ブログ:コンサルタントの視点
ポスト不足で出世できない社員のモチベーション管理・向上を考える

2015.07.23

一人一人が能力を最大発揮して活躍する上で「モチベーション」が重要であることは言うまでもありません。今回は日本企業に迫るモチベーション管理の危機と、その対応のヒントを池田章人が考察します。

執筆者プロフィール
池田 章人 | Akito Ikeda
池田 章人

大学卒業後、外資系人材サービス会社にて金融機関を中心とする法人向け採用戦略コンサルティング、およびキャリアカウンセラーとして1000名以上のキャリア支援に携わった後、グロービスに入社。
グロービスではスクール部門を経て、現在は法人部門・製造業チームのマネージャーとして、化学・金属・機械・製薬・食品など幅広い企業に対する、人材開発・組織開発のコンサルティングに従事。
人材マネジメント・組織行動研究グループにも所属し、研究やコンテンツ開発、講師を務める。

グロービス経営大学院経営学修士(MBA)修了。


やりがいが感じられない? 悩むシニア・ミドル層

この数年、多くの会社から「うちの組織は活性化していない」という声が聞かれるようになった。これらの会社の組織風土調査を見せていただくと、共通する点としては「仕事のやりがいがない」と言った声や「目標を見つけづらい」という声が多いようだ。

筆者がお客様企業の人材育成・組織開発のお手伝いを通じて知る限りでは、これらの声は、企業の人口ピラミッドにおいてミドル・シニア層の社員の割合が多く、何年も同じ業務に従事している人が少なくない組織でよく見られる。あわせて、これまで一定年齢以上になれば与えられていたポスト(とその結果としての給与)昇格がなくなり、出世できないと自身のキャリアに悩んでいるミドル層以上の声として聞かれるケースが多い。

2000年前後から始まった日本企業の人事制度改革も、職務主義への移行や成果主義の導入を経て、最終盤にさしかかり、ついに一定階層以上のポストの絞り込みと選抜色を強める段階となっている。その結果、これまで、「昇格し権限を得ること」や副次的に「賃金が高まること」がモチベーションであった人々が「目標を見つけづらい」状態に陥ってしまっている。

そこで、このような状況の中で、どのように日本企業(日本の組織)は組織活性のベースとなるモチベーションをあげていけば良いのだろうか。本稿ではその考えるヒントとなれば幸いである。

モチベーションのどの側面に焦点を当てるか

モチベーションのアップダウン考察にあたり、マズローの欲求階層説をベースとして見たい。様々な批判が伴う理論ではあるが、人の欲求を「生理的欲求」「安全性欲求」「所属欲求」「尊厳欲求」「自己実現欲求」という人間に普遍的な要素として導き出した理論としては、大枠を押さえる際には有効と考える。

その大きな視点でとらえると、これまでのモチベーション施策における「ポスト」の意味合いとはなんだっただろうか。第三階層以上で見ると、所属欲求(社会的欲求とも言われる)は自分に役割がある、必要とされていると感じたいという欲求である。組織に所属するだけでなく、上のポストを目指して出世するために頑張るのであるから、動機は「所属欲求」ではなさそうだ。であれば、所属欲求を満たした上で発生する「尊厳欲求」、すなわち他者から認められ、尊敬されたいという欲求を満たすのがポストだったのではないだろうか。では、このポストによるモチベーション創出が難しくなった今、どの側面においてモチベーションを向上させることができるだろうか。

2つの方向性を提案したい。1つの方向性は「尊厳を受けるポイントを変える」ことだ。ポストによって得られていた「役職や権限」に対してではなく、ポストによらない「社会や会社への貢献」に対して尊厳を得てモチベーションを向上させるという方向を強化する働きかけである。

もう1つの方向性は「所属欲求」をより充足させることだ。日本企業は従業員の会社へのロイヤルティが高いことが知られているが、逆に言えば、組織の中で一員と認められることが個々にとって大切だということになる。まさに「所属をしている/受け入れられている/承認されている」ということをモチベーション管理に結び付ける働きかけである。

社会や会社への貢献に対する尊厳を高める

「社会や会社への貢献に対して尊厳を得、モチベーションを向上させる」ための身近な方法を紹介しよう。上司・周囲がその人の仕事を褒めることである。そんなことでと思われるかもしれないが、皆さんはどうだろうか? 少なくとも筆者は周囲に褒められることで(給料が変わらなくても)仕事へのモチベーションは高まる。 そして重要なのは、部下を褒めている上司があまり多くないということだ。私は様々な研修の場で「部下を褒めているか?」受講者に必ず聞くようにしているが、たいてい3分の2程度の方々は「褒めていない」と言う。なぜか。「褒めるポイントを見きれていない」要するに、上司として、部下の様子(保有スキルや行動特性、モチベーションの源泉)などを把握できていないのだ。

最近は本人を把握するツールが様々ある。例えばストレングスファインダーなどのツールがあり、チーム全員で取り組み相互に開示しディスカッションをするだけでも相互理解が深まる。そのワークの中で相互の強み、そして強みを生かした会社への貢献へポジティブなコメントを寄せることで、尊厳欲求を高めるきっかけになるのではないだろうか。

所属欲求の充足度を高める

「所属欲求」の充足をどう高めるか。1つの例は、経営陣との対話である。最近、若手・中堅層の社員を対象に会社に対する提言を自由にさせ、役員など経営陣と対話する取り組みが多く行われている。多くは「自身が会社で本気で取り組んでいきたいこと」を自由に描き、会社へ提案をさせるというものだ。会社によっては専門家の助言を踏まえて良い提案であれば受け入れ、異動をさせることもある。自身が投げかけた案に、経営陣が理解をしてくれているということが所属意識を大きく高め、モチベーションを向上させるきっかけになっている。

もう1つご紹介したいのは女性活躍推進でよく取られているアプローチだが、立場や問題意識の共通する人々(例えば、地域限定職)が集合し、ディスカッションをする場を持つ。同じ職場にずっと勤務していると刺激が薄れてくる。しかし問題意識を職場や地域を超えて共有、解決策を考えることで会社/職場の新たな面が見え、また頑張ろうと思う。「現場の仕事は辛いが、その辛さを忘れられた」という声も多い。

このように、経営陣と若手層をつなげる、組織や地域を超えて人をつなげる、ということが意図的な仕掛けとしてできると所属意識を高め、組織全体のモチベーションを向上させることにつながる。今、ITツールも進化し、離れていても同じ問題意識や志を持った組織のメンバーをつなぐことが可能になっている。このようなツールを活用しながら、研修等の文脈で人々をつなぎ、組織の活性化と社員のモチベーション管理に取り組んでいってはいかがだろうか。

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※文中の所属・役職名は原稿作成当時のものです。