってもいいから方向性を示していくこと、もし方向性が間違っていたら修正していくこと。このサイクルを回していたリーダーが機能していました。(下記図:非常時のマネジメント)

withコロナの現状:社内が危機感に満ちている

大導寺:
当然ながら社内が危機感に満ちているという声もあります。テレワークだの何だのと、ルール決めにまごついている間に、組織の不安は刻々と高まっていきますよね。振り返ってみれば、あのとき素早く決断して動けていればピンチをチャンスにできたかも知れないのに。部下から見ると「なんだ、結局トップの指示が出るまで目標ひとつ自分で決められないのか」と。

新村:
ミドルリーダー層においてはまさにそうかも知れません。なんとなくリーダーを張れていた人は、この非常時に本当に的確な行動を取れていたかが問われました。一概に「決める」といっても明確な基準があるなかでの決められるなら、誰でも出来ていた。難しいのは、こうした非常時は何が正しいかわからない中で意思決定をしなくてならないこと。そういう意味では機能不全となったミドルがあぶり出されました。

大導寺:
非常時のリーダーシップ同様、何が正しいかわからない中で、意思決定をしていくには、何が必要だと考えますか?

新村:
自分がやらねばという当事者意識と、自分ならできるのではないかという感覚、つまり自己効力感を持っていることが大事になります。

大導寺:
なるほど。「自己効力感」はどうやったら持てるのでしょうか?

新村:
いくつかありますが、「自分で危機を乗り越える経験をすること」と「他人の経験からも学ぶこと」の二つがあります。

一つ目は、過去にご自身にとって危機となる経験をして、それを乗り越えていること。その際、次の危機が訪れる時にどう対応すべきかを学んでいると良いでしょう。二つ目は、事例やケースなど他人の経験から学ぶことでも自己効力感は得られます。

つまり、非常時のリーダーシップの発揮や意思決定ができた方は、経験から学ぶ力の大小が効いていたのだと思います。それに加えて、心身ともに良好な状態であることも求められます。

経営トップからは、この有事に際してどんなメッセージが発せられているか?

大導寺:
インタビューでは、キャッシュを確保する動きが顕著に見られました。銀行に借入枠を増やしてもらうという話はよく聞きます。ファイナンス面での対応は、リーマンショックからの学びが一定活かされているのかもしれないですね。

新村:
本当に必要な将来への投資をどう捉えるかですね。DXだったり、これからの人材への投資は一度止めてしまうと復活させるのが厳しいというのがリーマンショックからの学びです。だから縮小してでもどう継続していくかに苦労しているようです。

大導寺:
確かに。ニューノーマルという言葉がバズワードになっていますが、変化速度の激しい時代を舵取りできる人材を育てることは企業がサステナブルであるために不可欠だと考えられていますね。

新村:
一方、オープンイノベーションについては継続と中断で判断が分かれており、企業の本気度がクリアにあぶり出された感じですね。

大導寺:
経営の断捨離とキャッシュフローの見直しは、どの会社の経営者でも視野に入れていることでしょう。でも具体的にどこを切るのかは各社の経営の色が出ますね。

トップからのメッセージがあったとしても、中身は「議論を尽くす」とか「意識改革し質的転換を図る」とか、抽象的なレベルで留まっているものも散見されますね。いわゆるBig Wordのオンパレードで、実は何も言っていないに等しい。

新村:
今回は人事部へのインタビューが中心でしたが、明確な指針が出たわけではないという回答が多かったのは正直驚きでした。仕事の仕方が変わったという話もあるし、売るモノが変わったという話も聞く。でも、もとに戻ることを期待するだけのところは厳しくなっている。

大導寺:
「語れるトップ」の存在は重要で、株主・投資家もトップの在り方は見ていますよね。

加えて、具体的な戦略の指示だけでなく、トップからの感謝や称賛のメッセージも大事です。大事にしている組織文化などはむしろ変えない、維持していくことを明確にしている姿勢もみられました。

新村:
リーダーがどういう言動をするかが組織文化に強く影響を与えます。会社として大事にしているは、危機の時にもしっかり守る。そして危機を経て乗り越えていく経験が、より組織文化を強固なものにしていきます。

「新しい働き方」に関して、社員から寄せられている声にはどんなものがありますか?

大導寺:
リモート環境が推進された結果、これまで「阿吽の呼吸」でカバーできていたことが通用しなくなっている。明確なイシュー設定に基づく議論が大事ですね。

新村:
リアルなら、「これやって」とか、「こんな感じ」とか曖昧な伝え方でも、様子を見ながらフォローしたり、周りの人がサポートしたりでなんとかなっていたのでしょう。ただ、リモート環境になるとごまかしが効かないですね。

ミドルリーダーの能力開発の機会と捉える

大導寺:
さて、最後に、リモート環境下におけるミドルの業務設計力について話したいと思いますが、何が必要だと思いますか?

新村:
圧倒的に重要性を増すのが、仕事を任せるうえでの初動です。ゴールイメージを共有する。何のためにやるのか、目的や意義をしっかり伝える。しかも相手にわかる言葉で伝える。それに対する反応も確かめてみる。言葉にすると当たり前のことなんですが、これができてない管理職が意外と多い。

大導寺:
そうですよね。その他には?

新村:
仕事は任せっぱなしではなく、途中のフォローが欠かせません。どういうプロセスで仕事を進めようとしているのかを、任せる前に、しっかり確認しないといけない。プロセスの中で難しい部分はどこなのかを想定して、二の矢、三の矢を準備しておくぐらいのことも求められます。そして、結果を出していくサポート、事後の振り返りやフィードバックが重要です。フィードバックは、良かった点をしっかり認め、一方で課題も共有し、今後の成長に向けてどうしていくか、一緒に考える必要があるのではないでしょうか。

大導寺:
リモート環境だとごまかしが効かないというか、より管理職の難易度があがる、ということですね。一方で、今の話をしっかりやると、より高いレベルにたどり着くことができると考えて、この危機をミドルリーダーの能力開発の機会と捉え、組織力を向上していくお手伝いをしていきたいですね。

執筆者プロフィール
グロービス コーポレート ソリューション | GCS |
グロービス コーポレート ソリューション | GCS

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※文中の所属・役職名は原稿作成当時のものです。